試験会場Cにて。
かなりの広さだな。この人数で窮屈に思わないとは。金持ちなんだな。(斉木は雄英が超名門校とは知らない)。
「なんだあの地味メガネ。これは勝ったな)」
「(一人ライバルが減って助かるぜ)」
「「「「(ラッキ~)」」」」
...まあ仕方がない。
確かに僕は地味だからな。というか自ら空気になろうと心がけている
だからこういうことを思われるのは慣れていた。
多少はむかつくが。
今回も目立たずに、試験に受かるとしよう。
さすがに落ちるわけにはいかないからな、順位はこの会場Cで真ん中より少し上を目指す。
よし、やるぞ。
「はいスタートぉ!」
「え?」
いきなりの合図にみんながポカーンとする。
そして一斉に走り出した。
さぁ、始まりだ。
この時はこれから僕が失敗してしまうことなど、考えてもいなかった___
―――――――――――――――――――
「よし、これで31ポイント!」
「40ポイント目行くぞー!」
全員順調にポイントを稼いでいるようだった。
あちらこちらからガッシャ―ン!という機械が壊れていく音がする。
因みに僕は現在42ポイント。
やれやれ、少しペースを上げすぎたようだ。調節していこう。
サイコキネシスで機械同士でぶつけて壊す、という作業を淡々とする。
うむ、4ポイントゲット。
この倒し方は一気に二体以上を倒すため、ペースを遅らせないと真ん中の順位にはなれない。
やれやれ、難しいな。
そして時間が結構な時間が経った後。
地面が揺れ始め、建物の窓ガラスが割れ、僕たちの体の何十倍もの大きさのヴィランが現れた。
あぁ、あの司会者らしき人が説明していたやつだな。
___大暴れするギミックよ。リスナーにはうまく避けることをお勧めするぜぃ!
確か0ポイントと言っていたな。
周りがざわざわし、そして走り始めた。
倒しても倒さなくても変わらない。リミットはない。
なら逃げるが勝ちだというのが全員の考えだった。
ワンパンですごい風が来る。
いい威力だな。
さて、僕も逃げるとし...ん?
「ぐ、ぅう、嘘だろ...!」
砂埃でよく見えないが、そこには僕のことを地味メガネ、と呼んでいた男がいた。
どうやら瓦礫に足をとられて動けないらしい。
...まったく、目立ちたくないというのに仕方がないな。
見捨てて逃げるのも後味が悪い。
言っておくが助けるのはお前のためじゃない、僕のためだからな。
男の上にある瓦礫をサイコキネシスで浮かしてやる。
「お、お前...!」
いいからさっさと逃げろ。口より足を動かせ。
「あ、足が怪我して、動けないんだ...!畜生」
確かに逃げられる怪我ではないな。
ってことはこいつをかばいながら逃げなくちゃいけないのか。
どっちみち足止めするつもりだったが、まぁいい。
この男は背負うとして、ほかに人はいない。建物も壊してもいい。相手はただの機械。
遠慮はいらないのだ。少しストレス発散として相手してやろう。
「おいお前、早く逃げねぇと」
さっきまで浮かしていた瓦礫を音速でぶち当てる。
そうすれば、ヴィランの一部が爆発した。
そのことで危機感を感じたのか(機械に危機感はないかもしれないが)、容赦ない拳が来る。
それを能力を使って方向転換させた。相手のほうに。
あの強烈な一撃を自分で受けたヴィランは、あっけなく倒れた。
ギ、ギギ...プシュー
ついていた赤い光が消えた。
え、弱くないか。
「試験、終了ー!!」
まるで甲子園のサイレンみたいな音が鳴った。
試験終了合図だ。
僕の最終ポイントは48ポイント。少々頑張りすぎたが、まぁもっと上がいっぱいいるだろう。多分。
こうして、入試試験が終わった。
今思えば、もう少しポイントを取るのを控えておけばよかった。
―――一週間後。
通知が届いた。
見事合格だ、と映像の中のオールマイトに伝えられた。
そして、僕がダントツでトップの成績だったらしい。
...what?
はぁ!?
嘘だろう、あんなにも気を使っていたというのに!
『君はヴィランポイント48。レスキューポイントが55だったのさ。ヴィランを素早く倒し、尚且つ強い正義感で動けなかった少年を助けた。君は1位の成績で、雄英高校に受かったんだ!』
映像越しに笑っているオールマイトが恨めしい。そうか、レスキューポイントなんてものがあったのか。うかつだった。
『斉木少年!ここが君の、ヒーローアカデミアだ!!』
はぁ、面倒なことになったな...まぁ受かったしいいだろう。百歩譲って。
こうして、入学実技試験は失敗した。いや受かったけども。