2日目のゴールは甲府駅前にある舞鶴城まで残り1km。
根岸と宮崎の箱根ペアと真中、門倉、永山の総北ペア。嵐山と菊川の京伏ペアの7人で2日目の優勝争いのクライマックスを迎える。
「さて〜!! そろそろ〜! 僕が出ようかな〜! 」
「こうすけ!! オレは今日はお前を止める!! 」
「勇気くーん。キミはいつもそうやって僕の邪魔をする〜。君達総北が3人でゴール争いに絡むのも僕を止めるストッパーが1人必要だからでしょ〜。その1人が勇気くーんなわけだ。」
「……。」
宮崎は不気味な笑みを浮かべながら真中に問いかける。
「残念だけど…僕…。今日はゴールを狙いにいかんわ。何故なら!!キミらを止めるからね!! さて…根岸さん! あなたの真骨頂を出しましょうか!! ここで!」
周りにいた選手達は全員驚いた。この場面で普通はアシストがエースを引き、残りの数百メートルでエースを出すが今日の箱根学園はアシストである根岸をこのままゴールするという異例な作戦である。危機感を感じた総北の永山と京都伏見の嵐山は真っ先に先頭に行こうとするが、宮崎がブロックに入る!
「すまんな〜。君達を止めて…根岸さんの単独優勝をさせるんよ!! 通らせないよ!」
「宮崎! お前のブロックを壊してやるよ!」
「やりおるな〜。箱学さん! だが…関西一のエースはこんなんでくたばりはせんよ!」
永山と嵐山は宮崎のブロックを避けるがすぐに宮崎は反応する。しかし、京伏の菊川と総北の真中は宮崎を囲むように宮崎を先に行かせないようにした。
「慶喜!! いけー!! こいつはオレが抑えるから!! 京都伏見の希望はお前なんや!! 」
「永山さん!! 浩輔のことはオレが抑えます!! だから…必ず優勝してください! お願いします!」
「家斉!! サンキューな! 1日目は我慢したからな! 我慢を全開放や!! 」
「勇気! 総北副キャプテンとして仕事をしてくる! 坂道。オレがお前の屈辱を果たしてやるよ!」
嵐山と永山は2人で根岸を追う。しかし、宮崎は表情を変えなかった。
「ふふ。キミらが抑えたとしても無意味だよ!根岸さんはとっくにゴールに向かって走っている! あの根岸さんを止めるのは無理だね!」
「こうすけ! 菊川さん! ハマりましたね!! ウチにはもう1人ゴールに向かって走ってる選手がいるんですよ!」
「門倉君かー。2対1対1で君達が数的有利だと言いたいの〜?勇気くーん。そんなのわかってるわ〜。そんなんで負けるような根岸さんでないよ!!」
「慶喜をなめとるねー!あー見えて怖いんやで。ゴール前は。」
「!!?」
(こうすけが認める根岸さん。いったいどんな方なんだ!!? 嵐山さんも気になる…。関西一のエースの実力。)
すると後ろから必死に追い上げてきた沼津南の3人が来た!
「エースアシスト集団に追いついたぞ!! 多村! こいつらをどう抜いていく!! 」
「強行突破のみです!!」
「あれあれ〜!!! なんでキミらがここにいるんだ!! 沼津南!」
「厄介なのが来たな〜!」
「やはり来ましたか!!」
勘太と山中はツインスプリントの体制になり多村を全力で引きエースアシスト集団をあっという間に抜いていく! 菊川、真中は沼津南の止めに入ろうとするが…時はすでに遅かった。しかし、宮崎はこの隙に沼津南の3人の集団に追いつく!
「あれれー! 落ちこぼれ集団がなんでいるんだよ!! キミらのチームの2人はリタイアしたんじゃないのー?」
「お前と話してる暇はない。行くぞ! 大地! 多村!」
勘太は鬼のような引きで宮崎を離しにいく。宮崎も止めにいこうとするが少し無理をしたせいか脚に疲労が溜まっていたため遅れる。
「ふっ。誰が来ようと…無駄だ!! 根岸さんには敵わない!」
その頃。ゴール前200mまで迫ってた根岸は全力で走る。後方にいる永山と嵐山はダンシングになり全力で追いかけるが、根岸のプレッシャーが2人に襲い彼らを失速させる。
(抜けそうで抜けない…。なんだ…この変な汗は…。このプレッシャーは!! 見えない壁がある!!)
(この人を恐れてるのか…オレは…。)
根岸の見えないプレッシャーを感じ失速してしまう。嵐山と永山は吐きそうになりつつ我慢して走る。縮まるところが逆に差が開いていく。
勝負は決まりつつあったが……。後ろからは勘太の必死の引きによって嵐山と永山を捉えた!
「あとは!!! 頼んだ!! 多村!!! 」
「多村! オレらがこの2人を止める!」
山中と勘太は多村の腰に手を当て押し出す!!
「いけー!! 多村純太郎!!」
多村は一気にダンシングをし根岸を追いかける! 嵐山と永山は根岸のプレッシャーに負けたせいか士気を失ってた。勘太はこの2人のデータを知っていたため異変に気付く。
(なんでこの人達がゴール前で失速してるんだ?普段ならここからが彼らの真骨頂なのに力を発揮してないんだ? 箱根学園の根岸という男。彼らを絶望させるような実力を持ってるのか! 宮崎…。お前が理想とするチームはなんだ!)
多村は必死に先頭の根岸を追うが、そこに門倉翔の姿を捉える。
気付いた門倉は更にスピードを上げる!
「来たか! 沼津南!」
(総北は先頭争いに3人を送り込んでいたのか!永山さんは囮になってたのか!! )
後方にいた永山は少し呟いた。
「かかったな。沼津南、京伏、箱学!」
「!!?」
「まさか〜。キミは最初から門倉君を今日のゴール争いに行かせる気だったのか!!」
「ああ。全てはこのためにある!! 詰めが甘かったな。宮崎。根岸のプレッシャーに打ち勝つことが出来るのは翔が適任だからな!アイツには鋼の精神力と鋼のように強いスプリンターなんだよ!」
宮崎はこの言葉を聞いて誤算が生じた。
「プププ!! キミら総北は本当に!! キモいな!!」
「今更止めにいこうとしても無駄だ!今日も総北が2日目を制す!そして! 王者奪還する!!」
ゴールまで残り50m地点でついに根岸の姿を捉えた門倉と多村はラストスパートをかける!
(残りの50m。オレがゴールして総北を勝たせる!! 若干…根岸さんのプレッシャーがピリピリ感じるが…オレは「鋼のスプリンター」。どんな強敵にも立ち向かう!! それが! 門倉翔だ! 大坂さんの屈辱を果たして見せる!! そして! オレが最初にゴールしてチーム総北は不死鳥の如く復活してみせる!!)
(佐々木君と中嶋君は最後尾からチームまで必死に追いついた。北上君はチームのために山岳区間を引いてくれた。勘太さんと山中さんは下りからの敗北したエースまで必死に追い上げた。熊野君や純太さん、マネージャー達のサポートもあってここまでこれた。皆んなの支えがなければこの場にいなかった。一度心を折れかけたが皆んなが僕に期待して先にゴールしてくれると信じている。だからこそ!!僕は皆さんに恩返しするような走りをしたい! それを証明するのは今!この瞬間だ!! )
双方の想いが重なり…残りの10m地点で3人が並ぶ!
「オレが! チーム総北を勝たせるんだ!」
「恩返しするんだ!!」
「……。」
そして、2日目の優勝争いに終止符を打つ。
「エントリーナンバー2番! 根岸正一選手が1位です! 2位は201番の多村純太郎選手! 3位は門倉翔選手です! 」
その差は僅かの差だった。数cm単位の差で箱根学園の根岸が制した。
観客達も大声で箱学コールが飛ぶ。
「やっぱり…箱根学園は強いわ!!」
「ゴール前ピリピリしてて鳥肌がたった!!」
「王者箱学!!」
根岸は片手にガッツポーズをする。門倉と多村は下を向いた。
レースの1位と2位の差は天地の差。ロードレースは過酷な世界である。努力が報われるか報われないかの違いであるからだ。
2日目の先頭争いの死闘はここに終幕する。
次回話に続く…。