前回までのあらすじ…アカイトの残したCPウイルス『BADEND』に少しずつ蝕まれ、プログラムの中枢に致命的なダメージがあったミクの、60%以上の内側のデータが消去している事実を知ったカイトたち。さらに中心である彼女が消えかけていることによってMMDWも徐々に消滅していく。そこに現れた元世界の破壊者でありミクのマスター、士は言う。
「初音ミクが完全に消えることにより、MMDWを一度リセットしてまた新たに中心人物を作り出して再生させることは可能だ。そうなった時は、ミクはこの世界に存在できなくなるがな」
最終話前編 MMDW消滅の危機?走れカイト!
ゲキド街:ボカロ荘
「それはどういう意味だ、士!」
「そのままだ、カイト。俺の力でこの世界との繋がりを破壊して新たに中心人物を作り出すんだよ。そうでもしない限り、この世界はミクが消えると同時に消滅する。もちろんそこに住む人間ごとな。だがミク一人だけでMMDWは消えなくても済む、と言っているんだよ」
「ふざけるな!第一それじゃミクを救えないだろっ!」
ガンッ
カイトの拳が士の頬にめり込む。士は抵抗もせず、ただ力なく数メートル吹っ飛ばされただけだった。いつもの高圧的な態度が今はない。
「…俺も他に方法が無いか色んな奴にも聞いて調べたんだよ。だが境界を操ろうが運命を操ろうが、もし復活できたとしてもそれは、長い間お前らと過ごしたミクじゃない。全く別の『初音ミク』と言う存在だ。もうこれしか方法が無いんだよ。助けたいさ、俺の大切な奴だ。だが不可能だ。…以前、俺が不可能さえも破壊するといったが実際無理だったようだ」
士の淡々とした何かを諦めたような口調で言ったその言葉にウタが割り込む。
「だったらウイルス事態を破壊すればいい!そうすれば…」
「…いや、駄目だ。BADEND事態はただの起動スイッチの様なもの。一度半分以上消去されれば、あとは何をしようが確実に…終わりだ」
だがその言葉も雑音が辛そうに否定する。自分の姉が消える、その事実にいつものクールな態度は突き通せないようだ。それを聞いてウタを始めとしたこの場にいるリン、レン、メイコ、ネル、楽歩、デル、テト、モモ、リナ、キクは絶望の表情を浮かべる。
その中で一人、絶望していない者が。先ほどから消えると言われているミク自身だ。
「大丈夫だよ、みんな。私は別に全ゼンだいジョー夫Da…か…ラ?」
だがその姿は一瞬点滅し、言葉も片言になる。
「≪ゲキドモード・起動、ハカイ活動ヲ開始シマス≫」
そして目が赤く光り輝き天井を突き破ってどこかに飛び去るミク。
「やばい…みんな、伏せろ!」
≪カメンライド・アナザーディケイド≫
カイトの声でとっさに伏せたウタと雑音、リンとレン、デルとテトは何とか軽症で済み、とっさに変身したAディケイド、楽歩とキクは斬撃で瓦礫を切り崩して助かったが、残りの全員瓦礫に埋まって重傷を負ってしまう。
「ウタ、レン、デル、楽歩!お前らを俺と一緒にあいつを止めるぞ。あとは埋まったみんなを助けてやってくれ」
「カイト、姉さんを・・・頼むぞ」
「…ああ、分かった!」
そう笑顔で言って出ていくカイトと、見送る雑音をAディケイドは無言で見つめていた。
「≪ハカイハカイハカイハカイハカイハカイ!≫」
「ミク!」
機械的に繰り返している通りビル群を破壊しながら突き進むミク・ゲキドモードを追うカイトたち。RPG-7の弾頭を補充しながらウタはカイトに問う。
「カイト君、一体なんだアレは?なぜミクはあんな状態になっている!?」
「あれはゲキドモード…一種の保護機能だ。データを復元するためにあんな風に暴走して、余分なデータを解放する…ってドクターが言っていた。だけどあの状態になるのは、本当にデータが消えかかっている時だと言っていたから…」
「なるほど、士君の言っていた通り状況は最悪」
「ミク姉を止めないとゲキド街が破壊されまくるうえに…」
「止めても止めなくても最期にはBADENDでミク自体が消滅」
「そしてそのままにしておくと、このMMDWごと我々も消滅、というわけか」
「そうだな。全く、なんの冗談だよこれは」
カイトがため息をつくとこちらに気付いたのかミクは急に止まって振り向き、右腕を突き出す。
「≪ハカイハカイ!≫」
次の瞬間緑色のレーザーが放たれカイトたちは避ける。
「止めるだけだ…!」
「ミク姉!」
「少し、我慢しろよ」
「耐えるでござる…!」
「うおおおおっ!」
「≪ミサイル・展開!ハカイハカイ!≫」
それぞれ攻撃してミクの動きを止めようとするが全て避けられ、代わりにミクの左袖が変形して現れた大量のミサイルが炸裂して吹き飛ばされてしまう。
「「「「「うわぁああああああっ!?」」」」」
「≪ライフル・展開!ハカイハカイ!≫」
続けて右袖をビームライフルに変形して追撃を加えるミク。ぎりぎり氷の壁を作って防御するカイト。
「なんだあのデタラメ装備は!?なぜ戦闘型でもないのにあんなに武装されている?」
「忘れたのか、俺たちを作ったのはあの変な意味で天才のドクターだぞ。戦闘型じゃなくても普通じゃないだろう。というかアレはゲキドモードの武装なんだが…めーちゃんじゃなくてよかったと心底思う」
「それは同感」
「俺的にはカイトもだ」
「で、ござるな」
「なんかひでぇな!」
こんな時でもマイペースなカイトたち。いいことなのだが状況が状況なのでそこまで余裕を感じない。
「皆、俺が突っ込むから援護してくれ」
「「「「了解!」」」」
「≪ターゲット確認、ハカイハカイ!≫」
カイトが飛び出すと同時に、ミクは再び左袖からミサイルを放つが
「させるか!」
「刺弾・煉破!」
間髪入れず放たれたウタの無数の弾幕とレンの衝撃波が撃ち消し、カイトはそのまま生じた爆風に乗って突っ込む。
「≪対象接近!迎撃開始!≫」
ミクはツインテの両端からビームを発射するも
「お遊びが過ぎるぜ?ミク」
「カイトには光線一本触れさせはせぬ!」
跳び上がったデルのサバイバルナイフと楽歩のヴェノムソードがその刀身で反射させる。
「うおりゃぁっ!」
「≪防御!?≫」
いつの間にかカイトの拳が目前に迫り、瞬時に腕を交差させて防御するが耐えきれず吹き飛ばされ、ガソリンスタンド近くの空き地に不時着するミクは体勢を立て直し、追撃に備える。
「まだまだぁっ!」
ガキン!
そしてカイトの拳が、腕を交差して防御するミクを吹っ飛ばし粉塵が辺りを舞う。
「これで…?」
粉塵が晴れたそこには、元の状態に戻ったミクが立っていた。そのままフラフラと、踊るような足取りでどこかに歩いていく。
「どこに…!?」
カイトが追いかけようとしたその時、カイトとミクの間に巨大な亀裂が入り、ミクの後を追えなくなってしまう。
「ミク——――――――!」
カイトは絶叫し、ミクはフラフラと数歩移動し、姿が掻き消えた。
次回、最終話後編。最高速度の歌が流れ、電子の歌姫は電脳世界から姿を消す…
ヤバい、シリアスしか書けない。とりあえずボカロの事件簿終わらせて続編で明るい雰囲気を…!
そして予告・UTAU!VOCALOIDの事件簿Ⅱ。
「ゲキド街のよろずやVOCALOID3(もしかしたら直前で変更するかもしれません)」
今度の主人公は新たな歌姫たち、VOCALOID3の四人組。
緋々音カル、浮音イア、結月ゆかり、マユ・ソウルフェスタ。それぞれの持つ特殊な能力で、MMDWの事件を解決していく…!
最終話後編、エピローグの後に投稿予定!