佐々木と中嶋は最後尾から先頭集団で走っている沼津南と箱学、総北を追う。しかし、京都伏見率いるデカイ集団を抜かなければ先頭集団に行くのは不可能である。そのことはわかりきってた。だが、彼らは諦めていない。何故なら、沼津南高校のメンバーに必ず合流すると誓ったのだから。
「大丈夫か? 佐々木?」
「大丈夫だよ……! それに…ここからは山岳区間。富士山の中腹を通り、本栖湖、精進湖で甲府方面に曲がり、国道369号線で山を越えて甲府盆地に入るコース。途中で傾斜が急なところがあると純ちゃんから聞いた。僕は合宿の時…この2日目のコースを走っていない…。ゆうくんはこのコースを走っているから山を攻略するポイントがあれば教えてくれないかな?」
「ああ!! 当然さ! 行くぞ!! 佐々木!! 」
「うん!! 」
2人の過酷な戦いが始まる。
2日目のコースは比較的に山岳区間が多い。6人で力を合わせながら登れば疲労は軽減するが、佐々木と中嶋の2人で山を攻略しなければならない。中嶋は昨日の箱根山の活躍で脚に負担が来てるため、ほほ使い物にならなかった。自失佐々木1人でヒルクライムするようなものだ。
中嶋の体調を見ながら佐々木もスピードを調節する。しかし、あまり遅すぎるとチームと合流出来ない。その加減が難しい。
「ぐあっ…。」
中嶋の膝に激痛が走る。
「大丈夫!? ゆうくん!! 早すぎたかな…。」
「オレのことは気にするな!! もう少しスピード出しても良いぞ!! オレは腹をくくったんだ!! 2度と自転車が漕げなくなっても良い!! 絶対に沼津南に追いつくと決めたんだ!! だからよ……せめて……最後の仕事をさせてくれよ……。その時まで休ませてもらうぞ!! 別人格の佐々木になるんだ!! 時を一刻争うこの状況!! 最下位!! ここから死ぬ気でペダルをまわさないと一生追いつけない!! こんな痛み!! 耐えてみせるさ!! 」
〔ゆうくん…!! キミは……!! 〕
「わかったよ…。ゆうくん…。この人格の時に最後に言うよ…。ゆうくん!! キミを助けにいって良かったよ!! だって……最高の友達なんだもん!! 」
「オレも…おまえは最高の友達だ!! 」
「うん!! 」
佐々木は一粒涙を流してスイッチが入る。 そして、別人格の佐々木が現れる。
「なんだ〜?? なんで…オレが最下位なんだよ!! こんなボロクソになってるヤツを連れてるんだよ!! 主人格さんよ〜。こいつ…使いもんにならねーから! 置いていくぜ!! 」
別人格の佐々木は中嶋を置いていこうとするが…中嶋は必死に後ろについてくる。
「おい! おまえ! なんでひっついてくるんだよ!おまえは裏山の時に戦った奴か。 たしか…狂人君だったっけ? 」
「そうだよ……。あの狂人だよ……。久々に別人格の佐々木のお出ましか…。 おい! おまえ! オレを精進湖まで引っ張ってくれ! そうしないと…チームに合流出来ない!! 」
「お前…。このオレに命令してるのか〜? おまえ…。そんな脚でいったら脚がもげるぞ。それに…ケイデンスを上げてめいいっぱいペダルをまわす。心拍数が急上昇して死ぬぞ。」
「死んでも良いさ。チームに合流するまではな! 」
「!!? 」
〔こいつ…。正気かよ!! ハハハ………。 あの時と一緒だな……。山中と一緒に走った時と同じ顔をしてやがる…。 おもしれー! コイツの限界突破が見たいぜ!! 〕
「わかったよー! ついてこいよ!! このひよっこが!! 」
「最初からそのつもりだ!! 」
佐々木はケイデンスを上げて中嶋を引っ張っる。中嶋も必死に膝の激痛に耐えながらついていく。
その時…沼津南は箱学と総北は膠着状態でいた。 しかし、沼津南は4人で山を攻略しており、エースクライマーの北上を筆頭にチームを引っ張っていた。
「あれれ〜。沼津南の2人はいつ来るのかな〜? リタイアしたのかな〜? かな〜? 」
「宮崎。おまえの挑発には乗らないぞ。」
「落ちこぼれ勘太くん〜。やっぱり〜君たちは落ちこぼれの集団だな〜。 はははははは〜。 良くここまで来たよ〜。 北上くーんも苦しそうだし……。立て続けに続く山岳区間〜。そりゃ…いくらエースクライマーであっても…脚に来るわな〜。だって…クライマーが1人しかいないからね〜。君たちは〜。 はははははは!! 」
「そうか。クライマーは1人か…。宮崎。お前は完璧に俺たちのデータを分析してるみたいだが…。オマエは一つ見落としてるところがあるぞ! 」
「はーい? 負け犬の遠吠えかな〜? 」
「あの2人は必ず合流する!! その時まで俺たち全員でフォローしあうんだ!! だからな! 6人全員の力を合わせて走るんだよ!! 」
「キミはバカなのかな〜? 後ろには京都伏見達が100人ぐらいのデカイ集団を作って僕達を追いつこうとしてるし〜。あの狂人君も〜昨日のあの様子だと…途中でリタイアするよ〜。 最下位から100人抜きなんてあり得ないでしょう〜。 キミはこの1年間で大馬鹿になったのかな〜。 かな〜? 」
「大馬鹿はお前だ。宮崎。不可能を可能にする。それが…沼津南高校なんだよ!! 」
「ププププ。キミとは話にならんわ! そろそろ…精進湖か〜。良し!! 美影くーんと今泉くーん!! 出番だぞ〜! 」
「オケー。宮崎君! 待ちに待ったよ! 僕が羽ばたく時が!」
「美影先輩…。相変わらず痛いお方だ…。 わかったよ。」
「箱学が出ます!! キャプテン! どうしますか? 」
「わかった。ならば…オレが出よう。キャプテンらしいことを昨日してないからな。みんな! ついていけるか! 」
「はい!! 」
総北も大坂を筆頭に動き始める!!
「北上君! 行けるかい!! 」
「言われなくても行けるさ!! オレが…エースクライマーなんだ!」
沼津南は出ようとするが人数の問題と北上の疲労で少し出遅れてしまう。 とっさに反応したのは多村。 多村の迅速な判断で遅れを取り返す。
「すまん…。多村…。」
「大丈夫ですよ…。少し休んでください。富士宮からここまで1人でチームを引っ張ってるので乳酸が溜まっているでしょう。行けそうでしたら…交代をお願いします。」
「ああ。悪りー。」
〔佐々木君…。中嶋君…。君たちが来てくれることを信じています!だから…早くここまで来て欲しいです! 〕
佐々木と中嶋達は佐々木のハイケイデンスクライムによって山梨県に入り本栖湖まで来た。 途中で夏の暑さと疲労でリタイアしてる選手がチラホラ見かけた。それに、スピードが落ちてチームに置いていかれた選手も10人ぐらい見かけた。 20人ぐらいを抜き去り徐々に先頭との距離を縮めていった。
中嶋は佐々木の引きになんとかしがみつく膝の激痛と戦いながら走っている。給水ポイントには熊野と純太が立っていた。
「佐々木君!! 中嶋君!! 給水です!! 受け取ってください!」
「おお!! サンキューな!! コイツにボトル2本渡してくれ!! それと顔面に水をかける用にもう1本な!! 」
「はい!! 」
一瞬の出来事であったが…熊野と純太は2人にボトルを渡した。そして、中嶋は顔にボトルを思い切り水をかけて空になったボトルを道に落とした。
「なかなかやるじゃねーか!! お前!! オレのケイデンスについて来れるなんてたいした野郎だ! だが…まだまだこれからだぜ! 」
「ああ…。 日々の練習が報われてる気がするよ…。佐々木…。水をかけてスッキリしたから…もう少しケイデンスを上げていいぞ…。まだ…こんなところで倒れる訳にはいかねーんだ…。」
〔ここまで…ケイデンス130ぐらい回してるのに…まだケイデンスを上げろというのか…。ましては…膝の激痛に耐え…体力も限界に来てるはずなのに…気力だけで走っている! こいつ…。ガチで狂人だな!〕
「おい! オレはまだ大丈夫だけどな! だが…お前はとっくに限界が来てるはずだ!! 少しは自分の身体を心配しろよ! 」
「佐々木…。どうしても…追いつかないといけないんだ…。チームのために戦いたい…。お前もそうだろ…。」
「ああ…。そりゃな!! まだまだこんなところでくたばってはいけねー理由があるんだよ!! だからよ!! 必死についてこいや!」
「ああ…。行くぞ…。」
佐々木と中嶋はケイデンスは更に上げて距離を徐々に縮めに行く。この2人の様子を見てた熊野と純太の顔が険しくなる。
「先頭とはタイム差では10分もある! このままでは…2人は…。」
「信じるしかないよ。あの2人を。」
「純太さん!! 何を根拠にそう言い切れるんですか!! 先頭に追いつくなんて…不可能です!! 先には京都伏見が集団を引っ張っているんですよ!! あの集団を抜くことなんて…出来るわけがないじゃないですか!! 」
「熊野…。たしかにお前の言う通りかもしれない。だけどな……お前はこの4カ月間何を学んだ? 」
「それは……。」
「山中さんはいつも言ってたよな…。不可能を可能にするって。あの2人は誰もが不可能なことを可能にするように今…実践してるんだよ。だから…そんな2人を信じるやるのがオレらの仕事じゃないのか?」
「!!!?」
「今は…信じて待つ。それが今オレらが出来るベストの仕事だ。次の給水所に行くぞ。」
「はい!! 」
しばらくすると…佐々木と中嶋は第1関門にぶつかる。
それは…脱落してない選手達の集団が60人ぐらい走っていて、先を抜くことが出来なかった。それに気づいた京都伏見のキャプテンである嵐山は声をかける。
「あら…。君達。沼津南の佐々木君に中嶋君か〜。ようここまで来たね〜。 君たち…。僕達を抜いて〜先頭に追いつく気かい。それはさせんで!! 」
「邪魔なんだよ!! てめぇーら!! 」
佐々木と中嶋は集団の中を強行突破する。
そして、集団の先頭でコントロールしてる京都伏見達に追いつく。
「ここを通りたければ…僕達を抜きな!! 」
次回話に続く…。