お待たせしました、約二か月ぶりのアクエリオンの更新です。
今回は今までよりも長くしております。
ではどうぞ
アブダクターとアクエリオンの戦いは続いている。一機一機、確実に敵機は撃墜されているが、アクエリオンも撃墜されるのは時間の問題だろう。事実、動きが先ほどに比べると少々乱雑になっており、攻撃が機体をかすめたり、逆に敵に攻撃が当たらなかったりしている。仮にアブダクターを全機墜としたとしてもあとに来るのは万全の人型機、敗北の色が刻々と濃くなっていく。
その様子をミコノも地上から見ていた。三機のベクターから成るアクエリオン、誰が搭乗しているかはわからないが、時折アクエリオンから漏れる光により、確実にアマタが乗っていることが理解できた。そして理解したからこそ、ミコノは眺めることしかできない自分に腹が立ち、悔しく思った。
アマタとは出会って一週間も経っていない。しかしその短期間でアマタは何度も戦いに赴いている。ウルトラマンとして、そして緊急ながらもパイロットとして命を貼り続けている。それに対して自分はどうだろうか。いつも兄や親の背に守られ、そして今も尚、この地にいる人々の一人にすぎないにしてもこうして守られてしまっている。何も成長していない。エレメントがあれば、なんて言葉は言い訳だ。逃避しているに過ぎない、
「……悔しい」
そう独り言ちるミコノ。周囲に誰もいないと思っていたがゆえに出てきた言葉だった。
「ならば君はどうしたい?」
「わひゃあっ!?」
だから急に後方から声をかけられたら変な声が出るのも仕方がないのだ。ミコノが咄嗟に振り向くと、そこには編み笠に着物姿と、一昔前の風来坊のような人が立っていた。失礼だが、雰囲気からして怪しすぎる。
「もう一度聞こう。君は悔しいと言った、ならば君はどうしたい?」
「わ、わたしは……」
頭に思い浮かぶのは兄とアマタの顔。言動に差異はあれど、彼らは確かな意志を持って戦いに臨んでいた。書して自分は。
「私は……守られて、見ているだけ」
――俺は自分の感情如何でエレメントが発動してしまう。自分を御しきれてない証拠だ。
――この力、最初に自覚したときは怖かったさ。でもこれを御せなかったらもっと恐ろしいことが起こる。俺はもうこの力のせいで失うのは嫌なんだ。
もう一度アクエリオンに目を向ける。動きは先ほどよりも更に荒いものになっており、最早時間の問題だった。
「私が踏み出したら彼らの……アマタ君や兄の力になれますか?」
「あるいは」
男の返答にもう一度戦闘に目をやる。
「本当に不器用な男たちだ。一人は大切なものを護るために一つの方法しか知らない、そう、自らが傷つくこと以外知らない」
「もう一人も、他には方法がないのかと探りつつも、結局は他の誰かが手を汚す前に自分で始末をつける。辛くとも泣きたくとも耐え忍び、一つ間違えれば修羅になることも自覚しつつ、それでも祈るように拳を振るう。
男の言葉を聞いたミコノは目を瞑り、深く息を一つした。そして風来坊の様な男の方に、先ほどまでとは違い、強い決意を感じさせる目を向けた。
「私、いきます!!」
「君に出来るのかね? 今まで守られていた君が」
男は試すように言葉を紡ぐ。
「確かに私は守られてばかり、もしかしたら役に立つどころか最悪の事態を招くかもしれない。でも、それでも私は手を伸ばしたい、彼らと手を繋ぎたい!!」
ミコノの言葉を聞くと、男は口元に笑みを浮かべた。まるでその言葉を待っていたかのように。
「その意気や良し!! ついてきたまえ」
男に先導される形で、ミコノはある場所へと向かっていった。
--------------------
そのころ、司令室では混沌とした状況になっていた。
「アンディのスピリットレベルが低下!! このままでは!!」
一対多の状況でよく持ったとも思うが、流石に疲弊したのかダメージも受けてしまい、合体の維持が難しくなっている。
「こうなっては司令、シュレードを投入しましょう!!」
ドナールが司令に進言する。シュレードは優秀な男性パイロットであり、且つカイエンとは親友同士であることから、急な投入でも互いに合わせやすいと判断したがためだった。しかしシュレードは体が弱く、ドナールの隣にいたスオミは彼の心配をしていた。
「しかし彼は体が……」
「だったら総員チェンジで、ここは女子がいきます!!」
「MIX!?」
しかしそれらのいくつもの進言を聞いても司令は黙して何も言わなかった。騒然としている室内であった、がここで一つの声が場を沈黙させた。
「エレメントチェンジ!! アンディ・W・ホールを強制排出、パイロットはミコノ・スズシロ!!」
声の発生源は司令席の更に後方、突如出てきた椅子に座っていた風来坊からだった。何故かその男の膝の上に一人の少女を座らせていたが。
「ええ!?」
「はあ!?」
「ふざけるなおっさん、部外者が指図するんじゃねぇ!!」
突然の侵入者に皆声を上げる、が司令の次の行動によって、室内は驚愕に包まれた。
「お待ちしておりました、不動・ZEN総司令」
「「「そ、総司令!?」」」
流石に司令よりも上の立場たる総司令とは思わなかったようだ。しかし見た目が怪しすぎるために司令以外は男を信用していなかった。そして当の本人はいつの間にか着替えたのか貴族の様な出で立ちになっており、ミコノをパイロット席に座らせていた。そして彼の指導の下、ミコノはアンディの乗っていたベクターへと転送された。
戦闘中だったアクエリオンは合体が解除され、その時アンディの乗っていたベクターにミコノが搭乗してきた。
「ミコノ!?」
「ん?」
突然のミコノの登場に、カイエンは驚愕に、アマタは意外そうな表情で彼女を見ていた。しかしこのまま呆けていても仕方がない。どうやら彼女は自分の意志でこの場にいるようだし、とやかく言うのは間違いだろう。そう判断したアマタはカイエンとミコノと共に合体することにした。
「行くぞ、二人とも。雪解け合体、GO!! アクエリオン!!」
「アクエリオン・EVOL!!」
新たに合体したアクエリオンを駈り、ビームなどを駆使して残っていたアブダクターを撃退していく。
「お前だけは……お前だけは戦場に立たせたくなかったのに」
カイエンは嘆く。冷たい態度を取ったりと妹を戦場に越させないために行動してきたのに、結局はこの場に来てしまった。故に自分の力の至らなさを悔いていた。しかしその様子を見たアマタは、わざわざ回線を開き、カイエンとミコノの間に割り込んだ。
「あんた、まだ気づかないのか」
「なに?」
「彼女は守られるだけなのが嫌だったんだよ、オレも今分かったがな。あんたはいい兄だ、今までも、そしてこれからも彼女のために行動するのだろう。だが、思うだけではいけなかったんだ。思いは伝えて意味を為す、そんな簡単なことを忘れていたんだ。オレもあんたも」
アマタの言葉にカイエンは黙った。しかし彼は気づいていた、アマタもまた自らの不甲斐なさを悔やんでいることを。表情にこそ出てなかったが、言葉の端々にそれが感じられた。
「ミコノさん、何故乗ったんだ? 危険なのはわかっていただろう?」
「うん、わかってる。でも私、二人ともう一度手を繋ぎたかったから」
「そうか……ならいこう。光は絆だ、受け継がれた光は再び輝く!!」
「そうか、もう決めたのだな、ミコノ。……なら俺も腹を括ろう」
ようやく、心が通わされた。アマタがそう判断したとき、何やら高鳴りのようなものが三人に沸き起こった。
「なんだ、この感覚?」
「何だろう……ワクワクする」
「このトキメキ……心を、手を繋ぐ、鼓動が高鳴る!!」
「天を貫く、空を駆ける!! 彼方へ届くオレ達の思いは――無限大だ!!」
≪
アクエリオンの背中についているスラスターが展開され、アクエリオンはその拳を伸ばす。突き出された拳は伸び続け、逃げるアブダクターを流さず落としていく。それでも拳は勢いを止めずに伸び続ける。
「伝説の技、無限拳が今蘇った!!」
不動の口から発せられた言葉。その言葉に違わぬように、拳は限界を感じさせずに伸びていく。一方パイロットたちは技を出したのはいいが、止め方がわからずに拳は伸び続ける様に戸惑っていた。また別のことでもカイエンとミコノは驚いていた。精神世界の様な空間、自分の全てがさらけ出されているような空間で、アマタのいる場所には人型がいた。
全身は銀色であり、赤と青のラインが全身に張り巡らされている。胸には輝くクリスタルがあり、双眼は乳白色の優しい光を讃えている。
「お前……話には聞いていたし見ていたが」
「やっぱり本当なんだね」
「……ああ」
伝説で語られるウルトマラン、自分たちと共にいる青年の本来の姿。彼がどのような道を歩んできたのか、どのような思いを持っているのかは分からない。
そんな中ミコノは不動の言葉を思い出していた。「どんな辛さも哀しさも、その銀の仮面と鎧で覆い隠す」と。それはいばらの道、彼の行く先はもしかしたら破滅かもしれない。隠れていてもいずれは許容量を超え、決壊し、それこそ修羅の道に入ってしまうだろう。それだけは駄目だ。そう感じたミコノは彼に寄り添う。アマタは一人じゃない、ウルトラマンでなくとも自分たちがそばにいるという思いを込めて。
カイエンもアマタの様子に何か感じたのだろう。ミコノとは反対側に回り、アマタの肩に手を置く。アマタの背中、それはとても力強く感じられたが、同時に恐ろしく孤独なものとカイエンには感じられた。愛しい妹が戦場に出ることになったのは残念で仕方がないが、彼女がはじめ巻き込まれたときに守ってくれたのは他ならぬアマタである。
アマタの体から力が抜けていく。体を包み込んでいた輝きを収まり、穏やかなモノへと変わっていった。
結局無限拳は留まることを知らず、星を二周ほど回ったのちに学園のベルリンの壁、男女を隔てる壁を破壊して止まった。修理するのもどうかということで、総司令不動の宣言の許、「恋愛禁止」で聖天使学園は共学化した。瓦礫の後片付けもすませ、色々手続きや先の戦いの処理などを行っているとき、一つの警報が学園内、いや、町全体に響き渡った。しかしアブダクターの影はない。
この事態にを不審に思ったアマタやカイエンらは、急ぎ司令室に赴いた。司令室に入った途端、アマタたちは騒然としている室内の空気に呑まれてしまった。職員が右へ左へと動き回り、未知の事態に動揺を隠せていない。
「何が起こった?」
代表してカイエンが一人に尋ねる。その職員によると、突如海中に巨大な熱源反応を感知したらしい。一瞬新型のアブダクター判断されたが、明らかに生物の様な形で、且つ魚の様に移動しているのだという。
そしてソレは地上に姿を現した。背は黒、腹は白い色合いであり、鼻の位置に巨大なドリルがついている。魚というより、イッカクという哺乳類に似ていた。
「か、怪物?」
「化け物か!?」
「いや、あれはグビラ。この星の歴とした生命体だ」
周りが騒ぐ中、ひどく落ち着いたアマタの声が耳に残るミコノとカイエンであった。
はい、ここまでです。
どうしてもこの一話で今回の襲撃の話を終わらせようと思っていたら、こんなに長くなってしまいました。
そして次回、この世界で初めて対怪獣戦をやろうと思います。果たしてアマタはどう対処するのか。次回もよろしくお願いします。
それではまた、いずれかの小説で。