もう一つのペダル   作:ユーチャロー

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第25話 運命の1日目の総合優勝!

第25話 運命の1日目の優勝!

 

山岳勝負は山中大地が制し、沼津南の士気が上がる。沼津南に対抗する箱学と総北。ついに宮崎が本気を出す。

 

「沼津南! 待ちなよ!! 1日目のゴールは譲れないよ! 」

 

「宮崎君! キミがゴールをとりにいくのは…オレは反対だ! 山を登り脚に少しきてるんじゃないか! ここは…オレが行くべきだよ!! 」

 

宮崎は桐谷の頭を掴む。

 

「キミは……悔しくないの……。平坦も山も沼津南にとられて……。 箱学のプライドはないのかな〜? そんな気持ちでインハイに挑むなら…僕は…キミを今ここで落車させてリタイアしてもらうよ!! 」

 

「……!! わかったよ……。 全力でこのダウンとゴール前の平坦道を引くよ…。」

 

〔宮崎君…。ガチな眼をしてる…。〕

 

「話してるヒマはないんだよ! 限界まで引けよ!! それがキミの今の仕事なんだよ!」

 

 

「勇気君!! 沼津南はグリーンゼッケンをとってきた菅原さんが206番を引いてる! それに…箱学は桐谷さんが宮崎さんを引いてる!

勇気君は…さっき箱根の激坂を登ってきて疲れが溜まってる! ここは…僕が下りで全力で引いて勇気君がゴールした方が良いのではないのか?」

 

「翔! こうすけがゴールするのか?」

 

「さっきから後ろから見てますが…桐谷さんが宮崎さんを引いてます! あの感じだと宮崎さんが残りの数百メートルあたりで離すでしょう。」

 

「そっか…。翔! 作戦変更だ! オレがゴールをとりにいく! それに…エーススプリンター同士がアシストしてる状況だ! ならば…翔!オレをゴールの前まで導いてくれないか!」

 

「わかった! ついてきてくださいよ!」

 

 

「勘太! 楽しいか! 」

 

「!!?」

 

〔ゴール前のこの状況を楽しんでるか! 大地は!! 変わってるな…。普通ならゴール前は楽しむ場面ではないんだが…。〕

 

「なぁ! 大地…。逆に聞くが…なんでお前は楽しんでるんだ?」

 

「お前と一回やってみたかったんだ。ゴール争い。オレは…今まで公式試合に出場したこともないし…ロードレースってどういう感じなのか。ロードレースの楽しさとは何か。いまいち実感してなかった。だが…それは今わかった。チームのみんなで同じ方向に向かって誰よりも速くゴールしたいからだ!それに…この6人で走れてることが凄く楽しいんだよ! 」

 

「大地…。」

 

〔そうか…。大地は今回のインターハイは特別な想いがあるのか…。ならば…オレの今やるべきは一つじゃないか!〕

 

「なぁ…。ツインスプリントをやるぞ!」

 

「!! それはお前達だけの技じゃないのかよ!! 」

 

「たしかにそうだけど…お前の気持ちを聞いたら更にやる気が出た。少し難しいが…今の大地なら出来ると思う! それに…箱学も総北も本気出してくる! だから…オレらも本気出さないと勝てない! 」

 

「…! わかった! やろう! 」

 

「オレが普段やってるツインスプリントの体勢をやるから真似するんだ! 」

 

「……。 こうか?」

 

「そうだ! もうすぐで下りが終わる! そこからが本当の勝負だ! 行くぞ! 大地! 」

 

「ああ!! 」

 

 

そこに箱学が追いつく!

 

「あらあら〜! スプリンター君!! 206番をつれてゴールする気なの〜? やらせないよ!! ほらほら!! 」

 

宮崎は山中の肩をわざとぶつける。 山中は倒れそうになるがガードレールが壁になり倒れなかった。 山中は肩をかすり傷を負うが気にせず走る。

 

「いてっ!! てめぇ!!」

 

「大地!! 大丈夫か! 宮崎!てめぇ!」

 

「はははっ! 君達はここで負けるんだよ!」

 

「勘太! 気にするな! オレは大丈夫だ!」

 

宮崎はまた山中をぶつけようとするが…勘太が抑える。

 

「お前の好きにさせるか! 」

 

「ならば…キミを倒そうか!! ほれ〜!」

 

宮崎は勘太をぶつけようとするが…勘太は避けて宮崎が倒れそうになるが…体勢を崩さなかった。

 

「避けたねー。ならば…君達をここで落車させるよ! 」

 

「大地! いまだ! 」

 

「ああ!! 」

 

勘太と山中はツインスプリントの体勢になり宮崎の妨害を避けるために一気に加速する。

 

「ほう〜〜。 下りが終わるタイミングでやってきたか〜!! 桐谷君。作戦変更で〜ここまででいいよ〜。ここからは……僕1人でいくよ!」

 

「ゴールまであと1km弱もあるのに…いくのかよ!! 300m前まで引いてやるさ!」

 

「キミはわかってないな〜。僕の本気を見たいなら…後ろからついてきなよ。多分ついてくれないと思うけど。1kmもあれば充分だよ。 」

 

宮崎はここで始めてアウターを変えギアを変える!

 

〔!!!! 嘘だろ…。今までアウターをしてなかったのかよ!! ギアを変速せずに湘南の海岸沿いと箱根山を走っていたのか!! 〕

 

すると…宮崎はアウターを変えた瞬間にものすごい速さで加速する。桐谷は追いつこうとするが…一瞬で50mも差がついてしまう。桐谷の隣に総北の2人がくる。

 

「桐谷さんが減速しました! 下りが終わったタイミングで宮崎さんが飛び出しましたよ!勇気さん! どーしますか!?」

 

「翔! そこの桐谷さんを抑えてこい! オレもここからいくよ! 」

 

「しかし!! まだ貴方がでる場面ではありませんよ! 」

 

「翔! オレは…こうすけと対戦したいんだよ。いかせてくれよ。」

 

「勇気さんは宮崎さんのライバルですもんね…。わかりました…。しかし! 絶対1番でゴールしてきてください!! チーム総北の期待を裏切らないでください!! 」

 

「最初からそのつもりだ!! 」

 

門倉は真中の背中を押して真中を送り出す。

桐谷はブロックしようとするが無駄だった。

 

「桐谷さん…。すみませんが…僕はあなたをブロックします!」

 

「ちぇっ! 総北もここで出したのかよ…。」

 

「宮崎さんも出ましたね! あの2人はライバル同士ですから…僕達が勝負の邪魔したらいけないじゃないすか?」

 

「たしかにな…。宮崎君! 頼んだよ!」

 

 

その頃。山頂近くで走っていた多村達は、集団をそのまま引いてた。

 

「そろそろ…ゴール争いになりますね。」

 

「純ちゃん!! 勘太さんと山中さんが先頭を走っているんだよね?」

 

「そうですね…。彼らは強いですから。実力的にいうと僕と佐々木君が上かもしれないけど…僕達にない強さをあの2人は持っているんです。だから…今日は彼達に1日目のゴールを託そうと最初から考えていましたから。」

 

「そうなの?あっ…でも、何故中嶋君は小田原までの平坦道と箱根山の激坂をいかせたの?」

 

「ええ。僕は3週間前ぐらい前の練習の時に…彼に平坦もそこそこ走れるように練習してほしいと言いました。彼は最初は反対してましたが…僕が平坦を彼のスタイルを保ちながら速く走れるコツを教えたら…そこから彼は練習するようになった。彼の武器は…ギアを変速しながら走るスタイルであり…大一番で真の力を発揮するタイプ。そこで…今日起用したんですよ。」

 

「つまり…純ちゃんは悠斗くんのギアを変速する走りを平坦でも活かせると思って練習をさせたというわけ?」

 

「そうです。ギアを自由自在使える中嶋君だからこそ出来る技。だから…練習次第では平坦も坂でも走るオールラウンダーになるのではと僕なりに考えたのです。」

 

「純ちゃんはそこまで考えていての…このオーダーだったんだね…。」

 

「でも…。このオーダーは一か八かの賭けですから。この賭けの全ては山中さんにかかっています。だから…負けないでください。」

 

「そうだね。純ちゃん。山中さん! あの時貴方と一緒に菅原さん達と競争した時みたいに…最後まで諦めない走りをしてください!」

 

 

多村と佐々木が話していたら…そこには名古屋高の杉山と中嶋がゆっくりと走っていた。

 

「やっと来たよ! 沼津南達が!」

 

中嶋は疲れと暑さのせいか下をむいていた。杉山の一言で後ろを振り返る。

 

「多村達…。」

 

「中嶋君。キミの姿を見ればわかります。あの箱学と総北のエースについていくのに精一杯だったと思います。良く頑張りました。」

 

「多村…。お前のオーダーは鬼畜だけど…オレ…。すげー楽しかったぜ…。」

 

「杉山さんは…何故…彼を連れてるんですか?それに…山中さんと山岳賞勝負をするはずだったのでは?」

 

「リタイアしそうになってたからさ…。それに…彼の言葉を聞いたらほっとくわけにいかないなと思って…。」

 

「そうですか…。」

 

「それに…大地が今日の1日目のゴールをして…あの表彰台の1番上にあがる姿を想像したら…応援したくなってきた。名古屋高はもう沼津南や京伏達がブロックして1日目をとるのはゼロだからね。だから…大地の親友としてロード初心者の彼を見届けたい。そんな気がしたから。」

 

「……そうですか。」

 

 

〔山中さんは敵チームの心を動かす力があるのですか…。やはり…彼をこのインハイに絞らせて出場させたのは正解でしたね。それに…宮崎さんは…彼の走りを間近で見てる頃だと。結果が楽しみですよ。〕

 

 

 

1日目のゴールまであと500m地点。ゴールゲートが遠目に見えるぐらいの距離にいた。先頭で勘太の提案のツインスプリントで離していたが…後ろから単独で走る宮崎と真中の姿が見えた。それを確認した勘太は最後の力を振り絞る。

 

〔まずい!! お互いのアシストを離して箱学と総北のエースが凄い勢いで来てる!! このままではまずい!! 〕

 

「大地!! オレがギリギリまで引く! オレが行けと合図した瞬間ゴールまで限界までペダルを回せ!! それが…今日のラストオーダーだ!」

 

「ああ!! 」

 

 

「捕まえたぞ!! 沼津南!! 」

 

「か〜んた〜く〜ん!!それに〜訳の分からないやつ〜!! 僕が〜1日目をとるんだよ!」

 

〔しかし〜あの206番〜。菅原兄弟が開発したツインスプリントをやってるんだね〜。彼ら双子にしかできない技をあの206番は再現してる〜?彼は一体何もんだ〜?〕

 

 

その差は30mになる。

 

「今だ! 行け! 大地! 俺たちの想い…。夢を…。全て託した!! 」

 

勘太はボロボロになった手で山中の背中を押した。

 

「いってくる! 」

 

勘太はすぐに宮崎のブロックをする。

 

「お前だけは絶対!! 優勝させない! 」

 

「キミは邪魔なんだよ!! ザコが!!」

 

一瞬ぶつかるが…勘太が懸命にブロックをする。しかし…宮崎はかわしていく。

 

「させるか!! 」

 

「きーみはーここでご退場しろ!!」

 

勘太は再びブロックするが…宮崎に飛ばされる。 勘太はスピードが出ていたため横に倒れそうになるが…再びバランスを整える。

 

「あぶねー!! でも…オレの今日の最後の仕事はした…。あとは頼んだ! 大地!! 」

 

 

〔邪魔が入って…2秒無駄にしちゃったねー。勇気君と差が開いちゃったじゃないかー。けど…2秒なら…一気にいけるよー〕

 

「さ〜て! 最後のとっておき〜! 解放だ!!」

 

宮崎はここで始めてダンシングの姿勢で猛スピードで先頭を追う!

 

 

ゴールまであと100m。 真中が山中と並走する。

 

「俺たち総北が!! 1日目をとる!! 」

 

〔この206番!! 後ろから感じていたけど…走りは平凡。なのに…凄い圧を感じる。山岳賞の時と違って彼の圧は更に膨れ上がっている!! 彼はきっとゴール前になると燃えるタイプかもしれませんね!〕

 

 

「みんながオレに託してくれた想いは絶対に…無駄にはしない!! 」

 

 

そこに…宮崎が必死にペダルを漕いで2人を追い詰める!!

 

 

「君たちに〜ゴールは譲らないよ〜!! 箱学の1番として…ゴールするよ〜!! 最後の勝負だ!! 」

 

 

〔僕が〜優勝するんだよ!!勇気くーんに206番!! 僕はね〜キミ達と違って箱学のエースナンバー1番なんだよね〜。1番を背負うからには〜1番でゴールしないといけないんだよ!! 〕

 

 

〔大坂さんはオレにエースナンバーをくれた。そして…先輩や後輩、同期のメンバー達の支えがあってインターハイに出ている。このオレを信用してくれる仲間達に恩返しをしたいんだ!! だから…その証として1日目の総合優勝するんだ!! 〕

 

 

〔ロードレースも何も知らないオレをここまで導いてくれたチームメイトやマネージャー達に感謝してもしきれないぐらい感謝してる!! 弟に誓った1日目のスプリントラインをとって、オレと一度ゴール争いでアシストをしたいと約束した勘太。平坦と箱根の山を1人で勘太を引っ張ってくれた中嶋。そして、オレの1日目のゴールを信じて送り出した多村と集団を引っ張っている北上と佐々木。共通して言えるのは…みんなオレに今日の優勝を託してくれた!! オレは…その想いを背負って走る!! それしかオレには出来ないんだ!感謝を形にするには!! 〕

 

 

ゴール20m前でで3人が並び最後の力を出す。周りの声援もピークに達する。

 

 

「箱学は!! 常に王者だ!!!」

 

「俺たち総北は強い!!! 」

 

「ここで出すんだ!! 全てを!! 」

 

 

そして、1日目の総合優勝が決まる。

 

 

 

「エントリーナンバー11番!! 総北高校2年生の真中勇気選手がインターハイ1日目の総合優勝です!! 」

 

 

「うおおおおお!!!! やりましたよ!!

大坂さん!!! 」

 

 

「続きまして…2位は206番の山中大地選手。3位は1番の宮崎浩輔選手です!! ビデオ判定の結果で数センチ単位で決まりました!今回の1日目の総合優勝争いは僅差でした!」

 

 

「ははは……僕が〜3位〜!!! くそー!そんなこと…あってはいけないんだよ!!」

 

 

山中は下をむいたままスピードを落としていった。 すぐに勘太が4位でゴールする。 勘太は大地と合流する。

 

 

「大地……。」

 

山中は下をずっとむいたままマネージャー達のもとに駆けつける。マネージャー達にタオルと水をもらった。

 

「山中先輩…。お疲れ様です…。タオルと水です。勘太先輩もお疲れ様です。」

 

「ありがとう…。」

 

「ありがとう。未希さん。」

 

山中は自転車を降りて人気がない場所にいこうとする。その様子を気づいた勘太は自転車を降りて山中を心配するかのようについて行く。 そこに純太が来る。

 

「兄さん。どこにいくの?」

 

「純太…。今は熊野やマネージャー達に大地と一緒にトイレにいってくるって伝えといて。」

 

「……。わかったよ…。」

 

 

山中と勘太は人気のない場所に着いて少し落ち着いてから山中は言葉を発した。

 

 

「勘太。凄い悔しい。」

 

「大地…。お前は良く頑張った…。」

 

 

勘太はフォローしようとするが…山中は涙を流しながら話す。

 

 

「オレは……みんなにゴールを任された…。みんなの期待に応えようと必死にペダルを漕いだ!! なのに…1番になれなかった…。悔しいよ……。悔しいよ!!! 」

 

 

「大地…。オレも悔しい。お前を優勝に導くことが出来なかったことに。悔しいさ!! ごめんな……大地……。オレがもっと……もっと……頑張れば……大地を優勝に導くことができたのに!! 」

 

 

「うあああああ!!!! 」

 

 

勘太は山中を抱きしめながら2人で悔し涙を流した。 2人の気が済むまで泣いていたのである。

 

 

次回話に続く…。

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