もう一つのペダル   作:ユーチャロー

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第17話 宮崎浩輔!!

 

第17話 宮崎浩輔

 

東京合宿を終えて、沼津南高校自転車競技部はインターハイ予選まであと3日間調整を始める。初日は、予選メンバーに選ばれている山中と中嶋以外の6人は予選で走るコースを確認し、シュミレーションをしながら走る。

 

「熊野君! あと2km先までお願いします!! あと、佐々木君がチームを引っ張りゴールまで運んでください! 」

 

「わかりました! 多村君!」

「純ちゃん! 任せて! 」

 

多村の正確な指示により、チーム内が機能し多村の思い通りに走る。 その時、後ろで走っている菅原兄弟は感じていた。

 

〔あの時と違うな…。去年は悲惨な目にあったことを思い出す。〕

〔そうだね…。〕

 

「多村。練習が終わったら話したいことがある。大丈夫か?」

「わかりました。」

 

その後、予選のコースを走りきり、沼津南高校に戻り、多村の総括を始める。

 

「皆さん。今日はお疲れ様でした。タイムも良く、このままいけば予選も突破出来ると思います。しかし、ロードレースは天候や気温、道の状況、選手のコンディション、予期もせぬことが起きたり、わかりません。油断は禁物ですので気を引き締めて予選大会に挑みましょう。 マネージャーと山中さん、中嶋君。いつもサポートをしてくれてありがとうございます。予選大会もよろしくお願いします。 あと2日間は個々のコンディションを整えてください。大会前日は必ず休んでください。では、総括を終わります。」

 

総括を終えて、菅原兄弟は多村のところに駆けつける。

 

「勘太さん。なんですか?」

 

「予選大会前の皆んなで練習するのは今日が最後だから、忠告したいことがあってな。」

 

「なんですか?」

 

「宮崎浩輔は知っているか?」

 

「はい。名前は聞いたことはあります。彼は中学1年からレギュラーの座をとり、3年生で静岡県大会で優勝し、全国大会では個人成績で3位に入賞したというのは知ってます。彼が所属している箱根学園で1年生でありながら、主将のポジションについた。箱根学園前代未聞の1年生から箱根学園の主将を務めることになる。彼は我々にとって脅威的な相手になると思っております。」

 

「そうか……。やつは…なんで1年生で主将になれたか…。知ってるか?」

 

「それは、実力もそうですが…箱根学園という名門チームを引っ張ることができるカリスマ性があるからではないでしょうか?」

 

「では…。質問を変えよう。なんで、元箱根学園に所属してたオレらが自転車競技部もなかった高校に来たのか。」

 

「まさか。何か裏でもあるんですか?」

 

「そう。やつは…俺たちを追い払った。それは…自分の地位を守りたいというのと、やつが気に触れる人間は皆、やつの手によって追い出されてしまったからだ。」

 

「!!!?」

 

「何故、1年生で主将になれたのか。それは、先輩潰しを行っていたからだ。例えば、宮崎の前に務めていた主将は、宮崎の手により、主将のバイクを細工し練習中に大怪我をさせ、脚や腰、肩を骨折しインハイ予選まで治療が間に合わずに、その人はケガで引退。そして、やつは主将の座を勝ちとった。あいつの汚いやり方でな。」

 

「そんな……。でも… なんで…勘太さんがそこまで知ってるんですか?」

 

「俺たちはその光景を見てしまったからだ。そして、俺たちも全治3ヶ月のケガをした。もちろん、宮崎の手によって。口封じのためにな。最終的に俺たちは箱根学園を追放されるハメになる。」

 

「そんなことがあったのですか…。」

 

「これはまだ、序の口だ。ヤツの汚いやり方はな。他もあるが、多すぎるから話すと時間がかかる。」

 

「そうですか…。」

 

「最後に一つだけ。これだけは肝にめいじてほしい。レース中、俺たちの身に何が起きるかわからない。だから気をつけろ。」

 

「わかりました……。」

 

その時。山中が遠くから呼ぶ。

 

「おーーい!! 勘太と純太!! 早くしろよ!

腹ペコなんだよーー! 」

 

「すまない。大地。すぐ着替えてから行く!」

 

「話はそれだけだ。お疲れ様。」

「お疲れ様です…。」

 

菅原兄弟は部室の更衣室に走り出す。多村は1人で考えこむ。

 

〔たしかに…。過去に実績がある選手達がこの高校に集まっているのか。それは、勘太さんに自転車競技部に誘われた時から感じてた。ここら辺に住んでいて自転車競技をやっているなら、普通は箱根学園に行きたいと思う。なのに、何故、自転車競技部もなかった高校に行ったのか。ま。これは…全部あの人がやったことか…。〕

 

多村はポッケの中に入ってるスマホを取り出し、ある人物に電話をかける。

 

「もしもし。お久しぶりです。今、練習が終わりました。」

「ご苦労様。順調にやってるか? 」

 

 

「もちろんですよ。 宮崎さん。」

 

 

「ふっ。沼津南高校のデータを明日持ってきてほしい。予選大会は、絶対お前らを勝たせるからよ。本大会楽しみに待ってるぞ。」

 

「わかりました。では。失礼します。」

 

多村は電話をきり、更衣室に向かう。

 

 

翌日。 多村はある場所に呼ばれていた。そこは、箱根学園。 1人の男が多村にもとにやってくる。 宮崎浩輔である。

 

「来たか。多村。」

「これが…沼津南高校のデータです。」

「どれどれ…。見せてみろ。」

 

沼津南高校の選手達のデータが書かれている書類を見ながら、宮崎は笑みを浮かべる。

 

「ははは。こいつらもいるのか。こりゃー楽しみだな。」

「菅原兄弟ですか?」

 

「ああ。こいつらは元チームメイトだったやつだからよ。まさか…。こんなところにいるとはな…。偶然だな。ははは。」

 

「そうですか。」

「それと… この佐々木っていうやつ。前に見たことがあるな…。」

「佐々木君を?」

 

「思い出した!!2年前の大会で優勝争いしたやつだ! もちろん…オレが優勝したがな。ははは。面白いチームだな。ここは!」

 

「そうですか…。」

 

「他のやつも…見たことある顔ばかりだな…。これで交渉は成立だな。あの約束は守る。安心しろ。お前らのチームを予選大会で優勝させてやるよ。」

 

「はい。お願いします。」

「おれはそろそろ練習が始まるから…なんかあったらお前に連絡する。じゃあな!」

 

多村は自転車に乗り、箱根の山を登り沼津の街に帰る。

 

〔宮崎さん…。あなたにあげたデータに1人だけ入れていない。山中大地。あの人のデータは…未知数だから…僕も予測不可能。僕は…あなたを利用して予選を突破し、そして、僕達が1番になる。宮崎さん…。あなたは僕の手駒になってもらいますよ…。〕

 

 

インターハイ予選大会当日。

 

沼津南高校の初めて走るインターハイ予選大会。年一回の自転車競技にとってビックイベントであり、この大会で予選を突破し、全国大会で走るために他の選手達は必死に練習をしている。だから、会場の緊張感は凄いのである。この状況を一番楽しみにしていたのは中嶋である。

 

「すげーー! これがインターハイ予選大会の雰囲気!! ピリピリ感じるよ!」

「だらしないぞ! 中嶋!! お前は今日走らないよな!! 少し黙ってくんないか?」

「だって!! インハイが始まるんだぜ! そりゃ! 楽しみでたまんねーよ!」

「はいはい。わかったから。少し離れてろ。そういえば…山中さんを見かけないな…。」

 

多村が部員を集めて紙を持ちながら話す。

 

「いよいよ。インターハイ予選大会です。オーダーは個々にメールで送ってあるので…それを読んでください。そして、覚えておいてください。僕も指示するので。あと、一つだけ言いますが…。山中さんは予選大会に参加しないです。」

 

「!!!!!!」

 

多村の思いもよらない発言に周りは驚く。

 

「なんでだよ!! 補欠メンバーにいれてるんじゃねーのかよ! 」

「たしかに入れてはいます。しかし、合宿で言いましたよね。僕。」

 

「ジョーカーか。」

 

「そうです。彼は僕達の切り札なので…。」

 

勘太はこの言葉を聞いて、納得した表情で言う。

 

「そうだな。大地は予選大会に欠席させた判断は正しかったな。多村。」

「どういうことですか!!? 勘太さん!」

 

「見ろ。スタート地点に立ってる傍観者達を。あの中に1人だけ…俺たちが知ってるやつがいる。」

 

スタート地点に立っていたのは宮崎浩輔。傍観者として偵察に来ていたのである。 勘太は宮崎を見下すような目で見つめる。それに気づいた宮崎は笑いながら勘太を見つめる。

 

「あいつ!! ふざけやがって!」

「兄さん。やめて。」

「純太もあいつのこと!! 気にくわないだろ!! 」

「そうだけど…今は予選を通過することに集中しようよ。」

「たしかにな…。おれとしたことが…。我を忘れそうになったよ。」

 

佐々木は感情を抑えることが出来なく、別人格の佐々木が現れる。佐々木は今にでも宮崎に殴りにいくような勢いがあった。それを阻止しようとする熊野。

 

「あいつのせいで……。オレは……。オレは…。 クソ野郎が!!! 」

「やめてください!! 佐々木君!」

「はなせよ!! クソ雑魚が!! 」

 

佐々木は熊野の胸を殴り、熊野は倒れるが…熊野はすぐに立ち上がり、阻止しにいく。

 

「こんなところで…… 君の夢も…僕の夢も…。皆んなの夢も!!むだにしないでください!! 」

 

熊野は力強く佐々木を抑えた。 佐々木は普通の人格に戻り冷静になった。

 

「はっはっはっ…。ごめん。熊野君。殴っちゃってごめん。少し頭を冷やしてくるよ。」

 

「いいよ…。痛かったけど…。予選大会に集中しよ。」

 

多村は宮崎の方を見ながら考えていた。

 

〔あなたのことですから…。この大会に来るとは思っていましたよ。そういうことを想定して、山中さんを予選大会に一切関わらないようにしました。しかし…。僕達を絶対予選を勝たせるとはいいましたが…何故、そう言いきれるのか。気にはなりますが…勘太さんが言ってたことも頭に入れつつ、予選大会を走りましょう。〕

 

数分後。スタート直前の時間になり、選手達がスタートラインに集まる。沼津南高校は初出場校ということもあり、集団の1番後ろにいた。勘太は皆んなの拳を合わせる。

 

「ここからがスタートだ。俺たちのロードレース!!だから… 気合い入れていくぞ!」

「はい! 勘太さん!」

「いきましょう! 勘太さん!」

「兄さん! いこう!」

「僕も…気合い入れて頑張るよ!」

「………。」

 

スタートの合図でインターハイ予選大会が始まるのである。

 

 

 

 

 

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