消された男   作:バハーム

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本当に遅くなり、申し訳ございませんでした!
今回は『あの男』が登場します。



第四章 司令長官登場

「れ、連合艦隊司令長官ってあの!?」吹雪はパニックになって長岡に聞いた。

 

「そうだ。…『軍神』だ」

司令長官殿のことは艦娘の間では有名だった。

 

ある日突然に起こった何者かによる鎮守府襲撃事件…。それを一夜にして解決した、まさに『軍神』。

 

それが彼のあだ名。最大の謎は、『誰も彼の本名を知らないこと』だ。

 

「長岡君、実によくやってくれた。僕の目に狂いはなかったね」

 

司令長官は笑いながらそう言った。

 

「それより、どうしました?まさかあなたが直々にこちらに来られるとは…」

 

「いやぁ。僕としたことが、もう一枚書類を君に手渡すのを忘れていてね」

 

「司令官さんは、おっちょこちょいなのです」

 

秘書艦である電にそう指摘された司令長官は、苦笑しながら頭をかいた。

 

「…それで?もう一枚の書類とは?」

 

長岡は、表情を崩さずに、淡々と言った。

 

「ここで話すのも何だし、少し中に入ろうか」

 

司令長官は口笛を吹きながら、のんびりとした足取りで柱島鎮守府に入っていく。

 

長岡と吹雪は黙って後をついて行った。

 

 

 

 

 

 

 「これは司令長官殿!お疲れ様です!」

 

長岡の部下たちは司令長官が近づくと、廊下に二列に分かれて敬礼する。

 

「堅苦しい挨拶は良いよ~。それより、艦娘の皆はどこにいるのかな?」

 

「はっ!赤城さんに聞いたところ、鎮守府の地下室に監禁されている模様です。全員が体力、及び精神面で損傷が激しいと思われます」

 

代表して男性隊員の一人が答え、彼の後に続いた。

 

「そうか…。まずは彼女たちの心の傷を癒やすのが、先決だね……」

 

「仰る通りです。しかし、場所は分かりましたが、その部屋への移動方法は、誰も知らないそうです」

 

司令長官は「そうか」と言いながら執務室の中に入り、前任の肖像画をじろりと見上げた。赤城は彼をちらりと見上げて、また顔を伏せた。

 

金縁の額に飾られた眉毛の濃い男。誰に描かせたかは分からないが、あまりにも美化され過ぎていた。

 

「こういうのはね…こうすれば…」

 

司令長官は肖像画を斜め右に45度傾けた。くぼみに赤の四角いスイッチがあり、怪しい雰囲気を醸し出していた。

 

「ポチッとな」

 

彼がおどけながらスイッチを押すと、部屋の床の一部がまるでパズルのピースのように移動して、地下への空間が現れた。

 

「…イェーイ」

 

「司令官さん、遊んでる場合じゃないのです!」

 

「分かってるよ…。入ろうか。吹雪ちゃん」

 

司令長官はそういうと、自らを先頭に電、吹雪、長岡、そして彼の部下数名とともに地下に降りていく。

 

「随分暗い場所だね……地下なんだから、当たり前だけど」

 

「階段ってこんなに長いのですね……。疲れてきちゃったのです」

 

「おぶろうか?」

 

「いえいえ、そこまではないのです!」

 

司令長官と電のやり取りを、吹雪は羨ましく感じた。

 

(私も所属先が違えば、こんな風に笑えたのかな?)

 

そう思っていたところに彼の足が止まった。目の前には巨大な鉄の門がどっしりと構えられている。

 

「これはまた……随分と頑丈だな」

 

司令長官はポケットからカギを取り出すと、慣れた手つきで一瞬で開けた。

 

吹雪はいてもたってもいられなくなり、ドアが開けると同時に中へと走っていく。

 

「皆、もう大丈夫だよ!」

 

牢屋の中でわずかなうめき声をあげる姉妹たちに、吹雪は声を大きくした。

 

「皆、助かるんだよ……。また、海に出られるんだよ」

 

膝を折って嗚咽する吹雪。

 

「ふ、ぶ、き……」

 

「深雪ちゃん!そうだよ……。お姉ちゃんだよ?」

 

「全員保護準備!」

 

悲惨な状況を見ていられなかった長岡は、部下に指示を出した。

 

「はっ!」

 

部下たちは一斉に艦娘たちの拘束を外すと、地上へと移動させた。怪我が激しいものは担架を遣い、何とか全艦娘を移動させることに成功した。

 

 

 

「さて……今見てもらった通り、現状は決して良いとは言えない」

 

艦娘たちの精密検査が行われている間、司令長官は執務室で、長岡と二人だけで話をしている。

「えぇ。……そうでしょうね」

 

「中には常人離れした能力で、艦娘の心を開く提督もいるが、生憎の所、我々はそうじゃない」

 

「その通りです」

 

「長岡君、君にはこの鎮守府と艦娘はどう映っているのかな?」

 

司令長官は窓際に立って闇へと染まった空を見つめている。

 

「瀕死の重傷を負った患者……。ですが、まだ死んではいません」

 

「ほう……。やっぱり君には他の奴とは違うところがあるようだね」

 

「お褒めにあずかり光栄です。明けない夜なんてありません。……夜が終わればきっと、また朝はやってきますから」

 

彼がそう言ったと同時に、執務室の中に小さな明かりが差し込んだ。そしてノックとともに「失礼いたします」と声がして、検査を終えた艦娘たちが、敬礼をしながら部屋に入ってくる。

 

「司令長官殿。精密検査、すべて終了いたしました」

 

代表して吹雪がそう告げた。

 

「お疲れ様……。では、長岡圭太。君に改めて命じる。……現時刻をもって、柱島鎮守府提督に任ずる。艦隊を編成し、暁の水平線に勝利を刻め!人類のために海の平和を取り戻すんだ」

 

司令長官が、書類を読み上げそういった後で、長岡は最敬礼をした。

 

「……謹んでお受けいたします」

 

吹雪は表情を明るくして言った。

 

「司令官、よろしくお願いします!」

 

 




というわけで今回はここまででございます。実は司令長官にはモデルがいらっしゃいまして、今回その作成者の方に許可を取り、執筆いたしております。
『こういうところが違う』という点は暖かい目で見ていただけると、ありがたいです。
次回もよろしくお願いします。
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