インターハイ3日目のコースは国道20号線で甲府盆地を抜け山岳区間に入る。大月・相模湖を通り過ぎると東京郊外に入り都心に向かっていくコースだ。前半はアップダウンが激しいが後半ではほぼ平坦道であるためスピードマンの力を温存させないといけない。そこで沼津南はエースクライマーの北上と大一番で活躍する中嶋の2人のクライマーを起用し、山岳区間は勝負をする。
スタートを切った後すぐに多村と合流した山中と菅原勘太。
多村の序盤のオーダーとしてはまず6人が全員合流することと甲府盆地を抜けるまでは平坦道であるため佐々木に代わった純太が山岳区間に入るまでチームを引っ張ってもらう。
「山中さんと勘太さんが合流し、先頭には箱学が2人、総北は3人。京都伏見は2人にいます。あと少しで純太さんが来る頃だと思います。」
「わかった。まず…ここの平坦区間は純太に任せる。」
「あの山からクライマー達の勝負がかかってるな!」
「大地。そうだ。エース級の選手と平坦が得意なルーラーやスプリンターは今は我慢どころだ。今日のレースは山岳区間で勝負が決まると思う。何故なら…平坦になると実力があるヤツだけが勝ってしまうからだ。山岳区間は実力もそうだが…攻め所の判断や力の配分を考えなければいけない。オレはクライマーじゃないからわからないが…クライマーは策士なヤツが多いイメージだ。実力だけでなく頭も使うからな。」
「なるほどな…。つまり…クライマーの活躍によって今日の勝負は決まると過言ではないんだな。」
「ああ。話しているうちに純太達が来たぞ。」
そこに純太と中嶋、北上の3人が少し遅れて合流する。箱学も総北もチーム全員が合流するが…京都伏見の嵐山と菊川以外の選手達が来てなかった。この状況で不審に思ってた。
(京都伏見が揃っていない…。京都伏見は昨日の成績も北上君や中嶋君達の後ろにいたはずだが…。何か嫌な予感がする…。)
「ここから沼津南は始動します!まず…山岳区間に入るまでは純太さんが、山岳区間の序盤は北上君に頼みます!」
「わかった!」
「おう! 任せろ!」
中嶋は反論した。
「多村!なんでオレじゃねーんだよ! ここはオレが適任だろ!」
「中嶋君! 落ちついて! キミには後々活躍してもらう。だから…今は我慢してください!」
「本当なんだろうな?」
「はい!」
「しょうがねー。おい! ドチビ! チームの足を引っ張るなよ!」
「わかってるわ! あと…ドチビっていうな!!」
一方箱学は…。
「さーて。ここからは〜谷中君!全力で平坦を引き…山岳区間も踏ん張りな!!」
「!!!。宮崎君!。僕を山岳区間を引くのかい!?僕はスプリンターなんだぞ!!」
「そうだよ。だからいってるんじゃん。」
「嫌だ!僕は最後まで走りたい!」
「キミには期待してるだけどな…。山岳区間も全力で登れるって…。ここで踏ん張れば…キミは来年もインターハイ走れるんだよ。だから全力でいけないかな〜?」
「そうなのか…。そんなにオレのことを期待してもらってるのか!!ならば…頑張る!!」
「ああ…。頼んだよ…。」
箱学の選手達は苦笑いしてた。1mmも谷中に期待していないと。彼をここで捨てると感じていたからだ。今泉はこのやりとりをこう感じてた。
(浩輔君は腹黒いよね…。僕はそんなあなたが好きだからついてきてるんですよ。谷中さん…ドンマイすぎる。哀れな人だな。さて…僕はこの人が使えなくなったらクライマーの僕が東京と神奈川の県境まで引かないといけない。それまではゆっくり休むとしますか…。)
総北からはスプリンターの宇津木が序盤引っ張り山岳区間からはもう1人のクライマーの洞島桐人が引っ張る作戦になった。
「桐人。山岳区間はお前の判断に任せる。オレよりお前の方が頭いいからな!」
「大坂さん!そんなことないですよ! それに…ロードレースは勉強より攻略するの難しいと感じてますから。答えがありませんからね。だから…楽しいんですけど。」
「そうか。お前はIQが200もあって体重も50kgしかなく体は細いが…持久力だけは一流。それが…洞島桐人だよなー。」
「なんでこの場面で僕のプロフィールを話しているんですか…。運動とか全く興味なかった僕が自転車を始めたのも大坂さんのおかげなのでこの恩は忘れませんが。」
「ならば。魅せてくれよ。今日の走りで。桐人をこの3日目に活躍の場を設けたのはわかっているよな?」
「昨日のメールを見たのでわかります。だから任せてくださいよ。」
「ああ。期待してる。」
「さーて。家斉!少しペースダウンするぞ。」
「わかってるよ。慶喜。箱学と総北、沼津南を先にいかせて僕達京都伏見と他の選手達と共に先頭争いするということやろ。」
「ああ。それを実行するぞ!」
「イエッサ。」
多村は京都伏見の2人がペースダウンしてることに気づき疑問に感じた。
(ワザとペースダウンして6人全員で走るのかな…。でも…それではリスクが伴う。いくらチームに合流したとしても先頭に追いつく可能性が低くなる。だから…協調しようとしたのか…。それとも…何か策があって…ワザとペースダウンをしてるのか…。……。待てよ。まさかとは思うが…そのまさかが実現するかというと可能性はほぼないだろ…。)
「後方集団達が固まって何十人かの協調を結んでいるのか。」
しばらく走ると山岳区間に入る。そこで沼津南は北上を中心に山を攻略していく。山に入ったら北上の判断で任せると多村に言われていた。
「ここはまず総北と箱学の様子をみましょう。いつアタックされてもついていけるように力を温存していきます。」
「わかりました。北上君。」
「はっはっ…。なんだよ!!総北も沼津も速すぎるスプリンターがいるんだな…。なんとか…ついていけた…。」
「まだ休んじゃいけませんよ〜。谷中君。」
「わかってるって!! みんな! ついてこい!」
箱学はアタックを仕掛けるが…しかし、北上と総北の洞島は対応する。
「あなた達を止めるのは僕達ですよ。」
「こんな序盤からアタックを仕掛けるのは悪くありませんが…それでは力が持ちませんね。」
「クソクソクソ!! オメーらなんで来るだよ!! 邪魔なんだよ!」
(スイッチが入りましたね〜。彼の怒りスイッチが…。プププ…。さーキミのその怒りで…黙らせてあげなさい!!)
「このひよっこが!!!」
「始まりましたね。」
谷中は顔を赤めさっきと比べ物にならないぐらい速く登っていく。北上と洞島はそれに反応しチームを牽引する。
「少しついてきてください!」
「彼のスイッチを押してしまいましたか…ならば…そのスイッチを切らないといけませんね。」
沼津南と総北は咄嗟の判断で箱学を追っていく。
「そろそろ来るで。家斉。後ろから凄い車輪の音が聞こえるやろ。」
「ああ。あいつらにはわからないんだろうな…。集団に飲み込まれる恐怖を…。そして…この集団は最強の武器だとな!!」
すると…そこには約100名いる選手達の先頭をしきっていたのは岸と宮本だった。
「慶喜!家斉!連れてきたで。こっからは慶喜と家斉が指揮とってや!」
「ご苦労さんよ! 岸と宮本! さて…ほな…いこか!! 打倒箱学に向けて特急列車が出発しまーす。」
(さぁ…箱学と総北、沼津さんよー。これがワイらの計らいなんよ!あんたら飲み込み…そして…僕達が優勝するんよ!)
次回話に続く…。