もう一つのペダル   作:ユーチャロー

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3日目のオーダー

インターハイ3日目。 

2日もかけて約200kmのコースを走ってきた選手達も疲労が溜まってきてる。夏の暑さもあるせいか最初は200名いた選手がリタイアし、残っている選手は100名ほどになってた。中には1チーム6人が全員リタイアした学校もいた。1チーム6人全員が残っている学校も10校に絞られた。そのぐらい夏のインターハイは過酷なレースであり総合優勝をすることは夢のような栄誉である。だから、自転車乗りは必死な想いで仲間を信じゴールを目指す。 

 

沼津南高校も初出場でありながら6人全員が残っていることが奇跡である。途中でアクシデントはあったが、キャプテンの多村を筆頭にここまでこれた。そのことに多村は1人で歯を磨きながら感じていた。 

 

「いよいよ運命の3日目のレースが始まる。2日とも僅かな差で1位を逃している。だが…6人全員が今日のレースを走れることは不幸中の幸いだと感じてる。だからこそ…今日こそは必ず優勝して…兄さんに喜んでもらいたいんだ!」 

 

「歯を磨きながら独り言か…。」 

 

「山中さん! おはようございます!」 

 

「良い意気込みだな。さすが沼津南高校のキャプテンだな!オレも今日頑張らないとな…。」 

 

「そうですね…。山中さんはロードレース楽しいですか?」 

 

「2日間走ってきて思ったけど…気迫と重圧、そして期待を背負って走っているんだなと感じてる。17年間体験したことないことを現在進行形で体験してるから楽しいよ。なかなかこういった体験を誰もが出来るわけでもないし…貴重な体験をしてる。だからこそ…今を楽しまないと後々後悔すると思う。」 

 

「そうですか…。でも、勝負の世界は甘くないのもご存知ですよね?」

 

「それはもちろんわかっている。勝った奴が称賛されるのは当たり前のことだ。だから…楽しさと裏腹に厳しい世界だとこの自転車競技に関して感じてる。」 

 

「なら良かったです。僕が今から話すことは山中さんにとってショッキングなことだと思いますし…ロードレースの世界ではそれが当たり前のことなので公式戦初出場の山中さんにそれを伝えたいと思います。」

 

「……。わかった。」 

 

「今日のオーダーは神奈川県と東京都の境にある地点が今日の山岳リザルトであり、今日のレースの1番標高差が高いところにあります。しかし…それからはゴールの大手町までの道のりはほぼ平坦。そこまではクライマーの北上君と中嶋君を筆頭にチームを牽引し…山岳リザルトを過ぎたら彼らを引き離します。理由は…クライマーにとって活躍する場所がないからです。だから…昨日足を痛めた佐々木君の代わりにルーラーでスプリンターである菅原純太さんをメンバーにいれたのです。つまり…僕が何を言いたいかというと6人が全員ゴールすることはないということです。」 

 

「……。じゃ…。中嶋はゴールまで行けないということか?」 

 

「はい。」 

 

「あいつは…オレと一緒に3日間走破したいと思って…昨日も佐々木に連れてもらって2日目をゴールした! それに…佐々木は自分が出れなくなる分中嶋に3日目走破してほしいと言ってた! 2人の想いを無駄にするのか!!」 

 

「思った通りの反応ですね…。ロードレースは…エースを1番に届けるために犠牲にし送り出すのです。それが当たり前の世界なんです。それに…中嶋君はいくら脚が万全だといっても正直ダメージが残っている。彼を今日大手町まで走らせることは不可能だと思います!勘太さんにそのことを話したら納得しました。それが…ロードレースというものです! そのことを山中さんにも理解してほしいと思い話しました!」

 

「……。それでもオレは……。」 

 

するとそこに勘太が来た。 

 

「大地。これが現実なんだ。中嶋の今後のことを思って決断した。これはレースなんだ。自分が思ったように上手くいかないのもロードレースなんだ。大地にそれを知ってほしい。何ごとも上手くはいかないんだ。」

 

「勘太まで……。……わかったよ……。」 

 

「山中さんなら理解してもらえると思いました。このことは北上君や中嶋君にはまだ伝えていませんが…彼も理解してもらえると思います。」

 

そういって多村は口をゆすいで部屋に戻っていった。

 

「大地。北上や中嶋がゴールが出来ない分俺たちはアイツらの想いを託して今日は走らないといけない。そのことだけは頭に入れておけよ。」

 

「わかった…。」

 

2人は部屋に戻りレースの準備に取り掛かる。

 

 

AM8時55分。 

3日目のスタート地点は甲府駅前である。 

甲府盆地を抜けて勾配差が激しいコースを走り相模湖を登っていくと3日目のリザルトがある。それを過ぎると東京の街中に入っていき東京の中心である大手町がゴールである。この3日目の結果により総合優勝が決まる。 沼津南の選手達は補給食とボトルを持ってスタート地点に立った。 

 

「いや〜いよいよ3日目っすね! 山中さん!」 

 

「ああ…。そうだな。」 

 

「どうしたんすか?浮かない顔してますが?」 

 

「いや。なんでもない。中嶋。今日も頼むぜ!」 

 

「はい! オレ…。今日3日目の山岳賞狙いに行きますから!」 

 

「そっか…。」 

 

 

(いつのも山中さんと違うな〜。どうしたんだろ?緊張してるのかな?)

 

 

「山中さん! 今日もオレ活躍しますから! 見てください!」

 

「北上か。そうだな! 期待してるぞ!」 

 

「はい!」 

 

 

(あれっ?なんか表情が暗いかな?どうしたんだろ?) 

 

 

「いや〜! 今日も良い天気ですな〜。沼津さんよ。」 

 

「嵐山さんですか。僕達に何か用があるのですか?」 

 

「ま。僕達…今日は君たちと協調したいと思っとる。12人いれば箱学や総北に勝てるで。」 

 

「京都伏見に2日ともお世話になりました。その点に関しては感謝してますが…今日は協調にのりません。」 

 

「そっかそっか〜。ならええわ。僕達は僕達で頑張るからな〜。」

 

「そうしてください。」 

 

 

(残念やな…沼津さんよ。君達は先頭だけしか見てなく…後方の選手達のことを気にしてへんわ…。まぁ…。そのうちわかるやろーな! 本当の恐ろしさを!!) 

 

 

そして、いよいよ3日目のレースがまもなく開催する。沼津南は円陣を組んで気合いを入れた。3日目も2日目のスタートと同様に着順からスタートする。2位の多村と6位の山中と勘太がスタートする。 

 

 

「では…インターハイ最終日スタートです!」

 

 

激闘の3日目が始まる…。

 

 

次回話に続く…。

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