渋谷さんと友達になりたくて。   作:バナハロ

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水原くんの恋人になりたくて(3)

 奈緒の家で、私は唐突に泊まることになった。と言うか、強引に上がりこんでしまった。それでも奈緒のお母さんは快く引き受けてくれたので、少し嬉しかった。

 で、何故か加蓮も一緒に泊まっている。いや何故かではない。奈緒が電車に乗る前にスマホをいじってたと思ったら、着替えの入ったリュックを背負ってる加蓮とたまたま遭遇し、一緒に泊まることになった。すごいぐうぜんだー(棒読み)。

 まぁ、そんな話はともかく、ご飯やお風呂をいただいて、今は奈緒の部屋に揃っている。

 

「と、いうわけで、凛誕生日おめでと〜」

「おめでと〜」

「ありがとう」

 

 とりあえず、誕生日会を開いてくれた。まぁ、唐突に決まったものだからほとんどパジャマでお菓子パーティーだけど。それでも嬉しい。

 サイダーで乾杯し、飲むとコップを置いて3人で息をついた。オヤジ臭い仕草かもしれないけど、それを3人揃ってやったあたり、アイドルとしてどうなんだろ。

 

「で、水原さんとはどうなの?」

 

 早速、加蓮が聞いてきた。やっぱり聞かれると思ったよ。

 

「泊まりがけで実家に行って来たんでしょ?」

「………まぁ、別にどうということはないよ。いつも通り」

「付き合ったの?」

「ーっ!つ、付き合ってない!」

「まだ付き合ってないの?」

 

 当たり前じゃん。別にお互いに好きでもなんでもないし。

 

「そうだぞ、凛。早く付き合えよ」

 

 奈緒まで………。

 

「だーかーらー、別に本当に付き合ってないしお互いに好きなわけじゃないんだって。ただ、最近は彼となるべく離れたくないとか、一緒にいると動悸が早いとか、くっ付いてると何となく安心するとか、そういうのはあるけど………」

「え、今の自白?」

「でも、多分その辺は心不全だし、あり得ないから」

「いや、心不全のがありえないと思うんだが………」

 

 ………確かに自分で言ってて少しアレだったけど……。でも、本当に好きではないと思うんだけどなぁ………。

 

「ま、そんなの良いからさ。とりあえず、五日間の話をしてよ」

 

 言われて、私は仕方無く話す事にした。なんというか、最近は彼との出来事を他人に話すのが楽しく思えて来た。この前も、お母さんに五日間の話をした。まぁ、ブラックコーヒーが飲みたいとかで急に出掛けてしまったから、仕方なくハナコに話したけど。

 

「1日目は特にないかな。ご飯食べたってくらい」

「そうなの?」

「まぁ、向こうに着いた時間にもよるしね」

「あ、でもナルと一緒に夜ご飯作ったんだ。私は味噌汁とサラダだったんだけどね」

「へぇ、実家でお味噌汁作るなんてまるで花嫁修行だね」

「そ、そんなんじゃないから!」

 

 もう、なんで加蓮はそっちに持っていくのかな!

 

「それで、おばさんとかみんな美味しいって言ってくれて……お兄さんにはサイン求められたし、みんな良い人だったよ。………お父さんは少しアレな人だったけど」

「そ、そうなのか?」

「あとお母さんが強かった」

「つ、強………?」

「それで、途中でなんかお父さんとナルが喧嘩になったんだけどね、その治療を私がしてあげたの。その時にさ、両頬に手を当てただけで彼、顔を赤くしちゃって……それが可愛くて」

「そりゃ誰だって赤くすると思うが………」

「その後はいつも通りだったよ。ナルの部屋でゲームやってた」

 

 ゲームの中の女の子に嫉妬した事と、その後の枕投げは黙っておこう。特に、枕投げなんて押し倒されて少し覚悟決めたなんて言えないし。

 

「ふーん………?まぁ、なんでも良いけど。そのあとは?」

「1日目はそれで寝たよ。次の日はナルと川に行った」

「川?」

「うん。綺麗な川が流れててさ。東京と違って魚がいるくらい綺麗だった」

「へぇー。ちなみにどこ行ってきたの?」

「東京」

「は?」

「アレだよ、青梅の方」

「あー、なるほど………」

 

 川遊びがまさかあんなに楽しいと思わなかった。良い歳して服とか気にしないでビショビショになるまで遊んじゃったし。

 

「川で年甲斐もなく水掛っこしてたよ」

「へぇ………凛ってそういうことするんだ。少し意外」

「あまりにも川が綺麗だったからね。その後、二人で日が良く当たる岩の上で寝転がってさ。のんびりした後にお腹すいたから、ナルの家帰ってご飯食べた」

「岩の上………?」

「そう。岩の熱と太陽光でまた気持ち良いんだよ。お兄さんと小学生の時とか一緒に寝てたんだって」

「ふーん」

 

 少しお兄さんに嫉妬したことも黙っておこう。なんで同性の家族に嫉妬してるんだろう………。いや、そもそも嫉妬って何?ていうか嫉妬ではないわ。うん、少し悔しかっただけ。

 

「後は……向こうのお祭りとかも行ったかな」

「お祭り?」

「うん。彼すごいんだよ。型抜きで2万円くらい儲けてんの」

「えっ……に、2万………?」

「ああ、それあたしも聞いた。少し引いたぞ正直。そのお金で凛の誕プレ買ってたみたいだしなぁ」

 

 今の奈緒の台詞で思い出した。そういえば、奈緒って何かプレゼントもらってたよね。

 

「奈緒、駅で何をもらってたの?」

「…………えっ?」

「ほら、私と合流する前」

「あっ、あー……そういえば開けてなかったな……」

「………なんか婚約指輪を入れるケースと同じくらいの大きさの箱渡されてたよね」

「いや飛躍し過ぎだろ!」

「何、奈緒も何かもらったの?」

「そうなの。私を差し置いて」

「へぇー、なんで?」

「いや、大した事じゃないんだよ。凛の誕生日のことを教えて、プレゼント買うの付き合ってやっただけなんだって。あいつ、割とマメだから」

「奈緒、ありがと。愛してる」

「い、いいいいきなりなんだよ凛⁉︎」

 

 なるほど、奈緒のお陰だったか。それは感謝しないと。でも何をもらったかは別問題だから。指輪だったら許さない。

 そんな私の考えが顔に出ていたのか、奈緒はもらった箱の紙包みを外した。中から出て来たのはヘアゴムだった。

 

「………ヘアゴムか」

「へぇ〜、かわいいじゃん」

「あ、ああ………センス良いなあいつ………。W○iUとか言ってたくせに………」

「…………むー」

 

 ………かわいい。でも、奈緒にならこれが似合いそう、とナルが悩みながら買っていたとしたら、何故か少し腹が立つ。私もまだもらったプレゼントは開けてないけど、もしかして私にもヘアゴムなのかな。奈緒に気付かれずに買ってたみたいだし、そう捉えるのが一番自然な気がする。

 ………でも、なんだろ。奈緒はお礼、私は誕生日なのに、同じ物をもらったらなんか嫌だ。もらえるだけありがたい事なのに。私って案外わがままなのかもしれない。

 

「で、凛は何もらったの?」

「えっ?」

「凛も貰ったんでしょ?」

 

 加蓮に言われて、私は近くにあった袋を手に取った。………なんだろう、なんか緊張して来た。

 

「奈緒は中身知ってるんでしょ?」

「まぁな」

「何?」

「教えて良いのか?」

「ダメ」

「じゃあ聞くなよ………」

 

 袋の中の箱を取り出した。綺麗にラッピングされた箱のリボンをほどき、紙包みを取ると濃い青で布生地でそれなりに大きい箱が出て来た。え、これ割と高い奴なんじゃないの………?

 

「………奈緒、これいくらしたの?」

「………祭りの報酬が消し飛んだって言ってた」

「……………」

 

 嬉しいけど大丈夫なの………?友達にそんな良いプレゼントなんて買っちゃって………。

 いや、もう買ってしまったものは仕方ないし、ありがたくいただこう。蓋をあけると、中から出て来たのは青い首飾りとピアスだった。

 

「………わぁ」

「すごい、綺麗………」

 

 私も加蓮も声を漏らした。すごい、綺麗だし可愛い。それと同時に、一つの疑問が生まれた。

 

「………なんで二つあるの?」

「本人曰く『誕生日遅れたから』だそうだ」

「…………ほんとマメな人だね」

 

 そんな気にしなくても良いのに………。

 

「でも綺麗じゃん。凛、付けてみたら?」

「え、えぇ……。いま?」

「今。せっかく貰ったんだしさ」

 

 ………まぁ、別に良いけど。とりあえず、首飾りからいこうかな。

 首飾りに手を伸ばし、装備してみた。鎖骨の間で、光の反射によって冷たく光る宝石が肌に当たり、普段つけるアクセサリーとは違って、いつまでも存在感を放っていた。

 彼からのプレゼントと思うだけで、心臓の鼓動が激しくなる。それを何とか深呼吸で押さえつけて、二人に尋ねた。

 

「………ど、どう、かな………」

 

 すると、二人は「おおーっ」と声を漏らした。

 

「似合ってるんじゃないか?」

「うんうん。ていうか、頬を赤らめてると少し色っぽさすら感じる」

「そ、そっか………」

 

 良かった………。それなら彼に見せられるかも。………まぁ、はしゃぎ過ぎとか思われたくないし、なんでか分からないけど少し恥ずかしいからしばらく見せないけど。

 何となく嬉しくて、首元の青い宝石をただ弄ってると、加蓮がキョトンとした顔で聞いてきた。

 

「………ピアスは付けないの?」

「今、付けるよ」

 

 続いてピアスを装着した。青く輝く小さな球体のピアスを耳に付けた。両耳に付け終わり、二人に振り向いた。

 

「どう?」

「ああ、良いな。首飾りとも合うし、更に良いと思う」

「センス良いね、水原さんって」

 

 ………なんだろう。ナルが褒められると何故か私まで嬉しくなってくる。ハナコを可愛いねって近所のおばさんに褒められた時の感覚だ。

 でも、他人の事で喜ぶのは少し変だし、知られたら恥ずかしいので、何とか表に出さないようにしてると、パシャっと音が聞こえた。加蓮が写メった音だ。

 

「なっ、何撮ってんの⁉︎」

「いや、嬉しそうなのを隠してる感じが可愛かったから」

「エスパー⁉︎」

 

 って、バレてるなら尚更まずい!消させないと!

 慌てて私はスマホをいじってる加蓮に襲い掛かった。

 

「消して!」

「やーだよー」

 

 ひょいっと躱す加蓮。だが、いつも布団の上でナルとじゃれ合ってる私に取っ組み合いは10年早い。加蓮を押し倒した。

 

「遅いっ」

「きゃっ!」

 

 小さく悲鳴をあげる加蓮の手からスマホを取り上げた。画面を見ると、L○NEのトーク画面が表示されていて、さっきの写真が送信されていた。送り先は「神谷奈緒」。

 私がギョロンと奈緒を見ると、スマホをいじりながら肩をビクッと震わせた。

 

「奈緒!消して!」

「うおっ……!」

 

 今度は奈緒に襲い掛かった。揉み合って奈緒を押し倒してスマホを取り上げると、またまたさっきの写真が送信されていた。送り先は「水原鳴海」。

 

「〜〜〜ッ!な、奈緒〜!」

「い、良いだろ!初めて付けたんだから見せてやっても!」

「許さない、絶対に許さないんだから!」

「いふぁふぁふぁふぁ!頬を引っふぁるふぁ!」

 

 奈緒の上に馬乗りになって頬を引っ張ってると、ナルから返信が来たのかスマホが震えた。

 

 水原鳴海『付けてくれたんだ。超似合ってる』

 水原鳴海『可愛いなやっぱ』

 水原鳴海『あげて良かった』

 

 奈緒に送ってるからか、すごくストレートなお褒めの言葉を見てしまった私は、あまりの照れによって奈緒の上でうずくまった。

 

 

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