もう一つのペダル
第2話 二重人格vs狂人!!
あの山中大地と中嶋悠斗の裏山クライム勝負から2日後。山中は放課後のバイトが休みであり、中嶋と合流し自転車競技部を作る話し合いを始める。自動販売機でジュースを買い、学校の中庭のベンチに座る。
「どうしましょう?」
「どうしましょうって… お前… 自転車仲間とかいないの? 同級生で…。」
「うーん。今の所山中さんしか見てないですね…。」
「そうなんだ…。ロード乗ってるヤツいたら話しかけるんだろ? なら… 話は終わりだ…。」
「どうしてですか!!? 」
「だって… お前が話しかければ集まるでしょ。お前が部員集める係でよろ。」
「山中さんも一緒にやりましょうよ! 」
「そういうのは後輩の仕事だ。」
「そういうの関係ないですよーー!」
「俺さ…。時間ないからあとはよろ。」
「ちょっ…。 山中さん!」
山中は急足で校門の方に走る。置いていかれた中嶋は1人で考える。
〔インターハイに出るには6人必要で… 現状僕と山中さんのクライマーが2人…。平坦が得意なスプリンターとかルーラータイプ。
平坦も山も走りゴール前に勝負できるオールラウンダーがいないといけない。 だが…ロードレースは選手もそうだが…選手を支える裏方が必要…。そうなると10人ぐらいは最低必要になる…。この学校にいるのかな…。〕
「頭で考えても仕方ないか!! やっぱり! 走るしか答えは見つからないな!!」
中嶋は気晴らしに裏山を走りにいく。
山の中腹あたりで後ろから車輪の音が聞こえる。中嶋は後ろを見てしまった。
同じ制服で身長がデカくイケメンの男がスイスイと登ってきてるのである。中嶋はすぐその男に駆けつけて話しかける。
「あのー 沼津南高校の人ですよね!!」
「ああ〜 そうだけどー 君も?」
「はい!!」
「急に話しかけるからビビったよー うん? 君のロード… 黄色のBMCだねー 」
「はい!! 僕の尊敬する人が乗ってるロードバイクなんで!! お揃いで!! 」
「ヘェ〜 いいね〜 そういうの。僕は家に帰るからじゃあ〜ね。」
「ちょっと待ってください!!」
「うん? なにー?」
「あの!! 僕達自転車競技部を作りたいんです!! 是非良ければ入りませんか!!?」
一瞬沈黙した。
「自転車競技部ね〜。いいよー。」
「本当ですか!!!」
「あっ…。しかし…。競争しない?」
「競争ですか!! 喜んで!!」
「良かった〜。 君はクライマーかな?」
「そうです!! よくわかりましたね!」
「バイクを見ればわかるよ〜。」
「知ってるんですか? あの人!!!」
「もちろん〜 だって有名だもんねー。」
「なら話が早いですね!! この山道で勝負しませんか? 」
「いいよー。いつの間に山頂に着いちゃったからまた下って勝負しますかー。」
話りながら登っていたらいつの間に山頂に着いてた。
2人で話しながら下り学校の裏門があるスタート地点に立つ。
「さて!! 行きますよ!! ゴールはもちろんさっきの山頂までですよ! 良いですか!?」
「良いよー。 では行きますかー。」
2人は同時にスタートして中嶋は山中戦の時と同じように相手の様子を伺いギアを少しずつ上げていく作戦でいく。
だが、中嶋は自転車のことになると頭の回転が早くなり相手の特徴やスタイルなどを考える。
〔身長がだいたい190cmぐらいで手脚が長い!! リーチがある分一回転だけで結構進む。あと、風の抵抗がかなりあるはず! 彼はどちらかいうとクライマータイプに近い。さっきの発言を聞いて経験者だと思う。油断大敵な人だ!! 〕
「君は〜 そんなもんかい?」
「えっ?」
「君さ〜 なんで〜 ギアを上げないの?」
「ギア? ギア上げたら登りづらいじゃないですか!!? 」
「一つ言い忘れてたけどさー 君…。 『ギア上げの狂人クライマー』って去年の中学生静岡県自転車競技大会で呼ばれてたの知ってる??」
「なんで知ってるんですか?あなたは!」
「たしか名前は中嶋悠斗。あってるよね?」
「ははは!! あってますよ!! 大正解ですね!! あんまそう呼ばれるの気分が良くないのでギアを上げて勝ちに行きますよ!!」
「おらーーーーー!!!! そんなもんすか!? 本気でやりましょうよ!!! 」
中嶋はギアを上げて彼と差をあけていく。
〔まさか…。あの人…。去年の大会に出場した選手なのか?〕
「やっぱり〜 彼は中嶋悠斗…。去年の大会の山岳リザルトを取りレッドゼッケンをつけた男やね〜。今も健在で良かったよー。だが…俺の存在…わかってなかったな!!!」
彼は一瞬で人格が変わる。
「あのマネ粒!!! そこをどけーー!!」
彼はその長い手脚が武器にケイデンスを上げ中嶋をとらえる。中嶋はブロックするが、リーチが長いためブロックしても無意味であった。
「えっ…! ブロックしても避けられる!!これは… リーチの差か!!」
「おいっ。マネ粒!! テメェーじゃ…。このオレを抜くことは無理だな!!」
「待てよ! 今まで気づかなかったが… その顔でその口調!まさかお前は!!」
「ああ!! 去年の中学生大会2位の佐々木竜司だ!」
「二重人格の竜司!!!」
「オレもな… その名前で呼ばれるのは嫌いなんだよ!!! だからよー 勝ちに行くんだよ!!!」
佐々木はその圧倒的な力で中嶋と差を開き中嶋もギアを最大にして佐々木にしがみつくが、長い手脚とケイデンスのせいか差が開く。
「もらーーー!! クソーーー !回しても回しても抜くことができない!!」
中嶋は必死にペダルを回したが佐々木の実力に構わなかった。
当然 先に山頂に着いたのは佐々木竜司。
中嶋は5秒遅れて山頂に着いた。
「おい!!! ギア上げの狂人クライマー!
おめーは去年の大会で山岳リザルトとった癖に俺に負けてるのかよ!! ださ!!」
「お前に言われたくないな…。お前はあいつの存在があって去年優勝出来なかったくせに!!」
「なんだと!! このマメ粒!! 」
佐々木は中嶋の胸ぐらを掴み、中嶋は小柄で体重が軽いため身体が宙を浮く。 佐々木は中嶋の顔に殴りそうになった。
その時!!
1人の女性が悲鳴をあげる!
「ケンカはだめーー!!!」
「どうした!! みほ!! こんな山道でケンカかよ!!」
そこに現れたのは山中大地と彼女のみほだ。
「おい!! やめろ!!」
「ちぇっ… 邪魔が入ったか! 」
佐々木は中嶋の胸ぐらから手を離し中嶋を落とした。 中嶋は苦しそうに咳ごむ。
「おい! こいつはオレの後輩だ!」
「そうなんですかー。なんかこの人が〜 悪口言ってきたから〜 つい手が出ちゃいました〜。」
「だからって! そこまでやる必要ないだろ!」
「山中さ……ん…。」
「大丈夫か? でもな…。お前も悪いからな。どんな悪口言ったか知らんが…。」
「すみません…。」
「じゃあ〜〜 僕は帰りますね〜。」
佐々木はこの場から去るようにロードに乗り山を下っていった。
「まてよ!! お前!! クソっ。」
山中はカバンから水を取り出し中嶋に飲ませた。
「山中さん…。 ありがとうございます…。」
「まず事情を説明しろ。」
中嶋は今までのことを説明した。
「なるほどな…。二重人格か…。珍しいな。」
「二重人格なんて珍しいよねー。」
「そうなんです!! 普段は優しくて穏やかな感じなんですが…レースになると凶暴化して阿修羅のように怖い人になるんです! だから… 佐々木竜司君は少し危険な人物なんです! ロードレースでは…。」
「そうか…。気をつけろよ。そんなヤツたまにいるからな。」
「はいっ…。 あと一ついいですか?」
「なんだ?」
「彼女さんめっちゃ可愛いですね ww」
「可愛いに決まっとる! 失礼なこと言うな!バカヤロウ!! 」
彼女のみほは照れて山中の頰を叩く。
「ぐはっ。」
「ははは!! 山中さんモテモテですな! 」
翌日。 授業開始前。
中嶋は一年生の教室がある廊下を歩いていると向こうから佐々木が歩いてきた。身長がデカいせいなのか周りからの視線があり存在感がある。
「おい! 佐々木竜司! お前に話があるから昼休みになったら中庭に来いよ!」
「あっ…。 中嶋君だね〜。話ってなに〜?」
「それをあとで言うんだよ!」
「よくわからないけど…わかった〜。」
昼休み。 中庭。
中嶋は中庭にあるベンチに座り家から持ってきた弁当を食べながら佐々木を待った。
中嶋が弁当を食べ終えたころに佐々木が来た。
「おい。遅くないか?」
「ごめんね〜。女子が一緒に弁当食べようて言ってくるから断わりづらくて…。」
「………。 まぁ。いいや。 早速だが…。」
「えっ? なに〜?」
「佐々木竜司! お前は自転車競技部に入ってくれ!! お前みたいなゴール前でゴールをとれる選手が欲しかったし!! 昨日の件に関してはオレが悪かった!! 負けたのが悔しくてつい口に出てしまった!! すまん!!」
中嶋は頭を下げた。 佐々木は笑顔で中嶋の頭を撫でた。
「えっ…。」
「ゆう君はわるくないよ。悪かったのは僕のもう1人の人格。僕もわかってるんだ〜。人格は変わっても昨日の出来事は記憶に残ってるから〜。あと… 逃げちゃってごめんね。」
「本当だよ!! 」
「僕もさ… ロード走るときはみんなで仲良く走りたいんだ…。でも… あいつが来てみんなを困らせてしまう…。少し走るのが怖いんだ…。」
「なら! 一緒に解決しないか? 佐々木竜司のもう1人の人格がいなくなるように!!」
「そうだね。1人では解決できそうにないし… 自転車競技部に入るよ。」
「おう!! 一緒に頑張ろうな!!」
佐々木と中嶋は共にライバルでもあるがそれと同時に少し友情が芽生えた。
その頃…。 山中は…。
「やめろって… みほ…。」
「大地〜 アーン」
みほの手作り弁当を彼に食べさしてもらっていた。リアルを満喫している山中大地であった。