もう一つのペダル   作:ユーチャロー

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美影良和と宮崎の出会い

一方。箱学と総北は先頭集団を走っていた。

お互いのエースクライマーを筆頭にチームを引っ張っていた。

ここの山岳賞がいかに重要か双方のチームはわかっている。それはこの山道を登り切ると長い下り坂になり甲府盆地に入る。そこでゴール争いが始まることに気づいていた。だから、この山頂が勝負どころであった。

 

「僕は総北キャプテンの大坂坂道。この山岳は譲れないよ。」

 

「私は箱学の新山神。あの東堂さんの次期スリーピングビューティー!! 美影良和。女子ファンはピカイチだろう! この山神! いざ尋常に勝負!! 」

 

「あの山神の東堂さんの次期後継者という訳か。面白い。キミとやるのは初めてかな? この大坂坂道。山の勝負では負けなしだからね。」

 

「そうか〜。自称無敵の大坂君。キミと僕。どっちが最強か。決めようではないか〜。では行くよ!」

 

すると美影はロスのない静かな走りで箱学のチームメイトを引っ張りいつのまにか30mも離した。それに大坂は驚きを隠せなかった。

 

〔なるほど。たしかにあの東堂さんと同じフォームであり軽々と登っていく。よっぽど研究したんだな。厄介な敵だ。しかし、僕も負ける気がしないね。〕

 

「みんな。僕の走りについてこれるかい? これから僕は本気モードに入る。きつかったらいってくれ。」

 

「大丈夫だ。坂道。おまえの別名は山の支配者。おまえの天性の勘とクライムセンスを信じる。だから。気にしないで登ってくれ。俺たち総北は5年ぶりの総合優勝に向かって走ってる。異論はないよな!みんな!!」

 

「はい!! 俺たちは大坂さんを信じてます!」

 

「ありがとな。みんな。オレはキャプテンとしてこの山岳は必ずとると約束する。それと…翔。ありがとな。」

 

「ああ。」

 

「ならば…総北! 始動だ! いくぞ! 」

 

大坂はダンシングの体制になり一気に箱学に迫る!

ついに箱学を捉える。 前で走ってた箱学の選手達が驚く。

 

「宮崎君! 総北が追いついてきました!」

 

「あれれー。圧倒的な差をつめて登ってきたけど〜。ここで追いついて来ちゃうか〜。ま。想定内だけどね〜。」

 

「あれ。僕の登りについてこれるなんて思わなかったよ! それでこそ好敵手だね! 総北!」

 

「美影くーん。まだ。いけるよね?」

 

「こんなんでバテる山神ではないよ。宮崎君。」

 

「なら安心〜。」

 

〔キミと僕が出会った時は意外な出会いだったな…。〕

 

 

遡ること1年前。 練習中の出来事であった。

宮崎が自主練で箱根の山を登っていた時。

 

「明日のヒルクライム大会で僕が優勝する! あの…エースクライマーの山田君を〜蹴散らすためにね〜!! 僕が高校に入って…ゼッケンをとることが出来なかったレッドゼッケン!! 明日は必ずとってみせる! それが…僕の目標だからね! じゃないと! 僕が理想とするチームになれないんよ!! 」

 

この年の箱学のエースクライマーであった山田俊明。インターハイで3日間山岳ゼッケンをとりインターハイ総合優勝の立役者としてチームのみんなからは精神的支柱の存在であったため宮崎にとって邪魔だった。この時から宮崎は箱学の理想像を描いていた。

 

その時、宮崎から横をすり抜けた1人の自転車乗りがいた。

その人物が美影だ。しかも…ママチャリでカゴにはカバンが入っていながらスラスラと登っていた。 それに音を立てずに横を抜いていったため宮崎も後ろから自転車が来てることに気づかなかった。

 

〔嘘だろ…。ママチャリでこの激坂を登っていくヤツは…珍しい…。

しかも…なんだ…。あのロスのない登り方は…。さらに…箱根学園の制服を着てるのではないか…。とにかくついていこうか!〕

 

宮崎は美影の後をついていった。しかし、思った以上にスラスラと登っていき疲れていなかった。

 

〔なんだ!! こいつ!! ママチャリでありながら疲れ何一つも見せずに登っていくのではないか!! これは…もしかしたら…。〕

 

「おい!! そこの箱学の制服を着てる人!! 少し止まってくれないか?」

 

「赤の他人に話しかけられるなんて…嬉しいではないか。うん? なんだ。男子か。興ざめだ。これが女子だったら良かったな。しかし…キミ。さっきから僕の後ろについてくるし…しかも…軽々しく止まってくれなんて言わないでくれないか。それに僕は急いでいるんだよ。これから親の手伝いをしないといけないんだ。じゃーね。」

 

すると美影はスピードを上げて登っていった。

 

「おい! まてよ!」

 

宮崎は美影の横に並ぶ。

 

〔何だね? このダサい服を着たヤツは。うん? よく見ると箱根学園ってアルファベットで書いてあるではないか。箱学の生徒なのかな?〕

 

「キミ? 箱学のなんかのスポーツの部活の人かね?」

 

「ああ。箱根学園自転車競技部だ。オレは宮崎浩輔。1年だ。」

 

「ふーん。まず。キミは歳上に敬語を使うところから学んだほうが良い。僕は美影良和。2年だ。礼儀がなってないキミみたいな人に関わりたくないな〜。」

 

「そりゃ〜失礼しましたわ。しかし〜美影さん。あなたみたいなナルシストで痛い先輩が箱学にいるなんてね〜。珍しいもんすねー。」

 

「何?なんていった?」

 

「僕にはわかるんですよ。あなたみたいな人は…。いかにナルシストで痛い方って。プププ。」

 

「てめぇ!」

 

すると宮崎は加速していった。美影は宮崎にバカにされたことが気に食わなくて必死についていく。 また宮崎の横を抜いていった。

 

「待てよ! この1年やろう! そこで止まれ!」

 

〔やっぱり…。こりゃ…面白い人を見つけちゃった。〕

 

「わかりましたよ。止まりますよ。」

 

宮崎と美影は近くのコンビニに自転車を止めた。 すると美影は宮崎の胸ぐらを掴んだ。

 

「おい。ナルシストで痛いヤツっていう言葉を取り消せよ。」

 

「そんな小さいことで怒っているようじゃ女子の評判が下がりますよ〜。美影せんぱーい。」

 

「くっ…。たしかにそうだな…。」

 

〔案外とちょろいもんですね〜。ならば…。話しやすい。〕

 

「あなたが更に女子の注目を集める方法がありますよ。聞きたいですか〜?」

 

「なんだ! それは! 是非…聞かせてくれ!」

 

 

「あなたが自転車競技部に入ることですよ。」

 

 

「!? つまり…そのダサい服を着て自転車を漕げということか?」

 

「まぁ。部に入ればこの服を着なきゃいけませんが…例えば…ヒルクライムという箱根の坂道みたいな坂道を自転車で登っていく大会があるのですが…もし…あなたがこの大会で1番をとったら…観客もそうですが…女子から人気が高まることになる。つまり…何が言いたいかわかりますよね?」

 

「つまり…優勝すれば女子の人気もそうだが…有名人になれるということか!? 」

 

「もちろん。それに…あなたは…僕が乗っている自転車と違ってママチャリでこの坂道をロスなくスイスイ登っていく。あなたには…坂道を登る…クライマーのセンスがピカイチだと感じたんですよ。いかにあなたがすごいかは…僕の自転車を持ってみるとわかります。」

 

「ほーう。おまえの自転車を持ち上げるぞー! !!? なんだ!! めっちゃ軽いではないか! 」

 

 

「これはロードバイクといって自転車に必要な物が詰まっている自転車。あなたが乗っているママチャリは安全性と利便性があるが…ロードバイクみたいに速くは走れないし車体が重い。わかりやすく言えば車でいうAT車とMT車みたいなもんだ。つまり…重い自転車で速く走れない自転車でこの坂を息を切らせずに登っていくことが凄いかはわかるはず。あなたはクライマーの才能がある。だから…僕はあなたを自転車競技部に誘いたいと思ったんですよ。」

 

「なるほどな…。僕には…そんな才能があると思わなかったよ。生れながら恵まれた顔であり…この体型。それに女子人気は才能あると思って生きてきたが…まさか…自転車の才能もあるなんて…。本当に僕は…ヒルクライムという大会で優勝すれば女子人気は高まるというのは間違いないだろうな!」

 

「間違いないでしょ。一回騙されたと思って…明日のヒルクライムの大会に参加してみませんか? 今なら…まだ間に合うと思うので…是非。」

 

「ああ! 本当か否か…確かめてやる。それで良い。」

 

 

その翌日。箱根山のヒルクライム大会が開催。 スタート位置に山田と宮崎がいた。

 

「よし。宮崎。インターハイの時みたいに山のアシストを頼むよ。」

 

「はい。山田さんの最期の大会でありますから…全力でアシストしますよ。」

 

「おう。頼むぞ。」

 

「あの。少し…トイレにいってきていいですか?」

 

「わかった。スタート時間ももう少しだから早くしろよ。」

 

「はい。」

 

宮崎は内緒で参加してる美影のもとに駆けつける。

 

「僕は…あなたのアシストをしますよ。僕の言われたとおりに走ってくださいよ。」

 

「なんだこれは!! さっき…ローラーっていうやつで自転車を漕いだが…全然違う!! 速いな〜!! この乗り物!! 」

 

「でしょ。あなたに僕のスペアバイクを貸しますよ。あなたは一般参加者で最後尾になりますが…必死に僕についてきてくださいよ。」

 

「ああ。」

 

 

そして、スタートする。宮崎と山田は2人で先頭集団にはいる。しばらくするとだんだん集団の人数が減っていきレースの終盤になると2人だけになった。

 

「よし。ゴールまであと3キロ。逃げ切るぞ。宮崎。残りの500mぐらいまで前で引っ張ってくれないか。」

 

「はい。」

 

〔さて…そろそろですかね…。本当の楽しみは…。〕

 

 

「お。本当にここまで登れてきた!!すげーな!! この乗り物!」

 

「きたか。」

 

「なんだ! 一般参加者で先頭に追いついてきたのか!!それになんだ!あの走りは!全くロスがない走り!!一般参加者と思えない走り!!宮崎!! 全開で登れ!!俺たち箱学はどんな大会であれ1番でなくてはならない!」

 

 

「残念ですが…あなたは…ここでご退場願いましょうか!!」

 

 

「何を言ってるんだ…。宮崎…。」

 

「言葉の通りですよ…。山田さーん。」

 

 

すると宮崎は美影のアシストに入る!

 

 

「宮崎〜! まだオレは登れるぜ!優勝はオレだからな!」

 

「約束通りにあなたを優勝させますよ。安心してください。ベストポジションまであなたをアシストしますから。」

 

「宮崎!! お前!! 待て!!」

 

すると宮崎は美影をつれて登っていく。山田も必死にくらいついていく。

 

「何のつもりだ! 宮崎! お前は何を考えている!! 」

 

「何を考えている? ははっ。それは…僕が理想するチームを作るためですよ。あなた達みたいな…生温い友情や情熱なんていらないんですよ〜。僕は…どんな手を使ってでも…敵味方関係なく僕が必要とする勝利とそれに導く行動をするだけですよ。それが僕の考え。では…さよなら…。箱学の元エースクライマーさん。」

 

「待てよ!! 宮崎!! お前には!! 失望したぞ!」

 

〔さて…。あれもそろそろかな…。〕

 

山田は感情が高ぶったせいで冷静さを失った。

すると…道路に転がっていた木の枝が突然タイヤに挟まり落車をしてしまう。

 

そして、宮崎はゴール前の100mのところで美影をはなして美影の優勝に導いた。 一般参加者初の優勝者となった。 その後。美影は箱学の自転車競技部に入ることになる。

 

 

「今…思えば懐かしい記憶だな…。さて! 美影君!! キミが〜女子にモテるところは〜ここよ〜。さて! やろか!! 」

 

「ああ! 総北のモブキャラみたいな顔をしたキャプテンには負けたくないね〜! 残りの2キロ! 全力で輝くよ!!」

 

「オレはモブキャラじゃないぞ。美影君。」

 

「待たせたな。浩輔。俺たち総北はジャージが6枚揃って完成形だ。そろそろ山の勝負を決めようぜ! 」

 

「ゆうきくーん。キミに…いつも邪魔される…。この山だけは譲れないな〜!! 」

 

 

次回話に続く…。

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