純太の裏切りにより箱学は根岸、宮崎、桐谷、子安、菅原純太の5人体制に入り沼津南に数的有利を作る。対して、沼津南は多村、菅原勘太、山中の3人で箱学に対抗する場面になる。
勘太は純太に対して唇を噛み締めながら問いかける。
「純太ーー!! 最後に問う!! オレらは仲間じゃなかったのか!!あれだけ…1日目も2日目もサポートしてた時…お前はどんな気持ちだった!!
あと、インハイメンバーに外されてどんな想いをした!!」
「ふん…。あれは全部演技に決まってるじゃない。自転車競技部が発足してた時からずっとね。最初からキミらのことなんて何も考えていないさ。兄さん。」
勘太は純太の答えに対して驚愕の感情でしかなかった。
今まで、共に過ごしてきた弟の裏切りで言葉も出なかった。
「そっか……。わかったよ。お前の気持ち。」
周りにいたメンバー達は山中に視線を送る。
「それが、お前が今まで勘太を超えたいけど超えられない葛藤や純太の自己犠牲精神。そして、何より純太の野望が今の話を聞いて理解したよ。その上で、オレはお前を倒し…沼津南を総合優勝させる!!覚悟しとけ!!」
「大地……。」
「山中さん…。」
(大地は真っ直ぐで純粋だ…。どんな状況になろうが決してあきらめない…。そうオレは大地から教えてもらった…。不可能を可能にする!!
それが菅原勘太の意地だ!!)
勘太は覚悟を決めた眼差しと言動で箱学に挑戦を挑む!
「ならば…調布までのスプリントリザルトまで勝負だ!勘太!!」
「そうこないとな!! 兄さん!!」
2人は一気にスピードを上げてスプリントリザルトを目指して先に進む!!
「あれあれあれ…。いっちゃったな〜。あの2人。プププ……。キモいな〜。兄弟愛とか。」
「何がおかしい!!宮崎!!」
「キミと同じように見えてさー。多村くーん?」
「てめぇ!!」
多村は宮崎の挑発に乗ってしまうが、すぐ山中が止める。
「やめろ。多村。コイツの挑発に乗ったら終わりだ。オレらは今この状況でどうするか考えろ!!」
「!!すみません山中さん…。」
(確かに…山中さんの言う通りだ…。箱学に2人のスプリンターに2人のオールラウンダー。現状…山中さんと僕でこの4人を止めるのはキツイ。それに今日メンバー変更した子安君やデータ不明の根岸さん。データ不足な故に圧倒的数的不利!! どうすれば…。)
「ではっ。沼津さん…。さよなら。キミらはこの地点で優勝の確率は0!!
皆んな!!スピードアップするよ!!」
「いえっさ!!」
箱学達はスピードアップし多村と山中はついていこうとするが、時はすでに遅し。数何十mも離されてしまう。
多村は勘太をスプリントリザルトに出したことに後悔する。
「純太さんの誘惑に惑わされなけば!!」
山中は冷静であった。
「多村。実はな。オレは事前に奥の手を隠していたんだ。これはオレから提案したという訳でないが…オレの腐れ縁の助言でな。」
「まさか…。あの人が?」
「ああ…そのあの人がだよ。」
一方その頃。純太と勘太は多摩川を渡り国道20号線の国立付近を走行していた。スプリントリザルトまで残り7km。
「純太!! なかなかやるな!!」
「兄さんこそ…。まだばてないんだねー!」
「そりゃそうさ…。お前と違ってスプリントリザルトに対しては誰より早く通過したいと思ってるからな!」
「なら!!あと2段上げていくか!!」
純太はギアを2段上げて一気に勘太と差を開こうとするが、勘太はしがみつきながら並走する!
「ほう…2段上げてもついていけるなんて…やるじゃない!」
「そりゃ…。弟に負けたくねーからな!!」
「3日間走って体力も精神も限界のはずなのにまだやれるのは流石だよ!!
だが!僕は万全な状態で走れてる!!下手したら僕が大手町までストレートインだって出来るしね!!」
(確かに…純太の言う通りだ…。コンディションが良いかもしれない…。だが!オレは今!!お前のその腐った根性を正す使命がある!!そのために…オレはお前と戦う!!)
勘太はMAXまでギアを上げて前線姿勢になるシタハンを握りしめて純太に一気に離す作戦に出る!純太も負けじと勘太に対抗する!!
(クソ!!こんだけフルMAXまでギア上げてなるべく空気抵抗を抑えて走ってるのに差が広がらねー!! しかも…気づいたらリザルトラインまであと3kmを切った!! どうすれば!!)
「兄さん〜。僕は全然余裕だよー。まだ僕…6割ぐらいしか力使ってないし…。兄さんは100%使っても僕に差を開けない…。これが実力の差だよ!!兄さん!!」
(図星だ…。そりゃそうだ。体力あるやつが余裕あるのは承知の上だ!!
だがしかし!!ここでくたばるような菅原勘太ではない!!)
勘太は雄叫びを上げながらダンシングしてリザルトラインを目指す!
純太も負けじと勘太と並走しながら走行する。
(クソ!!こんだけやってもついてきてやがる!!)
(兄さん…。その姿。滑稽だよ…。そろそろ終わらせるか…。)
「兄さん。これで終わらせる!!」
「お前…。その体制は!!」
「マネージャーの坂田さんから教えてもらった閃光のように素早くスマートに走る体制と力加減。これが僕が見つけたラストスプリントの実力だ!」
シタハンを構え空気抵抗は最大限に抑え走りにムラもなくスマートに走ることに最大限のスピードと力加減もバランス良く走法を身につけていた。
気づけば150m以上も離れ勘太は悶絶する。
(速すぎて…距離感がわからなかった…。これが純太が編み出したというより…坂田さんから伝授された技なのか……。クソっ……まだだ……まだオレはやれる!! まだ……オレにはやるべきことがあるんだ!!)
すると…勘太の心の中に眠っていた鬼が身に宿す。
目つきが変わりまるで人格が変わったかのように…。
「まだ!!くたばった訳じゃねーよな!!菅原勘太!!ほらっ……いくぜ〜。ヒヨッコが!!」
勘太は先程と違い鬼の形相がごどく純太に迫っていく!!
純太は兄のオーラと気迫に怖気つく!
(これが兄さんの真の姿か!! 前から薄々気づいていたけど兄さんの怒りの沸点の限界を超えた時!!リミッターが解除されたかのように走ることが過去にあった!! これはまずいな!!)
するとリザルトラインまで残り500m地点まで2人は並走。
「おらおらおら!! 待てよー。純太!!!」
「全く…ベロだしながら走るなんて気持ち悪いな!!」
勘太は僅かな意識の中で心で呟く。
(純太よー。オレはお前の気持ちを理解してなくてすまなかったな…。スプリンターなら誰でも1番になりたい気持ちは一緒だよな……。それにお前に負担をかけてしまったことに関しては大変申し訳ない。だが…オレが許せないのは沼津南のメンバー達を裏切る行為をした。それを正す為にお前と戦ってる!!意地でも負けん!!)
残り100m…80m…60m!
「オレは絶対勝つ!!」
「アンタを超える!!」
決着は一瞬であった。
そして、先導車のアナウンスで結果発表される。
「3日目スプリントリザルトの結果をお伝えします。1位沼津南高校ゼッケンナンバー204番菅原勘太選手!2位は僅差でしたが沼津南高校ゼッケン207番菅原勘太選手です!!」
周りの観客達は歓声を浴びる。
「ワンツーで沼津南かよ!」
「しかも!双子対決か!アツイな!」
「クッソ速かったな!」
この結果を聞いた勘太は両手を上げて雄叫びを上げる!
「しゃー!おらー!!」
純太はこの結果に理解をしてない様子であった。
「純太!!オレの勝ちだ!」
「くっ……くそ!!!! 何故だ!! あれだけ1人で練習してアンタに勝つだけを思ってやってたのに何故アンタを超えられないんだ!!」
純太は涙を流しながら勘太を見つめた。勘太は純太の頭を撫でながら勘太の想いを伝える。
「何故。お前が負けたか。それはオレに対しての嫉妬や宮崎のように自己中心的な考えであったからだ。多村は何故…お前を本戦に出さなかったのか今ならわかる。」
「勝ったからって…偉そうに言うなよ…。」
「それは宮崎みたいになって欲しくなかったからこのリザルトラインに挑んだ。ここでお前の道を正しい方に軌道修正しなきゃいけないと心の底から感じたからだ。」
「なら!!何故!!兄さんはロードをやってるんだよ!誰よりも速いスプリンターになりたいんじゃねーのかよ!」
「それもそうだ。だがな…オレはある男から勝つこと以外に大事なことを学んだ。それはロードを純粋に楽しむこと。何より最後まであきらめないこと。そして、強いメンタリティーと闘争力だ。お前ならわかるだろ?」
「山中さんのことか…。」
「ああ。彼は強い。実力や技術はオレらより劣るかもしれないが、このチームの誰より根性があるやつで優しくてたまにワガママ言うやつだけど…オレはそんな大地についていきたい。お前は?」
純太はしばらく黙り込むが涙を拭いて勘太に質問の問いに答える。
「そうだな…。兄さん。ただ兄さんを超えることしか考えていなかったがそれは間違いであったよ。だから…ごめん!!もう仲間を裏切るようなことはしない!! だって…オレら2人いるからツインスプリントが出来るんだから!」
「勘太!!」
2人は仲直りの握手をして純太と勘太の3日目のスプリントリザルトの対決は終焉するのであった。
次回話に続く…。