消された男   作:バハーム

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今回は導入偏となります。
※注意 最初に出てくる司令官は主人公ではありません。


プロローグ

「嫌だ…。起きたくない…。布団から出たくない…!」

 

二段ベッドの下段で少女は布団を頭からかぶって、震えていた。

 

朝が来るのが忌々しかった。どうして、こんな目に合わなければならないのだろう…。

 

「吹雪さん…起きて。朝よ」

 

憧れの女性の声が聞こえるが、それでも少女は動かない。

 

吹雪と呼ばれた少女は、布団から両目だけを出して、いつもと変わらない部屋の天井を見つめた。

 

「赤城先輩…。今日は、お休みしちゃダメでしょうか?」吹雪は赤城の顔を見ずに言った。

 

「駄目よ…」赤城の言葉に彼女は目を伏せた。

 

どうしてこんな事になってしまったのだろう…。吹雪はまだ目覚めていない頭で考えた。

 

自分には、普通の人とは違うところがある。少女の姿でありながら、武器が使えること、それは国の存続をかける宿命を背負っているということ。吹雪はそれを誇りに思っていた。

 

ところが、それを束ねる長ときたらどうだ。出撃をさせれば大破進軍は当たり前。

 

結果が悪ければ、旗艦である者が殴られ、蹴られ、皮膚を焼かれ、男のくだらない欲求を満たすために使われる。本当に、今まで誰も轟沈者、脱走者がいないことが不思議なくらいだ。

 

(いや、違う…。逃げられないんだ、私達は…)

 

吹雪は自らの答えに行き着くと、震えながら用意を始めた。もう、執務開始の時間はとうに過ぎている。これ以上遅れれば、解体どころか、雷撃処分だってあり得るだろう。

 

足が動かない…。それでも行かなければならない。あの男の部屋に…。

 

赤城に促された吹雪は、震える手で執務室のドアをノックした。

 

「く、駆逐艦吹雪、入ります!」宣言をしてから、中に入るための許可を取る。

 

中からの返事はない。これは肯定の合図だ。

 

ドアを開けて中に入る時、赤城が口パクで頑張りなさい、と伝えた。

 

「お、おはようございます!え、えっと、本日はどういたしましょうか!」

 

吹雪は自分の気持ちを悟られることないよう、精一杯の作り笑顔で言った。

 

ガチャンッ!と吹雪の真横で音がする。返事の代わりに司令官が陶器のペン入れを投げつけたのだ。かけらが飛び散って、彼女の体にも傷が刻まれる。

 

「今から出撃しろ…お前一人でな」冷笑を浮かべて司令官が言った。

 

「わ、分かりました…。すぐに準備します」

 

後ろを振り返った吹雪に「吹雪」と司令官が呼びかける。

 

「はい」

 

「撤退は許さんぞ…何があってもだ。命令に逆らうようであれば…」

 

司令官は嫌な笑みをして、机の下のスイッチを押した。

 

天井からモニターが出てきてある一室が映った。広すぎる部屋に横一列に拘束された艦娘たち、彼女らの横には電気ドリルのような機械があり、中には紫色の液体が入っている。

 

「あれは軍上層部が独自に、そして秘密裏に開発した猛毒だ。注射すれば、10秒もたたないうちに死に至るといわれている。良いか?命令を聞かなかった場合や、帰還しなかった場合、脱走とみなしてあの薬を奴らに打ち込む」

 

「わ、分かりました…」そう話す吹雪の顔は真っ青だった。

 

モニターに映っていたのは、まぎれもない自分の妹たちや大切な仲間たちだ。ここで命令に逆らえば、後悔だけでは済まないだろう。

 

「なら行け。お前の代わりなど、いくらでも『作り出せる』のだからな…」

 

にやにやと笑いながら話す司令官の顔が、吹雪にははっきりと分かった。

 

出撃用のハッチの前に立つと、鎖で繋がれた艤装が装着される。燃料・弾薬・魚雷などは、通常の半分以下しか入っていない。ここではそれが普通だった。

 

全てが尽きたら、そこで散れ…そういう意味だ。

 

艤装を管理する妖精が涙を流している。人差し指で撫でてやると、頭をこすりつけて来た。

 

「ありがとう…。行ってくるね!」

力強く言うと、妖精は泣き笑いをしながら敬礼した。

 

「第十一駆逐隊吹雪、出撃します!」

 

そう宣言し、少女は大海原という名の地獄へと、単身で向かっていった…。

 




というわけでいかがだったでしょうか?何分初めての投稿ですので、至らない点もあるとは思いますが、温かい目で見ていただければ幸いです。
次回もよろしくお願いします。
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