第18話 予選大会開始!!
ついにインターハイ静岡県予選大会が始まる。メンバーは多村、熊野、菅原兄弟、佐々木、北上の6人で走る。しかし、このメンバーは予選大会限定であり、全国大会に出場するメンバーは菅原純太と熊野を抜いて、中嶋と山中が入ることになる。これは、多村の作戦である。
ホイッスルが鳴り、次々に他の選手達も走り出す。最初はパレードランでゆっくり走るが、3km過ぎたあたりからインターハイ予選大会の始まりである。多村が最初のオーダーを言う。
「パレードランが終わりましたら、勘太さんと純太さんはスインスプリントで先頭に追いついてください。僕たちは後で追いつきますから。チームを気にせず走ってください。」
「ああ。しかし、大丈夫か?」
「その辺は大丈夫です。先頭に追いつくことで他の選手達にプレッシャーを与えることが出来ますから。」
「おまえのオーダーを信じるぞ。」
〔さて、僕たちを勝たせると宮崎さんはおっしゃっていました。これは…僕のオーダーではなく、宮崎さんが考えたプラン。だから、きっと何か裏があるに違いない。油断するとやばいことになりそうな予感がします…。〕
パレードランを終えてから、他のスプリンター達はスピードを上げて最初のスプリントラインをとりにいく。それは、グリーンゼッケンをとることによって、チームのアドバンテージになり、他の選手より優位なポジションにつくことが出来るからである。ここで、起用するのは菅原兄弟である。 そして、ついに菅原兄弟のスインスプリントの体制に入る。
「必ず…グリーンゼッケンをとってくるから待っていろ。」
「兄さん…。これが僕達の最初の仕事だ!」
「お願いします。勘太さん。純太さん。」
「ああ!!」
菅原兄弟は最後尾から先頭にいるスプリンターの選手を追いかける。 チームに残った4人は最後尾で集団にくっついていく。
「多村君。なんで、2人のスプリンターを送ったのです?」
「それは、彼らが1番速くスプリントラインをとってくると確信してるからです。それに、ここに残っているのは北上君を除くオールラウンダーの選手が3人がいる。あと、僕達は最後尾で走っているため無駄な体力を使うことなく走れる。今は我慢ドキです。彼らがとってきてからが本当の勝負だと思っていますから。」
「そうですか…。それが、君の考えるオーダーなんですね。」
〔全てを計算しての…このオーダーといい、予選限定のメンバーであるのですか…。多村君はロードを知り尽くしている。彼がいると心強いですね…。〕
菅原兄弟のツインスプリントは周りのスプリンター達に衝撃を与えていた。シンクロしているかのような走る姿といい、息の合った連携でスムーズに走れているからである。
「こいつら! クソはえー!」
「なんだよ! あの連携プレーは!」
「あんなんでよく車輪がぶつからないよな…。あれはかなり難易度が高い技だ…。」
「これであと先頭にいるスプリンターだけですね。兄さん。」
「ああ。そこまで頼むぞ。」
そして、ついに先頭にいるスプリンターを捉えた。先頭で走ってる選手は驚きを隠せなかった。一瞬で抜き去り、勘太がスプリントラインに向けて、全力で走る。
「一瞬で抜かれた…。くそ!! 追いついてやる!! 」
しかし、純太はブロックをする。
「無駄ですよ。」
「邪魔だ!! どけよ!!」
「あなたを一瞬だけでも押さえ込めば、僕達の勝ちですから。」
「クソ…。最後尾にいたヤツらが何故ここにいるんだよ!!」
「それは…。あなた達が実力不足だからでありますからね。あと…あなたの走りも後ろから見ていましたが、立派でしたよ。」
「おまえ…。どこかで見たことがあるな。」
「菅原純太と申します。以後御身を知りを。それと…。あれは僕の兄さんなんで。」
「………。おまえ! もしかして!!」
「では…。僕はチームに戻りますね。」
そして、勘太はドン凸で誰よりも速くスプリントラインを割ることができた。勘太は指を上げて大声で叫ぶ。
「やったぞ! 純太! 久々のツインスプリント! 大地に報告したかったな。これでチームのために貢献したぞ! 多村!」
アナウンスが流れて周りで見てた傍観者達は声をあげて叫ぶ。
「只今、グリーンゼッケンをとった選手はエントリーナンバー204番。沼津南高校2年生の菅原勘太選手です!」
「熱海高の杉本、清水商業の瀬、浜松高の喜多見という強力なスプリンターを抜いて一位かよ! 無名な高校に!」
「聞いた話によると…今年から部が結成されたばかりの高校なんだってよ! 」
「そうなのかよ! すげーな! 」
隣にいた傍観者の1人がパンフレットを見ながら話している。
「こいつって… 去年名門の箱学にいたヤツじゃないか。なぜ。こんな無名な高校にいるんだ? 」
その情報は集団で走っていた多村達に伝わり、沼津南高校は集団の中で首位に立つ。
そして、多村はすぐにオーダーを出す。
「ここで皆さんとはお別れですね…。では…。山岳区間は北上君に引いてもらい、そのままゴールに行きましょう。」
後ろにいた他の選手達は多村の言葉にキレる。
「こいつ!! 余裕ぶって!! グリーンゼッケンとったからて。調子こくんじゃねーよ!」
「俺達。清水商業の力を見せてやるよ!」
多村はため息をついて首を振る。
「僕達とあなた達では実力の差がありますから。正直、あなた達のこと視野に入れてないので。だから。優勝するのは僕達です。あとは、頑張ってゴールしてください。」
「そうゆう態度がうぜーんだよ!」
「なら。証明しますよ。力で。」
多村はオーダーを出し、佐々木を先頭で引いてもらい集団を置いていく。 他の選手も沼津南高校の4人を追いつこうとするが、追いつけない。
「こいつら!! バケモンかよ! 」
「なんでこんな速いヤツらが…今年からいるんだよ……。」
「俺たち……。ここで終わりだ…。予選3連覇出来ないのかよ!!! クソー!」
「先輩…。まだ…諦めるのは早いですよ!」
「そうだな…。まだ決まったわけじゃねー!! 勝負はまだわからないよな!」
その時、目の前に一本のペットボトルが転がっており、それに気付かずペットボトルを踏んでしまい、落車をしてしまう。先頭にいた選手が落車をしたため、後続の選手達もつられて落車をする。ドミノ倒しのように次々と二次被害にあう選手が多くなる。 一部の選手は落車をせずに進んでいた。
先に走っていた沼津南高校は集団落車が起きていることを知るのは、山岳区間に突入した時である。
「え。集団落車!! そんなことがあるのかよ!! 」
「集団落車なんて…ロードレースでは日常茶飯事ですが…。」
「純ちゃん! これでだいぶ有利になったね!このまま行けば予選突破できるよ!」
「そうですね…。」
〔まさかとは思いますが……宮崎さん。あなたが仕込んだのですか。それに…他の選手達のデータを隅々見ましたが…途中から調子が悪くなってるように見えました。これも…宮崎さんが仕込んだシナリオなのか。〕
沼津南高校は山岳区間を北上がチームが引っ張りダウンヒルになり、最後のゴールスプリントの場面に突入する。 多村は最後のオーダーを言い、佐々木と多村の2人でゴールをし、沼津南高校が優勝する。
「今年のインターハイ予選大会優勝校は…沼津南高校です!! 初出場でありながら…静岡県内の強豪校達を圧倒的な差で優勝をとりました! まさに…ダークホースです!!」
周りに見てた観客達も驚いていた。
「すげーな!! 初出場の高校が優勝するなんて! すげーよ!」
「圧倒的な差で勝つなんて! ありえないでしょ!! 」
「しかも1位から6位までの選手。みんな沼津南の選手だし!! 独占状態だったな!」
沼津南高校の予選メンバー達は、休憩所で多村の総括が始まる。
「皆さん。大変良くやりました!! これで本大会の出場権をとりました! 皆さんのおかげでここまで来れました…。感謝します。あと… 熊野君と純太さんは今回でインハイは終わりますが…予選大会優勝させるために走ってくれてありがとうございます。」
「今更。何を言ってるのです。多村君。僕達の分まで頑張ってきてほしいのです。」
「また来年もあるし、それまで成長するよ!そして、来年こそは兄さんと一緒に走るから!! 頑張ってきてね!!」
「お2人ともありがとうございます…。熊野君や純太さんの想いも背負って走ります。それと…2人の代わりに走る山中さんと中嶋君。あの2人にバトンタッチですね。」
「このメンバーが良かったなー。多村ー。」
「北上君。それは叶わないですよ。本大会は山岳区間が沢山あります。この間走ってきてわかりますよね。」
「たしかにそうだな…。」
「全国大会まであと2週間あります。全国の強豪校達を蹴散らして優勝をもぎ取るために個々の力が大事になります。なので、この2週間は個人練習を中心にやっていきたいなと思います! 今日は皆さん良く頑張って走ってくれたので…総括はここまでにして、ゆっくり休んでください。表彰式には遅れないようにしてくださいね。」
多村の総括を終えて他の選手達はそれぞれ違う場所で待機する。
多村はある人物のところに駆けつける。
「あなたのオーダー通りにやりました。」
「ご苦労様。2週間後のインターハイもよろしくお願いしますよ。多村。」
「一ついいですか?」
「あの集団落車についてあなたはどう思いますか?」
「あれは…。誰かがペットボトルを落として落車したんじゃないのか?」
「そうですか…。今まであんなことはなかったんですけどね…。」
「そんなことを気にしてるのか。運が悪かっただけだろ。ロードレースならありえる話ではないか。」
「たしかにそうですね…。」
「ま。おまえらと本大会で戦う時を楽しみにしてるよ。」
「そうですね。では。失礼します。宮崎さん。」
宮崎は多村と話を終えて会場を後にしようとしてたら…。
「おい。」
「??」
「久しぶりだな。宮崎。」
「これはこれは…。菅原勘太さんじゃないですか! 今日の優勝おめでとうございます。」
「その顔。見るだけでうざい。何故。ここにいる?」
「何故って。偵察に決まってるじゃないか。元箱根学園のスプリンターさんよ!」
「てめぇ!!」
勘太は宮崎の胸ぐらをつかみ殴りかかろうとしてたら純太が来た。
「兄さん!やめて!」
「純太! 」
「あらあら。弟君も久々に見たな。しかし、君達同じ顔してるね。あ。双子か。」
「いい加減にしろよ!! 」
「こんなところでケンカしたらインターハイ行けなくなるよ!」
「くっ…。そうだな…。」
多村は宮崎の胸ぐらをはなす。
「痛いじゃないすか。やめてくださいよ!」
「お前みたいなヤツに言われたくない。汚い手を使って勝利しようというヤツにな。」
「はて。なんのことでしょうか?」
「一つだけ。あなた達に教えましょう。あなた達のチーム内に一人スパイがいますよ。それに…君達の情報は全て知っていますからね。オレはその情報が本物か否かを判断しに偵察に来たんだ。精々頑張るんだな! 沼津南高校!勝つのはハコガクだからな! 」
宮崎はその言葉を残して会場を後にした。勘太は追いかけようとしたが、アナウンスで表彰式が始まるということで諦めた。
表彰式を終えて、勘太は部員だけを集めて話を始める。
「ここにいる4人に話したいことがある。それは…この中にハコガクにオレ達の情報を教えているヤツはいるか? 」
「勘太さん。それはどーゆうことですか?」
「偵察でハコガクの生徒がいたからな。気になったから聞いてみた。」
「僕は教えてないよー。」
「ハコガクに知り合いがいないから教えてないです。」
「教えるわけないじゃないすか!」
「………。」
「多村? 黙っているが?」
「教えていません。敵にデータを送るのは言語道断なので。」
「そうか。オレの思い過しか。今の話は気にしなくて良いぞ。それより… あと2週間後のインターハイに向けて練習だな。」
「そうですね! 」
〔勘太さんと宮崎さんがあってしまいましたか…。これは…ヤバイですね。このタイミングで僕が教えていることを知れ渡るとチームの士気を下げることになる。すみません…。勘太さん…。〕
沼津南高校は全国大会出場をつかみ、あと2週間後に備える。
その頃。山中と中嶋は学校の裏山で登りの練習を行っていた。