もう一つのペダル   作:ユーチャロー

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3日目の山岳賞勝負 後編

宮崎と大坂、山中は大垂水峠の残り5kmの山岳賞を賭けた勝負に出る!

 

「さぁ!! 全力の全力で行くぞ!」 

 

大坂は一気にダンシングして一瞬で2人を置き去りにし、逃げ切る作戦に出た!山中は無言になりただひたすら前しか見なかった。宮崎は様子を疑いながら相手を冷静に分析していた。 

 

(モブキャプテン君も絶妙なタイミングでアタックを仕掛ける。少し傾斜が緩やかになったところでアタックする。また、傾斜が変わったところで少し脚を休めている。ギアも2段あげて一気に差を差を広げる。山の支配者は伊達ではないね〜。フィールドを一瞬で理解し攻め所を確認し仕掛ける。こりゃー面白いねー。206番君は…気力で登っているだけ。技術は正直ない。ロードを初めて4か月しかたってないから経験が浅い。だが…1日目の山岳賞に1日目、2日目ではゴール争いに絡んでいる。多村君の狙いは彼の意外性と大一番で活躍する。そして…闘争心!! 彼は…それが武器だ。厄介な敵と対戦してる。山の支配者に溢れる闘争心の塊。だが…僕は…こんなところで負ける訳がない。) 

 

「さぁ!! パーティーでも始めようか!! このゼッケン1は最強の証!! 最強の座を守りきってやるよ!! さて……本気になるか。」

 

宮崎は左手の人差し指と中指に巻かれた包帯を外してアウターに手を添える。それを見た大坂は驚きを隠せなかった。何故なら…彼はここまで1度もギアを変えずに走っていたからだ。 

 

(まさかね…。キミの全力というのはアウターを変えることか!おととい…翔と勇気が言っていたことは本当だった!ペダリングだけで僕達に対抗できる選手!ギアを変えるということは今より速くなる!これは…ヤバイ!!) 

 

大坂は更に顔色を変えて宮崎がここから本気で来ることを察知して一気にダンシングして差を広げようとする。 

 

(思ってた通りの反応ですねー。僕は普段から力を抑えて走っていた。ここぞというところしか使わない。それが僕が最強の証なんだよ!)

 

宮崎はギアを1段上げた!そして…50mも開いていた差が一気に詰め寄り大坂と並んだ。宮崎は大坂に挑発する。

 

「あれれ〜。1段上げただけでこれだけ縮まるんですか〜。モブさん。もっと速く登れないんですか〜?」 

 

「凄いな…。1段上げただけですぐ追いついてしまうなんて…。これは!! 面白いな!!」 

 

大坂はギアをMAXにし…己の力を全解放し宮崎に対抗する。しかし…宮崎はギアを2段上げ大坂の最大限の力で対等に走る。 

 

「なんで…そんな軽々と登れる!!ギアを3段上げただけでオレの全力に対抗できるなんて凄いな…。さすが…箱学のキャプテンだ…。そんなキミと戦えることは光栄だ!! 」 

 

大坂はケイデンスを上げて登る作戦に出るが…宮崎はまた1段上げて軽々して登っていく。 

 

(ケイデンスを上げても追いついている!!オレは支配してるというより支配されている!!これはまずい…。作戦とかもうどうでもいい…。彼の方が実力があるから…。ならば……オレはもう心臓が張り裂けようが…脚がもげようが…関係なく死ぬ気で登るしかない!!」 

 

大坂は宮崎の方が上手をとっていたことを感じて気力だけで登る。 

 

「こうなったら…死ぬ気で山岳賞を狙う!!」 

 

「ププププ…。カッコいいことを言うねー!! なら……僕は……キミが絶望する圧倒的な力で捻じ伏せてやるよ!!」 

 

宮崎はギアをMAXにした瞬間…電車が通り去るように一気にフル加速して大坂と差を広げる。大坂は一瞬の出来事で理解が出来なかった。だが…大坂はケイデンスを更に上げ宮崎に食らいつこうとした。しかし…差は100mも離されていた。 

 

「クソ速えー!!ギアを変えただけでこんなに差が出るとは思っていなかった…。みんな…すまん…。いくらペダルを回しても追いつけない。オレの3年間は何だったんだ…。」 

 

大坂は心が折れた。するとその横に山中が通り過ぎ全力で前を追っていた。差が100m以上離されているのに山中は必死に追いつこうとして大坂は彼に話しかけた。

 

「もう無理だ!! 宮崎とは100mも差がある!! 残り2kmで挽回できるなんて不可能だ! キミも諦めてチームに合流した方が良い!!」

 

 

「そうですか…。ならば…不可能を可能にする。」 

 

 

山中は静かに答えて大坂を置いていく。 

 

 

(何故…無理だとわかっているのに…彼は食らいついていこうとするのだ? オレには理解が出来ない…。) 

 

 

宮崎は後ろを振り返って勝利を確信した。 

 

(モブキャプテンも堕ちたか…。206番君も…大坂君と力比べしてる時からいなかった。彼も早々に堕ちたのだろう。初心者の彼に僕達についていくのは無理があったんだね〜。このまま逃げ切って山岳は頂く!)

 

宮崎はこのまま独走して念願の山岳賞を狙いにいく! 

 

 

ゴール前500m地点になると箱学コールが飛ぶ。 

 

「エースが山岳賞狙ってるの?凄いな!」 

「王者箱学は最強!!」 

「常勝箱学!」 

 

(箱学は最強でなければならない。これが強さだ!!伝説を残すだの…約束を果たすなんて…くだらない。それは己の弱さである。それを証明する。証明することで父さんや兄さんはオレのことを認めてくれる。)

 

 

宮崎は一瞬後ろを振り向いた。 

 

 

「気のせいか。」

 

 

(今泉君達がここまで登ってきてるのかな?そうであれば…もう優勝は間違えない。登り切ればそこからしばらく下り坂になり子安君が下りで勝負をつける。予想通りの展開になれば良いんだけどな…。)

 

 

「後ろから変なプレッシャーを感じる…。今までに感じたことがないプレッシャー。」 

 

宮崎は手汗が凄かった。変な汗も垂れてくる。 

 

「暑さのせいで汗が凄い…。」 

 

 

すると車輪の音がドンドン近づいてきて宮崎は後ろを振り向く…。

 

 

「待たせたな。宮崎浩輔。」 

 

 

「なんで……キミがここまで登ってきてるんだよ!」 

 

 

「話している暇はない。」 

 

 

その男は宮崎と並ぶ。 

 

 

「キモいな。キミ。タダモンではない。化け物だ!山中大地!!」 

 

 

山中は宮崎と並びながら山頂を目指す!!

 

 

「残りの200m。オレは負けない。誓ったんだ。チームに。必ず山岳賞をとると!!」 

 

「キミのくだらない友情ごっこはここで終わるんだよ!邪魔なんだよ!!」 

 

「やってみろ。」 

 

「このクソが!」 

 

宮崎は予想を反する出来事が起きていて理解が出来なかった。そのせいか少し焦りがあった。 

 

(こいつ…。根岸さんより…凄い圧を感じる!何より…こいつの顔つきや眼つきがさっきとは別もんだ!何だよ!コイツ!) 

 

 

「怖いか?オレが?」 

 

「!!?」 

 

(手の震えが収まらない。僕がアイツのことを恐れているのか?そんな…訳がない!!) 

 

「おら!!」 

 

 

宮崎は更にケイデンスを上げて残りの50mのリザルトラインまで全力で走るが…山中は宮崎のはるか先に走っていた。 

 

そして…。 

 

 

「インターハイ3日目の山岳賞は206番の山中大地選手です!」 

 

 

「206番! ウソだろ! コイツ!1日目も山岳賞とってるやつだよな!! 沼津南高校! すげーな!」 

「最後の最後で箱学の宮崎を抜くなんて…ありえないっしょ!」 

 

 

観客達も驚いてた。

 

 

山中は山岳賞をとり両手を広げて空を見ながら叫んだ。 

 

 

「中嶋!佐々木!やったぞ!!チームのために走り…チームの活力になる走りをすることが出来た!!」 

 

 

宮崎は敗北した現実を受け入れることが出来なかった。つい先程までは勝利を確信していたが、彼が追いついたことによって状況を理解することが出来なかった。 

 

 

「そんな…バカな。」 

 

 

「不可能を可能する。それを証明した。宮崎!お前は弱い!」 

 

 

「プププ。ハハハ!!キミはキモいな!! 弱いだと…。ふざけんじゃねー!! この借りは…ゴールで果たしてやる!!」 

 

 

「ゴールも俺たちがとる。」 

 

 

「今回はキミの勝ちだが……総合優勝をしなければ意味がない。ここから切り替えて総合優勝はとる!首を洗って待ってろ! 山中大地!」 

 

 

3日目の山岳賞勝負は最後の最後で逆転した山中が制した。これにより宮崎は山中にケンカを売るのであった。

 

 

次回話に続く…。

 

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