IS 速星の祈り   作:レインスカイ

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篠ノ之 箒の裁判について
世界中の怨みを買った彼女の裁判だが、裁判所への傍聴席を目的にしたメディアや一般人、国境の向こう側の重鎮などが裁判所に集まり過ぎて現場が混乱。
一時中断し、一週間後に延期された。
また、現場の混乱を避けるためにも、東京ドームを法廷の場として貸し切り、民事裁判、刑事裁判、国際裁判が執り行われた
最大収容人数は5万5千人だが、やはり集まる人数があまりにも多く、法廷をダイヤモンドにまで縮小。
観客席だけでなく、グラウンド外野部分にも大量のパイプ椅子を並べ、傍聴席とした。
また、撮影用カメラだけでなく撮影用機材搭載型ドローンも飛ばし、ドーム外にもリアルタイム放映がされた。
なお、篠ノ之 箒は得体のしれない拘束具で歩く事も出来ず、それによる重量もあるため、台車に載せられ運搬されるという間抜けな図が出来上がっていた。
国内、国外を問わずに放送され、視聴率は前代未聞、空前絶後のレベルに達していたらしい。


第104話 集風 歩み重ねて

あれから、8ヶ月が経過した。

私はIS学園壊滅後に中国に帰り、すぐに軍を退役した。

IS学園が正式に閉鎖され、世界各国の国家代表候補生選抜制度も失われた。

また、ISがこれまで以上に軍事物資として扱われるようになり、若年層に貸し与えたり、それを目指す理由の大半が失われているからだった。

世界中の国家でそういったISに関しての扱いが一新されており、軍人の手に渡り、ある一つの目的のためだけに収束された。

私はそうなってしまうよりも前に軍を退役したことで、代表候補生の肩書を返上、機体も本国に返還したので、そういった制度を改める際のゴタゴタから巻き込まれるよりも前に立ち去る事が出来た。

惜しむ理由は無いわけではないけれど、国の中のゴタゴタに巻き込まれるのは嫌だった。

 

国際IS委員会は、国家を超えた組織ではあったけれど、その騒動に『巻き込まれる側』になってしまっていた。

ここまでの事態にもかかわらず、動こうとしなかったからだった。

その最たる理由は、欧州統合防衛機構(イグニッションプラン)だった。

アジア側で席巻しているIS委員会に対し、欧州側の動きはとても速かった。

IS学園が壊滅したというのが発覚した直後から動き出し、イタリアを中心に欧州各国を結束させ、国家の垣根を超えたISを使用した国際連合軍の編成を発足と共に宣言した。

ISを使用するテロリストに対しての対抗組織を作り出した。

同時に布告されたのが、『封翼(ほうよく)宣言』とされている。

そこまでが半月もかからない程のスピードだった。

 

アジア側はとにかく動きが遅かった。

IS学園を覆う電磁シールドをも粉砕する大型砲撃兵装の存在を知りながらも、なおも動きが遅かったのは『篠ノ之 束と織斑 千冬が何とかしてくれる』という他人任せの願望があったからだと思う。

尤も、篠ノ之 束博士は沈黙したままであり、そもそもが行方不明。

織斑 千冬は明確なまでの大犯罪を犯し、国際刑事警察機構(インターポール)によって逮捕されている。

 

国際IS委員会解体に続いて、日本政府は内部の腐敗によって大量の議員が更迭されたり、逃げているらしく、政権のパワーゲームがなかなか落ち着かなかった。

汚職、贈賄、粛清、糾弾、罵倒、冤罪、弾劾、恐喝で議会の場が作られていたのだから、本当にどうしようもない。

中には過激派組織とも繋がりが生じている人物も居たりなど珍しくもなかったらしい。

利権団体は無責任な罵声を街中で叫んでおり、治安も一時だけではあったが悪化していた。

それをまとめて終息させた現総理大臣も大変だったろうと思う。

 

国際IS委員会も、地図ばかり眺めていたばかりの日々だったらしいけれど、この事態を想定しておらず、何もかもが後手に回っていたらしい。

多くの参考書にも『ISコアは国際IS委員会の名のもとにその全てのコアが管理されている』と記させ、それを公表していたことでそれが嘘であるという点を指摘され、生じた矛盾にこれまた動けなくなっている。

過去にISを用いたテロに遭遇した人物達の声が在れど、黙殺していたからだった。

けれど、もう隠せなくなってしまっている。

学園壊滅と300万人をも超える死者が出ていたことは世界全土に広まってしまっている。

全世界のISコアの10パーセント以上をテロ組織が手にしていることも知れ渡ってしまっている。

 

だけど、それでも(・・・ ・・・・)そんな事態を想定しなかったから、どう対処していいのか判っていなかった。

利益だけを貪り、多くの人を食いつぶしていた人達の混乱は相当のものだった。

その間も、凛天使はアジア圏のあちこちで出没し、気まぐれなテロを働いていた。

民間人の中から突如として展開されるIS相手に対処が出来るわけもなく、被害はあちこちでいたずらに広がっていた。

回数が繰り返されても、対処が間に合っていないのが現実だった。

 

それを考慮すれば、欧州側は事態を想定し、事前に根回しをしていたのかもしれない。

だから、今のような結束力が世界中の手を強硬にでも結ばせた。

 

それは、国連、欧州連合(EU)欧州統合防衛機構(イグニッションプラン)による共同での発言からだった。

凛天使に対する対策として、国境を越えた組織を結成し、テロ組織討滅の案の提示だった。

それでも動こうとする国はそうは多くなかった。

だけど、彼等の言葉に世界中の国が動かざるを得なかった。

『国際テロシンジケートの放置を良しとするのであれば、その国は、その組織と内通しているものと看做す』、その言葉に動かない国は無かった。

その見返りとして凛天使討滅の後に、欧州はコアを含めて全てのIS技術と産業を手放すと公言している。

そこまでして、ようやく世界は動いた。

そこから更に加えられた容赦の無い徹底的な調査により、内通者を例外なく粛清したうえで、凛天使討滅のために結成された国際編成組織軍『不落の楯(ファランクス)』。

世界中のIS搭乗者が、国家代表選手が、編成されている。

国家代表候補生は年齢が若年層に傾いていることで本人の意思に判断を任せるけれど、招聘を拒否する場合は退役ということになっている。

その組織によって、凛天使討滅という大義名分を得た戦争が今も続き…もうじき終わりを迎えようとしていた。

終息すれば世界は…全てのIS技術と開発・産業を手放すことを公約している。

 

「さてと、まったく、アイツは元気にしてるのかしら?」

 

私は空港の搭乗ロビーから窓の外、広がる青空を見上げた。

旅立つには絶好の日和だった。

 

帰国してさっさと軍を退役し、私は実家の手伝いをしながらも貯蓄を増やしていった。

都合を両親にもすべてを話した。

一夏は名を変え、姿を変え、今でも健在であることを。

『ウェイル・ハース』という別人として生きていることを。

そこから私は、再度死に物狂いで日々を過ごした。

高校卒業認定を取得するために、半年かけてこぎつけ、それを獲得した。

国家代表候補生選抜試験の時以上に苦労したけれど、それでも諦めなかった。

 

「メールを送ってくれるのはいいけど、もう少し気を利かせてほしいわね…」

 

私の携帯端末にはウェイルの姿が待ち受け画面に映っている。

送ってきたメールの写真をそのまま利用したもので、アイツが元気に暢気に過ごしている証でもあった。

私が死に物狂いになっている間にも、アイツは街のどこかで釣りをしたり、機械品の修理をしたりしているかもしれない。

もしくはメルクや飼い猫のシャイニィと遊んでいるかも?

 

送られてくるメールの中に添付された写真、その笑顔に励まされ、私は毎日を必死に過ごした。

今すぐにでもウェイルに逢いたい、声を聴きたい。

失った日々の時間の埋め合わせをしたいと思っていた。

両親にそれを話せば、半分は賛同してくれた。

でも、半分は拒絶もされていた。

 

両親が出した最低条件をクリアしなければ、旅立つことを許可してくれなかった。

 

母さんからは、花嫁修業を徹底的に叩き込まれた。

実家の手伝いをして、日々料理の腕は鍛えているつもりだった。

苦手な裁縫だって頑張った。

…掃除もちょっと苦手だけど、いろいろ教わった。

洗濯だって、面倒な仕分けもあるのだと再度教えられた。

 

こっちはこっちで何とかなったけれど、父さんが出してきた条件がキツかった。

父さんからは『学問の修了』だった。

最低でも『高校卒業認定』を求められた。

逢いに行くのなら、それが必要だと。

ウェイルは勉強するにあたり、苦手分野も多かったから、それを収めていれば家庭教師みたいなことだって出来るかもしれない。

そのサポートもできるかも、そんな下心は…無い…こともないかな。

そうやって半年で、高校卒業の認定を獲得した。

 

「イタリア語って本当に面倒だったわ…」

 

濃密な会話なんてまだまだ遥か先になるだろう。

向こう側では生じるであろう言葉の訛りという壁は存在しているだろうけれど、アプリを使って何とかしておこう…。

日常生活程度は何とかなるけれど、その間にも習得目指して頑張らないと。

 

そうやって日々を過ごして半年、私はこうやって欧州へと向かう飛行機に向かおうとしていた。

私がイタリアに来ていると知ればウェイルも驚くだろうとは思うけれど、そういう表情も見てみたい。

そもそも遠距離恋愛なんて私にはどうにも苛立ちが積もる一方だったもの。

メルクとアリーシャ代表も居るから、浮気なんてしないとは思うけど、それでも女としては心配になる。

不定期に送られてくるメールでは、画面の向こう側のことが気になるからね。

 

搭乗口が開かれ、私は手荷物検査を受けてから飛行機へと乗り込んだ。

チケットに記された席に座り、携帯端末の電源を切った。

前方のシート背面にはニュースが流れている。

 

「『織斑 全輝の懸賞金引き上げ』、か…。

生け捕りで2億円、首を取れば1億8000万円か…」

 

「まあ、当然といえば当然の話ね」

 

私が座るシートの隣に、キャスケット帽をかぶる女性が腰を下ろしてきた。

そして、さも当然のように語りだす。

 

「モンド・グロッソ第一回大会に於ける事件の重要情報を意図的に隠蔽した件、それによってフランスを壊滅させた件。

IS学園に於いてセシリア・オルコットを唆し、国際的大犯罪を教唆した件、それに連動してイギリスがすべての国土を失った件。

シャルロット・デュノアを唆しての殺人教唆、それが露見した事によるデュノア社倒産、フランスの二度目の零落。

7月には自らの手での、故意のフレンドリーファイア、殺人未遂。

奴はそのすべてに深く関与していた、捕らえる理由には充分でしょう」

 

「なんで、それを知って…」

 

キャスケット帽をかぶった女性は、濃いサングラスの下から視線を私に向けてくる。

口元は笑っているけど、視線はそんな風には感じさせてくれない…なんなのこの人?

 

国際刑事警察機構(インターポール)には知り合いが居るからよ」

 

声には聞き覚えがある気がした、…それも、この1年以内で。

中国に帰ってからは学校にも通わず通信教育ばかりだったから…家の近辺かしら?

それとも軍の駐屯地?…どうにも曖昧だわ。

 

「まあ、私のことを思い出せなかったとしても仕方ないわね」

 

そう言って女性はサングラスを外し、キャスケット帽を脱ぐ。

あふれだしたのは亜麻色の髪、サングラスの下からはコバルトブルーの双眸が見えた。

…声は聞き覚えが在る気がするけれど、見覚えが在るかというと…ちょっと微妙…。

 

イタリア空軍外務情報部(・・・・・・・・・・・)所属、ヘキサ・アイリーン中尉よ、久し振りね」

 

「…………!?」

 

声を出さずにいられたのは奇跡かもしれない。

とんでもない所で、とんでもない人と対面する事になるとは思ってもみなかった。

 

「そう構えなくて良いわ、アリーシャ先輩が言っていた人がどんな人物なのか品定めをさせてもらっていただけだから。

あ、お店で料理を食べさせてもらったけれど、満足させてもらったわ。

あれならメルクちゃんとも張り合えるでしょうね」

 

思い出した。

ヘキサさんといえば、学年別トーナメントの時に逢った人だったわ。

しかもあの二人の『姉』だと言っていたけれど、実のところはアリーシャさんの影武者みたいな事をしていたような…。

っていうか…私を品定めしていた…!?

 

「な、なんで此処に…?」

 

「言ったでしょう?君の品定めよ。

ウェイル君が微笑みながら語る人物がどうなのか、直接確かめようと思ったのよ。

調べれば中国に戻ってからは、学校にも行っていないみたいだから、引きこもっているのかと思えばそうでもなかったようね。

通信教育で高校卒業の修了認定を獲得するまで頑張っているとはね…」

 

プライバシーなんて言葉は意味を持たないらしい。

その後も私に対しての調査結果を吐くわ吐くわ…もう丸裸にでもされているような気分だった。

もう勘弁してよ…。

 

「そうそう、更識が日本を発ってからどこに行ったかは知っているかしら?」

 

「確か、イタリアに向かうと聞いてますけど…」

 

飛行機が航路へ飛び立った直後からは世間話に興じることになった。

 

織斑 全輝は生死を問わぬ国際指名手配とは名ばかりの賞金首。

懸賞金は日本円にして1億5000万円、それが今日から最大2億円。

世界中の賞金稼ぎが今もあちこち捜しまわっているらしい。

仕留めたら左団扇で過ごせるだろうから、金に目が眩んでるかもしれないわね…。

 

篠ノ之 箒は、拘置所に収監され、一切の反省の様子が見られなかったとか。

『ウェイル・ハースを討つ為に同じ事を繰り返す』と吠えたらしい。

その発言が裁判で足を引っ張り、速やかに最終審判が下された。

とは言え、『外患罪』『外患誘致』は日本の法律では例え初犯だろうと『死刑』が適用されるから結果は変わらないだろう。

そもそも、出所不明の鋼鉄の足枷によって足が繋がれ、逃げる事さえ叶わない、とか。

裁判を終えた翌週には、速やかに死刑が執行されたとかも併せて教えてもらった。

 

織斑 千冬は、千葉県警から国際刑事警察機構に身柄を移送、拘束され、国際裁判で『死刑』が言い渡されたらしい。

全輝を逃がした決定的証拠、テロ組織への資金提供、そして例の二人を旅館から逃がすために事前に計画を算段していたとされる映像証拠も出回っており、もはや逃げ場は無い。

 

あの連中は悪事以外に何も出来ないのだろうかとすら思えてしまう。

 

「そうそう、その三人はイタリアだけでなく、欧州全土から『入国禁止』が出たのは知ってる?」

 

「いえ、それも初耳です…」

 

それもそうなるだろうなとは思う。

そんな人間が国の中に入ってきたら何をしでかすか判ったものじゃない。

ただでさえ国境を越えた先の相手を国ごと崩壊させる危険人物だものね。

相手の心証を利用し自らの手駒にし、相手を動かし、自らは動かず、手を下さず、自身の目的を達成する。

そんな人間に入ってきてほしくはないだろうなとは思う。

実際に、中国でもあいつらの入国禁止のブラックリストに載せられたとか噂で聞いた気がする。

 

「ウェイルはどんな生活をしているんですか?」

 

「気儘に、ね。

ヴェネツィアでは、学友と親しくしていたり、機械いじりとアルバイトに精を出していたり、ね。

勿論、御近所で釣りを介して知り合ったご近所さん達と一緒に釣りをしたりしてるんだけど…頭が痛い…」

 

なんで釣りで頭が痛くなるんだか…?

もしかして悪い人達とつるんでいるとかだろうか?

いやいや、あのメルクやアリーシャさんも一緒に居るだろうから、あからさまな悪人とお近付きになる事なんて無いだろうし…?

あ、もしかして釣りを介して知り合ったご近所さんって、女性ばっかりだったりするとか!?

こっちの可能性はあながち無いとは言い切れないわね、学園でも女子と友人付き合いしてるところは結構見たし心配だわ…!

クラスメイトも、それ以外でも簪、楯無さん、ティナ、ラウラ、シャルロットとかの実例も在ることだし…!

 

「しっかり周りを見張っておかないと!」

 

「なんだか妙な方向でやる気が溢れ出してるみたいだけど…まあ、良いか」

 

浮気なんて絶対に許さないからね…!

 

それからも暫くは世間話は続く。

楯無さんと簪を始めとした日本暗部は日本政府からは完全に断絶し、イタリアへ飛び立った。

その後、バチカンに迎えられているらしい。

ローマ法王の影として活動をしているとか。

時たまウェイルに逢いに行っているとかも教えてもらった。

抜け駆け、ね。油断も隙もあったものじゃない。

 

シャルロット、ラウラ、ティナは国際編成軍に招聘された際に応じ、仕官したらしい。

それぞれが最前線に出たり、遊撃にと忙しくしていたとか。

 

「ウェイルは企業でもアルバイトを頑張っているわ。

この調子なら大学を出た後は正式に就職して、新しい計画にも名を連ね…おっと、ここから先は企業機密ね」

 

「ああ、はい、聞かなかったことにします」

 

サラッととんでもないことを口走ったわね、情報部なのは確かだろうけど、口が滑りすぎでは…?

聞けば相変わらずメルクがベッタリだとか。

ウェイルが釣りに夢中になっている時には、構ってもらえず拗ねてることもあるとか。

そういうところは相変わらずらしい、あのブラコンとシスコンは。

 

「アリーシャさんは?」

 

「例のテロリストを討滅させるための国際編成軍『ファランクス』に正式に配属され、総隊長として奮起してるわ。

私も国に戻れば編入されることになっているの。

メルクが招聘されてしまうよりも早くに戦いを終わらせる、そう言っていたかしら。

人の命が軽い暗黒時代は早々に終わらせたいのは誰だって同じでしょうね」

 

例のテロリスト『凛天使』は全世界のISコアの10パーセント以上を手中に収めた国際的な脅威。

それの早期討伐は誰もが願っているだろうから。

家族を守るために、家族が手を血で染める事が無いように。

 

「欧州全土の更なる発展にあの組織は邪魔でしかないもの」

 

「うわぁ、暗い一面が見えたような…」

 

「その話は此処までにしましょうか。

それで凰 鈴音、イタリアに来て、住む場所は考えているのかしら?」

 

…暫くはホテル暮らしになるだろうとは思って、母さん指揮下の花嫁修業の傍らで死に物狂いで貯蓄を蓄えてきたつもりではある。

それこそ、そのうちにアパートでも借りて、何か仕事を見つけようとは思っていた。

だから、その方面では、着いてから考えようと思っていた。

 

「それは…その…」

 

「仕方ないわね、私が暮らしているアパートに空いている部屋があるから、大家さんに相談してみましょう」

 

「それって、何処に…!?」

 

「『ヴェネツィア』よ、ウェイルに会いに行くのなら都合が良いでしょう?」

 

絶好のチャンスだった。

ウェイルが住んでいる街に、その日のうちに入り込める。

逢いに行くのならこれ以上に好都合な事は無いわ!

 

「アリーシャさんから伝言よ、『未成年なのだから、節度を守った交際にするように』ってさ」

 

「私のことを何だと思ってるのよあの人は!」

 

飛行機の中だというのに怒鳴り声をあげてしまい、周囲の乗客からは冷ややかな視線を向けられた。

CAからもお小言をもらい、私は頭を下げることになった。

ヘキサさんは…この騒ぎの中心点だったというのに、あたかも「他人です」と言わんばかりに新聞を読んでいるフリをしていた。

いい加減私も疲れてきたから寝ようかしらね…?

この先、何度か飛行機を乗り継ぎ、それからイタリアに向かう事になるけど…ウェイルに逢える。

ただそれだけが楽しみだった。

私がいきなりヴェネツィアに現れたらウェイルはどんな反応をするだろう?メルクも驚くだろうなとは思う。

それを考えるだけでもイタリア到着が待ち遠しくてならなかった。

 

失ってしまった6年間の時間を、これから先の時間で満たしていこう。

もう、離れ離れにはなりたくない…!

 

 

飛行機の旅は実際に快適だった。

乗るのはそんなに多くはないけれど、もう慣れた感じもする。

飛行機の中で提供される食事も悪くはなかったけど、それでも何か今一つ足りない。

 

「う~~……んッ!やっと着いたぁっ!」

 

ヴェネツィアから最寄りの空港、テッセラ空港に到着したのは、中国から発って3日経過してからだった。

ウェイルが住む街からは少しだけ離れていて、バスで行き来が出来るけれど…逢いに行くのはまた後日にしたほうが良さそうだった。

今はすっかり夕方だものね…。

 

ヘキサさんに連れられて市街地に入り不動産屋と相談、そして話すこと15分。

 

「はい、コレがアパートの鍵ね」

 

「えぇ…こんなアッサリぃ…?」

 

信じられない程のスピード解決、これにて私はヴェネツィア市のアパートの一室に根を下ろす事が出来るようになった。

どうやらヘキサさんの隣の部屋ということでそのままアパートへと連れられる。

扉の鍵を開き、早速部屋へと入ってみる。

当たり前だけど、部屋の中には家具なんて何一つない。

これは近日中に色々と買い込んだほうが良さそうだった。

 

「家具に関してはいいお店を教えてあげるから後日に行きましょうか。

今日は私の部屋に泊まっていきなさい」

 

「は、はい…」

 

なんというか、今日は流されてばっかりだわ…。

こういう日常も悪くはないんだろうけど…。




国際編成IS特殊部隊『ファランクス』
各国のIS搭乗者、軍人などで編成された国際武装組織。
その第一目的は『国際テロシンジケート:凛天使の討滅』とされる。
現状、国連、欧州統合防衛機構直属の部隊となっている。
総隊長として『アリーシャ・ジョセスターフ』が就任。
副隊長として『ラウラ・ボーデヴィッヒ』が指名された。
また、整備士も各国から招聘、抜擢された。

『封翼宣言』
ファランクス結成と同時に行われた二つの宣言の総称とされた。
1.『凛天使を討滅するにあたり、国境を越えた国際軍事組織を結成する。
だが、これに協力しない国家はその組織と内通しているものと看做す』

2.『凛天使討滅完遂後、ISに関する技術、産業、コア、機体の所有権を放棄する』

というもの。
言わば、ISを所有する国家はテロリスト討滅に力を貸せ、協力しないものは内通者とみなす。
完遂後はISに関する全てを放棄せよ。
というもの。
ISを使用したテロを起こさないための強硬的なものだったが、動かない国はほぼ無かったらしい。
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