しばらく箱学と総北、沼津南の攻防戦は繰り返していた。
箱学の谷中が全力で己の力を振り絞るように沼津南の北上と総北の洞島と対峙する。谷中はスプリンターであるが宮崎の無茶振りで仕方なく山岳区間を牽引してるが…谷中は慣れていない山岳区間をチームを引っ張っているため試行錯誤で登っている。
(クソっ…。この2人が強すぎるんだよ…。まだ…オレは…オレは…こんなところで終わる訳にはいかないんだよ!! 彼女が大手町に待っているんだ…。こんなところでバテる訳にいけね! 約束したんだ!)
「谷中くーん。キミ。大月あたりまで踏ん張れないかな〜。」
「大月まで!! そこまで俺の脚が持たねーよ!!今だって…だいぶ無理してるっていうのに…。」
「キミをグリーンゼッケンをとらせて箱学に貢献してるんだからさー。もっともっと貢献してもらわないといけないんよ。なぁ〜。キミみたいな雑魚キャラをインハイメンバーを選別してる理由はわかるかい?」
「雑魚キャラだと!! どーゆうことだ! 納得いかないぞ!」
「雑魚は雑魚らしく雑用してるが良い。チームのために雑用してくれよ〜。谷中くーん。」
「ならば雑魚なら雑魚らしく散ってやるよ!! そして!! てめぇーらを表彰台に上らせれば良いんだろ!! やってやろーじゃねーか!雑草魂というのもな!!」
(プププ。キミはキモいな。)
(ごめん。お前が待ってくれてるのに…。オレは…この生意気な後輩のせいで…ゴール出来んわ。だが…オレは雑魚は雑魚らしく魂を魅せて散ってやるよ!!)
「なんだ。この人!! 何回アタックしてるだよ!! 昨日…グリーンゼッケンをとった人が山岳を争っているのは…不思議だ!!」
「確か…沼津南の北上君だったよね。僕は…総北高校16番の洞島桐人です。今後大会とかありましたらよろしくお願いします。僕的に箱学の思う壺になってると思います。だって…箱学にはクライマーがいるのに起用しないんですから。力を温存させるためにワザと出さないのでは?
それか山岳賞を狙いに行かせる作戦ですかね。」
「いや〜。あんた。身体が細いな…。そんなんで自転車に乗って山を攻略してるのは意外だな。」
「僕のコンプレックスですから。逆に聞きますが…あなたは小さいのによくエースクライマーとしてチームを牽引してますね。」
「小さいだと! 聞き捨てならんな! このピッコロやろう!」
「ピッコロってイタリアの楽器ですよ。知らないのですか?」
「知らんわ! そんなこと!!」
すると後ろから車輪の音がもの凄く聞こえる。宮崎は後ろを振り返り一瞬で状況が理解した。
「なるほど。君たちがここにいないのもこのためですか。集団の力と脅威を利用して僕達を飲み込もうと。なぁ! 京都伏見!」
「とらえたで!! 箱学と総北と沼津南!!」
そこには100名程走っていた他校の選手達が大きい集団として迫ってきたからだ。京都伏見はこれを狙っていた。人数が多ければ多いほど風の抵抗が無くなり、そして、交代する人数が多いことで力を温存することが出来る。何より速く走れる。この作戦を企画した京都伏見は数的有利な作戦で優勝を狙いに行く。
多村の嫌な予感が当たってしまう。そのまさかが目の前で起きているからだ。集団の恐怖は理解していた。今まで先頭争いに絡んでいない他校の選手達が結託して先頭に追いつこうとしているからだ。100対6。この数的不利な場面で多村は咄嗟にオーダーを変更する。
「中嶋君と北上君!! 君達2人でこの山岳区間を引っ張ってほしい!! そして、僕も君たちの走りを真似してチームを引っ張る!!」
「多村! お前はエースだ!! エースのお前をゴール前まで引っ張らないといけない!! お前の出る幕はここではない!」
「だが…この状況でそんなことを行ってる場合ではないことはキミが理解してるだろ!! 速くいかないと飲み込まれる!」
「クソ!!」
北上と中嶋はお互いのフルパワーを使って集団を逃れるよう登っていく。箱学の宮崎は予想を反することが起きているためオーダーを出す。
「今泉君。キミ。いける。」
「いけるって。浩輔君。速くいかないと。」
「ああ。」
「ちょっと待てよ…。オレ…。お前の引きについていける自信がない…。」
「谷中くーん。キミみたいな雑魚はこんなところでおちるんよ!!何が雑魚は雑魚らしく散るだ…。そんな綺麗事はキミ〜の彼女さんにでも言っとけよ!! 雑魚は!! では…キミは集団の中にのまれて楽々とゴールすればよいんだよ。雑魚集団にな!! バーイ。」
「宮崎!! てめぇ!! お前みたいなクソは…箱学のキャプテンに相応しくないんだよ!! 多村キャプテンの方が良かったな!! てめぇーが黒幕なのは知ってるんだよ!! 」
「………。散れ。」
宮崎はそう言って谷中の顔面に肘打ちして谷中が落車する。谷中が楽車したことにより後方に走っていた集団の選手達に混乱が生じ集団落車する。しかし、何人かの選手は落車に巻き込まれなかった。宮崎はその光景を見て爆笑した。
「キミの最後の仕事は…集団落車を誘うことやったね!! いや〜魅せてもらったよー。雑草魂をね。ププププ。ハハハ!!」
勘太は宮崎の非道的なやり方に怒りを隠せなかった。総北の真中も宮崎に対して文句を言う。
「こうすけ! 彼は昨日グリーンゼッケンをとった選手なのにここで捨てるのか!」
「使えなくなった駒はここで捨てる。それが僕のやり方だ。人の心配するより自分のチームを心配したほうが良いんじゃない?ゆうきくーん?」
「お前には失望したぞ! こうすけ!」
「信頼とかいらんよ。僕には。僕が優勝すればね!」
大坂が真中を止めてオーダーをいう。
「この状況はまずい! オレが引く!みんないけるか!」
「はい!」
総北も大坂を筆頭にチームを引っ張り集団を引き離す!
「あーあ。箱学さん。酷いやり方やけど…集団落車をさせるために1人の選手を犠牲にするとは…変わってるねー!! だが…それでもオレらを止める事は出来んよ!!」
それでも集団は3校の選手達より速く登れている。
箱学も総北、沼津南もいくら離そうとしても差が縮まる。
そこで、多村は思わぬ作戦をいう。
「北上君!! この集団を止めるために囮になってほしい!! こんなことをいうのも申し訳ない気持ちがあるが…これは…チームが勝つために必要なことなんだ! 納得してくれないか!?」
「オレは…まだ役割を果たしていないんだ!! 嫌だ!」
「でも!!」
「なら。そのオーダー。オレにやらせてくれ。」
「!! 中嶋君!!」
「実はな…。多村と勘太さんが昨日の夜にミーティングしてたことは聞いてたんだ…。オレは大手町までは完走する事は難しいと…。確かに…その通りだ。1日目は横浜から箱根の山岳区間を勘太さんを連れたり…昨日は佐々木の後ろについて沼津南に追いついたが…その影響もあって…回復してるように見えても本当のところは少し身体中のあちらこちらに痛みは感じている。3日目を完走すると佐々木に約束をしてしまったが…物理的にそれは無理だと密かに感じていた。オレはチームのために昨日は皆んなと合流して役に立ちたいと思ってここまで来た。だからこそ…今!! この時!! チームのために役に立たせてくれないか!! 多村!!」
多村は5秒黙りこんだ。しかし、今すぐ決断しないと総合優勝はないと感じた多村は苦渋の決断のうえに中嶋に背中を叩いて言う。
「中嶋君…。キミにこのオーダーを託します…。」
「ああ! 任せろよ!!」
「中嶋!! 本当に良いのかよ!! 佐々木との約束を…。」
「山中さん…。正直オレは…3日間走破したかった…。でも…オレは佐々木と同じように沼津南高校自転車競技部が好きなんなんです!だから…チームのためならどんな無茶なオーダーでも受けますよ! それで沼津南高校が総合優勝出来るなら…辛くはないですよ!」
「中嶋……。」
(お前は…オレを自転車競技の世界に連れてもらった。今まで普通に過ごしてきた人生にお前はオレを変えてくれた。そして、部活を通して色々学ばせてもらった。仲間を思いやる気持ち。仲間と共に同じ目標に向かって一生懸命になること。何よりオレが感じることはこの仲間と巡りあえたことだ。皆んなの支えがあってオレはインターハイに出場して走れている。そのキッカケを作ってくれた中嶋悠斗。オレは…お前に何も恩返しが出来ないのか!お前の夢を叶えることが出来ないのか!そんなオレが情けない!)
中嶋は寂しそうな表情で山中に最後の言葉をかける。中嶋の目には涙が流れていた。
「山中大地さん。あなたがゴールする姿が見たいです。そして、山中大地さん。僕が今まであってきた中で最高な友達です! だから…友達を全力で応援するのはオレの役目です!!」
山中はこの言葉で涙が一滴流した。そして、山中は中嶋の背中を震えながら叩いた。
「絶対! このオーダーを完遂してくれよ!! じゃないと…オレは許さないからな!」
中嶋は山中の手の感覚を感じながら笑顔で返事した。
「必ずやり遂げます! だから…安心して前に進んでください!」
中嶋はペースダウンして集団をコントロールしてた京都伏見の嵐山に話しかける。
「いや〜!! この集団をコントロールしてるなんて素晴らしいですね〜!! オレが全力で止めてやるよ!! この集団をな!! 京都伏見さんよ! オレと勝負だ!!」
「キミ1人で集団を止める…。キミはバカなのか!! 100人近くいる選手を相手にキミが止めるやと…。無駄にも程があるなー!! やってみなよ!! 中嶋君!」
「ああ!! やるさ!!」
嵐山や菊川、岸がアタックを仕掛けるが中嶋は彼らをブロックし先陣をきる!
「あんたら…オレを舐めすぎやな〜!! エセ関西弁でいきましょか!! ははは!! 」
「このやろー!!」
中嶋1人で集団を阻止するためにアタックをしかける。時間稼ぎのために中嶋は囮になり沼津南は残りの5人で先頭争いに絡むのである。
次回話に続く…。