14話 合宿3日目!! 前編
AM8時 ホテル内
中嶋と北上は2人で炎天下の中でロードバイクの手入れをしながら、話していた。
「お前のロードはかっこいいな。」
「だろ! 北上はLOOKだな。カッコいいよな! 白いしきれいだな!」
「なんでLOOKなん? それはある人のマネをしたからさ!!」
「だれだよ!」
「ハコガクの真波山岳よ!」
「そうか…。ちなみにお前もあのインターハイの富士山の五合目に見に行ったのか?」
「当たり前よ! あの人のマネをしたくなったからな。お前はギアを上げて登るんだろ。真波さんみたいな走りじゃないのか?」
「まぁーな。このロードはあの人とお揃やからな。オレら…ある意味パクってるよな。ロードにしろクライムも。」
「本当だな ww」
この2人の様子を遠目で見ていた勘太は安心してた。
〔あいつら… 仲が良いな…。〕
「兄さん!! 」
「おっ。純太か。」
「兄さん。今日も頑張ってね。」
「ああ。」
他のメンバーも続々と集まり合宿最終日が始まる。多村が1枚の書類を持っていた。
「皆さん。おはようございます。いよいよ合宿も最終日になりました。始めたいところですが…重大な話があります。 」
「多村。その紙は?」
「インハイ予選メンバーを発表します。」
周りは動揺し始めた。北上は多村に強い口調でいう。
「おい! 話が違うじゃないか?」
「といいますと?」
「だってよ! 合宿終わったらインハイメンバー発表するんじゃねーのかよ!?」
「そんなこと一言も言ってませんよ。この合宿でインハイメンバーを6人選ぶとはいいましたが。」
「それでは… 発表します。」
「おい!!」
「1番 多村純太郎。オールラウンダー。」
「2番 佐々木竜司。オールラウンダー。」
「3番 北上雄介。エースクライマー。」
「4番 菅原勘太。エーススプリンター。」
「嘘だろ…。オレがエースクライマーなの…。一日目のあれが認められたのか!」
「エーススプリンターに恥じない走りをするし、純太の分を背負って走る。」
「多村君のアシストかー。僕はー。」
「5番。中嶋悠斗 パンチャークライマー。」
「パンチャークライマーということは…。ブロックやアタックメインのクライマーか。面白そうなポジションをくれたな!!」
「6番。山中大地。ジョーカー。」
みんなで息があったように声を揃える。
「ジョーカー!!!」
「おいおい。ジョーカーてトランプではないんだからさ。ジョーカーというポジションは専門用語ではきかんよ。」
「まぁ。中嶋君。選んだ理由は今から話す。1人1人の役割を言うから。」
「まずは、僕と佐々木君はゴール前に競うポジションだから省略。北上君。君は一日目の山岳リザルトをとる。そして、2日目はチームを牽引して山岳区間はチームのために引っ張ってほしい。勘太さんは、1日目のスプリントラインをとり、先頭集団に入る。勘太さん。ここかなり重要なので期待してます。あとは、3日目の東京を走るときはよろしくお願いします。そして、5番の中嶋君。君が活躍する場は…3日目の山岳リザルト。ここで僕は勝負を仕掛けるつもりでいます。だからこそ…君の力をかりたい。詳細はまたあとで話す。何より6番の山中さんはジョーカーですので…臨機応変に対応し、勝負どころで使います。」
「まー。多村に任せるよ。それは。」
「でも。これは予選突破してインハイ出場するのを前提に話してるので… 。必ず予選突破しましょう。」
「予選のメンバーは考えてあるのか?」
「それは…当日話します。インターハイは補欠もいれることが出来るので、全員選手登録はしておきます。 では、そろそろ始めましょうか。ちなみに熊野君と純太さんはマネージャー達と一緒に行動してください。」
「………。わかりました。」
「りょうかい。多村君。」
インハイメンバーの6人で走る。合宿最終日が始まる。
甲府盆地を抜けると山岳区間が始まる。ここは北上に引いてもらうことになる。そして、肝心な相模湖から高尾までのつづら折りの坂道になる。そこで多村は中嶋にオーダーを出す。
「中嶋君。北上君と勝負してください。」
「えっ。勝負するのか?」
「パンチャーはここぞという時に力を発揮するんですよ。その練習です。」
「だってよ! 中嶋。」
「また中嶋と勝負するのか。ここまでチームを引っ張ってきて、脚が若干きてるというのにやるのか? 多村?」
「あなた達は良きライバルであり、お互いの強みを発揮できる場ではないのですか?」
「たしかに。オレがエースクライマーじゃないのが気に食わないし、そもそもパンチャーて地味なポジションじゃないか。」
「ギア上げの狂人クライマーじゃないか? ま。 ハイケイデンスのオレはエースクライマーに似合ってるからな。」
「はっ? なめるなよ! お前はエースクライマーのくせに勝負しないのか? 」
「はっ。オレはエースクライマーだからこそ!ここまでの山岳区間をお前らの為に引っ張ってやったじゃないか!!パンチャーやろうに言われたくねー。」
勘太は怒りを爆発した。
「お前ら。いい加減にしろ。自分がやるべきことをしっかりこなせ。」
「すみません…。勘太さん。」
「ハワワ…。これから行きますから!! 」
「勘太さん。ありがとうございます。」
「こうしないと奴らは黙らないからな。」
北上と中嶋は神奈川と東京の県境の山頂を目指す。2人が飛び出した直後に
「なぁ? オレも参戦していいか?多村?」
「?? 山中さん…。なぜ?」
「ジョーカーは一か八かだろ。」
「そういいましたが… あなたの力を使うところはここじゃない。」
「いいじゃないか。やらせてくれないか?」
「山中さんなら何か狙いがあってやるんですね?それなら許可しますが…。」
「ありがとうよ。少し運動してくるか!」
勘太は山中に話しかける。
「何を考えているのか?」
「そうだな…。久々に競争したいからね。」
「そうか…。 だが… 本番はそんな自由なことは出来ないぞ。」
「練習だからこそやるんだよ。あと… 今しか出来ないことがあるからな。」
「……。そうか。行ってこい。 それと… あの2人を蹴散らしてこい!! 」
勘太は山中の背中を押し、山中を行かせた。
〔大地はきっと… あの2人に何かを伝えたいことがあるのではないのか。〕
「すみませんが…佐々木君。この登りはよろしくお願いします。」
「わかったよ…。純ちゃん。」
佐々木は多村と勘太をつれて登る。そして、北上と中嶋は互いにつづら折りの山道を登る。
「そんなもんかよ! エースクライマーさんよ!! オレはまだまだ序の口だ!! 」
「うるせーな…。お前も脚がプルプルしてるではないか! 限界か?」
「連日の疲れが溜まってるんだよ!」
「それはオレも同じだ!」
その時。2人の背後に異様なプレッシャーを感じた。それは過去に感じたことがあるプレッシャー。振り返ると山中が登ってる姿が見えた。
「山中さん!! 登ってきたのですね!」
「山中先輩! 」
「よう。仲良く登ってるか? 悪いが先に行くわ。そして、山頂とるから。」
山中は更に加速した。慌てた2人は山中にしがみつく。
「山中さん…。速すぎですよ…。」
「ついていくのが…やっとだ…。」
「そうかー。なら。もっと加速するわ。」
山中は更に加速し、一瞬で2人を引き離す。
「くそー。はえー。」
「力を温存していたのですね!」
2人は必死にペダルを回すが、差がどんどん開いていく。
〔山中さん…。あなたはこの3カ月…。だいぶ成長しましたね…。〕
〔あの気迫と闘争心は凄い圧を感じる。〕
「なぁ。中嶋。」
「なんだ?」
「山中さんはもしかしたら…オレらに勝負を挑むつもりだな。」
「当たり前だろ! あの人の性格はわかってるからな!! だから、こんなところで負けたくないわ!! 」
「なら…協調するか。オレら… 昨日の山岳区間をチームを引いて疲労が溜まってる。あの人に勝つためにはそれしかない。」
「だな。なら… やろうか!! 」
「ああ!」
中嶋と北上の残りの力を振り絞って、山中に勝負に挑む。仲が悪いと評判だった2人が初めて協調する。しかし、山中ははるか先にいる。お互い励まし合いながら登る。
「北上!! オレの引きについていけてるか?
きついようならいってくれ!」
「大丈夫だ!! そのままいってくれ!」
北上は中嶋の引きを見て感じた。
〔こいつ…。ギアを上げる時…。一瞬ダンシングして少しでもロスを削るようにしなやかで豪快な走りをしてる。普通なら…こんな傾斜がキツいところでギアを上げない。これが…中嶋悠斗のクライム!! 」
「代われ! エースクライマーの引きを見せてやるよ!!! 見てろよ!」
「おう!! 頼む! 」
〔いつ見てもこいつのバカみたいなハイケイデンスには驚かされるぜ。まるで小野田さん!このケイデンスで山を登るクライマーなんて…。 まるで化け物だな!! 〕
「すげーじゃん。北上!」
「だろ!! 」
2人の協調により山中の姿をとらえる。山中は後ろを振り向きボヤく。
「来ると思ってたよ。 さぁ!! 山頂まで競争だ!!」
北上と中嶋は汗が吹き出るぐらい必死に山中に追いついた。
「来ましたよ……。山中さん…。」
「あなたの好きな競争をやりましょう!」
「ウォーミングアップは済んだようだな。なら… 擬似山岳賞勝負!! やろうか! 」
「さぁ! 楽しみましょう!! 山頂まで!」
「エースクライマーの僕がとりますよ!」
「お前らに見せてやるよ。そして、絶対に勝つ!! 」
県境の山頂まで残り1km。3人の戦いが始まる!! 先に仕掛けたのは中嶋。 ギアを更に上げて残りの力を振り絞る。
「なんか。懐かしいですね!山中さん!」
「何がだよ。」
「山中さんと初めて学校の裏山を登ったときですよ!!」
「懐かしいな。」
「ですよね!あの時と同じ高揚感ですよ!」
「お前らしいな…。」
「待てよ…。山中さん…。中嶋…。」
「北上と最初勝負したときも裏山。オレが山頂寸前で落車したやつか。」
「 懐かしいっすね。山中先輩!」
「どちらも共通して言えるのは… お前らに勝ってないからだ。1度も。」
「まさか。山中さん…。リベンジマッチですか? 」
「ああ。 そうよ。」
「それに…… 一日目の箱根では北上に負けてる…。 リベンジだ! 北上! 」
「おいおい。さっきまで協調してたのに…ここで仲間割れかよ…。しかし、山中さんが3人で競うというなら…。やりましょう! エースクライマーとして2人を蹴散らしましょう。」
「エースクライマーてばっか言ってるが…気に入ってるのか!!」
「ええ! このチームで速く山を登ることができるクライマーですから!! それは名誉ですよ!」
残りの800mの山頂まで3人登る。 どちらも限界の限界までペダルを回す。3人共通していえるのは勝ちたいという執念である。
残りの500m。3人はここの力を振り絞り山頂を目指す!
中嶋は更にギアを上げて2人をブロックする。 何故なら、ポジションを維持するためにやるからだ。
「2人に言いますが…パンチャーというのはアタックを阻止したり、自分がアタックを仕掛けるもんだぜ。オレを抜くことが出来れば良いんだがな。」
「くそ。これでは厳しい。だが…中嶋。オレの走りに魅了されるなよ! 」
北上は中嶋と並びブロックをさせまいと、必死にしがみつく。 山中は2人の後ろについていて、仕掛けようとしない。
残り100m。山中がついに仕掛ける。 2人の横をすり抜け、山頂まで必死にペダルを回す。 2人は山中のオーラに圧倒された。
〔これが… 山中さんの真骨頂!! 〕
〔凄い…。あのころとは違う!!〕
「最大ギアマックス!!」
「ハイケイデンスクライム第3弾!」
〔本気の本気で来やがったな…。北上と中嶋と対等に勝負出来るようになれた。ここまでこれたのはお前ら2人がいたからなんだよ。感謝する。だから、オレがお前らに3カ月間成長したということを証明する!! 〕
いよいよ東京と神奈川の県境に到達寸前。
「オレは…。この山頂をとる!!」
「もらーーー!!! とるぞ!山頂!」
「オレがエースクライマーだ!」
そして、勝者が決まる。 敗者は苦しそうに息を吐きながら下を向いてた。
「やった…。やったぞ! 」
「悔しい…。悔しい!! 」
「久々に感じる敗北…。」
僅かな差で山中が山頂をとった。3人とも並走し、中嶋と北上はバイクを出したが、山中は山頂までペダルを踏んでいた。
中嶋と北上は山中を称賛した。
「やっぱり…山中さんには構わないや!」
「悔しいですけど… この勝負をして学ぶことがたくさんありました! ありがとうございました!! 」
「やっと…リベンジ出来たよ…。お前らに勝ったのは初めてだからな。これで、1勝1敗だな。」
「そうですね! またやりましょうよ! 凄く楽しかったです!! 」
「そうですね。また3人で!!」
「勘太達が来るまで…お前らは休んでろよ。オレがこの下りの区間は引っ張ってやるから。」
山中は2人を連れて、勘太達が来るまでゆっくり高尾までの下り坂を下がっていく。 中嶋と北上はこの勝負の敗北で感じる。
〔1日目も3日目の山岳リザルト…。北上に負けてる。クソ!! 悔しい!!〕
中嶋はこの2つの戦いで敗北してるため悔し涙を流した。
〔エースクライマーという慢心が今回の敗因。山中さんは3カ月間で必死に努力して強くなった。それを証明するするために、山頂勝負を仕掛けたのか。〕
「山中さん…。次は負けませんから。」
「ああ。楽しみにしてるよ!」
〔さて。北上と中嶋の勝負を終えたし、あとは東京の平坦区間。ここで役割を果たさないとな。〕
こうして山中と中嶋、北上の山頂勝負は山中が制し、ゴールに向けて走る。