第15話 合宿3日目! 後編
合宿3日目は甲府から東京の大手町まで走る。山岳区間は北上がチームを引く。多村が中嶋と北上を3日目の山岳リザルトの東京と神奈川の県境の山頂まで競争を求めたが、山中も参戦することになる。それぞれの想いをペダルに込めて山頂を目指す。山中が山頂を制し、東京の平坦区間に入る。
佐々木と多村、勘太と合流した山中達は陣形を再び整え調布市の味の素スタジアムのスプリントラインまでのオーダーを出す。
「誰が山頂をとりましたか?」
「山中さんだ。」
「そうですか。わかりました…。ちなみに山中さんはまだ走れますか?」
「ああ。走れるさ。何かオーダーあるか?」
「そうですね…。クライマー達をひいてもらえますか? 僕達は先に行きます。」
「つまり、佐々木と多村、勘太でゴールをとりにいくということか?」
「ここからは平坦道が多いので、役目を終えたクライマー達を、大手町まで引っ張ってもらえれば大丈夫です。」
「わかった。あとは任せたぞ。」
「はい。では、行きましょうか。」
佐々木、多村、勘太は3人で平坦区間を走る。山中達を残して走る。
「今、多摩川を渡り甲州街道を東京方面に行きます。調布あたりまで僕が引きます。2人は脚を休めてください。」
「待て。エースがチームを引くのか?それじゃゴール前競えないじゃないか。」
「純ちゃん。脚を休めたほうがいいよ。」
「1番で勘太さんがスプリントラインをとってほしい。それが、僕の考えている作戦。皇居あたりまでは脚を休めるさ。」
「なるほどねー。」
「勘太さんは少し休んでください!」
多摩川を渡り終わり、20号線をしばらく真っ直ぐ走る。多村は勘太のフォームになる。
「おい。それはオレのフォームだな…。」
「勘太のフォームや走り方、そして、勘太さんのクセなど。研究して真似しました。」
多村は勘太のスプリントの体勢で平坦を淡々と走る。佐々木も勘太もついていくのに精一杯。勘太の走りを真似した多村に驚愕。
〔こいつ…。人の走りを見て、それを自分の技にする。まるでオレがもう1人いるような。生まれ持った天才かよ。〕
多村の引きによって調布市内に入る。
「勘太さん!! 四ツ谷まで全力で引いてください!! 」
「えっ。待てよ。話が違くないか? 」
「本来なら八王子から四ツ谷あたりまで引いてほしかったのですが… 山中さんが山頂勝負をしたから、急遽作戦変更にしたんです。 ちなみに、最速で味の素スタジアムを突破してほしいという意味です。」
「そうなのか。四ツ谷まで引いてやる。」
〔本当は…大地がエースでオレがアシストでゴールは大地がとってほしかかった。でも、多村のオーダーだと叶いそうにないな…。〕
勘太達は順調に甲州街道を走る。
そのころ。山中達はまだ府中あたりを走っていた。3人で会話しながら走っていた。
「しかし、多村は相変わらず冷たいやつですよね!! 山中さん! 」
「何か策でもあるんじゃないのか?」
「だといいんですけどね!!」
「何故。俺たちは3人のオールラウンダーに1人のスプリンターという異例なメンバーなのか。オレには理解ができない。流石にオールラウンダー3人は多い気がする。」
「たしかにそうだよな。北上。」
「なぁ。お前ら1ついいか? 」
「なんですか?」
「多村はオレをジョーカーていってたよな。ジョーカーなら勝負どころで使うのに…なんでオレがここにいるのかわからない。」
「たしかにそうですよね…。役目を終えたクライマーたちを引いて大手町まで行けっておかしな話ですよね。」
「山中さんに負担をかけないためじゃないのか? 中嶋。」
「山岳勝負したし、そういうことなのか?」
「なぁ。お前らに1つオレのわがまま聞いてもらっていいか?」
「なんですか?」
「オレが…最速で3日目のゴールを狙いにいってきていいか?」
「えっ…。マジで言ってますか?」
「はるか先にいる3人に追いつく気ですか!?いくら山中さんといえど無茶がありますよ!!」
「そんなのやってみなきゃわからないだろ。
それに…昨日純太に言われたんだ。勘太とオレがゴール争いに絡んでほしいとな。あいつもそれを望んでいると思う。」
「勘太さんと山中さんは仲が良いですからね…。」
「なら……。中嶋! やることは1つだろ!」
「そうだな!! 俺たちが平坦を引きますよ!クライマーだけど…平坦も走ってみせますよ!!! ついてきてくださいよ!! 」
「まて! お前らはあの勝負で脚がいってるんじゃないのか!? それにクライマーだろ!」
「そんなの関係ありませんよ! クライマーだろうがスプリンターだろうが…エースをゴールを届けるのがオレらの仕事ですから!!」
「そうですよ! 平坦区間でもハイケイデンスで回しますよ!僕の後ろについてください!」
「2人ともすまんな…。オレのわがままをきいてくれて。ゴールはお前らの想いをムダにしない走りをする! 」
「ハイケイデンススプリント第1弾だ! 」
「ギアを上げて平坦も走る! もらーー!」
北上と中嶋は脚に痛みを感じているのにペダルを回す。それは、2人が信頼してる先輩が1番でゴールをとってほしいという想いがあるから。 山中もこの2人の必死の引きに魅了される。
〔オレのために無茶させてすまん。オレは良い後輩を持ったな。あと…ありがとう。〕
北上と中嶋が2人で山中を引いていく。
佐々木達は新宿の街中を走っていた。信号が多いためゆっくり進んでいる。
「すごーい! ここが歌舞伎町ー!」
「佐々木君。もうすぐで四ツ谷ですから…そろそろ準備をお願いします。」
「はいー! 純ちゃん! 任せてよ!」
「多村。四ツ谷まで引いたらオレはどうすればいいか?」
「そうですね。そのままゴールに向けてダウンをしてください。 勘太さんの役目は終わるので。 」
「…わかった。」
〔オレの役目はここで終わりか…。〕
そして、勘太達は四ツ谷駅まで走り、勘太は佐々木にバトンタッチして、多村と佐々木の2人でゴールの大手町まで飛び出す。
「しかし…。疲れたな…。純太みたいに長距離を全力でペダルを回すのは苦手だからな…。かなり過酷なレースだったな。」
〔少し休むか…。〕
すると。後ろから以前感じたことがある気配を感じる。勘太は後ろを振り向いたが…車しか走っていない。
〔まさかな…。そんなことはありえないと思うがな。〕
しかし、その気配はどんどん近づいて来てる。ロードの車輪の音が密かに聞こえる。
また後ろを振り向くとそこにはボロボロになった北上と中嶋、後ろには山中が全力で走っていた。勘太は呆然する。
「あとは… お願いします…。山中さん。」
「勘太さんまで追いつきました…。あとはお願いします! 」
「勘太!! 今すぐオレを引いてくれ! 詳しい話は走りながら言う!」
「お前ら…。ウソだろ。ここまで来るなんて思ってもいなかった! しかも平坦で!」
中嶋と北上は山中の背中を押して、想いを託す。
「最高のポジションまで引きました! ゴールをとってきてください! 」
「あとはお願いします!! オレ達の想いを!そして、山中さんの想いも背負って走ってください! 」
「ああ!!! ありがとう! 中嶋! 北上!お前らは良い後輩だ!! 絶対! ゴールをとってくる!! だから! 楽しみにしてろ! 」
北上と中嶋は山中に想いを託し、脚に限界がきていたため、バランスを崩しガードレールの草むらに落車する。 2人が落車した音は山中の耳に入る。勘太は後ろを一瞬振り返り、前の佐々木と多村を追いかける。
「勘太! お前と交わした約束を果たす時が来たな!! 」
「ああ!! 中嶋と北上を称賛したいところだが…今それどころではない。だいぶ差が開いてる。しかし! まだ間に合う! 」
「そうだな! 勘太の脚は大丈夫か?」
「お前がこの場に来てくれたから絶好調だ。オレの引きを見せてやる。」
半蔵門から皇居を半周し、大手町のゴールを目指す。ここからは勘太が最後のスプリントをする。 それは、まるで闘将のごとく力強い豪快な引きをする。
その頃、佐々木と多村は日比谷あたりを走っていた。多村は佐々木に話しかける。
「あそこのフランクまで頼みます。」
「わかったよ! 」
多村は何かの虫の騒ぎなのか後ろを振り向く。首を横にふり前を向く。しかし、多村は気になりまた後ろを振り向く。
「純ちゃん! そろそろフランクに入るよ!準備してね! 」
「ああ。1つ気になることがあるんです。」
「何? 」
「ちなみに…山中さんが来ると思う?」
「えっ。北上君と中嶋君を連れて、僕たちより遅れてゴールするんじゃないの? 」
「だと。いいんですが…。」
すると、後ろからロードバイクの車輪の音が聞こえる。しかも凄い速い速度で後ろから迫る。
「大地! フランクまであと200mだ! そこからは頼む!! 」
「ああ! 追いつくぞ!! 」
一瞬にして佐々木と多村を抜き去る。勘太と山中は2人が近くにいたのに気づかずに通り過ぎる。 多村は焦る。
「佐々木君! 」
別人格の佐々木竜司が現れる。
「抜かれちゃったな!!! おい! この前のコピーやろう!! ついてこいよ! 」
「別人格の佐々木君!」
「フランクについてこれるか!!?」
フランク寸前に勘太は山中の腰に手を添えて山中に託す。
「大地!! 残りの数百メートル!! 全力でペダルを回せ!! 北上と中嶋が託した想いを無駄にするんじゃねーよ!! 絶対勝ってこい!! 」
「ああ!! 絶対勝ってくる!! 」
山中はフランクを突破し、大手町のゴールまで一心不乱に走りだす。しかし、勘太の隣に佐々木と多村が走り、フランクを突破していく。
「残念だな!!! スプリンターさんよ!」
「なぁ…。そんな!! 大地!! 」
勘太はブロックにいこうとするが、勘太は東京の平坦道を引っ張り、山中を全力で引いたから脚に限界を感じた。
〔気づかなかった…。どこら辺で抜いたかわからない。後ろにいたのか。これはやばいぞ。大地!! 〕
山中を捉えた佐々木。佐々木は山中をブロックする。
「さぁ。出ろよ! コピーやろう! 」
「佐々木君。キミ。抜かれてるよ!」
山中はオーラを全開に出し、ただひたすらゴールに向かう。佐々木がブロックをしても無意味である。 多村も全力の走りをする。
残り100m。大手町の交差点がインターハイ3日目がゴールである。 その先にバスで先に到着してた純太と熊野、マネージャー達が待っていた。 純太と熊野は叫ぶ。
「山中さん!! 勝ってください!! 」
「多村君!! もう少しですよ!! 」
〔北上…。中嶋…。お前らには感謝してもしきれないほど感謝してる。また、借りを作ってしまったな。だが… その借りは返す!!
勘太…。お前は前から言ってたな。オレのアシストでお前を優勝に貢献する走りをするって。実はオレもそれが楽しみでここまで来たんだ。お前らが引っ張ってもらえたおかげでここにいる。だから…託された想いを背負い走るんだ!〕
〔山中さん! あなたがこの場にいることが奇跡! 北上君と中嶋君、勘太さんがこの人を引っ張ってきたのか…。凄いですね…。やっぱりこのチームは何かが違う。〕
大手町の交差点を真っ先にゴールしたのは山中。山中は右手を挙げて叫ぶ。
「やったぞ!! 北上! 中嶋! 勘太! 」
多村と佐々木が到着し、山中に称賛する。
「山中さん…。あなたはこのゴールスプリントで素晴らしい走りをしてました。何より北上君と中嶋君、勘太さんを褒めたいと思います。 お疲れ様です。」
「なんでオレとお前がゴールスプリント対決したんだという顔だな。」
「……図星です。」
「北上と中嶋の必死の引きのおかげだからな…。あいつらの精神力はすごいぞ。」
「そうですか…。あとで称賛しましょう。」
「おい! コピーやろう! 負けてるんじゃねーよ! 」
「すみません。佐々木君。僕のアシストしてくれてありがとう。」
「まったく!! 次は負けんじゃねーぞ!」
〔山中っていうやつ…。オレがブロックしたが…一瞬でコース変更し、抜きやがった。あいつのバイクコントロールもそうだが… ゴール前のあの気迫はただモンじゃねー。こりゃ…。すげー奴になりそうだな…。〕
佐々木は普段の人格に戻り山中に話しかける。
「すごかったですー! 山中さん! 」
「すげー疲れたよ…。でも、最高の気分だ。佐々木もお疲れ様。」
「お疲れ様です!! 」
勘太が到着し、山中のところに駆け寄る。
「どうだった? 大地。」
「やったよ! 勘太!」
勘太と山中は拳を合わせて喜びあう。
「大地! インハイでもやろうな!」
「ああ! その時はよろしく!」
北上と中嶋は落車したあと、少し休んでから、近くの公園のベンチで寝そべっていた。
「山中さん…。多村に勝ったかな?」
「あの人なら勝つよ。北上。」
「そうだな! 俺たちはもう少し休もうか。」
「ああ…。そうだな…。」
山中のもとにマネージャーの坂田、みほがタオルを持っていき、話しかける。
「無茶しましたね。山中先輩。」
「そうだな。でも、楽しかったよ。この3日間。いろいろありがとうな。2人とも。」
「こちらこそありがとうございました! 3日間お疲れ様でした! 」
「純太。やったぞ。」
「兄さん! かっこよかったよ! 」
「あの約束は果たすから。」
「佐々木君。多村君。お疲れ様です。」
「熊野君。ありがとう。」
「熊野君…。ごめんね。」
「正直。僕はインハイメンバーに選ばれなくて悔しいです。それは、純太さんも同じだと思います。しかし、僕はあなた達がインハイでこのチームを優勝に導くことが出来ると思っています。だから、次は負けないでください!」
「熊野君…。わかりました。インハイで全国の強豪校達に勝ちにいきます。」
「熊野君。応援してくれてありがとう。」
こうして合宿3日間を終了した。あとで北上と中嶋を回収し、3日間の疲れを癒すのである。