渋谷さんと友達になりたくて。   作:バナハロ

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作品が増えてきて、今更ながらふみふみの世界だけ繋がってないのは寂しいなと思い、全部繋げることにしました。
時系列合わねーよ、とか全員ゲーマーじゃねーのかよ、とか色々あるかもしれませんが、そもそも細かい事は考えずに始めた小説なので目を瞑って下さい。


番外編という名の2人のイチャイチャ話。
日常(1)


 三日間の文化祭が終わり、振替休日。受付だけだった俺の仕事は、凛と仲良くしていたのが非リア達の逆鱗に触れたようで、1日過ぎる毎に仕事が増し、結局ずっと走り回る羽目になっていた。

 1日目が終わったとしても校内の掃除で居残り、最終日に至っては後片付けもあったので、ヘロヘロの体を癒すのに振替休日は最高の休日になりそうだ。

 だが、そうはならなかった。

 

「ふふっ、ナルの匂い………♪」

 

 布団で寝て目を覚ますと、凛が何故か俺と同じ布団の中で俺の腕と体の間に収まり、抱きついてきていた。えっと……何してんのこの子?なんで人の脇腹に頬擦りしてんの?ていうか、ナルの匂いってなんだ?

 なんか文化祭2日目の朝から凛の様子がおかしい。どうにも、まるでリミッターが解除されたかの如く甘えて来る。何かあったとしたら1日目の夜なのだが、その時の記憶がないんだよな………。本当に何があったのかを知りたい。

 で、文化祭が抜けた翌日にこれだ。本当に何かあったのか?可愛すぎて心臓に悪いから勘弁して欲しいんだけど。

 そんな事を考えた直後、凛の目つきが変わり、俺の顔を見上げた。

 

「ナル、起きてるでしょ」

「っ」

 

 な、なんでわかんの⁉︎

 

「心臓の動悸が早くなった」

 

 怖っ⁉︎な、なんでそんなの分かんの⁉︎いや、そんなにくっついてきてたら分かるかもしれないけど………!

 と、とにかく返事をしないと殺されるかも………!

 

「お、おう………。てか、何してんの?人の布団の中で」

 

 昨日は確か俺が先に寝ちゃったんだよな。疲れてて。

 

「ん?ダメ?一緒に寝ちゃ」

「いや、ダメではないが………。その、恥ずかしいし……」

「なら良いじゃん」

 

 こ、こいつ………!いや、可愛いし文句は言えないが………。嫌なわけじゃないが、心臓に悪いからやめて欲しいんだけど………。

 

「あー……あの、凛?」

「何?」

「その……なんか、こう……心臓に悪いから、その……」

「………ナル」

 

 え、何急に改まった感じで。

 

「私はね、ぶっちゃけると夏休みの頭辺りにはすでにナルのこと好きだったの」

「えっ、そ、そんな前から?」

「だからね、ナルの寝顔とか見ると、その……ドキドキしたり、甘えたくなったりしてたの。嫌われたくなかったからしなかったけど」

「だ、だから?」

「つまり、それを解放された今、とても甘えても罪じゃないよね」

「どんな理屈⁉︎いや、罪ではないが……!」

「ナール♪」

「ああああああ‼︎」

 

 そ、それなりに(あくまでそれなりに)ある胸が、パジャマ越しに当たっ………!落ち着け、俺たちはまだ高校生だ。そういう行為はダメだ。理性を保て。燃えろおおおおお!俺の何かああああああ‼︎

 とりあえず、何とか凛には離れてもらわないと。

 

「………凛」

「? 何?」

「その、何?好きだよ」

「…………」

 

 言うと、しばらく黙り込む凛。やがて、顔を真っ赤にしたようで、俺に抱きつく力が強くなった。うーん、恥ずかしさで離れてくれる予定だったんだけど、まさか締め上げてくるとは………。超苦しい。

 

「りっ、凛……!苦しっ……!ちょっ、死ぬ………!」

「う、うるさいバカ。私だって、好きだし………!」

 

 ああ、可愛い………。でもそろそろ呼吸できなくなって来てる。

 すると、恥ずかしさが更に増したのか、凛はようやく手を離して起き上がった。

 

「ナル、朝ご飯作って」

 

 自分で好きと言って照れるなんて、本当に可愛い彼女だ。ただ、彼女なら俺の代わりに飯くらい作ってくれよ………。

 仕方なく起き上がり、手と顔を洗って朝飯を作り始めた。まぁ、朝飯のメニューなんてなんでも良いだろう。キノコとウィンナーとキャベツを刻んで炒めた。

 

「はい、朝飯」

 

 大皿に盛り付けた炒め物と箸を机の上に置くと「おおー」と凛は感嘆の息を漏らした。

 白米を取りに台所に戻り、お茶碗に盛り付けてからちゃぶ台に戻ると、凛がもぐもぐと咀嚼してるのが見えた。

 

「………お前摘み食いしたろ」

「………してない」

「いや、別に良いけどよ………」

「…………」

 

 別に一口くらい良いよ。さて、飯にするか。いただきます、と挨拶して一口目を食べた。もう少し塩が効いてたほうが美味かったかも。

 

「んっ、美味し」

「あ、マジ?良かった」

「相変わらずナルって料理上手いね。女として腹立たしくなる程に」

「えっ、は、腹立たしいの?」

「………だって、彼女より料理の上手い彼氏って何?」

 

 いや、俺に原因があるみたいな言い方してるけど凛が頑張れば良いんじゃ………。それに、食戟のソーマの第一席はほとんど男らしいし、別に気にする事はないから。

 

「まぁ、俺は一人暮らしだからなぁ。料理せざるを得ないというか……凛もそういう環境になれば上手くなるよ」

「うー………」

 

 言いながら、キノコを摘んで口に運んだ。あ、キノコは美味い。でもやっぱエリンギはバター炒めがベストだな。

 

「じゃあ、さ。これから三日間。私がナルのご飯作るね」

「は、はい?」

 

 何をいきなり抜かすんだこいつは?

 

「流石に毎日泊まりってわけにはいかないから、朝は無理だけど………でも、晩ご飯なら作ってあげられるから」

「い、いやいや、いいよ別に。凛の手料理は好きだけど、仕事もあるんだし大変でしょ?」

「嘘だね」

「えっ、何が?」

「だって、ナルが作った方が美味しいもん。贔屓目抜きで」

 

 え、そ、そうなのかな………?

 

「彼女になった今、もうナルより私の方が料理上手くないと嫌だ」

「いやそんな『嫌だ』とか言われてもな………」

「とにかく、私に晩御飯作らせて!」

「ま、まぁ良いけどよ………」

 

 はぁ………。なんか疲れそうだ。それなら、後で晩飯の食材買いに行かないとなぁ。

 

「じゃ、今から買い出しに行くか」

「えー、今はいいよ。それより、ゲームやらない?」

 

 おい、やる気ないだろお前。

 さっさと食べ終わり、食器を洗って歯磨きした。とりあえず、1日パジャマでいるのは嫌なので、私服に着替えた。当然、凛は洗面所で着替えている。

 その間に、テレビをつけてゲームの準備を始めた。

 

「スマブラで良いの?」

「着替え中に話し掛けないで。良いよ」

 

 はぇー、着替え中に話しかけちゃいけないのか。そういう女性のマナーとか今度調べておこう。

 

「じゃ、やろっか」

「うん」

 

 スマブラ大会スタートしようとしたその時だった。凛が困惑したような声を上げた。

 

「あれ?」

「どうした?」

「なんか、つかないよこれ?」

「はっ?そんなはずは………」

 

 この前電池入れ替えたばっかなんだけどな………。もう電池切れか?そういや、昨日はアホみたいにゲームやってたっけか。

 

「電池入ってないんじゃないの?」

「じゃ、買いに行ってくるわ。俺の方は動くからやってて良いよ」

「……………」

 

 あれ、なんか不機嫌そうな顔に………。なんで怒るんだよそこで。

 

「え、何」

 

 何となく怖くなって聞いてみると、俺を睨んだまま答えた。

 

「何で一緒に行くって発想がないの」

「えっ?」

「私達、付き合ってるんだから、そういう買い物も一緒に行こうよ」

「………ま、まぁ、そう言われりゃそうかもしれないけど……。でも、面倒でしょ?それに、ゲームやってた方が俺に勝ちやすいだろうし………」

「………ハッ?」

「ひうっ」

 

 なんて威圧………!こっちの行動ターンが4ターン増えそうだ。

 不機嫌さを隠そうともしない凛は立ち上がると、俺の前までツカツカと歩いて胸ぐらを掴んだ。

 

「あのさ、私がナルと出掛けるのが面倒なわけないじゃん。本当にそういうの察してくれない?」

「っ……そ、そっか。ごめんなさい………」

「………わかれば、良いけど」

 

 言ってから照れたようで、顔を赤らめて目を逸らした。ホント、怖いけど可愛いなこの子。怖可愛いな。

 

「じ、じゃあ、その……一緒に行こうか」

「うん、合格」

 

 あ、合否判定あるんだ。

 そんなわけで、2人して家を出た。この辺だと、ヨド○シが一番近いかな。

 

「ヨド○シで良い?」

「ナルとならどこでも良いよ」

「……あ、そう」

「あ、今照れたでしょ?」

「うるさいよ」

 

 そんなことを言うと、凛は突然俺の腕に飛びついてきた。

 

「カップルなんだから、腕組みくらい良いよね?」

「………良い、ですよ」

「何で敬語?」

 

 照れてんだよ。察しろ。

 2人で歩いて、駅の方のヨド○シに向かう。しかし、寒くなったなぁ。前までは暑くて大変だったのに。そろそろ、暖房の掃除とか始めないとなぁ。

 

「そういえばナル」

「何?」

 

 凛が何かを思い出したように声を掛けてきた。

 

「ナルって誕生日いつなの?」

「ん?5月」

「5⁉︎」

 

 うおっ、な、なんだよ。ビックリした。

 

「そっか、もう終わってたんだ………」

「あ、もしかして誕生日プレゼントくれるつもりだったん?別に良いよ」

「良くないよ。私はもらってるわけだし………」

 

 そんな気を使わなくても良いのに。

 

「あ、誕プレだったら食材とか洗剤が良いな。一人暮らしって結構、普通の生活するだけでもキツイんだよね」

「………ナルってさ、そういうところホント殺したくなるよね」

「えっ、こ、殺したくなるの………?」

「なる」

 

 怖いなぁ………。でも、誕生日はあまり良い思い出ないんだよなぁ。中学の時は誕生日に給食で出て来た顔面シュークリーム……クッ、あいつら絶対許さん。

 

「まぁ、でも私の方が先に誕プレもらっちゃってるし、来年の誕生日は楽しみにしててね。奈緒や加蓮も呼んであげるから」

「誕生日にトライアドプリムス勢揃いか………。なんかハーレムアニメの主人公みた」

「浮気宣言?いい度胸してるね」

「いやそんなんじゃないから………。大体、加蓮とか奈緒だって人の彼氏を取ったりしないでしょ………」

「いや、ナルだからなぁ」

「彼女の一人もできたことない男に何を言ってんだ」

「それは周りの人達の見る目がなかっただけだよ」

 

 まぁ、考えてみりゃいじられキャラだったからなぁ。いじられてる間の姿しか見せたことなかったし、女子達もそれが俺の全てだと思っていたから、まぁ仕方ないよね。

 けど、凛が俺に好意を寄せていた以上、俺もそれなりに女子と仲良くなれば好かれる人間だって事は自覚した方が良いのかもしれない。

 そんな事を話してるうちに、ヨド○シに到着した。さっさと電池を買って帰ろう。

 

「あ、ナル」

「何?」

「せっかくだし、プレ4のゲームも見て行かない?お祭りで景品で取ってたよね?」

「ああ、良いね」

 

 ついでだしな。せっかくあるし、使わないと勿体無いだろう。

 そんなわけで、ゲームソフトコーナーに来たわけだが。まぁ、一言で言えば、どのゲームが良いのかまるでわからない。どれも過去作とか見たことない奴が多いんだよな。

 そもそも、俺がやってたゲームはほとんどW○iとか古いのばかりだし、最近のゲームはほとんど知らない。

 

「…………」

 

 俺よりゲーム歴の少ない凛も全然分からないようだ。

 これはググった方が良いかもなぁ。そう思った時だ。店内のポスターがふと目に入った。

 

『モン○ターハンターワールド 1.26 ON SALE‼︎』

 

「り、凛!」

 

 慌ててポスターを指差した。すると、凛も「はわぁ」と声を漏らした。いや、どんなリアクションだよそれ。

 

「新作出るんだ!」

「しかもプレ4だよこれ」

「おお〜……でも、モンハン難しいんだよなぁ」

 

 そういえば、凛モンハン苦手だったっけ……。いや、モンハンっつーか他のゲームも苦手………。

 

「っ」

「ひゃうっ⁉︎」

 

 突然、隣から脇腹を突かれた。

 

「な、何すんだよ⁉︎」

「今、失礼なこと考えてた」

 

 す、鋭い………。相変わらず、人の表情を読むのが上手い彼女だ。

 

「そ、そんな事ないから………」

「まぁ、別にどうでも良いけど。後でぶつから」

「それどうでも良くなくね⁉︎」

 

 しかし、真面目な話どうしようかな。ちょっとモンハン欲しいな……。でも、凛と一緒にやりたいし、凛が買わないなら俺も買う必要ないかなぁ………。

 お金も無いし、諦めようかなぁ。そう思った時だ。

 

「ナル、やりたいなら一緒に買ってやろうよ」

「えっ、い、良いの?」

「別に良いよ」

「でも、凛下手く……苦手だし」

 

 ビシッ、と脳天に手刀が直撃した。割と痛い。

 

「………ごめんなさい」

「続けて」

「……苦手だし、高いもんだから無理矢理買わせるのは………」

「そんな事ないよ。彼女っていうのはね、彼氏が好きなものはなるべく好きになりたい生き物なんだよ」

「っ」

 

 ヤバい、今のはどきっとした。こんな良い彼女が出来て、俺はかなり幸せ者なのかもしれない。16年間、いじられキャラをしてた甲斐があったかもしれないな。

 

「………じゃあ、プレ4のソフトは1月まで待つか」

「あ、じゃあ代わりにさ、オンラインゲームやってみない?最近、私の事務所で流行ってるゲームがあるんだけど………」

 

 そんなわけで、帰ってpso2を始めた。

 

 


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