第6話 ハイケイデンスクライマー!!
北上に勝負を挑まれた山中。山中は2日前のスプリント勝負で筋肉痛になりハンデがありすぎる。それでも勝負をする。
「めんどくさいことになったが… やるしかないよな!」
「あなたの凄いところを見せてくださいよ!! 」
〔こいつ。小柄だけど…闘争心がやべぇ。〕
「では。行きましょうか! 山中さん!」
学校の裏山の傾斜20°もある山道勝負が始まる。 スタートをきるのは菅原勘太。
「大丈夫か? 本当に?」
「ここで引いたら負けだ。勝負に挑まれたなら… 負ける気がしない。」
〔そうか。お前の強さはその闘争心だよな。〕
「では。行きましょうか。」
「ああ。」
「ちょっと待ってくれ! 僕も走っていいかい?? 」
「お前に用がねーんだよ! 中嶋!」
「どチビと山中さんの走りを見たいんですよ!! 」
「去年見ただろ! だが… あれから強くなった僕の実力。 お前に見せてやるわ!」
山中と北上の裏山勝負がスタートをきる。
先に仕掛けたのは北上。
「あれっ…。 どうしたんですか? 初心者クライマーさん! 」
「ちょっと様子見だ! 」
〔とかいいながら… 本音は… スゲーいてーよ。脚がちぎれそうだ…。〕
「様子見ですか…。あなたがしなくても僕はあなたを離して登るよ! あと1.8km!」
〔力で圧倒する気か…。〕
後ろから追走してた中嶋は山中のことを心配する。
〔山中さん…。本当は脚が痛いんですよね…。 こいつ…。去年見たが並みのクライマーじゃありませんよ!!〕
「山中さん…。あなたに一つアドバイスしますよ。山は弱者は堕とされ強者だけが生き残る…。デスマッチなんですよ! 」
〔くっ…。見かけによらず口は悪いやつだな。しかし、ヤツの言ってることは間違えない…。〕
「だったら…。 オレは堕とされないように生き残るわ! そして! お前に勝ちたいからな!! 北上雄介! 」
〔急に雰囲気が変わった! なんだ? このプレッシャーは!! 〕
〔脚がいてーとかそんなのどうでもいいわ。この脚が砕かれようがこいつに勝ちたい。それだけだな。〕
残り1.2km。 両者の差は少しひらいているが北上が先頭を走っている。
〔ち…。なかなか縮まんね…。 ここからは傾斜が少し上がる。20°でもなかなかツライが…ここからは更にツラくなる!! 〕
「さて。そろそろやるか。僕の本気をね!」
「なんだ。隠し玉をここで出すのか…。」
〔このタイミングで北上の本気を出したら…オレに勝機はない…。さて… どうする!〕
「僕は… 傾斜がツラい坂ほど本気になれるタイプなんです。残り約1km。 あなたは… ジ・エンドです! 」
「ジ・エンドになってたまるかよ!」
山中は思い切りペダルを回す。だが… 脚が痛いせいか思ったように登れない。
〔くそっ…。どんどん差がひらいていく! 傾斜が上がったせいか… 脚にくる…。〕
「見てくださいよ! 僕の本気!! 」
「やべぇ…。」
「ハイケイデンスクライム第1弾!」
〔なんだ…。あのケイデンス! 異常だ!〕
〔僕は… あのインターハイを見てあの人みたいな凄いクライマーになりたいとあの人の走りを研究し、一生懸命練習して習得したハイケイデンスクライムだ!〕
北上のハイケイデンスクライムを見た中嶋は驚いた。
〔この走り…。こいつ…。あの人のフォームと全く一緒だ! 山中さん…。 これはやばいです!! 〕
「くそー!!! 速すぎて追いつけねー!」
いつの間にかなりの差がつけられおいあげるのにかなり厳しい状況にたたされた。
「勝ちましたね。この傾斜で堕ちました。僕のハイケイデンス。それに… あの人は勝負する前から脚が限界だった!! 初心者ながら頑張りましたね。」
〔あと500m! 余裕だわ!〕
「動けよ!! オレの脚!! くそー! 」
山中はかなりの差がつけられたせいか…肉体も精神も限界に達した。 下を向いてしまう山中。その様子を見た中嶋は…。
「あなたの勝ちたい執念はどこにいったんですか!!? 僕が知ってる山中さんはこんなところで負けない人です!! たしかに…。北上は実力も経験もあります! しかし、あなたは誰よりもハートが強い方です!! それがあなたの武器であり、誰よりも先に登りたいと強く思う人が最後は勝つんです!!」
「中嶋………。」
「たしかに…。差はだいぶひらいてしまってますが… 逆転できます!! 今の山中さんなら!! 」
「そうか…。目が覚めたぜ! 」
〔そうです! 山中さんならできる!! 僕はそう信じてますから! 〕
〔ありがとな…。中嶋…。 オレは絶対追いついて勝ちに行く!! 〕
「うおおおお!!!!!」
山中は吹っ切れたようにペダルを回し北上の差を縮めにいく。
〔残り100m! 山は勝負は正直だ。肉体と精神が強くないヤツはすぐ堕ちる。だから… 僕は今まで他のクライマー達を堕とした。実力を見せつけることで精神的ダメージを与えることができるからな。〕
北上の後ろから車輪の音が聞こえる。後ろを向いて確認する。
「中嶋が登ってきたのか。」
〔ん? 違うな。青いフレームにジャイアント? 他のロードバイク乗りが来たのか。〕
「よう……。待たせたな…。北上…。」
「!!!!??」
「嘘だろ!! 僕はあなたを堕とした!! なぜあなたがここまで来た!!」
「それは… お前に勝ちたいからだ……。」
〔脚はとっくに限界に来てるはず! 精神的に堕ちたはず! なぜあなたが!! 〕
「はぁ…。ここまでだな……。悔しいが… 脚が限界だ……。 動けね…。」
山中は北上に並んだ瞬間に脚が動かなくなり落車する。脚を痙攣して気を失っていた。
北上は山中の姿を見て呆然としてた。
あと20mの山頂ゴール前で追いついたからである。 後ろから中嶋が登ってきて倒れていた山中のところにすぐ駆けつける。
「山中さん!! 気を失っている…。 今すぐ救急車を呼ばないと!! 」
「……。」
「おい!! 北上!! 病院に電話しろ! 」
「……。」
「何やってんだよ!! 早くしろよ!」
「ああ…。」
その時。山中の意識が戻った。
「やめろ……。オレは大丈夫だ……。」
「山中さん!! 無茶してはいけません!」
「たかが… ちょっとした競争のために大ごとにするなよ……。」
「しかし!!!」
「オレは… 大丈夫だ…。 もう少しこうやって… 青い空を見たいからな…。」
「………。わかりました…。」
「北上…。まだ… 競争中だろ…。今回は… お前の勝ちだ…。 すぐそこが山頂だ…。」
「………。」
北上は黙りながら残りの20mを登り決着がついた。 すぐ歩きながら山中と中嶋のところに駆けつける。
「……。 すみませんでした…。」
北上は頭を下げて泣き目になっていた。
「なんで……。 謝るんだよ…。 」
「僕はあなたが競争前から脚が筋肉痛だとわかっていながら… 無理に競争を押し付けてしまいました…。そして、あなたを見下していました…。 すみませんでした!!」
「競争を受けたのはオレだし… お前のせいじゃねーよ…。 オレが無理しちゃったっていうことだ…。 気にするなよ…。」
「すみません……。」
「だから…。もういいよ…。」
「山中先輩!! あなたは練習すれば凄いクライマーになります!! 僕はあなたと勝負してわかりました! 中嶋が山中先輩のことを認めた理由もわかります!! 」
「褒めてるのかよ…。でもな…。オレは… この勝負でいろんなことを学べた。お前らに追いつきたいって…北上に最初に言われてそう思えた…。」
「山中さん!! 強くなりましょ!! そして!一緒にインターハイに行きたいです!」
「山中先輩! これからよろしくお願いします!! 今まではすみませんでした!!」
「ああ!! よろしくな! 北上雄介!」
山中と北上は握手をした。
「あっ…。ちなみに中嶋ー!! お前は!! 大嫌いだからなー!!! 」
「イケメンなのに残念な男だな! 北上!」
「お前ら… 仲良くしろよ…。」
北上と山中の裏山クライム勝負を制したのは北上。山中は中嶋の一言によって限界まで回し惜しくも負けてしまった。しかし、彼にとって失っていた気持ちを取り戻すことができた。