夕方、俺は永遠亭に来ていた
今までの狂との戦いで重傷を負った、霊夢や魔理沙にお見舞いしに来てたのだ
今一番軽症なのは神楽、と言っても骨が14本ほど折れているが
逆に一番重傷なのは魔理沙で、意識不明、内臓ぐちゃぐちゃ、生命力低下などなど...
霊夢も血が足りないし、意識不明だが、このくらいならなんとかなる...らしい
まぁもう見舞いも終わったし、後は俺が狂をどうにかするだけ
手紙は今回俺に来たし、今までの感じだと、妖夢には来ないはずだ
ただ問題は...
俺が狂をどうやって対処するかどうか。存じてると思うが、俺は人を殺せないのだ。人型であれば無理な事もないが、ただの人間、ましては時雨を殺すのは無理だ
色々考えたあげく、やっぱり気絶させて拘束するのが一番いいのかな…
そんなことを考えていると、約束の時間はどんどん近づいていた
今の時間は6:30、約束の時間は7:00
前みたいにライデインを使って痺れさせてから、拘束ってのを試してみるか
俺は背の高い草をかき分け、進んでいく
ゴソッと何かが脚に当たった。大きくて、そこそこ重い何かだ。不審に思って、地面に目を落とす。
そこにあった物は─────
「妖……夢…?」
紛れもなく妖夢だった。銀色でボブカットの髪に、黒いリボン。
暗い青緑色の瞳には光が無い。
人間に比べて白い肌が、血によって赤く染まっている。
白いシャツに青緑色のベストを着た妖夢の細い体に、大きく風穴があいて、血が垂れ流れているようだ。
胸元の黒い蝶ネクタイは血が染みこんでいる。
嘘だ…嘘だこんなこと…
今まで何のために修行を積んできたんだ…大切な人を守るためじゃないのか!
それを殺せないという言い訳で、俺の大事な人が苦しんでいる。許せるわけがない!
「流楠……君……」
「妖夢っ!」
俺は妖夢を抱きかかえる。血が少ないのか、とても軽い
「に…逃げて……ください…………彼女は……勝てる相手じゃ……」
「止めろ喋るな!血が止まらない!」
俺はとりあえず傷口を押さえて止血を試みる
とにかく救急車を…!いや、救急車なんて無い。早く…永遠亭に……!!
俺は妖夢を抱きかかえたまま、浮き上がり、全速力で永遠亭へ
「あやややや?どうしたんですか?そんなに急いで……」
丁度いいところに射命丸が!
「妖夢を永遠亭まで頼む!」
「わかっています」
いつになく真面目でキリリとした表情の射命丸に妖夢を渡す
その時、後ろから短刀が妖夢を狙って投げられてきた
俺はすかさず抜刀、短刀を弾く
射命丸はもう永遠亭へ向かっていて、この場には居ない
安心して"こいつを殺せる"
俺の心には絶望、憎悪、そして怒りが渦まいていた。
俺は多分、自分が思っている以上に妖夢が好きだったのだろう
だから…こんなにも心が痛むのだ
だから…こんなにも殺意が湧くのだ
「あらあら、そんな力を宿らせて。どうしようっていうの?」
狂がそんなことを口にする
爪が食い込む程に握りしめた拳を見る
そこには赤黒い、波動がモヤモヤと渦巻いている
これが…闇の波動か…
今となってはもうどうでもいい…こいつを殺せるならば……!
頭上で、大きな雷が鳴っているのを、俺は如実に感じていた