別のサイトでオリジナル小説を書いておりました!(言い訳)
それではお楽しみください!
調査団と吹雪を乗せた船は、ゆっくりと停泊場へ流れ着いた。
「敵影などは見当たりません!」
「ソナー、レーダーともに異常なし!」部下たちが、船長である長岡に次々と報告してくる。
「了解。上陸を開始する」
長岡が言ったところで、その様子を見ていた吹雪が「待ってください!」と声をかけた。
「どうした?」
「あ、あの、さっきまで何もなかった海に船のような物体が…」
「ん?…何も見えないが」長岡はそう言って双眼鏡で覗き込んだ。
「いいえ、確かに船が一隻近づいてきます」
吹雪がそう言うので、彼は耳を澄ましてみた。すると停泊場から数キロほど離れた場所で、船が一隻、こちらに近づいてくるのが見えた。
「心配するな。大丈夫だ」
長岡が笑うのを、吹雪は首をかしげて考えた。
なぜ、この人はとても余裕の表情を浮かべているのだろう。もしかして、以前どこかの鎮守府で提督をしていたのだろうか?
その答えをすぐに見つけることはできなかった。
「さぁ、吹雪。鎮守府を案内してくれ」
「は、はい!」
吹雪は今は考えることを止めて、仲間を救出することを第一目標にした。
「こちらです…」
執務室に近づくにつれて、彼女の足取りは重くなった。
中はわずかな明かりしかなく、目視でどこに何があるのかを確認するのは、困難だった。
「あ、あそこにあるのが執務室です」
吹雪は震える人差し指で、奥の明かりが漏れている部屋を指した。この鎮守府で夜になっても明るいのは、今のところここだけだった。
「どうもありがとう」長岡は、吹雪の肩に手を置くと、彼女のほうを見てにやりと笑った。
「えっ?長岡さん?一体何を?」
吹雪がきょとんとしていると、突然ドアを蹴り開けた。中のカギはその衝撃で、無残に飛び散り、もはや使えぬものとなった。
「な、何だ!?」部屋の中にいたのは裸の司令官と赤城の二人。
「お楽しみのところ、すまないなぁ。大本営の長岡だ」
「だ、大本営…まさか、ついに俺の異動の発表が!?」
司令官は目を輝かせる一方で、赤城は苦しそうに声を上げた。
「た、助けてください…。私はどうなっても構いません。ですから、加賀さんやほかの皆さんの命だけはっ!」
「黙れっ!お前は黙って俺の処理をしてればいいんだ!」司令官がそう叫ぶと同時に、長岡の目が見開かれ、男を勢いよく殴りつけた。
「ぐあっ!?…な、何をする!」
「何、勘違いしてるんだこらぁ?誰がお前なんかを、大本営に受け入れるって言うんだ。おぉっ?」
ドスの利いた言葉を長岡は話した。
「なっ!?違うのか!?俺は大本営へ栄転なんじゃないのか!?
これまでの戦果は、報告しているはずだぞ!」
「その戦果に不備があるから、こうして、来てるんじゃねぇか。事情を聴こうと思ったんだが、これは一体何なんだ?」長岡はじろりと司令官を見た。
「そ、それは…」男は口ごもり、目を上下左右に動かした。大粒の汗が床に滴り落ちて、小さな染みが出来上がっていた。
「お前は、艦娘を何だと思っていやがるんだ…」
未だに目線を外さない長岡に、男はたじろいて口が中々開かなかった。
「お前にとって艦娘とは何だ?」
「…道具だ」長い沈黙の後、男は小さく答えた。
その言葉を聞いた長岡の部下の何人かが、舌打ちや眉間にしわを寄せて睨みつけたが、彼はあくまで冷静に言った。
「ほう…。艦娘は道具か…。では、もう一つ。お前のその概念の詳細を聞こう。
艦娘は何のための道具だ?」
「な、何のためって…」
「お前、深海棲艦を見たことはあるか?」
「はぁ?何言って…」
「もちろんあるよなぁ?あんたは提督なんだから」
「い、いや、それは…」
「まさか…無いのか?」
「ありません…」代わりに答えたのは赤城だった。
「ほう…」
「その人は…深海棲艦がどういうものか…艦娘とは何かを理解していません」
「赤城…貴様ぁっ!」
逆上した男を長岡は殴りつけて黙らせる。
「黙ってろ。赤城…事の詳細を教えてくれ」
「は、はい。この人は…いえ、私も含め、この鎮守府に所属する艦娘全員、大本営の皆様を欺いておりました…」
「欺いた…?どういう事だ?」
「今までの報告書はすべて…我々艦娘が提督の命令で、偽装したものなのです」
赤城のカミングアウトに、その場にいた吹雪以外の者たちがどよめいた。
「偽装…。書類の不備は確かにあったが、あれはお前達の意思で書いた物ではないのだな?」
「はい…。私達は姉妹艦や仲間を人質に取られ、その人の言う事を聞くしかなかったのです…」
「なるほど…。報告書の所々が滲んでいたのは、艦娘の涙だったというわけだ」
長岡は男の顔をじろりと見て、中腰になるとこう言った。
「よく聞け。こいつらはただの船じゃない。『艦娘』だ。お前の言う通り、こいつらは道具だ。だが、お前の場合、その意味をはき違えている」
「何だと?」
「こいつらは『人類が深海棲艦に対抗できる唯一の道具』だって事だ。決して、『お前の欲を満たすための道具』じゃない。そこを見誤ったてめぇに、提督でいる資格はない」
長岡は立ち上がって、部下から書類を受け取ると、静かに読み上げる。
「萩原紘一、艦娘に対する過度な出撃、暴力、及び物資横領の疑いで、現時刻を持って柱島鎮守府提督の地位をはく奪し、身柄を拘束する」
「何だと!?貴様にそんな権限があると思うのか!?たかが、大本営の一調査団の分際で、元帥である俺を拘束するだと!?ふざけるな!」
男はそう言ってから逃げ出した。部下たちが追いかけようとしたが、長岡がそれを止めた。
「宜しいのですか?」
「構わん。どのみち、あいつはもう終わりだ」
長岡は唖然としている吹雪に対して、言葉を発した。
「吹雪、様子を見に行ってみろ。面白いものが見られるぞ」
彼はにやりと笑い吹雪は「ふえっ?」と首をかしげて、慌てて彼らと一緒に様子を見に行った。
男は焦った。こんなところで終わるわけにはいかない、一刻も早く逃げなければという気持ちでいっぱいだった。
もともと、軍人になったのも、艦娘という未知の女を抱けるという単純なものだった。
彼が出したどんな無理な命令でも、彼女らはこなしていった。
そのたびに、彼女らは俺の命令なら何でも聞くと錯覚してしまった。
作戦が失敗すれば、旗艦のせいにすればいい。俺はこんな片田舎ではなく、大本営に行ってさらに出世して、さらにいい女を抱くんだと。
岸にたどり着いた男は、自家用のボートのエンジンを必死に動かしたが、全く動かない。
「くそっ!何で動かないんだ!」
「壊れてるからだよ~」
男の真後ろでのんびりとした声がした。彼が振り返ると、海の上に男が一人立っている。
船のライトに照らされて、顔がはっきりと分かった。
「あなた様は…!」
「久しぶりだね、萩原君」
自分の名前を知っている男は、厳しい眼をしていた。
「いつも言っているだろう。『艦娘を軽視するな』と」
「そ、それは…」
「確かに状況によっては、君のしていることは、艦娘が人間であるという事を証明することになるかもしれない。だが…艦娘の同意もなく、行為に及ぶような者に、任せられる鎮守府はない…」
「あ…ああっ…」
もはやこれまでと悟った男はその場にがっくりとうなだれた。
名前を知っている男は、部下に命じて彼を拘束させた。
「…もう出てきてもいいよ」
彼が船に乗せられてから、男は静かに言った。隠れていた吹雪は、思わず身体がはねた。
「あ、あの…あなたは…」吹雪は声を震わせながら言った。
「んー?そうだねぇ。長岡君の上司…といったところかな?」
男は先ほどの厳しい表情とは打って変わって、三本目になりながら口笛を吹いた。おそらくこれが彼の素顔なのかもしれない。
「いやぁ、慣れないことをすると、疲れるね~」
男が伸びをすると、一人の艦娘が声をかけた。
「司令官さん、お疲れ様なのです」
「この声…電ちゃん!?」
吹雪はとても驚いた声を出した。自分が知っている『電』とは比べ物にならないほど、元気な声を出していた。
「吹雪ちゃん、こんにちはなのです。私は司令官さんの秘書艦、駆逐艦、電です。どうか、よろしくお願いします」
礼儀正しく敬礼する彼女に、吹雪はぽかんとしてしまった。
「んぅ?どうしたのです?」
首をかしげる彼女に吹雪はハっとして、慌てて自己紹介をする。
「い、いえ!初めまして。吹雪です。こちらこそよろしくお願いします!」
吹雪が頭を下げると、タイミングを見計らったかのように、長岡の声がする。
。
「吹雪。仲間の監禁場所が分かったぞ。…これは随分とお早いご到着ですね」
長岡は男の方を向いて初めて敬語を使って会話をした。
「あ、あの!こちらの方が長岡さんのお知り合いだと…」
「あぁ、もちろん知ってるさ。吹雪、きちんと挨拶は出来たか?今からお世話になるお方だからな」
「は、はい!あの、この人は一体…」
「このお方はな…連合艦隊司令長官殿だ」
「えっ?…ええええええええっ!?」
吹雪の絶叫が静かな海に響いた。
ここまでとなります!お待たせして申し訳ありませんでした!(待っている人がいるのかは分かりませんが…)
次回もよろしくお願いします!(土下座)