これはもしもの物語。もしもレンやリンが普通の学生で、カイトも普通の探偵業をしていたら。あんな非日常じゃなければ、の世界。
去年に書いたものなので設定がかみ合いません。ですがここで入れないと色々問題なので投稿しておきます。もう一度言います、この物語は本編とは少しずれています。
いつもより長いですよ。僕が書き慣れていない頃に書いたので。
ケロリン町:KAITO探偵事務所
今カイコは買い物に出かけ、ネロは学校、ネルはこないだ解決した事件の報告書をタイプライターで作っている。そしてカイトは、ルコからパソコンで今回の事件の説明を聞いていた。
「…と言うわけで、このお偉方の不正のデータを取って来てもらいたいんだ。ほんとはこんな泥棒みたいな仕事は頼みたくないんだが…頼む!我々は圧力がかかって何もできないんだ」
「だったら、先生に頼んだ方がいいんじゃないですか?
「それがスネークにも頼んだのだが、今は別にミッション中だとかでな…」
「そうなんですか。だったらその依頼、受けます。少し不本意ですが。今日の夜、実行に移します。それと、俺が盗みに入ったらUTAUも調査をしているふりをして下さい。こういう手の奴らは、警察が調べていないと怪しむ可能性がある」
「分かった。ではウタとテトに何も伝えないでおこう。そっちの方が好都合だろ」
「よろしくお願いします」
そしてパソコンの通信を切り、カイトはいつのまにかネルが入れていたコーヒーに口をつけた。
「ネル、今の話聞いていたか?」
「はい。私も手伝いましょうか?」
「いや、出来る限り俺一人でやる。お前には俺のサポートをしてもらいたい。ルコさんがこのパソコンにいろんなデータが送られているからそれを使って俺に指示をしてもらいたいんだ」
カイトは胸ポケットからイヤホンを取り出し、ネルに見せる。
「それなら分かりました」
「それと、BSギターとアイスバー、ついでにウージーを預かっていてくれないか?」
ネルは少し驚いた表情で言う。
「それがなくてもいいんですか?」
「今回は機密データを取ってくるだけだから。それに、それがあるとエネルギー残滓とかから俺のいた痕跡が残るからな」
「なるほど。サポートは任せてください。でも一応武器は携帯した方がいいですよ。相手は大物ですからね」
「ああ。マグナムでも一応携帯しておくよ。じゃ、俺はこれからなぎさ町に行くから。カイコたちが帰ってきたら伝えといてくれよ」
「分かりました。気を付けてくださいね。いつでも連絡してください」
「ああ。ありがとな」
カイトは外に出てベースバイにまたがりエンジンをかける。
「じゃ、行ってくる」
そして駅へと走り出した。
夕方:なぎさ町
ここには、学校帰りのレンとリンがいた。レンはあくびしながらリンに言う。
「ふわっ…リン、俺これから稽古あるから。先にボカロ荘に帰っておけ」
「分かった。7時には帰って来てよ。メイコ姉がうるさいから」
「分かってるよ」
そう言い、T字路で別れる二人。リンは駅へ、レンは近くにある武道館に向かった。レンが通り過ぎたその道の脇に止まっていた、ルパン三世が使っているような車にカイトが乗っていた。
「もう少し暗くなってから行動を開始する。ネル、今のうちにどう忍び込んだらいいか教えてくれ」
≪分かりました。裏口のそばの窓のかぎが壊れているようなのでそこを使ってください。そして通路を突きあたりまでまっすぐ進み、右の奥の扉が目的の部屋です。覚えましたか?≫
「ああ、十分だ。一応逃げ道の事も調べといてくれ」
≪了解≫
ネルとの通信を切り、カイトはため息をつく。
「時間が来るまでタコルカ喫茶で休んどくかな」
そして車から出て、近くのタコルカ喫茶に向かった。
現在19時。レンは武道館でジークンドーの型をしていた。
「ふう、今日かこれくらいでいいかな?マスターへの報告もあるし、そろそろ帰るか」
学生鞄を持って外に出てみると、暗くなっていた。
ちょうどその頃。
「じゃ、おっぱじめますか」
カイトは人目を忍んで塀を駆け上り、目的地である建物の敷地内に忍び込む。
「さっさとこういうのを修理しないから泥棒に入られるんですよっと」
そして、ネルの言っていた裏口のそばの窓から建物内に入る。それから警備員の目を掻い潜り、目的の部屋に入る。幸いなことに誰もいない。
「ネル、警備員が今どこにいるかわかるか?」
≪今のところその部屋には誰も来ませんね。ですが五分後にはその部屋に見回りが来るはずです。早くデータをコピーしてください≫
「了解っと」
カイトはネルとの通信を繋げたままパソコンに近づいて起動し、コピー用のディスクを取り出してパソコン内に入れる。
「このファイルか…」
カチャカチャとキーボードを操作し、目的のデータを廻覧する。
「よし、これをコピーっと」
エンターボタンを押し、ディスク内にデータをコピーしてパソコン内から抜き出す。
「任務完了と。うん?」
ディスクをポケットに入れた瞬間扉が開き、カイトはとっさに机の陰に隠れる。
「ネル、どういうことだ?」
≪思ったよりも早く気付かれたようですね。カイトさん、一つ聞きますけど窓をちゃんと閉めましたか?≫
「…忘れてた」
≪はあ。間違いなくそれで気付かれたようですね。とりあえず早く逃げてください≫
「了解」
カイトはこそこそと屈んだまま扉へ向かうが、ライトの光で照らされてしまった。
「あ、やばい…」
「何者だ!」
ライトを持った黒服のサングラスがカイトに拳銃を向ける。
「ちっ!」
カイトは舌打ちしながらもマグナムを腰から抜いてサングラスの手に向けて撃つ。
「ぐあっ」
拳銃が弾かれ、サングラスは一瞬引いた。その瞬間カイトは扉から抜け出し、先ほどの窓に向かう。
「悪いネル、しくじった」
≪だと思いました。やっぱりカイトさんに泥棒は無理ですね。とりあえずコピーは取ったんでしょ。追手が来る前に脱出してください≫
「…悪い、それ無理だ」
カイトは走りながら後ろを向く。サングラスが五人ほどを追って来ていて、こちらに拳銃が向けられている。
≪はあ?もしかして追われているんですか!≫
「そういうこと。俺はこれから何とか逃げるからルコさんたちに伝えといてくれ」
≪はあ。分かりました。絶対捕まらないで下さいよ≫
「分かってるって。はっ!」
カイトは素早くマグナムを抜き、近くの窓を撃ち抜く。
「さっさと逃げますか」
そして窓から外に出る。サングラスたちは一斉に窓に入ろうとしたため詰まってしまった。
カイトはそのまま塀を乗り越えて道路を走る。だがそれを追いかけている者がいた。
「ネル、こちらはうまく行った。逃走経路を頼む」
≪分かりました。とりあえず近くの路地裏に入って下さい。車が迎えに来ます≫
「分かった。全てお前に任せる」
通信を切り、路地裏に入った途端カイトはいきなり肩を掴まれ、動きを止めて後ろを向く。
「…これが狙いかい、お嬢さん?」
「そうですね。素直に返してくれたら嬉しいんですが」
「それはちょっと無理だな。返せない理由がある」
カイトは胸ポケットからディスクをちらつかせる。肩を掴んだのは、長い銀髪が特徴のサングラスの少女。グレーが基調の青紫のラインが入った服を着ている。カイトは肩を掴んだ手を外そうとするが、見た目に似合わない怪力で中々外せない。
「君、あそこの差し金?」
「もう一度聞きます。それを素直に返してもらえませんか?」
「だから…無理だって!」
カイトは彼女の服を掴み、一本背負いで投げ飛ばす。
「くっ。そう簡単にはいかないようですね」
少女は受け身を取り、体勢を立て直す。
「手加減しませんよ」
「それは困ったな」
少女はカイトに急接近し拳を繰り出す。カイトはそれを軽く受け流し足払いをかける。だが少女は飛び上がってそれを避け、空中回し蹴りをカイトに放つ。カイトはバックステップでそれを避けて後方に移動し、少女は難なく着地する。
「まさかここまでの腕とは…やるな」
「貴方こそ、泥棒にしとくのにはもったいないほどの実力ですね」
「そりゃどうも。(まあ、探偵だしな)そろそろ終わらせようか。女の子相手じゃ気が引けるけど」
「は?」
カイトは目に見えない速度で彼女に急接近してその拳を (それなりに手加減して)腹に叩き込む。
「がはっ…!?」
間髪入れず蹴りを入れ、少女が怯んだところに懐からマグナムを取り出し、彼女のこめかみに銃口を付ける。
「チェックメイト。降参してくれないかい?」
カイトが少女を説得しようとしたその時、
「やめろー!」
「ごふっ!?」
頭部にレンの飛び蹴りが入り、カイトは数メートルほど体ごと吹っ飛んだ。なぜここにレンが!?と思う者もいるだろうから数分前にさかのぼってみよう。
数分前:鏡音レン目線
俺は武道館での稽古を終えてゲキド街に帰るために駅に向かって歩いていた。
「さっさと帰らないとメイコ姉に怒られるからな」
そう言いながら急ぐ俺。
「うん?」
その時どこからか物音が聞こえた。何かがアスファルトに叩きつけるような、そんな音だ。いったいどこから?続けて何かと何かがぶつかりあうような音がさっきよりも大きく聞こえ、俺はその発生源を探す。音はすぐ側の路地裏の奥から聞こえてくるのに気付き、そこに向かった。
「なっ?」
そこで見たのは、陰で顔が隠れて見えない男が長い銀髪のサングラスをかけた少女のこめかみに拳銃(おそらくマグナム)を突き付けている光景だった。
俺は「やめろー!」と叫び、走りながらジャンプして飛び蹴りを男の頭に叩き込んだ。
「ごふっ!」
男は数メートル体ごと吹き飛ぶ。やりすぎたかな。
「大丈夫?キミ」
俺が少女にそう聞こうとすると
「ちっ…まだ仲間がいたのか」
吹き飛んだはずの男が立ち上がる。あれ?この声…凄く聞き覚えがあるような。俺は男の顔をちゃんと見ようとすると、全く同時に男がこちらを見る。
「ってお前、レンじゃないか!」
「聞き覚えがあると思ったら…」
その顔は、俺やリンと同じボカロ荘の住民で、家族ともいえる存在であるカイト兄だった。
三人称side
「カイト兄、何やっているんだよ!女の子にマグナム突き付けて」
レンは呆れながらも問い、カイトは事情を説明する。
「こっちにも事情があるんだよ。それに襲ってきたのはあっちだぞ」
「へ?」
レンがその言葉に呆けた同時に少女はカイトに急接近して拳を構える。カイトはそれに気づいて腕をクロスさせて顔をガードするがその拳は寸止めで止まった。カイトの目前で。
「助かったよレン」
「そんなことより、どっちが被害者?」
そうなったのは少女の手をレンが掴んで止めていたからだ。
「放してもらえませんか」
「それはちょっと…」
相当な怪力を持つ少女の力でも、その拳は少しも動かない。
「やるなぁレン。そうだ、今のうちに」
カイトはその隙を狙って塀を上る。
「悪いレン、ここは任せた」
「ちょっとカイト兄!」
「待ちなさい!」
「そういわれて待つ馬鹿がどこにいる!」
カイトはそのまま塀を乗り越え、近くにあった学校に逃げ込む。
「ここは…レン達の学校か。今はここに隠した方がいいな」
「・・・」
無言で腕を動かそうとする少女と困った顔でそれを止めるレンだったが
「女の子がこんな遅くに…っ!」
少女に上段蹴りを浴びせられそうになりいったん後退する。
「ちょ、危ないなあ」
「(今のタイミングで避けられた?この人…できる。でも今はあのディスクを…)」
「だから…って、な?」
少女はいきなり足払いをかけ、不意を突かれたレンは倒れ込む。だがカウンターで拳を少女のサングラスを掠らせ払い落とす。そのまま薄れゆく意識の中で、少女の鮮やかな紅い瞳を見たレンであった。
「さ~てと、行くか」
学校内にディスクを隠したカイトは人目を忍んで校門から出る。
「お、カイト君」
「うん?ウタか」
そこに、一人のデフォ子と一緒にパトカーから降りるウタと遭遇した。
「どうしたんだ?こんな所で」
「ここら辺で盗難事件が合ってな。先にテトとモモが向かったのだが、私はとある理由で遅れたんだ」
「とある理由ってどうせ食べるのに夢中になっていただけだろ」
「ぎくっ」
「図星か。分かりやすいな」
「むっ。それよりカイト君はこんなところで何やっているんだ?」
今度はカイトがたじろぐ。
「いやー。ちょっと依頼でね」
「だったら7時頃、どこで何をしていた?」
「聞き込みをしていた」
「それならいい」
「(いいのか?ま、ありがたいけど)うん?」
そこに、ミクオの乗った車がやってきた。
「カイトさん、迎えに来たぞ」
「ありがとう。じゃ、ウタ。そういう事で」
カイトはそう言って駆け出し助手席に座る。
「出してくれ」
「あいよ」
そのまま走り去って行った。
「いいんですか?カイトさんを行かせても」
「確かにな。私は付き合いが長いからわかる。あの言葉は嘘だ。とりあえず私はテト達と合流するから君はカイト君を尾行してくれないか?」
「了解」
ウタは歩いてさざなみ町一でかい建物へと向かい、デフォ子はパトカーに乗ってカイトたちを追いかける。
「ありがとな、ミクオ。助かった」
「気にしないで。ネルさんに頼まれただけだから」
カイトを駅前で下ろした車は走り去る。
「さて。まずは尾行を捲かないとな」
カイトはケロリン町行きではなく銀匙町行きに乗り込んだ。
翌日:午前8時
「全く。レンが夜遅くに帰ってきたときは驚いたよ」
「ごめんって。メイコ姉にも怒られたんだから勘弁してよ」
リンとレンは二人で登校していた。気絶していたレンがボカロ荘に帰ったのは11時ごろ。メイコに1時間ほど説教されたので実際就寝したのはさらに夜遅くだ。
「それに…」
「それに?」「いや、なんでもない。(カイト兄が怪しいことをしていたなんて言えないよな…。そう言えばカイト兄は昨日何をしていたんだ?)」
疑問を感じながら学校に向かうレン。そのまま学校に向かった。
その頃…
「なに?昨日の少女がレン達の学校に転校生として入る?それは本当か、ネル」
カイトは銀匙町のレストラン楽歩で朝食のチャーシューメンを啜りながらネルと電話していた。もちろん楽歩には内緒である。
≪はい。先ほどルコさんから連絡が来ました。どうします?≫
「まずいな…昨日のディスクはあの学校に隠したんだ。今夜にでも取りに行こうとしたんだけどな」
≪カイトさん、本当に肝心なところで抜けていますよね≫
「ぐふっ。それは言わないでくれ」
カイトは残った具を掻き集めながら思考を巡らせる。
「…こうなったらレンに全てを話そう」
≪それはいいですけどデフォ子さんはどうするんですか?尾行されているんでしょう?≫
「まあな」
そう、カイトがなぜここにいるかと言うと昨日の夜からずっとデフォ子に尾行されているからだ。ちなみに今はカイトと正反対の方向で食事中。
「後、デフォ子だけじゃないぞ」
≪はい?≫
カイトは電話を耳につけたまま後ろ側を見る。そこにはただお茶を飲んでいる黒服のサングラスがいた。
「全く。昨日から御苦労なことで」
≪あそこの人間ですか?≫
「ま、そうなるね。それよりさっきデフォ子が話していた内容によると正午からはウタとテトが来るらしい」
≪それは大変ですね≫
「それでいい作戦を思いついた。さっそくルコさんに連絡を入れてくれ。―――――――――てな」
≪分かりました。では通信を切りますね≫
ブチッ。カイトは通信が切れた携帯電話を懐にしまい、残ったチャーシューメンを一気に食べる。
「ふう。これから忙しくなるな。さて、レンにどう説明するか…あ、店員さん」
「なんでしょうか?」
カイトは近くにいた店員を引き留めとびっきりの笑顔で「これ、お替わりお願いします」そう言った。
なぎさ中学校:2年C組
30分後…レンは教室で昨夜のことを考えていた。
「あの子は何がしたかったんだ?」
「レン、さっきから難しい顔して何考えているの?」
「なんでもないよ、リン」
「でも様子がおかしいよ、レン君」
「大丈夫だってネロ」
リンとネロが話しかけ、レンは笑顔で返す。
「そういやネロ。昨日カイト兄の様子どうだった?」
「いや、昨日カイトさん帰ってこなかったんですよ。姉さんに聞いたけど心配はいらないって」
「やっぱり帰ってないんだ」
「やっぱり?」
「いや、なんでもないよ」
レンは焦って前を向く。するとタイミングよく担任のメガネをかけた女性モデルが入って来て教壇を叩く。
「はい皆!早く席に座れ~!」
その声にリンとネロは自分の席に戻り(ちなみにレンは校庭側の一番後ろで、リンはその前の席で、ネロはその横の席)前を向く。レンも憂鬱な顔のままなんとなく前を見てみると、担任は教室内を見渡し、口を開ける。
「今日このクラスに転校生が来ます!」
その言葉に教室中が興味深々と言った空気に包まれる。
「秋音さん、入って来て」
扉が開き、教室中の視線がそれを映す。入ってきたのは長い銀髪を一つに括っている鮮やかな紅い瞳の少女。その少女を見てレンは驚愕の表情になる。少女は黒板に自分の名前を書き、礼儀正しくお辞儀する。
「今日このクラスに転校してきた秋音ハルです。皆さん、よろしくお願いします」
次回、後編。
はい、少女の正体はハルでした。分かっている人もいたんじゃないかな~カイトに張り合える腕力を持つ少女、ハルぐらいしかいませんし。
今のところエピローグのストーリーは難航しています。書いてから気付いた、矛盾だらけだと。
次回を投稿するまでには纏めておくので、お楽しみに!…ボカロの事件簿の続編の方がよく進んでいたりする。