もう一つのペダル   作:ユーチャロー

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もう一つのペダル 第9話 新たな能力!!

 

第9話 新たな能力!!

 

初練習を終えた沼津南自転車競技部。練習後にマネージャーの坂田から山中に勝負を挑む!!

 

「山中先輩! ゴール前で競えるクライマーはいないですよ w」

「そうなのか? 」

 

「ゴール前はスプリンターやエースの選手が競うことがあります。ヒルクライムは別ですが…。 あなたはこの平坦の400m。あの多村君と競って、勝ちました。だから、あなたはオールラウンダーの素質があると私は思うんです!!」

 

「なるほど…。たしかにオールラウンダーは平坦や坂道。どちらもこなせるからな。」

「そうです! あなたの過去の戦いぶりを中嶋君から聞いてますから!」

 

「あいつ…。余計なこといいやがって…。」

 

「そろそろやりませんか?」

「ちょっと待ってくれ…。今レースが終わったばかりだ。急には無理だ。」

「何言ってるんですか? レースは100km以上走るんですよ。完走するための持久力が必要。山中さんは持久力が弱点です!!」

「持久力? たしかに今まで定期的に運動してた訳でもないし…。」

「そうです! ロードレースは過酷なスポーツとも言われてますから! 」

「そうなのか…。」

 

「ちなみに私は… 静岡県の中でナンバーワンの選手ですからね! 」

 

「えっ? 」

「ナンバーワンの選手に勝ったらかっこいいですよ!! 山中先輩!」

「待て待て。最弱のオレがナンバーワンに勝てる訳ないだろ…。」

 

「男気がないわね…。女子に負けたくないでしょ?誰にも負けたくないという気持ちがありますよね?山中さん。」

 

「たしかにそうだけどな……。 仕方ないな……。わかった。やってやろう。ただし!本気だ!!」

 

「わかってますよ!!」

 

坂田は着替えてロードバイクを持ってきて、校門前に立つ。

 

「制服きてたからわからなかったが… 意外に身体細いんだな…。」

「なに失礼なこといってるんですか! スマートでしょ!」

「たしかにそうだが…。」

 

〔本当にナンバーワンの実力があるのか? 坂田さん…。〕

 

「コースは少し変更して裏山を登り下ったらさっき山中さんが走ってた平坦道に出ます。あとはさっきと一緒です。要するに一周走る感じです。私が1番あなたの実力が確かめたい場所はゴール前の400mです!」

 

「わかった…。では行こうか。」

「ちなみに… 山中さんにハンデをやります。わたしは5分後にスタートします。」

 

「おいおい…。余裕な顔してるな。」

「そうですか? 」

「まぁ…。いこうか。」

 

山中が先に出発する。坂田は5分後にスタートをきる。 坂田は校門前にある木を見た。

 

「バレバレですよ。中嶋君。」

「げっ…。隠れてたのに…。バレバレでしたか…。レースだって聞いちゃったもんなんで…。」

「あなたの話は本当ですか?」

「はい。僕は最初はクライマーだと思っていましたが… ゴール前の勝負では菅原勘太さんや多村に勝ってますからね。」

 

「この目で確かめますよ。」

 

 

その頃。山中は裏山の中腹付近を走っていた。

 

「5分もあればだいぶ差がついちゃうよな。大丈夫かよ…。しかし、余裕な顔してたから勝つ自信がありそうやな。」

 

 

5分後。坂田がスタートする。 何故かその後ろに中嶋がついている。

 

「なんで… ついてきてるの?」

「なんか気になっちゃって…。有未ちゃんの走りが見たくて!!」

「あなたのことは知ってるわ。去年の男子大会で山岳賞をとった『ギア上げの狂人クライマー』ですからね。」

 

「いやー。そんなに有名なんすかー。僕。なら。やりません? 山頂まで!!」

「あなたに興味ないわ。あなたみたいに波離れた登板能力あるわけでもないし。」

「えーー。僕は有未ちゃんのこと好きなんだけどなー。僕が勝ったら付き合う!! 」

「なっ…。 中嶋君。本気?」

「ああ!! 僕はいつでも本気だよ!!」

「正直あなたのこと… 自転車以外興味ないわ!!! 」

「そうこないとな!! 」

 

坂田と中嶋のクライム勝負が始まる!

その頃。山中は山を下り沼津の街に向かっていた。

 

「今頃どこらへんにいるのか? わからんが…いつ来てもおかしくない状況。こうして1人で平坦道を走ってるのは初めてだな。」

 

前にロードバイクで走ってる男がいた。

 

〔悪いが… この人の後ろについて風避けになってもらよう!〕

 

山中はその後ろについて走る。 信号が赤になり止まった。 すると前を走ってた男が振り向いた。

 

〔やべ…。後ろについてたのバレたか!〕

 

「あれ。山中さん。こんなところでどうしたんですか?」

「あれ? 多村じゃん。今…競争してるんだ。」

「だれとですか?」

「マネージャーの女の子とな。」

「………。坂田さんか。彼女は速いですよ。」

「そんなにか? 」

「そうですね。全国レベルの実力の持ち主で女子自転車競技の世界では有名なほうです。」

「マジか…。それ聞いて更に燃えてきたよ!」

「………。一つ聞いていいですか?」

「なんだ?」

 

「僕はあなたのことが嫌いであのレース中に失礼なことを言ってしまいました。人を見下すような態度や発言をする後輩のことを嫌いにならないんですか?」

 

「たしかにな…。お前みたいなヤツは嫌いになるだろう。しかし、お前は仲間なんだ。考え方や価値観は人それぞれ違う。それを尊重していくのが人間じゃないのか?」

 

「そうですか…。」

 

「それより! お前は部長なんだから! 戻ってこいよ!! お前の後ろについて走るのは悪い気がしてきたから! 先に行くからな!」

 

「まってください。僕があなたを引きます。今のあなたでは彼女と太刀打ちできないです。なぜなら、山中さんの実力や技術。体力面を考えて勝てないです。」

 

「それじゃ… 競争にならんだろ。2対1じゃ。」

 

「僕も彼女も同じ考えをしてるかもしれませんが… あなたはオールラウンダーになるべきです。ゴール前のあの闘争心と執念。ゴール前で競う選手に重要な心前です。彼女もあのゴールスプリントを見て感じたことでしょう。だから、勝負を仕掛けたんじゃないんですか?あくまでも僕は山中さんのアシストです。」

 

「そんなこと言ってたな。」

 

「ロード経験者ならわかります。僕はインターハイであなたと一緒に走りたいと決心がつきました。何故なら、あなたは…。誰にも負けない選手に成長できると確信したからです!!」

 

「褒めてるのかよ…。それは… オレが実力ついたら言ってほしかったぜ! 悪いが… 平坦はまだ苦手なほうなんだ…。引いてくれるか!! 」

「そうですね。僕の後ろについて走ってましたからね。」

「ははは……。」

「いきますよ!!」

「おう!! 」

 

山中は多村と一緒に走ることになる。

 

その頃。山頂勝負の決着がついていた。

中嶋は息を切らしながら下を向いていた。

 

「なんだ……。あの登板能力……。女の子と思えない走り……。山中さ……ん。 あれは危険ですよ!! 」

 

山を降りた坂田は山中に追いつくためにペダルを回す。

 

〔ごめんね。中嶋君。君の告白は嬉しかったよ。しかし、今はレース中だし自転車に集中したいの。〕

 

 

平坦区間が終わり、学校まで少し傾斜がある坂道を登る。

 

「学校まであと3kmです。僕はあなたを坂道を登り学校までの400mの平坦まで引きます。 山中さん。脚は大丈夫ですか?」

 

「ああ。多村が引いてくれたおかげで脚のコンディションは大丈夫だ!」

「なら良かったです。 そして… 追いついてきましたね。坂田さん…。」

 

 

後ろから坂田が追いついてきた。

 

「あれ? 多村君? なんで山中先輩のことを引いてるんですか? 卑怯ですよ! 」

「坂田さん…。 あなたはゴールスプリントで山中さんと競うのが目的ですよね。」

「………。図星です!! 」

「山中さんは僕と一回競ったんだ。全力で。あの場所で。君も経験者ならわかるだろ? 」

 

「たしかにそうですね。山中さんは一回全力で走ってますし…。そして、全力の走りを同じ場所でやろうとしてますからね。それより… 多村君は私が来るのを待ってたよね。」

 

「そうだね。やはり予想が的中しました。あなたの走りは見たことありますが…まだ本気じゃないんですよね。」

 

「……。言っときますが…。こう見えて6割ぐらいの力であなた達に追いつきました。全力はゴール前でだすつもりでしたから。」

 

「何故。選手としてやらないんですか。」

「この学校に女子自転車競技部がないから。」

「………。本当にそれだけか?理由は?」

「……。それだけですから!! 」

「そうですか…。山中さんをゴール前の400mまで引くつもりなんで。」

「そうですか…。なら。400mで仕掛けますから。先に宣言しますが。」

「僕をブロックしないのか。」

「ブロックしようがされようが関係ないですから。あなたが目的じゃないので。」

「そうですか。」

 

多村を山中を引いて走るが坂田はそれにひっつくように走る。

 

〔僕が山中さんを引いて良かったです。山中さん1人では無理でしょう。こうなることを予測して良かったです。〕

 

〔多村君。君は頭もキレるし実力もある選手だとわかってる。しかし… 山中先輩も運が良かったですね。多村君に引いてもらえて。〕

 

ゴール前の400m地点。

 

「ありがとな! 多村!」

「この時を待ってました! 」

 

一瞬の出来事である。並走してたはずの坂田がゴール前の400mになった途端にダンシングし、20mも差がひらいた。

 

〔なんだ…。くそはやい!!〕

 

山中も対抗し、全力でペダルを回すが… 差がどんどんひらいていく。

 

〔山中さん。私はね…。『閃光の有未』と呼ばれていたわ。その由来は閃光のように素早く速く走る。先頭で走ってた選手は気づいたら私がゴールしてる。それが私の得意な走り方よ!!〕

 

5秒間で100mの差がひらき絶望的な状況。しかし、山中は諦めていなかった。

 

「なぁ…。諦めてたまるかよ!!! 」

 

山中も必死にペダルを回す。それでも少ししか差が縮まらない。

 

〔オレの脚。動け!! 動け!! 回せ!! 回せ!! オレはあいつに勝ちたい!! 勝たなきゃいけないんだ!! やるんじゃないのか!! 山中大地!! 〕

 

その時。山中の目の色が変わり獲物をとらえるかように今までと違う走りをしてた。

一気に差を縮める。 残り30m地点で両者が並ぶ。 山中の様子を見た坂田は驚いた。

 

 

そして、坂田と山中は同着ゴールした。

 

〔この人…。まさか…。〕

 

「山中先輩? 」

「………。」

「山中先輩。聞こえてますか?」

「………! 」

 

ワンテンポ遅れて山中は気づいた。

 

「あれ? いつの間にゴールしてたんだ。オレ。で…… どっちが1番だったんだ?」

「えっ…。 あっ…。 同着でした。」

「なんだ…。おしかったな…。」

「あと… クールダウンお願いします…。」

「そうだな…。なんか疲れちゃった…。」

 

山中は1人でクールダウンしにいった。

多村もつき、坂田と合流する。

 

「ねぇ…。多村君。話したいことがある。」

「なんですか?」

「山中先輩のことだけど…。」

「山中さんがどうした?」

「彼…… 稀に見る『オーラ』 。人によってオーラが見えるって聞かないかしら?」

 

「たしかにですね。芸能人でオーラが出てる人がいるって聞きますが… 本当か嘘かわからないですが… 。」

 

「山中先輩は… 闘争心と勝利への執着心、諦めない心。その3つが重なりオーラとして力が発揮する。新たな能力を身についてしまったわね…。」

 

「誰だって… 能力は持ってます。山中さんは能力を生み出すことができました。しかも、誰も真似することができない山中さんだけの能力を。」

 

「やはり… 彼はオールラウンダーにすべきだと思います。有未はね。多村君は?」

 

「僕は山中さんは実力。技術。皆さんより劣っていますが… 練習すれば身につきます。何より山中さんの長所は精神力。ロードレースにとって1番肝心な部分を誰よりも優れています。僕もオールラウンダーにすべき選手だと確信してますから。」

 

「なら。決まりだね! 楽しみだね! 」

「ああ…。」

 

〔何故。坂田さんの実力は全国レベルなのに選手に戻らないのか謎が深まるが…… それは後々わかることかもしれない。そのまさかだと思うが…… あいつが絡んでいるのでは?〕

 

 

クールダウンから戻ってきた山中。多村に話しかける。

 

「そうだ。多村。改めて確認させてもらうが自転車競技部に戻ってきてくれるか? 」

 

「そのつもりでいます。僕はあなたにいろいろ教えたいことがたくさんありますし、何より一緒にインターハイで走りたいからです。」

 

「そうこないとな!! 」

「数々の無礼。申し訳ございませんでした。」

「気にするな。あと、明日皆んなに心配かけたから謝れよ。」

 

「はい。あと。やっぱり。あなたが部長になってほしいです。僕にはむいていません。」

 

「……。 やめとく。」

「えっ…。」

「おまえも成長するんだ。そういった意味でもな。オレもだけど… 皆んなで成長していかないとダメだろ。」

 

「たしかにそうですね…。頑張ります。」

「頼んだぜ。多村!」

「はい!! 」

 

遠目で見てた坂田はそんな2人の会話を見て笑顔になる。

 

「良かった! これで問題解決だね。そういえば…… 中嶋君戻ってきてないね。」

 

 

その頃中嶋は…。

 

「うああああん!!」

 

裏山の山頂で坂田に登りで負けた悔しさと告白してフラれた悲しみで子供のように泣いていたのである。

 

 

こうして坂田と対決したことで山中の新たな能力を生み出すことが出来たのである。

 

 

 

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