遠野咲は勇者であった   作:はにゅー

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結城友奈にはまったので勢いで書きました。何かご指摘がありましたら遠慮なくお申しつけください


尊い思い出

 神世紀300年9月病室

 

 

 物語が始まったところ申し訳ないけどもう私の物語は終わってしまっている。私の物語はもう過去の物語に成り果ててしまっているからだ。さらに言うと私の物語は本来なら語るに値しないほどつまらなく矮小のものだ。

いわゆる前日談と呼ばれるものにすらなれなかった歴史の影に埋もれる数多ある悲劇の一つに過ぎないからだ。

 そんな名前のない物語にあえて意味をつけるならそう、物語と物語の間にある幕間が妥当なところであろう。だけど、そんな物語でも私はあなたに語らなければならない。きっとあなたにはそれが必要なのだから。

 

 うん?あなたは勇者になって後悔はしていないのかって?それはしてるさ。今まで何度も何度も後悔して、本当にあれで良かったのかと考え続けてきたさ。

 でも、私は例えあの瞬間をやり直せたとしても結局同じ結末を選択していたのであろう。

 なぜかって?それはもちろん

 

 

 

 「私が勇者だったからだよ、友奈(・・)ちゃん」

 

 

 

 さぁ、つまらなくてありきたりな物語だけど語りましょうか。世界を守るために大切なものを失い続けた四人の愚者(ゆうしゃ)の物語を。

 

 それはあの瀬戸大橋の戦いからわずか一年後の物語。たった数ヵ月の激動の戦いの記録。

 

 

 

 

   神世紀299年9月

 

 華の夏休みが終わり、残暑が残る夏の日差しの中を私と友奈ちゃんと東郷さんの三人で学校に向かっていた。

 

 

 

 「あ"つ"ーい"。暑すぎるよー」

 「咲ちゃんは暑さに弱すぎるのよ。『心頭滅却すれば火もまた涼し』よ」

 「いやいや東郷ちゃん、集中して涼しくなれるならとうの昔にやってるわよ」

 「あはは、咲ちゃんは本当に夏に弱いねー。私は好きなんだけどなー夏。なんか燃え上がれー!って感じで」

 「うるさーい、誰がなんと言おうと私は暑いのが嫌いなのー。剣の修練だって空調が効いてるところでやっててたし」

 

 

 

 と私が情けない声を上げていると蝉が喧しいほどの大音量で鳴き始めたのを聞いてさらにげんなりとした。

 

 

 

 「あーくそぅ。夏なんて嫌いだ・・・」

 「またそんなこと言って・・・。咲ちゃんは本当に嫌いな季節多いわよね」

 「えーと、確か夏と秋と冬だっけ?」

 「本当に日本の季節が春だけになってくれたらいいんだけどな」

 「咲ちゃん。我らが日の本は4つの季節に恵まれた世界から見ても美しい国なのよ。それなのに春だけになったらありがたみがなくなっちゃうじゃない」

 「東郷さんなんか話がずれてる気がするよー」

 

 

 

 なんて他愛ない会話をしている間に学校にたどり着いた。私は最後の力を振り絞ってクーラーが効いているであろう教室に向かった。

 

 

〇△□

 

 

授業が終わり、私は剣道部に向かっていた。友奈ちゃんと東郷ちゃんは勇者部というボランティア部に所属している。入学して間もない頃に犬吠埼先輩に誘われたからだ。

 当時の私も友奈ちゃん達と一緒に勇者部に入ろうかかなり悩んだが結局剣道部に入ることを決意した。それでもたまに勇者部の活動を手伝ったりしている辺り私も未練があるのだろうか。そう思うとやっぱりあのときの判断は早計だったのではないかと思う。

 剣道部の部室に着くと先にいた先輩や同級生から視線が集まった。夏の大会で一人だけ個人の部で県大会に優勝したのが気にいらないらしい。確かに入学して早々優勝する新入生は気に食わないだろうなと思い、着替えようとしたときふと気がついた。

 

 

 

 蝉の声がしない

 

 

 

それは異常そのものだった。さっきまで喧しいほどの大音量で鳴いていた蝉がいきなりとんと鳴かなくなることなどあり得るのだろうか。

 私は異常の原因を探ろうと周りを見回したとき更なる異常を目にした。部室内にいた人間や物がまるで時間が止まったかのように止まっていたのだ。それがイタズラではないのは空中でピタリと静止している手鏡でわかってしまった。

 

 

 

 「何?何なのこれ!?友奈ちゃん達は大丈夫なの!?」

 

 

 

 慌てて勇者部に向かおうとしたが突如地震が起き、足が絡まって転んでしまった。

 

 

 

 「一体何が・・・・!?」

 

 

 

 起き上がろうと私は視線を前に向けた時に気が付いてしまった。

 

 

 

 虹色の液体のようなもの(・・・・・・・・・・・)こちらに向かって流れこんでくるのを

 

 

 

 私は茫然としながらそれに飲み込まれた。そうして私の平凡な日常が一旦終わりを迎えた。

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