もう一つのペダル   作:ユーチャロー

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純太と多村の狙い

それは沼津南高校自転車競技部が発足してから2週間後だった。 

練習を終えた純太はキャプテンに任命した多村に初めて事実を話す。

 

「多村君。話があるけど良いかい?」 

 

「なんでしょうか?」 

 

「キミの兄さんがキャプテンだったのは知ってる。キミはここでキャプテンを務めたい理由もわかっている。宮崎浩輔が多村キャプテンのバイクに細工しワザとパンクをさせ落車をして下半身不全になったことは知っている。そこで…キミは多村キャプテンの仇をとるために自分が指揮してチームをまとめ…そして…兄と同じようにキャプテンの座に就くことによって宮崎浩輔と同等に闘えることを証明する。だが…キミは本来は箱根学園に入学して自らの力で宮崎浩輔のキャプテンの座から引きづり下ろそうとしたが…何故か…この静岡の沼津の無名の高校に入った。そして…キミは静岡県中学生大会で山岳賞をとっている中嶋君と北上君をスカウトした。熊野君に関してはエースアシストでエースを最高なタイミングで3位入賞をさせた実績を持ち…佐々木君に関しては熱海では有名な選手であった。彼は二重人格だからね。その後、僕達もスカウトした。僕らが宮崎浩輔のターゲットにされ追放されることを知っていたから。これで全ての合点がつく。何故…この無名の高校に実力のある選手が揃っているのか。それは全てキミがこの高校で自転車競技部を作ることによって宮崎浩輔にそのデータを送ることだ。そして、僕達を静岡県大会で優勝させるという条件をつけて。」 

 

 

「確かに純太さんの言う通りです。宮崎さんのインターハイ優勝のためにデータを送っていたことは間違えないです。しかし…山中さんは…予測不能です。あのレースの時も…まさかあの人が最後のゴールスプリントに絡んでいくと思っていなかったからです。あの人は今まで見た中でデータをとることが出来ない。だから…彼のデータを送っても参考にならない。」 

 

「……。兄さんは山中さんと仲良くなり…お互い信頼しあっている。だから…彼は邪魔なんだよね。彼が。何故なら…彼と兄さんがくっついたら僕の立場もなくなるといいのと…兄さんは僕が今まで勝たせてあげた恩を忘れているからだ。同じ双子の兄弟なのに…いつも兄さんが称賛される。いつもそうだ…。今まで2人で色んな大会に出場したが…いつも僕は兄さんのお膳立て。兄さんの力を思う存分発揮するところまで僕が必死に引いて兄さんを優勝させる。僕はずっと脇役。父さんや母さん…。チームメイトや友達にいつも言われる。「何故…同じ双子なのに実力の差があるんだと。」 僕から言わせると…兄さんを勝たせてるのはこの僕なんだよ!弟の菅原純太だと!!周りはそれを理解しない。だって…ロードの素人だからだ。素人だから…優勝すれば誰だって称賛する。それがこのスポーツの常識だからだ。正直もうウンザリなんだよね。兄さんだけ良い思いをして天狗になっていることが。だから…僕は…兄さんより優れていることを証明するために宮崎と協力し…そして…来年は箱学に戻って僕が兄さんより優れたスプリンターとして走ると約束したんだよ!彼は…僕みたいな…野望に燃えている選手を集めたいと計画している。僕は…それに乗っかろうと思うんだよね。だって…僕の目標は兄さんより強いスプリンターだと証明したいからね。」

 

 

「……そうですか。純太さんもいろいろ苦労されているのですね…。しかし…山中大地さん。彼は…あなたも警戒した方が良いですよ。何をするかわかりませんから。」 

 

「彼には充分警戒するつもりだよ。」 

 

「……。」 

 

 

多村はその時感じた。菅原純太は宮崎浩輔と似てる部分があると。彼は自分の栄誉や称賛されるためにどんな手を使っても敵や仲間を関係なしで落とそうとするからだ。自分の勝利なら仲間は関係ないことに。多村はこの純太の発言で彼の行動を見守ることにした。 

 

多村は山中と最後のゴールスプリント対決した時に感じた気迫や強さ、人間性に触れて山中大地という男がこのチームの希望になり、そして、彼はあの宮崎を越すことが出来る選手だと見切っていたからだ。あの卑劣な手を使って己の勝利のためにしがみつく宮崎浩輔と違って…山中大地はチームを信じ…そして…仲間の想いを背負って一途に勝利を掴めると。それは天と地の差であると感じていたからだ。だから…ワザとデータを取らせないために山中大地を公式戦に出させずにインハイに絞ったのである。それが…彼しか持っていない強さを思う存分発揮出来ると確信していたからである。そして…多村にとって希望であった。 

 

菅原純太は多村が彼に慕っていく姿を見て気分は良くなかった。そして、念のために山中大地のデータを宮崎に送るように強要したがそれに従わなかった。最初は宮崎を勝たせるためにスパイとして働いていたが…途中で山中大地と関わっていくうちに多村の心は変わってしまった。純太はそのことを宮崎に報告していた。 

 

 

 

「キミが…山中さんに崇拝するから…こうなったんだ。それをわかってほしいけどね!」

 

「山中さんはこのチームを勝たせるために不可欠な存在!そして…貴方は兄さんの嫉妬でロードを走っている! 僕には…それがわかりやすかった。だから…貴方は最初インハイメンバーに選ばなかった!いつか…こうなると予想して!そして、あなたが今日佐々木君の代わりに走っているのも事実を勘太さんや山中さんに聞かせるためだ!!」 

 

 

「……。そうかそうか!! キミが正しいか正しくないかは…このリザルトラインで決めようではないか!! もちろん…僕は…宮崎とタッグを組んで…宮崎を勝たせるがね!!」 

 

 

「ならば…僕は…1人でキミ達と勝負する!!」 

 

 

「キミ1人で……。バカかな! キミは!! オレは……兄さんを越えるスプリンターだからね!! 負けはしない!!」 

 

 

「純太!! お前! 正気か!」 

 

 

「兄さん。アンタがいけないんだよ。アンタがいるから僕はいつまでも越すことが出来ない…。なぁ…ならば…兄さん。アンタが多村と組んで僕達と勝負するのはどうかな? それでわかるはずだ!」 

 

 

「純太……。わかった。お前の想いを受け止める。だから…。多村!!こいつらに証明しよう!! どっちが正しいかを!」 

 

 

「勘太さん……。わかりました!リザルトラインまで…全力で勝負だ!宮崎浩輔!菅原純太!」 

 

 

「ププププ。バカだなキミは。」 

「兄さん。アンタを越すのは今この瞬間だ!」 

 

 

宮崎と純太、多村と勘太の3日目のプリントラインをかけた勝負が始まる! 

 

次回話に続く…!

 

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