・霊夢視点
「はぁ〜」
私は大きくため息をついた
あの後、「もういい帰ってくれ」と言われて、部屋を追い出された
まぁ確かに怪物食ったなんて聞かされたら、精神崩壊するわ
私は地上に続く階段を見下ろした
長くいつまでも続く階段を見ていると、自分がすごくちっぽけな存在に見えてくる
「本当に良かったの?」
私はクルッと振り返り、紫に言った
足元を見ながら歩いていた紫は、綺麗な顎をクイっと上げた
「ええ、いいのよ。彼にはまだ“真実“を知るには、早すぎるもの」
そう、と私は小さく言った
早すぎた、のだろうか。いや、紫は流楠に全てを話す気は無いのだろう
そう考えると、流楠はとことん可哀想な人だと思えてくる
自分が力に堕ちかけて、怪物を喰って、自分を信じていた人を殺しかけるなんてね
私はあえて歩いて階段を下り始めた
長くいつまでも続く階段を、私はゆっくりと下りて行った
それは終わりがない階段のように思えた
・流楠視点
「はい、あ〜ん」
「あ、あ〜ん」
俺は今凄い状況に置かれている
満面の笑みを浮かべながらおかゆを乗せたスプーンを俺に向けている
凄い状況とはいえ、いい状況かもしれない
いや、普通の紳士からしたら確実にいい状況だろう
だって“あ〜ん“だぞ!?男子が一度は望むあの“あ〜ん“だぞ!?
風邪ひいて、可愛らしい女の子からおかゆを“あ〜ん“してもらえるんだぞ!?
ただし俺の場合は、風邪をひいてではなくて肋骨を折って寝込んでいるのだが
少し悲しい...せめて重症じゃなくてノロウイルスぐらいが良かった
「ど、どうですか?初めておかゆを作ってみたんですが」
「うん、うまい」
おかゆをホフホフとしながらそう答えた
今思えば肋骨折って寝込みますなんてありえないよな
肋骨折ったら外では病院行きだし、もう俺人間じゃないんじゃね?
「おーい!」
「お茶」
この声は...時雨ちゃんか?
反射的にお茶って言っちゃったんだけど
外の世界で染み付いた癖は拭えないよなぁ〜
「肋骨折ったんだってぇぇぇ!」
「ん?うん」
ふすまをバンっと勢いよく開け、時雨ちゃんが飛び出てきた
何をそんなに驚いているんだろう。たかが肋骨じゃないか
...ごめん、嘘ついた、時雨ちゃんと同じ状況になったら俺もその反応になるわ
うん!時雨ちゃんは何にもおかしくない、大丈夫、大丈夫
「ヘェェェ!痛くないの!?」
「めっっっさ痛い」
「あーやっぱり?やっぱり?あははははは!」
その、いくつか言っていい?
まず時雨ちゃんも結構所々包帯巻かれてるけど?
子守役(神楽)はどこに行った!?無断で出てきたわけじゃないみたいだけど
正直怖い、怖いよ時雨ちゃんっ!
「あ〜ん」
「あ〜ん」
また妖夢がおかゆを乗せたスプーンを俺に向ける
そろそろ恥ずかしくなくなってきた
うん、俺も1人の男として喜んでこの状況を受け入れよう。やったぜ!
マジでこのおかゆ上手いな
このとろとろのお米と卵のハーモニーが絶妙なバランスを作り出している
俺卵好きなんだよなぁ〜
ゆで卵とかもめちゃくちゃ大好きっ!
しかし一番はラーメン、ダントツでラーメン、異論は認めるよ?
「なんか夫婦みたいだね?」
「へっ!?」
妖夢が頬を赤く染めつつ、目を見開き時雨ちゃんを見る
おっ!レアな妖夢の表情ゲット!
白い肌が赤く染まっている妖夢スゲェ、可愛い
本当可愛いなぁ、可愛い
「し、仕方ないじゃないですかっ!」
「あははははは!めっちゃ動揺してるぅ〜」
「ぐ、ぐすん」
妖夢が目をこしょこしょとした、ちょっと涙目になってるが見えるんだが
そ、そんな嫌だったか?もう、涙目どころか泣いていい?
「おいっ!何をしている!」
「へ?」
やってきたのは神楽だった
「ねぇ、連れてっていい?」
「どうぞどうぞ」
「ぶー」と半べそをかきながら引きずられて行った
ははは、邪魔者がいなくなったな!
「やぁ、ちょっと失礼するよ」
「あれ?あなたは...」
ふすまを開けてやってきたのは、パーカーを着たイケメンの爽やか系男子
年齢的には25〜30ぐらいか...
博士なのはわかるんだが、なんだか雰囲気が....
「あっ!白衣じゃないですねっ!」
「ああ、そうなんだ」
やべぇ、すげぇイケメンやん...
なんかの読者モデルみたいだ、全人類はもう博士の虜だわ、ホントに
ちなみに、俺と博士は外から来た人同士、しかもあっちの方が年上だから俺はきちんと敬語だ
「君のために薬を作ってきたんだ。あと力の正体もね」
「薬ありがとうございます、力の正体ってなんなんですか?」
渡された薬は錠剤型の薬だった
俺は片手を皿のような形にし、薬を口に入れた後にお茶の入った湯呑みを使って薬を飲んだ
三年ぶりに飲んだわ、錠剤型の薬
永遠亭の薬は粉薬だからな、なんでそうなってるのかは知らない
「怪しい男を拷問にかけたんだ。君に宿った力は闇の波動だそうだ。それ以外は知らなかった」
「闇の波動.....ですか...」
博士はこっくりと頷いた
「その男はどうなったんですか?」
「自ら舌を噛み切って死んでしまったよ」
そうですか、と俺は小さく言った
「闇の波動を俺から取り出すことはできないのですか?」
「現在研究中だ」
俺はまた、そうですか、と言った
闇の波動か。闇力とは違った力なのか
確かに、闇力は紫色で闇の波動は赤黒い色をしていたよな...
それが違いということか
「おっと、そろそろ時間だ。またね」
博士は手首についた腕時計を見る、カッコいい
じゃあね、と言いながら博士は帰って行ったのだった
闇の波動を俺が扱えるのか...
扱えなければ俺は、俺は、また妖夢たちを傷つけてしまう。
もしかすれば、いいや確実に...・・・・・・だろう
クリスマスの特別話を出せないかも...
出せたとしてもクリスマス当日には無理ですね....すいません!