もう一つのペダル   作:ユーチャロー

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メンバー交代

2日目のゴール前には4位争いが激しさを増す。

佐々木と山中が残りの力を振り絞り京都伏見の嵐山と真中を抑える。 

 

「4位入賞は僕たちがとる!」 

「佐々木!なんとかして抑えるぞ!」 

 

しかし、京都伏見の嵐山と総北の真中は最後の力を使い佐々木と山中を抜いた。嵐山が4位で真中は5位入賞でゴールイン。抑えられなかった佐々木と山中は同時に6位入賞でゴールした。

 

「すまんな…。みんな…。負けてもうた…。」 

「なんとか…順位を少し上げたが…翔…。」 

 

この時、箱根学園の補欠メンバーやマネージャー達は根岸を囲いながら2日目の優勝を喜びあってた。その時に山中と佐々木は多村が負けたと察しがついた。2人は自転車を降りて沼津南のブースに足を運ぶ。 

そこには、多村が黙って申し訳なさそうに座り込んでいた。 

 

「佐々木君。山中さん。お疲れ様でした…。すみません…。2位でした。箱根学園に僅かな差で負けました。2日目の優勝を逃してしまい申し訳ございません…。」 

 

すると佐々木は多村の隣に座り励ました。 

 

「純ちゃんは良く頑張ったよ。僕達がいない間に沼津南を引っ張ってきたんだから。」

 

「そうだな。最初は絶望的な状況だったけど終盤で6人に揃ってそこから2位に入賞出来たんだから良かったよ。多村の判断は正解だったよ。オレら最後に2人抜かれたのは悔しいけど、こうして2日目を走り切れたから良かった。」 

 

「山中さん…。そうですよね。佐々木君と中嶋君が追いついて来なかったら…ここまで来れなかったと思います。だから…佐々木君。本当に今日はお疲れ様。最後尾から6位入賞出来たのですから凄いです。」 

 

「いや〜。そんな〜。いたっ…。」 

 

佐々木は右膝に激痛が走った。最後尾からここまでほぼ全力でペダルを回していたため膝にダメージを負ってた。 

 

「佐々木君…。今すぐケアしたほうが良いです。今日1番脚を使っていますから明日に備えて治してください。」 

 

「うん…。そうするよ…。」 

 

佐々木はマネージャーに頼んで脚のケアを始める。 

 

その頃。エースアシスト集団の箱学の宮崎と京伏の菊川。総北の永山がゴールする。 宮崎は真っ先に根岸のもとに駆けつける。 

 

「良くやりましたよ。根岸さん。やっぱりあなたを今日の補欠メンバーから選んで良かったです…。子安君に申し訳ないことをしてしまったが…キミは明日…3日目。走ってもらうよ。」 

 

子安友春。箱根学園の1年生のスプリンターであった。インハイメンバー内で1人だけ1年生である。彼は、中学時代から神奈川県大会で優秀な成績を残し、インハイメンバーを決める際には先輩達を実力を見せつけ選ばれた。本来は2日の山頂に着いた辺りからチームを牽引する予定だったが、昨日の3位入賞がキッカケで急遽オーダーを変更した。

 

「宮崎先輩。僕…明日は走れるのですね? しかし…そうなると誰を変えるのですか?」 

 

「変えるのは美影君。彼はもう役目を果たした。元々山岳賞をとることしか執着がなかったし…それに…明日は東京に入ると長い平坦な道になり、平坦でも少し下り坂になっているんよ。だから…そこでキミの力を存分に発揮してほしいんよ。」 

 

「なるほどですね!」 

 

「キミは…下りが速いからねー。キミの別名は…『下りのスペシャリスト』やからね!」

 

 

その後。他の選手達が続々とゴールをし2日目のレースは終わりを告げる。勘太達が沼津南のブースに来て結果を伝えた。勘太は少し悔しそうな顔をしたが、多村を責めなかった。中嶋は佐々木が治療してる場所に行き話かける。 

 

「本当に今日はありがとう。リタイアしそうなところで佐々木が助けに来てもらったおかげで2日目も無事ゴールすることが出来た。本当にありがとう!」 

 

「ゆう君。本当に良かった…。これで山中さんと一緒に完走する夢をまたみることが出来るね…。一つ残念なんだけど…僕…明日走れないや…。」 

 

「えっ? なんて言った?」 

 

「僕はもう…今日力を使い過ぎて右膝がやられてしまった…。さっきドクターストップがかかって…明日は自転車で走ることが出来ない…。あとは…頼んだよ…。ゆう君。」 

 

「そんな…。」 

 

中嶋は自分のせいで佐々木が走れなくなってしまった罪悪感を感じ、下を向いたが佐々木は中嶋の手を握った。 

 

「僕の分も背負って走ってほしい。ゆう君。ゆう君がゴールする姿を見たい。それで充分だよ。だから…明日は全力で走って!」 

 

「佐々木…。ごめん。無理をさせてしまった…。お前の分も背負って3日目完走するよ!!」

 

中嶋は佐々木に3日目を完走することを誓う。 

 

 

しばらくすると、表彰式が始まった。

レッドゼッケンの美影。グリーンゼッケンの谷中。そして、イエローゼッケンの根岸。箱根学園の3人の選手がカラーゼッケンをとったことで王者箱学の象徴になる。観客達も箱学コールが飛び交う。 

 

「これこそ王者箱学!」 

「箱学はこうじゃないとね!!」 

「箱学良いぞ!!」 

 

宮崎は後ろから笑みを浮かべながら見つめていた。 

 

「これこそ!! 本来あるべき姿の箱根学園だ!! 明日も制し…優勝はこの僕がもぎとる!! あと…もう少しで…僕の存在価値が証明される。なぁ…父さん。」  

 

 

その後。多村は総括で佐々木が明日出場出来ないことをメンバー達に伝える。 

 

「佐々木君は良く頑張りました。リタイアしそうになった中嶋君を最後尾から連れ出し先頭争いまで全力で走りました。彼の頑張りを無駄にしないよう明日は頑張りましょう。そこで…佐々木君の代わりに明日走るのは…菅原純太さん。明日はよろしくお願いします。」 

 

「えっ…。オレ?」 

 

「はい。明日は東京からの平坦な道になっておりますのでスプリンターでルーラーの純太さんが適任だと思います。それに山岳地点からの長い下り坂があるので合宿の時に見せてくれた純太さんが開発したダウンヒルを是非3日目で発揮していただきたいと思います。大丈夫ですか?」

 

「うん! もちろん! 総合優勝に導く走りをするよ! みんな! 明日はよろしく!」 

 

「純太さんがいれば心強いですね!!」 

 

勘太は純太と肩を組む。 

 

「明日は頼むぞ! 純太!」 

「うん! 頑張る!!」 

 

「では、明日の序盤のオーダーを言います。山岳リザルト地点まではアップダウンが激しい区間になっておりますので、クライマーの北上君と中嶋君を中心に行きます。勘太さんと北上君と中嶋君はなるべく僕達に早く合流出来るようお願いします。明日は箱根学園も総北、京都伏見も東京に入ったらスプリンターを中心に行くと思われるので、純太さんと勘太さんは出るようにしてください。」 

 

「ああ。任せろ。」 

「兄さんとインハイ走れるのは嬉しい!」 

 

「では。一旦解散します。」 

 

 

総括を終えると多村はある人物に会いにいく。 

その人物は多村の兄である光太郎であった。 

 

 

「ゴール前見てたぞ。純太郎。」 

「兄さん。ゴメン。箱根学園を抜けなくて…。」 

「良いんだ。そんなこと…。お前がこうしてまたロードレースをやってることが嬉しいんだ。」 

 

「兄さん…。オレ…!絶対兄さんの仇をとるから!! 兄さんをこんな風にさせた宮崎が許せない!! 兄さんの将来を潰したあの人を許せない!!」

 

「……。」 

 

兄の光太郎は1年前の箱根学園自転車競技部のキャプテンであったが、去年のインターハイ予選会で予期せぬ事故が起こり、下半身不随で車椅子生活になってしまった。その裏に宮崎が絡んでいることを知り、純太郎は宮崎を倒すためにインハイの目標を掲げていた。 

 

「純太郎。お前は良いチームを作った。オレは…後輩のことを気にかけなかった…。だから…こんな風になってしまったと思う。お前は宮崎の仇をとるのではなく沼津南高校のキャプテンとして走ってほしい。今日のお前の走りは小学生の時に魅せてくれた楽しそうに走る姿だった。純粋にロードレースを楽しんでいる姿。兄さんはそんなお前が良いんだよ…。だから…明日は楽しんでほしい。兄さんから言えることはそれだけだ。」 

 

「……。わかったよ。明日! ゴールの大手町で沼津南が1番にゴールする姿をみてて!」 

 

「ああ。楽しみに待ってるよ。」 

 

多村は兄の光太郎と握手をした。 

その様子を木の陰から覗いていた宮崎は笑みを浮かべる。 

 

(プププ!! 多村キャプテンの弟君の純太郎くーん。君たちは兄弟揃ってキモいな〜。2人して同じ想いを明日させようかな〜。キミも〜彼みたいに脚を使えなくしてやるよ!!)

 

「ぷっはっははは!! 」 

 

 

次回話に続く…。

 

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