もう一つのペダル   作:ユーチャロー

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第24話 2人の山岳賞!

第24話 2人の山岳賞!

 

箱学の宮崎と桐谷。総北の門倉と真中。沼津南の中嶋と菅原勘太の6人でゴール争いの前の箱根の山岳区間で駆け引きを続けていた。一方…集団を率いる沼津南と京伏。この2校は後ろにいる他校の選手達を先に行かせまいと集団をコントロールする。しかし、沼津南の山中と名古屋高の杉山は箱根の山頂である山岳リザルトの勝負を挑みに行く。

 

「光輝! 大丈夫か! 」

 

「ああ! オレは正直! コンディションが抜群の1日目でお前と勝負したいんだ! だから…絶好調だよ! 」

 

「なら良かった!! しかし…前に走ってる6人に追いつけるか?」

 

「ロードやってる人間なら誰しも3分もある差を山岳区間で縮めることは不可能と判断するだろう! しかし! 今の俺たちはそんなことを気にせずに登ってるだろ! 」

 

「たしかにそうだな! オレは純粋に山岳賞を狙いに今は全力で登っている。そして、後ろで走ってる仲間の期待を裏切りたくないんだ。わずかな希望を信じてオレを送りだした。ならば…オレは全力でペダルを回して山岳賞をとる! それは…お前も同じだろ!」

 

「オレも先輩達に期待されてるから負ける訳にはいかないんだよね! 2年はオレしか出場してないんだ! 全国の舞台に行けなかった後輩や先輩達が沢山いる。オレはインハイメンバーの6人に選ばれた1人だ! ならば…仲間達がオレに託された想いは無駄にしたくない。だからこそ!お前に勝ちたいだ!」

 

「お互い背負っているもんは一緒だな! さっきもお前が話していたが…不可能ならば可能にすれば良い。それを証明する良いきっかけにもなるな!」

 

「そうだな! 差はだいぶ開いている!いけるか? 大地! 」

 

「ああ!オレは絶好調だ!山岳賞勝負を楽しみたいんだ!お前もそのつもりだろ?」

 

「最初からそのつもりだ! 限界まで回せよ!そして!! 絶対に負けない!! 」

 

「オレも負けない!!」

 

山中と杉山は鼓舞しながら箱根の山頂を目指して登っていく。

 

 

その頃。先頭では…。

 

 

「中嶋くーん! なかなかやるじゃなーい? 君はどこまで速く登れるの? 」

 

「オレはこう見えて…まだ本気じゃないすから。何故なら…勘太さんを山頂まで引っ張らないと行けないんでね。」

 

「そうかな〜? 君。実は結構脚にきてるんじゃないかな〜? 全力でスプリントラインをとってきた彼をゴール前に備えて苦手な平坦区間に箱根の山を引いてる。相当脚にきてると思うんだけどね〜?」

 

「ははは…。そんなことないですね! オレはあんたと闘いたいからこの場にいるんすよ!」

 

勘太は後ろで感じてた。

 

〔たしかに…。中嶋の脚は結構きてると思う。海風が強い平坦区間に傾斜がきつい山岳区間を1人で走っているからだ。さっきから宮崎や真中さんがアタックを仕掛ける度に脚が震えている。それに…今こうして山を楽に登れているのは…中嶋が俺のことを想って引いてもらってる。後ろから誰か…ウチのチームメイトが来て中嶋と代わってあげることが出来れば良いが現実的に考えて厳しい。正直…この状況はウチにとって厳しい! 〕

 

 

「宮崎さん…。オレは…もう1人この場に来ると思うんすよ。」

 

「はい? 」

 

「さっきから感じてるんすけど…。後ろからすごい圧を感じるんすよね…。それはオレにしかわからない圧ですよ。」

 

「キミは何を言っているのかサッパリわからないな〜。」

 

「あなたにはわからないと思いますねー。」

 

「キミ〜? この暑さと疲れでおかしくなっちゃったのかな〜?」

 

〔中嶋! もしかして…大地がこの場に来るというのか!? だが…そんなことはいくら大地でも厳しいと思うが…。〕

 

「山頂まではあと2kmだねー。ここでわけのわからないことを言ってる中嶋くーんを置いていこうか。そろそろ…本気出そうかな〜。僕も! 桐谷君! ついてこれる〜?」

 

「ああ! 宮崎君が山岳区間で引いてもらったおかげで脚はだいぶ回復した! ここで切り離してゴールにいくぞ!」

 

「りょーかい!! ゴールにいこうか!」

 

 

総北もゴールに向けて動き出す!

 

 

「翔! 俺たちも行くぞ!」

 

「箱学も動いたんでいきましょう!」

 

箱学と総北は一気に加速する。

 

 

「待ってくださいよ! ……っ。」

 

「中嶋!!」

 

「すみません…。追いつきますから…。」

 

〔何回も箱学と総北のアタックのせいで…中嶋の脚はもう限界だ! このまま中嶋が全力で走ったらリタイアになる!ここは止めるべきだ!〕

 

「お前は充分頑張った! オレをここまで引いてくれたおかげでオレの脚は回復した! あとはオレに任せろ! お前は休め!!」

 

「オレは…多村のオーダーで勘太さんを山頂まで引かないといけないんす。だから…まだ休むわけにはいかない!」

 

「お前…。」

 

「それに…オレは信じていますから! 山中さんが助けに来てくれることを! 」

 

「大地が来ると言うのか? 後ろにいる集団から1人でここまで登ってくるというのか? だいぶ差は開いている。いくら大地でも無理がある! もう一度言うが…もう休め! あとは…オレに任せろ! 」

 

勘太は中嶋をおいていこうとするが…中嶋は止める。

 

「待ってくださいよ…。せめてあと1分待ってください…。それまではペダルを緩めません! 山中さんなら絶対来ると信じてますから!! お願いします! もし…来なかったら責任は負います! 」

 

「……!! そこまで言うなら否定はしない。可能性は…0に近いが賭けるしかない!」

 

「ありがとうございます! それまでは…少しでも差が縮めるよう全力で引きます!」

 

 

その頃。集団を引いている沼津南高達は京都伏見のクライマー達と交代で引いてた。

 

「岸さん! そろそろ傾斜が急になるんで代わってください! 後ろのブロックをお願いします!! 」

 

「任せてや! 北上君!! ここは死守せなきゃあかんからね! 後ろもイライラしてるだろうな!! 」

 

後ろの選手達もヤジが飛ぶ。

 

「くそ!! 沼津と京伏が邪魔で前に行けん!お前ら邪魔なんだよ!! 」

 

「このまま集団を率いてゴールする気かよ!こんなんじゃレースにならんぞ!」

 

その時。箱学のクライマーの小泉隼也が話しかける。

 

「集団を引いているのは…良いかもしれないけど……2日目の対策とか考えてるの? 沼津さんと京伏さん! 」

 

「考えておるよ! このまま行けば沼津とわい達は8位スタートになるからねー! それに…沼津さんは先に3人いる。沼津さん的には好都合にだけど…わい達京伏は現地点で誰も先頭争いに絡んでいない。つまり…どーゆうことか…わかるかな〜?」

 

多村はつぶやく。

 

「あなた達もここからゴール争いに行くんですよね? 嵐山さん。菊川さん。あなた達が先頭争いに行くための協調なんですよね?」

 

「せやよ!! 君はわかっていながら…協調なんてしたん? 普通ならせんやろ!」

 

「いや。むしろ協調をのみました。なぜなら、さっき山頂を目指して登っていった山中さん。実は…ウチのエースなんですよ。ゴール前になると真の力を発揮する方なんですよ。箱根の山頂を登りきるとすぐゴールである1日目のコース。そこで…僕は彼を起用した。嵐山さん。菊川さん。つまり…どーゆうことかわかりますか?京伏の立場はむしろ絶望的だと思いますけどね! 」

 

「なぁ…。家斉!」

「任せろ! 」

 

しかし、多村と佐々木が止めに入る。

 

「あなた達を行かせない。少しの間ブロックさせてもらいますよ!」

 

「純ちゃん!! ここは止めよう!」

 

「邪魔や! 沼津!! 」

 

「それに…貴方達が行ってしまうと…後ろにいる集団達が出ちゃいますよ。どちらにせよ…貴方達は僕達と一緒にゴールするしか選択肢がないですからね。」

 

「くそっ……。」

 

嵐山と菊川は諦めた。

 

〔多村というやつ…。こいつ…。全てを計算しての作戦なのか…。まんまとこいつの作戦にハマってしもうた…。〕

 

〔頼みますよ…。山中さん。あなたしか…頼みの綱がありません。今日のすべての結果は貴方にかかっています! だから…絶対に山頂をとってゴールしてください!! 〕

 

 

その頃。山中と杉山は必死にペダルを漕いでた。 山中は気づく!

 

「あれ? あの後ろ姿は…中嶋と勘太! あいつらが何故ここにいる!! 」

 

山中は更にギアを上げて追い詰める。中嶋は背後からの異変に気づく。

 

「来ましたよ!! 山中さんが!」

 

勘太は後ろを振り向くと山中の姿が見えた。

 

「大地!! ……。 本当に来たんだな…。」

 

山中は更にペースを上げて中嶋達に追いつく。

 

「中嶋!! 勘太!! 」

 

「山中さん! 待ってましたよ! あなたが…この場に来てくれることを! 」

 

そして山中は2人と並ぶ。

 

「ここまで登って来て疲れが溜まっていると思うが…一刻を争う事態が起きている! 先頭には箱学と総北の4人が走っている! 差は少し開いているが…大地!! まだ…いけるか?」

 

「オレは…山岳リザルトを目指している。それが…多村のオーダーだからだ! それに…名古屋高の杉山と一緒に登ってきた! 悪いが…このまま行かせてもらう! 」

 

「山中さん!! 待ってください!オレは…もう…平坦も坂道も勘太さんを引いてだいぶ疲れが来てます! それに…先頭に追いつけません! ここは…山中さんが勘太さんを引いて1日目のゴールをとってきてください! それに…先頭はもうすぐで山頂に着く頃。今から山岳賞を狙いにいっても厳しいです!」

 

 

「そんなのやってみなきゃわからないではないか? 」

 

「!!!?」

 

「オレは…今…絶好調なんだ!! だから真剣に山岳賞に狙いにいきたい! 」

 

「しかし……!」

 

勘太は中嶋の肩を叩く。

 

「中嶋…。オレに考えがある。大地!! オレを引いてくれ!! 2人で山岳賞を狙いにいくぞ!! お前の全力の引きにオレも全力でついていく!! そして…ゴールを狙うぞ!大地!! それなら大丈夫か!?」

 

「勘太!! 」

 

〔勘太の眼は真剣だ…。となると…。〕

 

「大地…。悔しいが…今回はお預けだ! この状況でお前と1対1の真剣勝負をすることは出来なくなった。また…次回のお楽しみにしとく。それに…君のクライマーは限界にきてる。このまま全力で先頭に追いつこうとすると…彼は途中でリタイアになる。そんなことは大地もそうだけど…チームメイトも困るだろ? だから…オレは彼を引いていく!」

 

「光輝……。わかった…。」

 

「大地!! 」

 

杉山は山中の背中に手を添える。

 

「オレはお前にオレの想いを託す! そして!先頭に必ず抜いて山岳賞を絶対とってこい!! 」

 

「ああ!! オレが…レッドゼッケンをとってきたら…お前にプレゼントする!! それが…俺たちの山岳賞だからな!! 勘太!! 先頭にいこう!! 」

 

「ああ!!」

 

杉山は山中の背中を押して送り出す。杉山は中嶋を引いてゴールを目指す。

 

「山中さん……。勘太さん……。頼みますよ…。あなた達が1番でゴールしてくれることを期待します……。オレは少し休もうかな…。」

 

中嶋は一気に力が抜けて落車しそうになる。しかし、杉山は中嶋の肩を持つ。

 

「キミ。ボロボロだね。よくここまで頑張ったよ…。敵チームだけど…ゴールまで一緒に走るぞ。お前のペースに合わせるから。脚を休めとけ。」

 

「すみません…。ありがとうございます…。」

 

〔大地…。お前らのチームの為に全力で山岳賞とゴールをとって来いよ! 出来なかったら…オレは許さないぞ!! 〕

 

 

箱学と総北は山頂まで残り僅かなところに来てた。

 

「山頂まであと500mですね〜! 桐谷君! 脚の方は大丈夫かい?」

 

「ああ! 大丈夫さ! あとは…ゴールスプリントするだけだろ! 任せろ! 」

 

「翔もいけるか? 」

 

「勇気さん! 今日のために必死に練習してきたんで1日目の総合優勝やりますよ! 」

 

「その心構えだ! 」

 

「そう言えば…さっきから後ろから声援が聞こえるけど…誰かここに登ってきてるのかな〜? 中嶋君はもう脚が限界にだったし〜彼は来ないと思うけどね〜。」

 

「沼津南は堕ちたよ。宮崎君。最初のスプリントラインで精一杯だったんでしょーね。」

 

「つまり一発屋と言うわけか。ははは。そりゃ面白いわー。」

 

ここにいる4人は誰しも沼津南がこの土壇場で追いつくと想像してなかった。 周りで観戦する傍観者達の声援が騒ぎ出す。

 

「なんだ! 凄い勢いで登って来てるぞ!」

 

「2人組で来てる! しかも…箱学と総北を抜くような勢いだ!! 」

 

「あのジャージは!! 」

 

宮崎は異変に気付き後ろを振り向くとそこには…。

 

 

「勘太!! 箱学と総北をとらえたぞ!」

 

「大地!! 一気にあの4人を抜け! 山頂までもうすぐだ! 待たせたな! 宮崎!」

 

「!!!? 何故…君達がこの場に来るんだ!それに……206番!! 」

 

山中は更に加速して箱学と総北の4人を抜いていく!

 

「勇気君!! 」

 

「翔! オレの引きについてこい!!」

 

〔なんだ…。あの圧は…。あの206番…!只者ではない! 〕

 

「待てよ!! 沼津!! 」

 

〔中嶋君〜と代わって206番が走ってる〜?どーゆうことかなー? 彼は…はるか後ろから単独で傾斜が急な坂を登ってきたのかな〜?

しかも…走りは平凡に見える。凄く集中してた。多村〜。あんな選手がいるなんて聞いてないんだけどね〜。〕

 

「宮崎君! これはヤバイ! 」

 

「わかってるって!! 本気で行くぞ!」

 

宮崎と真中は山中を追う。

 

「キミー!! どこから来たの〜?」

 

「………。」

 

山中は宮崎の声は聞こえていなく、ただひたすら数百メートル先の箱根の山頂を目指して登る。

 

〔なんだ? このプレッシャーは! 〕

 

山中は持ち前の闘争心と気迫で勘太を引っ張りながらペダルを漕ぐ。宮崎と真中は加速するが…気づいたら50mも差が開いていた。 後ろの2人は感じた。

 

〔こんなに速く登っても追いつけない…。なんだ…あの206番は!!〕

 

〔はーあ? 山岳リザルトも沼津南だと!! そんな…はずは!!〕

 

箱学と総北の4人を抜き、一気に差を開いた山中大地。そして、1日目の山岳リザルトの結果が決まる。

 

「インターハイ1日目の山岳賞は…沼津南高校206番の山中大地選手です!2位は同じく沼津南高校の204番。菅原勘太選手です! 」

 

 

周りの観客達は騒ぐ。

 

「すげー!! グリーンもレッドも沼津南がとってる!! このチーム半端ねーよ!!」

 

「凄い気迫を感じた!! あの206番!」

 

「今回のインハイ!面白くなってきたな!1日目のゴール争いも楽しみだな!」

 

 

「大地!! まだ喜ぶのは早い! 本当の勝負はここからだ!! 代われ! ここからはオレが引く!! 」

 

「勘太! オレが引く!!」

 

「今日のゴールは…お前に任せる!! 」

 

「なんでだ!勘太がゴールを狙いにいくほうが良いだろ!!」

 

「オレは残りの300mあたりまで全力で引きお前をゴールに叩きこみたい! それに…あの約束を果たす時が今だからだ!」

 

「勘太…。それもそうだな!! お前もそれが楽しみでゴール争いに絡みたいんだろ! ならば…1番でゴールするさ!」

 

宮崎はこの結果に満足していない様子だ。

 

「やっぱりー。僕がゴールしにいくわ〜。桐谷くーん! ゴール前まで限界まで引け!」

 

「宮崎君! あんたは脚を休めたほうが良いんじゃないか!」

 

「何いってんの〜?キミ? キミはこのままで良いと思ってんの? 」

 

「それは良くないけどさ…。本来はオレがゴールするんじゃ…。」

 

「そんなことはどーでも良いんだよ! キミは脚がちぎれるまで引け!」

 

「わかったよ…。」

 

〔沼津南!! 僕を本気にされちゃったねー。君達にゴールは譲る気はないよ!! 〕

 

 

次回話に続く…!

 

 

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