もう一つのペダル   作:ユーチャロー

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第19話 山中大地vs杉山光輝

 

第19話 山中大地vs杉山光輝

 

インターハイ全国大会1週間前の休日。この日は部活とバイトがオフで、午前中に彼女のミホを自宅を招いて過ごしており、午後から久々にサイクリングに行こうとしてた。沼津南高校のジャージを着て出掛けようとした時に、電話が鳴ってとったら中学時代の杉山光輝という彼の親友からだった。

 

「よう。久々だな!大地!!」

「久々だな。光輝! お前が電話してくるなんて珍しいな! 」

「久々に会いたいと思ってさ。」

「そうか。これからサイクリングに行こうとしてるんだ。お前も一緒に行くか?」

「サイクリング? いいよ。自転車はスポーツ自転車みたいなヤツなん?」

「そうだね! ロードバイクだけど。」

「ロードバイクなんだ! 実は…オレもロードバイク持ってるんだ! 」

「そうなの! なら行こうよ!!」

「行こう!行こう! 」

「お前の家てたしか沼津駅の方だよな?」

「中学の時と変わんないよ!」

「そうか! なら。沼津駅に行くわ。」

「わかった。またあとで。」

 

彼はそう言って電話を切った。山中はすぐに沼津駅の方に向かうのである。

 

 

数分後。沼津駅。

 

駅の前に杉山光輝が待っていたため、山中は駆けつけた。

 

「よ! 大地! 」

「光輝! 卒業式以来だよな!お前は名古屋のの高校に進学したんじゃないの?」

 

「そうだよ。昨日と今日と明日の二泊三日で実家に帰ってるんだ。今は親の仕送りで一人暮らししてるからさ。」

 

「そうか…。中学の時と変わんないな。」

 

「そうかな? 大地こそ変わんないね。でも…少したくましくなった気がするけど…なんか運動部でもやってるの?」

 

「ああ…。今年の四月から自転車競技部ていう部活に入ったんだ。1週間後に全国大会に出場するんだよ。その大会にオレも出場するんだ!」

 

「へぇー。そうなんだ。だから、ジャージ姿なんだね。」

「ははは。」

「実はさ…。その全国大会に出るんだな…。愛知県代表として。」

「えっ? 」

 

「オレが名古屋の高校に進学した理由は…自転車競技部の強豪校だったからね。だから、インターハイに出たいと思って、必死に練習して努力したら、2年生でありながら、部員が60人いて、その6人の中の1人に選ばれたんだ。全国大会ではライバルだね!!」

 

「すごいな…。光輝…。」

 

「そろそろサイクリングでも始めようか。」

「ああ。そうだな。」

 

山中と杉山はロードバイクで箱根方面に走っていく。 ゆっくり走りながら、山中は杉山に数々な質問を問いかける。

 

「なぁ。光輝。お前はいつからロードレースを始めたんだ?」

 

「中学生の頃かな。あの頃言ってなかったっけ? 週3ぐらい趣味でサイクリングに行ってるって?だから、部活とかなんもしてなかったんだよね。」

 

「そんな事言ってたな。」

 

「あれは、僕が当時所属してた草チームに入っていて、数々のロードレースの大会とか出場してたよ。」

 

「そうか。オレはまだ4カ月ぐらいだな…。」

 

「でも! 凄いじゃん!! 4カ月でインハイメンバーに選ばれるなんて!」

 

「でも部員は8人しかいないんだぜ。その中の1人に選ばれただけだよ…。周りは経験者ばかりで全国大会規模で入賞してるやつもいるんだ。」

 

「そんな凄いヤツらに囲まれながらに4カ月しか始めてない大地が選ばれた方が凄いと思うけどな! 」

 

「そんなに褒めないでくれよ。インターハイよろしくな。」

「ああ!! そろそろ箱根の山だね…。」

「もう…箱根か…。」

 

「ねぇ? 力試しでさ…箱根の山頂まで競争しないか? 」

「えっ? 光輝。箱根の山頂の標高は872mで結構激坂な山道だぞ? 大丈夫かよ?」

 

「オレがクライマーじゃなければそんな事は言わないよ。クライマーだからこそやりたいんだ! 箱根の山頂を誰よりも速く登りたいんだよ! 」

 

〔前も中嶋と北上も言ってたな…。箱根の山頂を登りきる事はクライマーにとって名誉だと…。それに…インハイの一日目もこの山を登るしな…。ちょうどいいだろ。光輝のクライムセンスも見てみたいもんだし…強豪校出身の実力を知る良い機会かもな。〕

 

「わかった。その勝負。受けてたとう。オレもクライマーだからな。」

「そうか!! ならちょうどいい!」

 

芦ノ湖を過ぎたあたりで勝負をすることになった。インハイ一日目の山岳リザルトである箱根山の山頂を目指して2人は競争することになる。そして、芦ノ湖のちょっとした平坦区間を通ってから戦いの幕が開く。

 

「行くよ!! 大地!! 」

「ああ!! いこうか。光輝!」

 

2人は互いに健闘のハイタッチをした。 最初は2人とも様子見をしてた。どちらか先に仕掛けるか疑うように。

 

「オレと同じ速度で登ってるのか!? 初心者と思えないクライムセンスだよ! 」

「光輝こそ…。オレだからて…。力抜いてる訳じゃないよな!! 」

 

「そんなことはしないよ。本気だったらもっと速く登れるし…。大地はそれについていけないと思うよ。」

 

「なら…。その本気を出してくれよ! オレも本気になるからよ! 」

 

「大地…。敵に塩を送るようなことはしない方がいいよ…。オレが本気になったことを後悔させてやるよ!! 」

 

杉山はギアを2段ぐらい上げて加速した。山中もギアを上げて杉山と並ぶように走る。しかし、それに気づいた杉山はさらにギアを上げる。山中も合わせるように再び並ぶ。

 

「大地。なかなかやるではないか。まるで…オレを離さないようにひっついているな。だが…オレはまだまだこんなのは序の口。こんな基本的なことをしてるようじゃ…全国の舞台に立てない。それを応用して自分の武器を作らないと立てないのさ!! 」

 

その瞬間。杉山はギアをマックスに上げると同時にダンシングをし始めた。 山中は杉山の背中に羽が生えてるかのように見えた。力強くスムーズに進んでいて、鳥が飛んでるかのように感じた。危機感を感じた山中はケイデンスを上げて杉山と距離を縮める。

 

「なんだ…。この速さは…。何より…。あのクライム…。なんだろうな。よくわからないけど… かなわない相手と戦っている気分だ。」

 

しかし、杉山は手を抜くこともなく、更に加速する。山中との差は50mぐらいの差で開いていた。 山中の中に眠る闘争心が膨れ上がる。

 

〔光輝…。正直お前はすげー奴だな…。さすが強豪校出身の実力はある。しかし…オレはどんな状況であれ…負けたくねーんだ!! お前を抜いて勝ちにいく!! 〕

 

山中は精神統一をして、杉山の差を更に縮める。 杉山は山中のプレッシャーに驚きを隠せなかった。

 

〔なんだろ…。このプレッシャーは…。走りは基本というか凡人ぽい走りに見えるが…しかし、この感じ! 大地がでかく見える!!眠りから覚めた野獣のように!! 〕

 

それは一瞬の出来事で杉山と並んでいた。杉山は背すじに鳥肌がたち、目の色を変え、更に加速。しかし、アタックをしようとしても山中の差は開かない。

 

「大地…。よくついてきてるな…。お前のその力はどこから湧いてくるんだよ!!」

「………。」

 

無言でただひたすらに箱根さんの山頂という場所を目指して一心不乱に登る。その時。杉山は初めて感じたのである。自分より脅威な敵であると。杉山も真骨頂に達する。

標高は872m地点まで残り200m地点まで登っていたのであった。お互いに最後の力を振り絞る山頂を目指す!

 

「大地! 残りの数百メートル! 全力で行くぞ!! 一瞬たりとも気を抜くなよ!!」

 

「ああ!! そのつもりだ!!」

 

両者とも己の力を最大限に引き出し登る。

 

〔しかし…。大地…。こいつは…本当に4カ月前からロードを始めたとは思えない…。いくら初心者でもこの箱根の激坂を登れてる自体凄いことなんだ…。〕

 

〔なんだ?この感覚…。多村と競争した時みたいな高揚感。なんだろ? 身体の中からメラメラ燃える感覚。不思議なことに脚も痛くないし…心臓もバクバクしていない。体重がないようか感じだ。〕

 

残り20m。山頂まですぐそこ。

 

「大地!!!!!」

 

「光輝!!! オレは絶対勝つ!!!」

 

そして、決着がついた。

 

「はっはっはっはっ……。きつ…。」

「脚が重い……。」

 

「お前の勝ちだ……。大地……。」

「勝っちゃったのか…。オレが負けたように思ったけど…。」

「いや…。お前の勝ちだ…。車輪一個ぶんの僅差だ…。完敗だよ…。」

 

「そうか…。箱根山を登ったのは2回目だったけど……今回は…全力で回したから疲れたよ……。」

 

「前もこの箱根山の872m登ったことあるのかよ…。だから…初心者でも登れたのかよ。」

 

「そうだな…。それより… 引き返そうか…。流石にこんなに一生懸命漕いだサイクリングは初めてだからな…。疲れた。」

 

「このまま下ると小田原に行ってしまうから引き返すか…。」

 

山中と杉山の勝負は山中が勝利した。

 

 

夕方。沼津駅。

 

2人はそのまま沼津まで帰り近くのベンチに座りながら会話する。

 

「今日は楽しかったな…。久々にこんな勝負をしたから良かったよ…。」

「全くだよ…。お前が競争しようとか言うから余計に疲れたわ。」

「ははは。でも…良かったじゃないか!」

「悪くはなかったな。」

 

「一つ聞いていいか?」

「なんだ?」

 

「なんであの激坂を楽々と登れるんだ?一般人はヒルクライムの大会とか出てても…あの激坂を速く登れることは出来ないのだ。ある程度経験を積んでる人でなければ箱根なんて登ることが出来ない。4カ月しか始めてないのにあそこまで登れるのは凄いんだぞ。才能なのか努力して身についたのか…疑問に感じてたんだ。」

 

「オレは…大会に1回も出場したことがないんだ。実は1年間あの箱根山の激坂みたいな山が近所にあってな。学校の登下校時はママチャリで通ってたんだ。多分…それかもな。」

 

「ママチャリでか!! あの激坂をか?」

 

「ああ。最初はきつかったけど…だんだん慣れてきて、このロードバイクを買う寸前ぐらいになるとスイスイ登れるようになった。ロードにしたらめっちゃ楽に感じたよ。」

 

「なるほどな…。そうゆうことか…。」

 

〔ママチャリでこの激坂のような道を登っていたと思うと…ぞっとするよ。自然に鍛えられたということだな。〕

 

「光輝。久々に会えて嬉しかった。まさかお前も自転車競技部に入ってるなんて…思わなかったよ。また…1週間後。インハイでまたあおうな。」

 

「おう! 最後に…お前はどこの高校だっけ?」

「沼津南高校だよ。また来週な! 」

 

山中はそれだけ言って帰ってしまった。

 

「ちょっ…。大地。沼津南高校? たしか…今年初出場の高校というのは聞いてたな…。どちらにせよ来週が楽しみだな!! 」

 

杉山も実家に戻ろうとした時に、1人の青年が話しかけた。

 

「そのジャージは…。名古屋校の自転車競技部の方ですか?」

「あー。そうだけど…。君は……。」

 

次回話に続く。

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