渋谷さんと友達になりたくて。   作:バナハロ

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山手線(2)

 今年も残り数日、そんな中、俺、上野駅は待機場所で渋谷駅と並んで待機していた。

 お互い、無課金コスチュームなのでアバターはランダム。同じ服を着た男女が並んでいて、偶然にも上野が女、渋谷が男と見事に真逆になっていた。俺と凛の実際の性質的なものを反映してるんじゃないだろうな。

 ゲームモードはデュオで固定。スクワッドだと他の人に迷惑掛けてしまうだろうし。

 時間になったため、渋谷が実況を開始した。

 

「皆さん、こんばんは。山手線です」

「どうも、渋谷です」

「いやあなた上野でしょ?」

「あ、そっか。上野です」

「ちょっとー、出鼻から頼むよホント」

「いやいや、もう何十回もやってれば一回くらい間違えるでしょ」

「いやだから、そこ間違えちゃいけないんだって」

「分かったから始めましょうよ」

 

 細かいことはグチグチ言うな、割とリスナーの皆さん的にはそこどうでも良いと思うし。

 

「まぁ、そんなわけでね。今日のゲームは『フォ○トナイト』ということでね」

「簡単にゲームの説明お願いします」

「それさぁ、毎回思うんだけどなんで私がしなきゃいけないの? たまには上野さんやってよ」

「いやそこどっちでも良いでしょ」

「どっちでも良いならやってくれたって良いでしょ。なんで私に振るの、役目を」

「どうしたの今日。すごい突っかかって来るけど」

 

 キレてんの? 機嫌悪いの? や、ほとんど意味同じか。何にしてもやけに突っ込んで来るのは何なの?

 

「いや別に何もないけど……それより早く、ゲーム紹介」

「ああ、そうですね」

 

 まぁ良い、今は生放送中だ。

 

「あー今回のゲームはTPSのフォ○トナイトというゲームで」

「島に降り立った100人のプレイヤーが残り一人を目指して銃と建築を駆使して撃ち合うゲームですね」

「いやあんたがすんのか結局!」

「……ふんっ」

「え、ほんと怒ってる?」

「怒ってない」

 

 おい、今の素だぞ完全に。畜生、なんかしたかな俺。

 

「とりあえず、この『shibuya-station』が私、渋谷」

「隣の『Ueno-station』が私、上野です」

「モードはデュオで、今夜はドン勝するまで帰れま10ってことで」

「またハードルあげちゃったよ……」

「え、なんで? ヤなの?」

「いや、別に嫌ではないけど……」

「なら良いじゃん」

 

 ……ほんとにどうしたんだろう。

 少し不安になってる間にゲームスタート。ロード画面になり、待機場へ。これからバスに乗って島に降り立つのだ。

 

「はい、というわけでね。上野さん、どこ降りますか?」

「あー、どうしますかね。まだ始めたばっかなんでどこが良いとかイマイチ分かんないですけど」

「マップに名前が載ってる場所に降りてみます?」

「そうですね」

「じゃあ、このトマトタウンで」

 

 と、いうわけでトマトタウンに降りることになった。

 ……しかし、ホントに凛の機嫌悪いな。俺、何かしたっけかな……。あとで聞いてみるか。……まぁ、そのためにはドン勝つしなきゃいけないわけだが。かなり難しいぞこれ。

 で、バスが出発し、あとはパラシュートを開いて降りなければならない。

 島を見下ろしながら、とりあえず世間話のつもりで声をかけた。

 

「やっぱあれですね。こうして見るとこの島、広いですね」

「そうですね。この中で徐々に嵐に追われて範囲が狭くなっていく感じですね」

「どうします? アイテム取ったら早めにアンチ行きます?」

「アンチに早く行きすぎると強い人と当たるかもしんないから、ギリギリを目安にしようよ」

「逃げ腰なんだけど」

「や、戦略的逃げ腰でしょ」

「逃げ腰じゃん」

「うるさいからほんと」

 

 まぁ、逃げ腰なのは悪くない。本気で勝つつもりなら。ただ、絵的につまらないだけだ。

 どうせ、多くて100戦くらいやることになるだろうし、最初の一回くらい、そんなのがあっても良いだろう。

 トマトタウンに近付き、とりあえず降りた。バスの通り道的に見て、ちょうど真上を通るので早めに降りるのは当たり前だ。

 

「え、降りるの早くない?」

 

 ……しかし、この子には何度言ってもわからない。

 

「いや、だからどうせ上通るなら真上から降りた方が早くない?」

「じゃあ試す? 真上から降りて良いよ。遅かった方があとで飲み物奢りで」

「良いよ」

 

 はい、飲み物一本。

 上手く角度を調整しながら、トマトタウンのシンボルとも言えるトマトの人形に向かう。

 

「あー見えましたね。トマトタウン」

「これさ、トマトのお店があるだけでトマトタウンじゃないよね」

「それは言うなよ」

「もっと言うと、トマトのお店って何? これ何屋?」

「トマトを使ったハンバーガー屋的な?」

「あ、ファストフード店ね」

 

 一応、近くに家が二ついるし、コンビニっぽいのとガソリンスタンドっぽいのがあってタウンに見えなくもない。にしても街にしては小さいけどね。

 まぁ、一々、どの街も大きくしてたらキリがないし俺は気にしないけどね。ポケモンのタウンなんて民家しかないとこあるし。

 トマトに降り立ち、空を見上げた。途中で強制的にパラシュートを開かれ、ふわりふわりとのんびり降りて来る渋谷の姿が見えた。

 

「はい、あとで奢りな」

「……ずるいから」

「いや、ズルくはないでしょ」

 

 そんなこと話しながら、とりあえず俺は金箱を開けに行った。中には武器やアイテムが入っている。

 入っていたのは自分のシールドを上げるミニシールドポーション、白サイレンサーマシンガンとその弾と木材だった。

 

「サブマシンガン来ましたね。これ序盤では頭に当てれば中々……」

「ちょっと待って」

「なんですか」

「遅れて来たチームに武器を渡すのが勝つための秘訣では?」

 

 ……またすごいこと言ってきたな……。まぁ、そう言うなら仕方ない。ミニシとか元々、あげる予定だったし。

 

「分かりましたよ。早く降りてきてください」

「今、最強のガンマンがトマトタウンの地に降り立ちます」

 

 なんて抜かしてる時だ。近くから足音が聞こえてきた。どうやら、別のプレイヤーが同じ建物内にいるらしい。

 

「渋谷さん、まだこっち来ないで」

「は? なんで」

「近くに敵いるから。片付けるんで離れてて」

「そう言われてももう来ちゃったよ」

「はっ?」

 

 その直後だ。ショットガンの銃声の後に、ピローピロッと味方が死んだ時の電子音が鳴った。

 よし、敵の位置が割れた。走って現場に急行し、渋谷にとどめを刺そうとしてる敵の頭を撃ち抜いた。

 

「よしよしよし、ナイス囮」

「いや囮じゃないんだけど!」

「はい。ミニシとサイレンサーマシンガン」

「あー、私マシンガン使いにくいんだけど」

「じゃあ今倒した人のショットガン持って下さいよ」

「ショットガンもっとダメ」

「じゃあ何が欲しいの?」

 

 ワガママさんめ……。ていうか、ショットガンも当てられない人ってどの武器持ってもダメだと思うんだけど……。

 

「アサルト! アサルト欲しい!」

「はいはい……とりあえず、マシンガン持っててよ。護身用。当てなくても足止めてくれれば良いから」

「え、なんでそんな上から目線なの? 何そのスタンス?」

「いやまぁ、それはー……ねぇ?」

「ねぇ? じゃなくて」

「さぁ、アイテム取りに行きましょう」

「いやいや、無視しないで。ねぇ?」

 

 無視して武器探しを始めた。

 店内の机や椅子を壊しながら資材を収集しつつ、アイテムを漁った。近くの家の金箱も開けて、渋谷はアイテムは緑アサルト、白サブマシンガン、包帯2個で、シールド50、HP75になり、俺は緑ポンプショットガン、白バーストアサルト、グレネードでシールド25、HP100だ。

 

「よし、行こうか」

「うん」

 

 ドン勝つを目指して勝負を始めた。

 

 ×××

 

 しかし、やはり渋谷と一緒にドン勝つはかなり疲れる。アイテムにはガメついわ、アイテムとっても相手を殺せないわ、敵のど真ん中で回復するわ、そのくせキル厨を気取って勝手に突っ込むわ、もう散々だ。

 ただ、全く使えないわけでもない。例えば建築。三段の櫓を立てるのは速くて、ピンチになったらすぐに建てる。

 あとは敵に弾は当てられないが、敵の壁を削るのは率先してくれる。まぁ、結局は俺が一人で敵二人倒さなきゃいけないわけだが。適材適所、と言えば聞こえは良いんだけどなぁ……。

 現在、二時間で58回目のトライ。一応、かつてない順調さでラスト8人まで残っている。まぁ、敵と一回しか遭遇してないだけだが。

 ただ、その一回の敵が強かった。完全に奇襲が綺麗に決まったから倒せた。ハンティングライフルでヘッドショットし、二対一で圧倒できた。まぁ、渋谷は一回死んだが、漁ったアイテムですぐ回復できた。

 で、残り4組。アンチに向かっている。

 

「いや、いけるよこれ! いけるって!」

「いやフラグ建てないでお願いだから」

 

 ……まぁ、確かにそんな気になるのは分かるが。順調は確かにかつてない。

 そんな時だ。俺の足元に煙が出た。狙撃されている。とりあえず建築して壁を張った。が、アサルトによって壁が剥がされていく。

 

「渋谷さん、壁張って。俺、相手殺すから」

「はいはい」

 

 渋谷が壁貼ってる間、俺はその壁に穴を開けてハンティングライフルを構えた。

 撃ってきてるのは……あーいたいた。あ、ダメだ。壁張られた。アサルトライフルに切り替えて、壁を剥がし始めた。

 ……あれ、おかしいな。こっちに撃たないで渋谷さんしか狙われてない。というか、そもそもこっちに撃ってきてるのが一人だ。

 ふと怪しいと思った直後だ。足音が近づいて来るのが聞こえた。

 

「……あ、ヤバイな。渋谷さん、一人来てるかも……」

「わっ! 何この人⁉︎ ヤバイヤバイヤバイ殺される殺され……!」

 

 泣きそうな凛の声が響いた。

 ……この野郎、俺の彼女を何度も殺しやがって。

 武器を切り替えて、ショットガンを持ち、階段を建てて上がった。壁を貼って他所からの狙撃を防ぎながら敵の方に向かう。

 

「ちょーっ! な……上野さんヤバイって死ぬって死ぬ死ぬ死ぬ!」

 

 そう言う通り、左上のゲージは青は完全に消滅し、緑も半分を切った。

 

「大丈夫、もう追いつく」

 

 もう見つけたし。坂道を作って上を取ってジャンプしながら渋谷にとどめを刺そうとしてる奴にショットガンを向けた。

 が、壁を張られて塞がれる。階段を使って壁の向こう側に走りながら指示を出した。

 

「渋谷さん、下降りて隠れて回復して。こいつらは俺が仕留めるから」

「っ……その頼もしさがいつもあればなぁ」

「? 何?」

「なんでもない」

 

 よく聞こえなかった。今の俺の神経は全て画面に向いている。階段作って壁貼って床作って頭取ったら狙って撃って外されたら壁張って避けつつ階段使って壁って床作って場合によっては天井作って頭が見えたら撃って……の繰り返し。

 HPはお互いにマックス、これは長期戦になるな……。どちらが先にダメージを与えるかで勝敗が決まりそうだ。

 

「よし、回復した。今行こうか?」

「いや、いい、いらん。周りの奴が建物壊して落下ダメ入れてこないように見張りだけしといて」

「いや放送画面に映してるの私の画面だからさ、このままだとかなりつまんないと思うんだよね」

「……あ、そっか。今、放送中だったか」

「いや没頭しすぎでしょ!」

 

 そんなこと言われても……さっさと片付けないと他のチームに見つかって終わった後に漁夫られる。

 

「んにゃろうめ……!」

 

 そう、毒づきながら相手の頭をとってショットガンを構えた時だ。目の前にやはり壁を張られる。

 が、その壁が何処から飛んで来た銃弾によって壊された。お陰で建築中の無防備な対戦相手が出てきて、ポンプショットのヘッドショットで沈めた。

 

「よーし、オーケーオーケー。今、逃げるわ」

 

 ラッキー、漁夫りにきたスナイパーに助けられた。

 慌てて建築物に穴空けて降りながら渋谷さんに合流した。SR持ちがいる以上、足を止めるのは死活問題だ。

 狙撃を警戒してジャンプしながら逃げつつ、渋谷さんに聞いた。

 

「もう一人は?」

「……」

「渋谷さん?」

「あのさ、これデュオだからね?」

「へ? う、うん」

「協力しようよ」

「え、してるじゃん」

「……」

 

 ……どうしたんだろ。なんか怒ってる?

 

「……まぁいいよ、とりあえず続けよう」

「お、おう……?」

 

 その後、久々に良い勝負をして絶好調の俺は何とかドン勝つ出来た。

 

 ×××

 

 放送が終わり、俺はその場で寝転がった。あー、疲れた。

 

「いやー、勝てて良かったな、凛」

「……そうだね」

「絶対無理だと思ってたもん。次回に持ち越しパターンだとばかり」

「そうだね」

「……」

「……」

 

 ……あれ? お、怒ってる……?

 

「り、凛……? どうかした?」

「……ナルさぁ、バカなの?」

「へっ?」

「どこが協力? あのショットガン合戦の間、ずっと一人で暴れてただけじゃん」

「あ、あー……」

「私の話に耳も貸してくれなかったし……」

 

 ……しまったな。確かにあまり構ってあげられなかったかもしれない。凛ってこう見えてかまってちゃんだからなぁ……。

 

「この前のクリスマスの時だってさ、アレ以来ハナコと仲良くなって、私よりまずハナコに挨拶するようになったし……」

「あ、あー……そ、それは」

「ふんっ、私よりゲームとか犬が好きなら一生それで孤独に慄けば良いじゃん」

 

 ……完全に拗ねちゃってるよ。確かに夢中になり過ぎたな……。

 どうしたものか……こういう時は「凛のゲームの練習付き合う」とかはダメだ。結局、ゲームだし。

 

「……あー、凛」

「何? クソゲーマー」

「悪かったよ。しばらくゲームしないから、だからむくれるな」

「……足りない」

「は?」

「それだけじゃ足りない。今から、私の椅子になって」

「えっ……?」

「嫌なら知らない」

「わ、分かったよ……」

 

 すると、凛は俺の膝の上に座った。

 

「……抱きしめて」

「はいはい……」

 

 後ろから両手を回して、ギュッと力を入れる。

 

「……しばらく、このままだから」

「了解……」

 

 今日はこのまま横に倒れ、二人で眠ってしまった。

 

 

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