渋谷さんと友達になりたくて。   作:バナハロ

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親友と書いて人生のパートナーと読む。

 夏休みも残り2週間。長かったようで短い夏ももう終わりだ。俺なんかはそれなりに楽しめたし、のんびりだらだらと生活出来たが、アイドルの凛や奈緒はそうもいかなかったんだろう。夏は仕事も忙しくなっていただろうから。

 それでも凛はうちにわざわざ来て泊まったり、金曜の夜は一緒にゲームしたりとそれなりに息抜き出来る時間を過ごして来たと思う。

 しかし、一つだけ問題があってだな………。凛がかなり近い気がする。距離的に。

 今、こうして二人で出掛けている間も、凛は俺と腕を組んでいる。前と違って浴衣ではないから、こうしている理由なんてないのに。

 

「………あの、凛?なんで腕組んでるの?」

「嫌?」

「嫌では、ないが………」

 

 少し照れ臭い。特に慎ましやかでありながらも確かな柔らかさを持つ胸がとても気になる。もしかして、友達同士なら異性でもやはり気にしないということか?だとしたら、俺も気にするのはおかしいか。

 

「嫌じゃないなら黙ってて」

「……………」

 

 それと、なんか最近は凛の機嫌が悪い気がする。会う度に何か言って欲しいのか、訴えるような視線を送ってくる。その癖、しっかりと腕は組んでくる。俺、なんかしたかな。

 とにかく、とりあえず心を落ち着けて隣を歩く事にした。そういえば、今日はこれからどこに行くのかまだ聞いていない。それを聞こうと声をかけようとした時だ。耳についてるピアスと胸元の首飾りが目についた。

 ………今日もしてるのかそれ。俺が前にプレゼントしたものだ。何だか自分で渡したものを褒めるのは照れ臭くて何も言えてないけど、あげて以来、俺と会う日は毎日つけて来ている。そして、その日以来何故か機嫌が悪い。まぁ、ゲームすればすぐに機嫌は治るんだけどな。

 しかし、今は表に出ていてゲームはない。何とか会話で機嫌を直さなければならない。とりあえず声をかけてみよう。

 

「凛、これからどこに行くんだ?」

「黙ってついて来て」

「……………」

 

 あれ、今の話題もダメだったのかな………。

 なんかもう何話したら良いかわからなくなって来たまま、とにかく凛の後を続いた。しばらく歩いて数十分、到着したのはAE○Nだった。

 なんでここに来たの?と聞きたかったが、まだ不機嫌なのでやめておいて、黙って凛の後を続いた。

 店内を歩き回ると、凛はスポーツ用品の店に入った。なんでここ?と思ったら水着コーナーに来た。それも男用の。

 

「………えっ、あの、凛?」

「何」

「なんでここ?」

「今度、プール行くでしょ?」

 

 ああ、そういえばそうだな。海に行く予定だったんだけど、川行ったしプールでも良っか、みたいなよく分からない流れになったんだっけ。

 

「ナルの家に水着なかったから買おうと思って」

「あー……わざわざ?」

「スクール水着で来られたらこっちが恥ずいし」

「…………」

 

 何故ばれたし。

 

「まぁ、男子の水着なんてよっぽどダサいのじゃない限りなんでも良さそうだけどね」

 

 言いながら、凛は水着を選び始めた。俺もその隣で水着を見回る。………何が違うのかサッパリ分からねぇ。どれも柄が違うだけで同じに見えるのは俺の目がおかしいのか?こんなもん、一番安い奴で良いと思うんだけど。でも、凛はそれじゃ許さなさそうだし………。

 どうしようか悩んでると、近くにゴルフのパット用のクラブが置いてあるコーナーを見かけた。その近くには試し打ちの場所もある。

 

「なぁ、凛」

「話し掛けないで」

 

 相当真剣に選んでるのか、思いのほか辛辣な返事が返って来た。選び終わるまで暇だし、あそこにいよう。

 テキトーなクラブを選んで、ボールを一つとって試し打ち用の台に乗った。パターの時は余計な力は使わず、ボールをホールの距離とクラブの振り幅を合わせて球を打つ。

 なので、一番遠い時はそれなりにクラブの振り幅を大きくしなければならない。と、いうわけで、一番遠いとこを目掛けてクラブを引いた。

 

「ね、ナル。これど………あれ?」

 

 コツンと球を打って転がした。試し打ちの台の上なので、山もなければ風もない。コロコロと転がって穴に入った。

 

「っしゃオラ!」

「じゃないよ」

「あふんっ⁉︎」

 

 突然、脇腹を突かれて横を見ると、凛がジト目で俺を睨んでいた。

 

「………子供じゃないんだからフラフラいなくならないでよ」

「いや、一応声かけたんだけど………」

「言い訳しない」

「はい」

 

 黙らせたのはあなたなんですけどね………なんて言ったらまた怒られるから黙っておこう。でも、脇腹を突くのはいい加減やめて欲しい。毎回変な声あげて周りの人に見られてるんだから。

 

「で、何?どうしたの?」

「海パン。選んだから」

「あ、ああ。悪いね、わざわざ」

「ううん。とりあえずこっち来て」

 

 言われて、クラブを元の場所に戻してついて行った。凛はその場で俺の前で膝をつき、海パンを俺の腰に当てた。

 

「んー……良し。……これで良い?ナルに好みがあるならそれでも良いけど」

「これで良いよ」

「………自分で選んだりはしないの?」

「どれでも一緒だからな。凛が選んでくれた奴なら別だけど」

「っ、そ、そっか………」

「凛が選んだってことは一番似合うって事でしょ?自分で選ぶより正確そうだし」

「…………」

 

 あれ、なんかまた不機嫌そうな顔に………。

 

「早く、お会計済ましちゃおう」

「あの、凛?怒ってる?」

「怒ってない」

 

 ………怒ってるだろ。すごい顔で睨んでんじゃん。

 俺の事を一瞥した後に、すぐに凛はレジに向かってしまった。俺もその後に続き、海パンを買った。

 凛の元に戻ってくると、またわざわざ俺と腕を組んで来る凛に聞いた。

 

「で、この後どうする?」

「私の服見に行く」

「りょかい」

 

 ………やっぱなんか不機嫌だなぁ。まぁ、今日は下手な事は何も言わない事だ。

 まずは一件目。なんか全体的に青い店。青というかアレだ。デニムって奴か。いや、ガンダムに殺された二人目のザクのパイロットじゃなくて。コクピットだけを、狙えるのか………?

 しかしアレだ。デニムってズボンだけだと思ってたけど、上着もあるんだな。ただ、この時期には暑そうだ。

 しばらく見回ったあと、気に入った服を見つけたのか、凛は一着それを手に取って着てみた。

 

「どう?」

 

 どう?と、聞かれてもな………。ものすごい良く似合ってる、としか。それも、俺のあげた青のピアスと首飾りととても良くマッチしていて、凛にピッタリのクールな印象を出している。

 けど、そんな事は凛自身も分かってて着てるのかもしれないし、俺がわざわざ言うまでもないか。

 

「似合ってるんじゃないの?なんかカッコ良いし」

「……………」

 

 ………あれ?また何か失言だったかな。不機嫌そうな顔をしたぞ。

 

「ありがと」

 

 お礼は言われたものの、凛の不機嫌そうな顔は戻らない。………あ、もしかして前みたいにまた意見とか欲しいのか?

 

「あ、ならさ、あっちの黒の上着でも良いんじゃ」

「は?青だから」

「はい、すみません」

 

 違ったみたいだ。どうしよう、どうするのが正解なんだろう。

 続いて凛は別の店に向かった。その後ろをついて行き、いろんな店を回り、気が付けば夕方になっていた。

 結局、凛は色んな服を試着したものの、一着も買う事はなかった。ていうか、試着する度に不機嫌になっていったのがほんとわからない。今度、奈緒に聞こうと思ってたけど少し自分で考えてみようかしら。

 俺が店を回るごとに凛にとった行動を振り返ってみよう。1軒目は意見してみて、2軒目では黙ってて、3軒目では褒めてみて……ダメだ、一貫性がない。何をしてもしなくてもダメっぽい感じ。他に何か共通したことは………。

 …………あっ、そういえば試着してた服、どれもピアスと首飾りとよく合う服だったなぁ。ていうか、今日以外に着てきた服も、どれもアクセサリーと合うような服ばかりだった。

 ………試してみるか。

 

「り、凛」

「? 何?」

 

 うっ、相変わらず不機嫌そうだ。これ違ったらすごく怒られるんじゃないだろうか………。いや、でももう怒られてるんだし失うものなんかない。

 

「その………ピアスと首飾り似合ってりゅね」

「……………」

 

 ………噛んだ。ヤバイ、恥ずかしい。ていうか服の事触れるの忘れた。ヤバい、なんかテンパってたようで言いたい事全部言えなかった。

 何とか服の事も触れようと思って頭の中で文を作ってると、凛が真っ赤な顔でキッと俺を睨み付け、俺を押して正面に立った。歯を食いしばって、恥ずかしさを我慢してるような表情で、何かボソッと声を漏らした。

 

「……………う事は……」

「えっ?」

「…………いう事は………!」

「な、なんでしょう………?」

 

 直後、ツカツカと俺の方に歩み寄って、胸ぐらを掴まれた。

 

「そういう事は‼︎最初につけてきた時に言ってよ‼︎なんで今更言うの?どれだけ私がその言葉待ってたと思うの?このアクセに合う服を毎日選ぶのにどれだけ時間かけたと思ってるの⁉︎今日だってどの店でも何とか合うように試着して気付かせようとしてたのに!」

「ご、ごめんなさい⁉︎」

 

 なっ、なんだよ急にまくし立てて来て⁉︎迫力に押されて謝っちまったじゃねぇか‼︎

 

「い、いやっ、そのっ………気付いてはいたんですよ………?だけど、別に言う程の事ではないかなって………」

「そんなわけがないじゃん!言わなきゃこっちには分からないから!」

「や、でもさ、奈緒に聞いたけど前に褒めたL○NE見たんでしょ?なら別に………」

「そういうのは本人から直接言うべきでしょ⁉︎大体、私があれ見ちゃったのだって偶然だし、私に言ったわけじゃないじゃん」

 

 そ、そういうものなのか………?女心ってのはよく分からん。

 

「わ、悪かったよ………」

 

 とりあえず謝ると凛は満足したのか、胸ぐらから手を離したと思ったら、今度は手を引いて走り出した。

 

「さ、帰ろ」

「へっ?」

「帰ってゲームしよう」

「あ、ああ」

「〜♪」

 

 今度は鼻歌か………。ホント、女心ってのはよく分からないわ。

 

 ×××

 

 明日は凛は午前中から仕事だから、今日はうちで泊まりはない。よって、もうお帰りだ。

 家まで送って、俺は一人で家で寝転がった。しかし、今日は凛に申し訳ない事をしたかもしれない。女の子にとって、そういう細かい変化は気付いて欲しい所みたいだ。誕生日から凛とはほとんど毎日会っていたから、それまでずっと頑張ってアクセサリーに合う服をチョイスしていたのなら、それは大変だったろうに………。

 ………にしても、アレだ。自惚れるつもりはないが、凛があのピアスと首飾りをしてるのを見ると、なんか、こう……少し動悸が早くなる。それくらいに似合っている。まぁ、凛が服装を整えてるからだと思うけど、それでも我ながら素晴らしいチョイスをした気がする。

 

「…………」

 

 何となく、スマホを開いた。待ち受けには、奈緒から送られて来た凛の写真が写っている。パジャマ姿でピアスと首飾りを装備し、嬉しそう且つ気恥ずかしそうにしてる凛だ。この写真を見ると、特に動悸が早くなってる気がした。服装はパジャマで全然合ってないはずなのに。

 俺は、俺は凛のことをどう思ってるのだろうか。友達だとは思っている。だけど、それ以上の関係になりたいとも思っているかもしれない。友達以上の関係って一体なんだ?

 俺の望む凛との関係………友達以上の関係、か………。そんなの、答えは一つしかない。

 

 俺は、凛と一番の親友になろう。

 

 そうだ、友達の進化系は親友だ。これからは、俺の人生もっとも親しい友達を目指せば良いんだ。

 凛の細かい変化も見逃さず、なるべく近い距離で、常に一緒に仲良く、時には頼り、時には頼られる、そんな人生のパートナー的存在になろう。

 

「…………その為には、この待ち受けは見られるわけにはいかないな」

 

 親友の写真を待ち受けにする奴なんかいない。しばらくスマホの扱いを気をつける事にして、スマホを充電器に挿した。

 

 

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