銀魂×TOV   作:takowasa

7 / 10
7話ができたので、投稿します

ここからゲーム本編の話と合流し始めます。話の展開の仕方が少し変わっているのでご了承ください


その男、非常識につき

異世界に飛ばされた最初の一日から、もう二週間の月日が経っていた。

その間、銀時は毎日、毎日、血反吐を吐きながら、書庫室で書物と睨めっこをしていたが、二週間経った時点での成果はゼロ、未だに手がかりのての字も出てこない。

ただでさえ、勉強や地味な作業が、大嫌いな銀時にとって、リタの家と書庫室を往復し、細かい小難しい文字を見る作業は正に地獄の日々だ。

もちろん、銀時も全く努力をしなかったわけではない。

少しでも作業の苦痛を取り除くためにこれは、ジャンプだァ~、ジャンプだァ~、と、自分に催眠をかけ、読んでみたり、ブリッジをしながら読んだり、本との対話を試みたり、本を縛ったり、放置プレイをしてみたりと、努力の方向性は、完全に明後日の方向だが、彼なりに思いつく限りの手は尽くした。

だが、是っぽっちも苦痛を取り除くことはできず、フラストレーションは溜まる一方。

そんな、調子の銀時はと言うと、今日も書庫室で激闘を終え、リタの家に帰る道中だった。

最初は物珍しかった、アスピオの街の風景も見慣れ、もはや目を通すことなく、銀時は木の橋を渡り、街の隅にあるリタの家に真っ直ぐ向かう。

リタの家の前に着いた銀時は、家のドアノブを握り、ドアを開けると同時に倒れこみながら、帰宅する。

「おかえり」

と、一階で本を読んでいるリタが、出迎えの言葉をかける。しかし、銀時から返答はない。

銀時は、小刻みに震える体を押さえながら、立ち上がり、開きっぱなしのドアを力なく閉める。

目の下には、濃い隈が出来、頬はこけ、げっそりとした様子の銀時。

弱々しい足取りで、ただ床に毛布を敷いただけの粗末な自分の寝床に向かい、銀時は横になる。

「大丈夫なの?」

生気がない銀時の姿を見て、少し、心配そうな表情で問いかけるリタ。

「大丈夫なわけねーだろ……」

帰宅してから、無言だった銀時が、やっと、口を開く。

「頭が変になりそうだ……。毎日、毎日、文字と睨み合いをして、ここと、書庫を往復する生活……もう、ず~~~と、同じ光景と物しか見てない。本と、ジロジロ見てくる不快な街の住民共と、お前のしけた顔しか見てない。どういう状況よォ、これ……」

「仕方ないでしょ。大体、『調べる』なんてことは、そんなもんよ。何百冊もの本を読んで、見落としがないか、読んだ本を読み直したり、そういう地道な作業を積み重ねた先に答えや手がかりは生み出されていくんだから。なんとか、頑張りなさい」

悪態をつく銀時にリタは、気色ばみながらも宥めるような口調で、銀時を窘める……が、尚も銀時は女々しく、長ったらしい文句を垂れ流し続ける。

「お前らは、インドア派で、こういうの慣れてるからいいけどよォ、俺、アウトドア派だから! キャンプとかバーベキューとかガンガンやる派だから! 家の中で黙々と作業するなんて、性分に合わねーんだよ。つーか、調べてる書物の中に本当に手がかりなんかあるのか? もし、なかったらどうすんだ? 俺、調べきる頃には、きっとジジィになってんぞ。手がかり見つかって、さぁ、災厄を見つけて、退治しようって時に老体じゃ、なにもできないよォ、ジジババの体なんてなァ、相撲中継とゲートボールで、手一杯なんだから。それに――」

いつにも増して、喋る、喋る。お前、本当に疲れてんのかよ! と、疑いたくなるほど、銀時の口からは、淀みなく愚痴が出てくる。

あまりのウザさと煩さにリタが、手で耳を塞ごうとしたその時、ドアを叩く音が、二人の耳に入る。

突然のノックの音に銀時の口も急停止する。

ドアを見つめる二人……。一瞬、沈黙が降りた後、銀時は、ドアから、リタの顔に視線を移す。

それに対し、リタは、顎でドアを指し、返事をする。

そんなリタに銀時は酷くめんどくさそう表情を見せるが、渋々起き上がり、ドアに向かい、ドアノブに手をかける。

「へいへーい、今、出ますよー」

言いながら、銀時はドアを開けた。ドアの先には、一人の青年が立っていた。

金髪に青い目を携えた見るからに真面目で、礼儀正しそうな青年。青と水色が印象的な服を身に纏い、肩、腕、足には、鎧が、装着され、左の腰には、西洋の剣が帯刀されている。

その風貌は、明らかに一般人ではなく、騎士のそれだった。

「あ~っと、どちら様で?」

銀時が、青年に聞く。

「帝国騎士団所属、フレン・シーフォと申す者です。ある用件で、あなたに協力を願いたく、ここに来た次第です。あなたが、魔導士のモルディオ殿で、間違いはないですよね?」

フレンという騎士の青年は、応対に出た銀時をリタだと勘違いしたらしく、銀時に確認を取る。

確認を取られた銀時は、すぐさま否定した。

「あー、違う違う。モルディオってのは、俺じゃなくて、部屋の中にいる奴のことだ」

銀時は、部屋の中にいるリタを親指で指す。

「今、呼んでくるから、待っててくれ」

騎士の青年にそう言って、銀時は、リタに声をかける。

「おい、帝国騎士団とかいう奴が、お前に用があるって、話聞いてやれよ」

「騎士が? あたしにー? ……まったくー、何の用よ」

声をかけられたリタは、訝しんだ表情をしながらも銀時と入れ替わる形で、騎士の青年の応対に出る。

銀時は、部屋の奥に行き、自分の寝床のところに胡坐をかき、座る。

リタと騎士の青年が、話し合っている様子を部屋の中から見つめる銀時。

騎士の青年は、なにかを必死に頼んでるようだが、肝心のリタは、あまり乗り気と言った態度ではない。

青年の表情には困惑と焦りが表れていた。

なぜ、あたしが、そんな暇はない、と、リタの冷たい言葉が、次々と聞こえてくる。

リタが応対に出てから数分、まともに取り合ってくれないリタの態度に青年は諦めたのか、一礼をした後、困却とした様子で、去って行ってしまう。

その背中を見送ることもなく、リタは家の扉を閉めた。

そんな光景を目にして、なんというか、いたたまれない気持ちになる銀時。

「おい、なんか、困ってたみたいだけど、手伝ってやらねぇのか?」

銀時がリタに聞く。

「なに、言ってんの? そんな時間、あたしにはないわ。大丈夫よ、わざわざ、あたしが出向かなくても他の魔導士で事足りる用件だったから」

銀時の問いかけにリタは、淡々とした様子で、答える。それに銀時は異議を唱える。

「いいのかよ……仕事、他人に押し付けて。お前、国直属の魔導士なんだろ? ちゃんと仕事しろや」

「ヒモみたいな生活してるあんたに言われたくないわ」

「うぐッ!」

異議を唱えた結果、リタから手痛い一撃をもらう銀時。

「おっま……。それを言うんじゃねーよ、俺も薄々感じてたけどよォ……」

意気消沈とする銀時。

「余計な口答えするからよ。自業自得」

リタは頬笑みながら銀時に言う。

そんな呑気な会話をした後、いつも通り、二人は、銀時が作った晩飯を食べ、風呂に入り、寝床につき一日を終える。

銀時は明日も書庫室に行き、リタは、得体のしれない研究に精を出す。そんな、平坦な日常が明日も続くと、二人は思っていた。

だが、違った、銀時とリタの日常は、ある3人と一匹の来訪者によって、大きく急激に変化していくことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

~翌日~

 

 

朝、天候は晴れ、気温は低めで、少し寒い。最初に目を覚ましたのは、銀時である。

起きた時間は地球で言うところの朝の8時、早起きが苦手な銀時が目覚まし時計なしで、この時間に起きたのは珍しいことだ。

銀時が起きて、最初に感じたのは尿意。起き上がり、真っ直ぐ厠に向かう。

途中、本に埋もれながら寝てるリタの姿が目に入ったが、銀時は、特に気にすることもなく、厠の扉を開け、個室に入る。

そして、放尿を開始、銀時が、正に至福の時を過ごしている時、家のドアの外では、すでに招かれざる客が来訪し、事態は動き出していた。

だが、異変が起きていることなど、個室で用を足している銀時にはわからない。

厠で、出すものを出しスッキリした銀時は、厠を出る。

次にやることはもちろん……二度寝だ。早起きした分、何か時間を有効に使おうなんて、考えは、彼にはない。

そして、寝床に戻ろうとした時、ようやく、銀時は、外の異変に気づく。

ドアから物音が聞こえるのだ……誰かがドアノブを弄る音、それだけではない……外からは、誰かを注意する女性の声と、少年の高い声が、銀時の耳に入る。

その直後、ドアのロックが外れる。 ドアノブが回され、ドアが開かれようとする。

それを見た、銀時は、反射的に壁に立てかけていた洞爺湖を逆手に持ち、恐るべき速さで、積み重ねられた本の壁と柱の所に身を隠す。

扉が、開かれ、人影が入ってくる。まず、最初に入ってきたのは、男だった。

男の顔は青年と言った感じで、女性のように髪を腰まで伸ばし、黒い服を身に付け、左手には、鞘に収められた、柄の白い刀が、ぶら下げられている。

次に入ってきたのは、見た感じ、11から12歳ぐらいの小柄で、臆病そうな少年。

明るい茶色の髪に背丈に似合わない大きい鞄を体にかけている。

そして、最後に入ってきたのは、桜色の髪のおとなしそうで、優しい物腰の白とピンクのドレスを着た少女……と、青い体毛に煙管を銜えた隻眼の魔物の狼だった。

長髪、長身の刀を持った男にでっかい鞄を引っ提げた小柄な少年と、お姫様のような少女、そして、魔物みたいな狼……ものすごく、珍妙な集団である。

最初に口を開いたのは、少年だった。

「すっごォ……。こんなんじゃ、だれも住めないよ~」

部屋の惨状に絶句する少年。

「その気になりゃあ、存外どこでだって、食ったり寝たりできるもんだ」

部屋の感想を言う少年に男は低い声でそう返す。

「ユーリ、先に言うことがありますよ!」

桜色の髪の少女が男に注意をする。少女の発言を聞くに長髪の男の名はユーリと言うらしい。

「こんにちは。お邪魔してますよォー」

少女に窘められると、男は棒読みで、適当な挨拶をする。

「鍵の謝罪もです」

そんな男に少女は更に注意を促す。

「カロルが、勝手に開けました。ごめんなさい」

男は、尚も態度を変えず、棒読みで、誠意のない謝罪をする。完全に舐めきられている。

「もう、ユーリは……。ごめんくださ~い、どなたかいらっしゃいませんか~?」

いくら言っても真摯に挨拶も謝罪もしない男に呆れたのか、少女は自分で、挨拶をした。

だが、リタは本の山の中で熟睡し、返事をするわけもなく、身を隠している銀時も自分の場所を晒すような真似はしない。

少女の言葉は、誰にも拾われず、空しく消える。

「居ないんなら好都合。証拠を探すとするか……」

住人がいないと判断したのか、男はそう言って、少年と一緒に部屋を物色し始める。

そんな、3人組のやり取りを見ていた銀時は、物陰に隠れながら状況を整理し、冷静に思考を巡らせていた。

相手の目的はわからないが、勝手に他人様の家に入るような連中……善良な市民というわけではないはず。

とりあえず、あの人畜無害そうな少女と間抜け面の少年は置いといて、一番、警戒すべきは、刀を持った男と、狼のような魔物だ。

まだ、気づかれていない、見つかる前にこちらから先手を打とうか……そんなことを銀時が考えている時、長髪の男が、こちらに向かってくる。

銀時は姿勢をさらに低くし、床に這いつくばる。顔は一層、険しくなり洞爺湖を握る右手にも自然と力が入った。

長髪の男は、真っ直ぐ銀時の隠れている場所に向かう。

止むを得ない……出て、不意打ちを仕掛けよう、銀時がそう思った時、リタが目を覚まし、起き上がった。

突然、本の中から出てきたリタの姿を見て、一瞬、固まる男と、少女と、少年。銀時も動きが止まる。

「ぎゃあああァァァァ! あう、あう、あうあうあう」

少年は目を剥き、悲鳴を出しながら尻もちをつく。だが、ビビりながらも少年はすぐさま立ち上がり、長髪の男の背中に隠れた。

「……うるさいのよ……」

低い苛立った声で、リタはそう呟くと、詠唱の構えをとり、足元に赤橙色の魔法陣が現れる。

それを見た瞬間、長髪の男は駆け足で横に退避する。動けず、取り残される少年。

「えっ? あれ……ちょっと!」

自分を守る壁がなくなり、狼狽する少年。

「泥棒は……」

「うわぁぁぁっ! ちょっと、待ってッ!」

少年が止めてと叫ぶが、そんなもので、リタが止まるはずもなく、詠唱を完了させ、火の玉が作られる。

「ぶっ飛べ!!」

リタの大声と共に火の玉が少年目掛けて飛ぶ。

「いやぁぁぁぁッ!」

少年は、悲鳴を上げながら爆炎に包まれる。

山積みにされた周りの本も巻き込まれ、吹っ飛び、銀時が隠れれていた本の壁も崩れさり、銀時は本に押しつぶされるかの如く、本に埋もれる。とんだ、とばっちりである。

「げほっ……げほっ……ひどい」

ファイアーボールをもろに食らった少年は咳き込みながらもなんとか生きていた。

「お、女の子ッ……!?」

リタを男だとでも思っていたのか、リタの顔を見て、桜色の髪の少女が驚いた表情を見せる。

「こんだけやれりゃあ、帝都で会った時も逃げる必要なかったのにな」

いつの間にかリタの後ろに回り込んでいた長髪の男は言いながら、鞘を飛ばし、刀を抜き身にし、リタに付きつける。

しかし、刃を突き付けられながらもリタの表情には焦りも動揺もない。至って冷静だ。

「はぁ? 逃げるって何よ。なんであたしが、逃げなきゃなんないの?」

リタの疑問は当たり前だった。なぜなら本人は、誰かに追われるような悪いことなど、何もしていないからだ。

リタが、男の言っている内容の事など、理解できるはずもない。

「そりゃ、帝都の下町から魔導器《ブラスティア》の魔核《コア》を盗んだからだ」

男は平然とした様子で、リタの疑問に答える。

「いきなり、何? あたしが泥棒ってこと? あんた常識って言葉知ってる?」

身に覚えのない罪を着せられ、内心、憤りを感じながらリタは、皮肉交じりに男に言う。

「ま、人並みには」

涼しい顔で男はそう返すが……人の家に勝手に侵入し、それだけでは飽き足らず、その家の住人を泥棒扱いし、挙句、刃を突き付ける……誰が、どう見ても男の行動は常軌を逸している。

男のその言葉を聞いたリタは、鼻で笑い、言った。

「フッ、そう……じゃあ、常識人のあんたにいいこと教えてあげる」

「ア?」

リタの言葉に男は怪訝な表情を見せる。

「敵は、『一人』とは限らないわ」

リタがそう言った瞬間、大量の本に埋もれていた銀髪の男が、洞爺湖を逆手に持ちながら凶悪な笑みを顔に携え、勢いよく姿を現す。

「ユーリッ!!」

桜色の髪の少女が、叫ぶが、もう遅かった。

一瞬のうちに銀時は、男の左手首を左手で抑え、刀を振らせず、さらに男の首を逆手に持った木刀の峰で押さえ付け、動きの自由をほとんど奪う。

その光景に男の仲間の少女と、少年は、色を失い、立ち尽くす事しかできない。

「動くなやァ、とりあえず、兄ちゃん……この左手に持ってる物騒なもん……捨てようか?」

「――ッ! もう一人……居たのかよ」

銀時はそう言って、男の左手首を更に強く締め上げる。締め上げられた男の左手は耐えきれず、刀を床に落とす。

床に落ちた刀を銀時は蹴り、リタの足元に転がした。

「ナイスだわ、銀時」

リタは刀を拾いながら、銀時の見事なまでの手際に口元を緩め、賞賛する。

「で、てめーらは何なんだよ? 金目の物が目的って感じでもねぇみたいだし……一体、どういう了見で、他人様のモーニングぶち壊しに来たってんだ?」

銀時の質問に桜色の髪の少女が答える。

「あ、あの! これには、色々訳がありまして……」

銀時にそう答える少女の表情には焦りが見られ、声も少し震えている。

「色々じゃわからないわよ。もっと具体的に説明して」

訝しんだ顔でリタが言う。

「えっと、ですね……このユーリと言う人は帝都から魔核《コア》泥棒を追って、ここまで来たんです」

少女は説明するが、銀時とリタからしたらまったく要領を得ない説明にしか聞こえない。

なぜ、帝都の魔核泥棒の件で、無関係な自分たちが疑いをかけられているのか二人には理解できなかった。

そんな納得のいかない二人にユーリが言う。

「その魔核《コア》泥棒の特徴ってのが……マント! 小柄! 名前はモルディオ! ……だったんだよ」

ユーリは唯一、自由に動く右手でリタを指差し犯人の特徴を挙げた。

確かにリタの姿は、ユーリの言う、魔核泥棒の特徴と一致している。モルディオという名も持っていた。

「ふ~ん、確かにあたしは、モルディオよ。リタ・モルディオ」

リタは落ち着いた様子で、自分の名を名乗る。

「背格好も情報と、一致してるね」

呟く少年。

「で、実際のところどうなんだ?」

ユーリは疑念を抱きながら、手っ取り早くリタに真偽を問う。

「だから、そんなのあたしたちは知ら……あぁ~、その手があるか……」

喋りながら、何かひらめいた様子のリタ。

「銀時、そいつ離していいわよ」

「あ? 離して、大丈夫なのかよ……」

リタの言葉に怪訝な表情をしながら、銀時が確認をとる。それに対し、リタは無言で首を縦に振った。

それを見て銀時は、少し間をおいた後、握っていたユーリの左手首を離し、首に押さえ付けた木刀を外す。

拘束から解放されたユーリは、自分の左手首を摩る。銀時にずっと、強く握られていたせいで、左手首は赤くなっていた。

「なんで、俺を解放した? 意味がわからねぇ……質問にも答えてもらってねぇし」

リタの不自然な行動に腑に落ちない様子のユーリ。銀時もリタの行動の意図がわからないのか訝しんだ顔をしている。

「シャイコス遺跡に盗賊団が、現れたって話を今、思い出したのよ。」

リタは言いながら、身支度の準備を始める。

「盗賊団? それ、本当かよ?」

「協力要請に来た騎士から聞いた話よ。間違いないでしょ」

疑うユーリにリタは抑揚のない声で、淡々と答える。リタの言う協力要請に来た騎士とは、多分、前の日にリタの家に訪れた金髪の騎士のことだ。

「なにやってるの銀時? あんたも外出るんだから準備しなさい」

リタはぼーっとして、突っ立っている銀時に注意する。

「あの~、すいませんリタさん……。話しについていけなくて、置いてけぼりになってるのは気のせいですか?」

あまりにも多くの物事が起き、処理が追い付かなくなり始めている銀時の脳。

「気のせいじゃないわ。まぁ、あたしが何を考えて、こんな行動をとるかは、遺跡に行く道中で、説明してあげる……だから、さっさと準備する」

リタは、そう言って、銀時の白い着物を投げつけた。着物を受け取った銀時は不服そうな顔をしながらも渋々、身支度に入る。

さて、部屋の奥でリタと銀時がそんなやり取りをし、外出の準備をしている間、ユーリとその仲間たちは集まり小声で何かを話ている。

「その協力要請に来た騎士って、フレンのことでしょうか?」

少女がユーリに問う。

「……だな。あいつフラれたんだ」

頷きながら少女に答えるユーリ。そんな会話をしてる二人は、どうやらあの金髪の騎士、フレン・シーフォと知り合いのようだ。

「そう言えば、外にいた人も遺跡荒らしが、どうとか言ってたよね?」

少年は外に居た魔導士から聞いた話を思い出したのか話題に持ち出す。

「つまり、その盗賊団が魔核《コア》を盗んだ犯人ってことでしょうか?」

「さあなあ……」

少女はユーリに聞くが、ユーリ自身も真相はわからないといった様子……答えることができない。

そんなことを小声で話してる間に銀時とリタは準備を終えたのか、三人組の前に姿を現す。

リタはローブを脱ぎ捨て、頭にゴーグルを装着した姿に銀時は赤いラインが入った黒い服の上に真っ白な着物を身に付け、着物を片肌脱ぎしているお馴染の姿だ。

銀時の左の腰には洞爺湖が帯刀され、右手にはユーリから奪った白い柄が特徴的な刀……ニバンボシを持っていた。

もちろん、人のほうに刃が向かないように逆手で持っている。

「相談終わった? じゃあ、行こう」

リタは三人組に確認をとり、出発しようとする。

「とか言って、出し抜いて逃げるなよ。あんたら」

ユーリはその低い声色で、警告する。

「来るのが嫌なら、ここに警備呼ぶ? 困るのはあたしたちじゃないし……」

そんなユーリにリタは冷静な態度で、脅しつける言葉を吐く。そして、銀時はめんどくさそうな表情で、鼻をほじる。

「行ってみませんか? フレンもいるみたいですし」

少女はユーリの耳元でそう囁き、提案する。

「捕まる、逃げる、ついてくる、ど~すんのかさっさと決めてくれない?」

リタは両手を小さく広げながら、三人組を急かす。

「……わかった。行ってやるよ」

警備を呼ばれても困ると思ったのか、そう言って、ユーリは素直にリタについていくのを選んだ。

「シャイコス遺跡は街を出て、さらに東よ。出発しましょう」

リタは出発の掛け声を発すると、家の扉を開け出ていく。

少年、少女、魔物の狼がリタに続き、扉の外へ……ユーリもついていこうと、部屋を出ようとした時、銀時が、話しかける。

「おい、兄ちゃん」

「……? なんだよ」

突然、銀時に話しかけられ、ユーリは訝しがる。

そんなユーリに銀時は、右手に持っているユーリから奪ったニバンボシを差し出した。

「てめぇの得物だ。返すわ」

差し出された刀を前にユーリは少し間を取った後、刀を受け取る。

「……どうも」

返してもらった刀を鞘に収めながらユーリは、一言銀時にそう返し、家の外に出て行く、ユーリが出て行くのを確認すると、最後に銀時が、家を出る。

こうして、各々、色々な目的を心中に抱きながら、シャイコス遺跡を目指し、五人と一匹は歩き出したのである。

 

 

 

 

 

 

 

一行は、アスピオの街を出て、シャイコス遺跡へと続く道を歩く。

銀時とリタが、並んで、先頭を歩き、その後ろをついて歩くのが、大きな鞄を持った少年と、桜色の髪の少女に長髪の男ユーリと、魔物のような狼。

さて、そんな道中、銀時は早々にリタを問いただす。

「おい、リタ。もういい加減、説明してくれてもいいんじゃねーの、なんで、いきなり盗賊団が居る遺跡に行くなんて言い出した?」

自分達の身は潔白で、なにも悪いことなどしていない。

ただ、あの侵入してきた三人組を通報し、あとは警備の騎士に任せておけば、事はそれで終わる話だ。

そんな心情の銀時は、疑問をリタに投げつける。それに対しリタは、自分の目的と、行動の意図を説明し始めた。

「目的は一つよ。盗みの濡れ衣を払拭するために本当の犯人共をあたしたちで、捕まえるのよ。多分、盗賊団の目撃があった遺跡に盗賊の仲間やその関係者がまだいるはずよ……」

「別にいいだろ、濡れ衣なんて……。俺たち、なんも悪いことしてないんだしよォ、勝手に奴らに思わせておけばいいじゃねーか。それで、俺たちがどうにかなるわけでもあるめーし……」

銀時はリタの説明を聞くが、リタの行動にやはり納得できないのか、めんどくさそうに文句を垂らす。

「いやよ。やってもいない罪で、人にず~と、勘違いされたまま、恨まれ続けるなんて、想像するだけで不愉快も甚だしいわ」

リタは嫌悪した表情で、銀時の言い分をきっぱり拒否する。どうしてもリタは汚名を雪がないと、気が済まないらしい。

「つってもその~、なんだっけ……シャチホコ遺跡? とか言うところに盗賊がいる保証なんてねーぞ。居たとしてもその盗賊団の奴らはあいつらの追ってる犯人と関係してねぇかもしれねぇし……」

「いるわ。絶対なんて、確かに言いきれないかもしれないけど、奴らはまだ遺跡にいる。そして、高確率で、帝都の魔核《コア》泥棒と関係してるはずよ。あとシャチホコじゃなくてシャイコス遺跡よ」

銀時が不安要素を上げるが、リタは確信し得る根拠があるのか、考えや態度を変える様子はない。

「自信満々だな……おい」

リタの自信に満ち溢れた表情を見て、銀時が呟く。

「あたしも協力要請に来た騎士の話を聞く前から、遺跡が荒らされる事件や街の魔導器《ブラスティア》の魔核《コア》だけが盗られる奇妙な事例がこの短期間で多発していることは耳に入ってたのよ。しかも、これは昨日、訪れてきた騎士の話しから得た情報なんだけど、遺跡で盗賊を目撃した人達が挙げた犯人の顔や体格の特徴と、街で魔核《コア》を盗んでいた盗人共を目撃した人達が、挙げた顔と体格の特徴が一致することが、妙に多かったらしいわ。つまり、最近、遺跡を荒らしまくってる盗賊団と街の魔核《コア》を盗んで回ってる奴らはみんな同じ盗賊団である可能性が高いってわけ。そして、あたしの推測の大部分が事実と合っていれば、これは、帝都の下町の問題だけでは収まらないわ……相当な規模の事件のはずよ」

リタは自分がこれまで聞いてきた情報と騎士から得た情報を合わせ、構築した仮説を銀時に話す。

それを聞いた銀時は怪訝そうな顔で、リタに再度質問をぶつける。

「お前の言ってることが正しいとして、一体、何が目的で盗賊共はそんなことやってんだ?」

「それは……わからないわ。でも、碌な目的ではない事だけは確かよ」

「…………」

リタが銀時の質問に一つ残らず答えた時だ……桜色の髪の少女が、二人に声をかける。

「あの~、すみません」

声をかけられた銀時とリタは歩みを止め、後ろにいる少女のほうに振り向く。

「あ? なんか用か?」

銀時が少女に聞く。

「はい、あの、謝罪が遅れてしまいましたけど、ごめんなさい! 勝手に家に上がり込み、数々の無礼を働いたことをお許しください」

少女は突然、深く頭を下げ、丁寧に謝罪をする。

「あぁ、いいって、別に。もう済んだことだしな……つーか、無礼働いたのほとんど、長髪の奴だし」

誠心誠意、申し訳なさそうに謝る少女に対し、銀時もなぜか、申し訳なそうな様子で少女に言う。

「あたしも別に気にしてないからいいわよ。銀時の言う通り、無礼なのは、あの一番後ろに立ってる男だし」

リタはユーリを見ながらそう言った。

「でも、私も流されるまま、勝手に家に上がり込んでしまったのは事実です……。謝らないと……ほら、ユーリとカロルも」

少女はそう言って、ユーリと少年にも謝罪を促す。

「ご、ごめんなさい……」

少女に促されながら、少年は素直に謝る。だが、そんな子供が謝ってる横でユーリだけは態度を変えず、頭を下げない。まるで、大きな子供の様だ。

「ユーリ! カロルも謝ってるんですよ!」

少女は少し怒った顔で、ユーリに言う。

「魔核《コア》泥棒に礼を尽くす気はねぇ」

ユーリは言って、顔を横に背ける。一体どう育ったらこんなにひねくれるのか……。

「もう、ユーリは――」

「お嬢さん、もういいって、本人がその気になるまで気長に待つさぁ」

ユーリを叱ろうとする少女を銀時は止める。

「それより、あんたらにまだ、名前教えてなかった事、思い出したわ。俺、万事屋をやってる坂田銀時って言うんだ、よろしく」

自己紹介を始める銀時。

「あ、すみません。こちらも名乗っていませんでしたね。エステリーゼと申します。エステルって、呼んでください」

名乗る銀時に対し、少女も自分の名前を銀時に告げる。

「ボ、ボクは、カロル・カペルって、名前。あの狼みたいなイヌはラピードって言うんだ」

エステルに続き、少年も自分の名前を告げ、ついでに青い体毛の犬の名前も銀時に教えた。

「ここって、親睦会か何かの席だったっけ?」

そんな光景を見ながらリタは小さく一言呟く。

リタの無粋な一言は置いといて、自己紹介も終わり、お互いの名前を知った一行からは少し張りつめた雰囲気が取れ、カロルの硬かった表情も柔らかくなっていた。

一部を除き、ギクシャクした空気が取れたなか、歩き続けること十数分、一行の先にはもう、シャイコス遺跡の風化した建物が見え始めていたのである。

 




8話は出来次第投稿したいと思います。
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