IS 速星の祈り   作:レインスカイ

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ヒャッハァッ!
PS5の抽選が当たったぜぇいっ!
さて、ソフトも何か用意しなくては


第52話 険風 流れに

ラウラ・ボーデヴィッヒと話をしてから二日が経った。

朝練を終え、朝食の為に食堂へ向かおうと部屋を出た直後だった。

 

「私も同行させてもらえるか?」

 

長い銀髪に、特徴的な黒い眼帯。

ラウラ・ボーデヴィッヒ張本人が部屋の前に待ち構えていた。

…なんで居るの?

そしてメルクは…

 

「…む~…」

 

俺の左手を握ったまま大層不機嫌になってた。

なんでこうなるの?

 

食堂に移動してから食券を購入。

俺の朝食はシーフードサラダ定食にしておく。

メルクはサンドウィッチとホットミルク、ラウラは…マジで?

 

「朝からシャリアピンステーキかよ…」

 

「うむ、しっかり朝食を食べておくことで、たとえ昼の食事を抜いてでも存分に訓練ができるのだと私の副官から教えてもらってな」

 

「それ、間違ってる気がします…」

 

その副官の肩書を持っている人、大丈夫なんだろうか…?

ここにいない人物のことを考えてもどうしようもないし、どうこうする事も出来ないので捨て置く。

 

サラダの味は…うん、美味しいな。

ミネストローネもおいしいけど、時にはシーフードをしっかりと食べたくなる時がある。

これもお気に入りのメニューとして心の中に記しておこう。

 

「私はあれから教官に接触し、今回の件について訊いてきた」

 

ラウラが語り始め、俺はいったん手を止めた。

織斑教諭についての話であろうことはすぐに察した。

正直、その人に関しては良いイメージを持てないというか、今でも嫌悪感が胸の内に蟠っている。

見たくない、会いたくない、話したくない。

俺の内側に存在している何かがそう叫ぶ

 

カカワルナ

 

アレハキュウキョクノタニンダ

 

そんな声が聞こえてくる気がしてならなかった。

 

 

「自ら動かず、ウェイル・ハースが自身に接触してくるように画策していたようだ」

 

「残念だけど、その目的は叶わなかったな。

俺自身が接触をするつもりも無いし、そもそも接触したくないんだ」

 

「そうです、会う必要なんて在りません」

 

メルクもご立腹の態度を見せながらサンドウィッチを味わいながら食べていく。

その様子を見ながら俺はコンソメスープを飲んでみる…胡椒の味が少し強いな。

 

「…話の続きだ。

なぜそのような画策をしていたのか問うてみたが、返答は無かった」

 

「無視されたって意味か?」

 

「違う、『答えられない』といった感じだった。

そして、答えられない理由についても、答えを返してもらえなかった」

 

ふぅん…。

答えない理由も、答えられない理由も言えない、か。

俺には直接関係している理由なのかは知らないが、なんか危険要素含まれているような気がするから、猶のこと接触するのは止めておこう。

 

「それと、もう一つ判った事がある」

 

「なんですか?」

 

そこから先は、正直驚くような話でもなかった。

何しろ、もともとは噂話として耳に届いていた話であり、最初にそれを聞いてから二か月近く経過してから確信と裏付けができたというものだからだ。

 

「織斑教官は、他の教員から監視を受け続けている」

 

「…へぇ…」

 

うん、サラダに入っているトマトが甘酸っぱくて美味しいなぁ…。

 

バン!!

そんな大きな音。

ボーデヴィッヒが力の限り強く机を叩いたらしい。

挙句、眼帯で覆われてない側の目を吊り上げ

 

「…それだけか!?

貴様の反応は!?

重大な話をしているのに何なんだその反応は!?

織斑教官が!

周囲から監視され続けているという重要な話なんだぞ!」

 

と捲し立てる。

 

いや、だって半分は知っているような話だったから…。

今になって確信と裏付け得られても『へぇ』とか『やっぱりか』としか言えないって。

そもそも嫌いな人の話だから猶更そう思えてしまうんだよ。

 

「監視されている、という件ですが、元々は噂話にもなっていたんですよ」

 

「で、その話がこの場で多くの人に知れ渡ったな」

 

「…む…」

 

何しろ朝食を食べに来た生徒や教職員が大量に来ている朝方の食堂だ。

今のボーヴィッヒの叫びは食堂全体に広がっている事だろう。

とはいえ、これ以上はゴタゴタに巻き込まれるのは嫌なので、サラダを掻っ込み、コンソメスープで無理矢理に流し込み、そのままトレイと食器を返却場所に突っ込んで食堂から走って逃げだした。

そんなことをすればどうなるか。

 

「気持ち悪ぃ…」

 

教室に到着した頃に胃袋にダメージを負ったような状態になるのだった。

隣の席のメルクも

 

「私もです…」

 

似たような感じになってしまっていた。

食後の運動、どころではなく過度な運動は身体に良くないってのは病院生活してた頃に学習してた筈なんだがなぁ…。

で、なんか周囲の視線が妙な感じなんだが…。

 

「…」

 

「…ねぇ、あの噂って本当なのかな…?」

 

「…でも、プロイエットの件もあるし…」

 

「…だよね、だけど…」

 

「…うん、結局ウェイル君も…」

 

なんか、危険視されてないか?

こんな視線向けられるようなことしたっけ?

いや、覚えが無い。

 

「はい皆着席しなさい、SHRを始めるわよ!」

 

ティエル先生の登場により、嫌疑を向けられた視線は途絶えた。

だけど、休憩時間毎にも妙な視線が突き刺さるのを感じた。

これに関してはメルクも感じとっているのか、不機嫌になりながらも俺の予習復習に付き合ってくれていた。

 

「それでそんな視線が嫌になって、お昼休みに生徒会室に来たの?」

 

生徒会室に来て事情を話したら、簪がそう労って…あれ?労ってくれてるんだよな?

日本独特の緑茶の香りが生徒会室全体に広がった頃に、俺は朝からの事情を伝え終わった。

 

「へぇ、相変わらず回りくどい手を使うのが好きな奴よね。

まぁたそうやって気に入らない相手を踏み躙りに来たって事か、使い古されたワンパターンな奴よね」

 

鈴も頬杖をつきながら俺の話を訊いていた。

というか、こういうのを知っているのか。

 

「どういう事かしら、鈴ちゃん?」

 

「私が小学生、中学生の頃に、ありふれた話だったのよ」

 

聞けば、織斑の野郞が『気に入らない』と思う相手の話を捏造し、それを流布するのだとか。

噂話というのは、得てして尾鰭背鰭がつくもので、噂が誇張され、発信者も特定が極端に難しくなる。

そうやって周囲から悪い心証を持たせては孤立させるのが織斑の常套手段らしい。

 

「簡単に噂を調べてみたけど、『ウェイルが寮の部屋に大量の危険物や爆発物を持ち込んでいる』って話になってるわね」

 

持ってないんだがなぁ。

 

「噂の発信者は誰ですか?それと何か証拠は?」

 

不機嫌なメルクが鈴に視線を突き刺している。

この視線には俺も僅かながら恐怖感が…。

 

「発信者は全輝、残念だけど証拠は無いわ。

あいつの普段からのやり口だって事くらいよ」

 

直接手を出してこないから面倒事にならなくてラッキー、なんて思っていたらコレかよ。

だけど、所詮は噂話だろうし、そう遠くない内に無実は証明されるだろう。

 

「ウェイル君、忠告しておくけど、そのまま放置すれば良くない方向に向かうかもしれないわよ?」

 

「どういう事ですか?」

 

楯無さんが微妙な表情をして俺に視線を投げてくる。

言っている事の意味がよく判らない。

鈴は察しているらしいが…察しの悪い俺に苦笑いしている。

 

「陰湿な奴も居るのよ。

噂だけをあてにし、誹謗中傷だとかを平然とやらかす者も今後は出てくると思うから警戒した方が良いわよ。

私はそういう奴を何人も見てきたから」

 

………そういう事かよ。

学園外では国際IS委員会に凜天使、学園内部では織斑に名も知らぬ誰かから睨まれる、と。

俺が何をしたって言うんだよ…。

 

「何かあれば相談してください。

我々生徒会は、生徒の安全を守るのが責務ですから」

 

虚さんの一声に感謝しながら昼休みの残り時間を生徒会室で過ごす事にした。

 

 

何事も無ければ良い。

そう思っていたのに…どうにもそんな気安い願望は平然と打ち砕かれるものらしい。

物騒なものを持っているわけでもないのに、『危険物を持ってる』だとか『爆弾を学生寮に仕掛けてる』だとかそんな噂をたてられるというのは…。

平穏な学園生活を送れるようにしたいんだけどな…。

いや、世界屈指の女子校に放り込まれている段階で『平穏』とはかけ離れているか。

 

そんな事を考えながら一日を過ごし、放課後になる頃には精神的にグロッキーになっているわけだ。

 

「ねえ、そこの君」

 

下駄箱でスニーカーに履き替えたタイミングでその人物は現れた。

濃い金髪に、アメジスト色の双眸を持つ男子生徒。

確か、名前は…

 

「これからアリーナで起動訓練をする予定なんだけど、一緒にどうかな?」

 

シャルル・デュノア。

フランスで発掘された男性搭乗者だった。

 

 

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

校舎の入り口で声を掛けてきた人に、私も視線を向ける。

男子生徒はこの学園内には僅か三人だけ。

それは既に誰もが知っていますけど、それぞれクラスは別でした。

シャルル・デュノアと言えば、鈴さんのクラスに編入してきた人物だった筈ですが……。

それにフランスと言えば、その国は悪名が広がっているのに何故この学園に生徒を送り込んできたのがも判らない。

 

「どうする、メルク?」

 

「……どうしましょうか……?」

 

お姉さんにも相談してみましたが、『産業スパイ』の可能性が捨てきれないと危険を示唆されてもいますけど…。

でも、目につかない場所でコソコソされるのも気が滅入りますし…。

 

「………やむを得ないですね」

 

「え?その間は何……?」

 

この人、疑われているのを自覚しているんでしょうか?

それともこれがこの人のデフォルト?

 

 

 

アリーナの更衣室で着替えた後、グラウンドに出てから互いに機体を展開する。

私の嵐星(テンペスタ・ミーティオ)、お兄さんの嵐影(テンペスタ・アンブラ)、そしてシャルルさんの

 

疾風の再誕(ラファール・リヴァイヴ)か…」

 

その機体は朱色(バーミリオン)にペイントされたものでした。

奇しくもお姉さんの機体と似たカラーに胸の内がモヤモヤします。

 

「通常のカタログとは随分とスペックが違うみたいだな」

 

「ああ、うん。

リヴァイヴの通常装備を外して、色々と追加搭載させてあるんだ。

銃火器だけでも20位は搭載してたかな」

 

「近接用のはどうなってる?」

 

「ブレード『ブレッドスライサー』と、『シールドピアース』を」

 

お兄さんは暢気に機体についての話をしてますし……。

些か緊張感に欠けてるような…。

 

「メルクちゃん、そんな不機嫌そうな顔をしないの♪」

 

楯無先輩が私の眉間に指をあててグリグリしてくる。

確かに私が不機嫌そうにしていたら、お兄さんも気分を悪くするかもしれないです。

お兄さんについては、元気も暢気も心得ている私はもっと普段のペースでいかないと!

 

「ねぇ、早速だけど模擬戦をしてみようよ」

 

「は?待て待て、いきなり何を言って…」

 

「そこまでにしてください」

 

お兄さんが最後まで言うより先に私が間に入り込んだ。

置いてきぼりの状況が気に入らなかったのも確かですけど、今回の訓練で戦闘は計画してなかったです。

それに

 

「お兄さん、機体のメンテナンスはどんな感じですか?」

 

「…まだ完全じゃないな、今日の授業でも稼働させていたし、点検しておきたい所も残ってるよ」

 

お兄さんも事前に用意していた理由もありますから。

 

「そっか、ならまた次回に持ち越しかな。

あ、なら整備してる所を見せてもらえるかな、メンテナンスなら手伝えると思うから」

 

「見てて面白いものじゃないんだけどな…」

 

なんだか貪欲過ぎませんか、この人?

 

結局、この日は機体の稼働はさせず、放課後の時間は近接兵装だけでの白兵戦だけをする事にした。

私とお兄さんは、事前にアリーナを予約しておいた為、夜間訓練に勤しむ事にしました。

 

二人っきりになってから、お互いの機体を展開し、お兄さんは両手にクランを握り、更にアルボーレをも展開させていく。

調整を重ねていたおかげで特に異常なく動かしている様子ですね。

ただ…

 

「今度の弾丸は通常の弾丸じゃなくて調整された『カリギュラ』に変えるか。

アルボーレとウラガーノも使えるようになったんだし、派手にやってみよう」

 

少し、不安要素も……。

 

 

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

ウェイル君がシャルル君と出会ってから数日が経過した。

端からから見れば親しくなろうとしている様子だけれど、腑に落ちない点もちらほらと見受けられる。

女子高同然の学園で男子生徒同士で交遊を得たいのだとしたら理解出来ない訳しゃないけど、織斑君の方にはスキンシップらしき行動をしていない様子。

ウェイル君との交遊を多くしているのが少し妙に思う。

友情を得たいだけ、とか?

それだけなら良いけれど、懸念も在る。

ウェイル君が機体のメンテナンスの話をした際に、食い付いた所も妙に引っ掛かる。

 

さて、こうして学生寮に戻ってきたけれど、壁に耳を近づけて聞き耳をたててみる。

家族とのテレビ電話をしているようだけれど、イタリア語での会話が聞こえてくる。

話の内容としては、時折に『デュノア』の名前が聞こえてくるから、早速報告しているみたいだと察せられる。

 

「用心深いわね、私が隣室にいるから会話を盗み聞きしにくくしてるのかしら」

 

「こうやって聞き耳をたててる私達って不審者な気がするんですが…」

 

情報収集の一環だと割り切りなさいよ虚ちゃん。

でも、やっぱりイタリア語だけの会話に正直辟易してくる。

家族とのプライベートな会話なんだろう、笑い声も聞こえてくる。

それと時折聞こえてくる猫の鳴き声も。

猫が好き、なんて話もあったし実家でも飼い猫がいるんだろう。

 

 

そして話は20分程で終わった。

これに関しては後日訊いてみるとしよう。

 

「ウェイル君は怪しい事をしていないみたいだし、出回っている噂話は所詮は噂でしょうね」

 

「ですが、このままウェイル君は噂話に対してどんな対処をするつもりなんでしょうか?」

 

そこに関しては誰かを部屋に招き入れるとかかしら?

ふぅむ、なら…!

 

 

私が行動を開始したのは翌朝だった。

 

「…こんな朝早くから何の用ですか?」

 

ジト目のウェイル君の微妙そうな表情を半ば無視して部屋へ上がり込んだ。

 

「ふふ、そうは言っても目は充分覚めているようで何よりだわ」

 

勉強机の上には何やら何かの設計図かレポートが記されたルーズリーフが散らばっている。

あらぁ?もしかして徹夜してたとか?夜はちゃんと寝なさいね。

 

「それで、繰り返し問いますけど何の用ですか?」

 

朝食を作っていたらしいメルクちゃんの視線もリアルタイムでドンドン冷たくなっていく。

そこまで信用されていないのが視線一つだけで露骨なまでに伝わってくる。

お姉さん流石に辛いわよコレは。

 

「うん、噂話に対してはどんな対策するつもりなのか、一晩で何か考え付いたのかと思ってね」

 

「だからってなんでこんな早朝に…端的言えば、クラスのみんなの前で堂々と言うつもりですよ。

噂話になっている点については、完全に事実無根の潔白だとね」

 

ふむ、クラスの皆の前で、ね。

それはそれで悪くないけれど、それでも対策としては少々穴が在るわね。

だから、こうして私が朝早くから来ちゃったわけだけど。

 

「その発言だけで信用してくれる人の人数には限度があるからね、私が伝えておきたいのはその点なのよ」

 

ここまで行ってもメルクちゃんもウェイル君も頭の上に疑問符を浮かべているかのように首を傾げる。

この二人からしたら、クラスメイト以外の生徒の顔も名前も一致していないのかもしれない。

それに関しては無理も無いだろうとは思う。

メルクちゃんも人を見る目があるけれど、偏見の目をウェイル君に向ける人へは警戒し、顔だけ覚えている具合。

ウェイル君は日本政府の都合でこの学園に編入させられて、客寄せパンダみたいになっているけれど、手先の器用さで多くの人に信頼を築いていたけれど、その人数の多さも相まって顔と名前も一致しきれていないんだと思う。

クラス外だと、鈴ちゃんと簪ちゃんと私達生徒会のメンバーくらいかもしれない。

それと悪い意味で織斑君と篠ノ之箒ちゃんくらいだったりして。

更に最近編入してきた二人かしらね。

 

「自分達のクラスメイト以外に話が伝わらない、そういう事ですか」

 

メルクちゃんは話を早く察してくれて助かるわ。

ウェイル君は…言われてようやく納得してくる様子。

 

「そこで、学園内でも信頼性が高い人から無実が証明されたと話を流布すれば…」

 

「話が浸透するのも早いって算段か…なるほど」

 

納得してくれて何よりだわ。

それはさて置き、キッチンコンロで温めているのはミルクみたいね。

そろそろ程よく温もったのか、それをメルクちゃんがマグカップに注いでいく。

二人分を温めていたらしく、ウェイル君もそれをゆっくりと飲んでいく。

 

「それで、今日は二人はどうするの?」

 

「今日は授業の無い日ですから、一日訓練にでも費やそうかと。

鈴とも事前に約束していましたから」

 

「なら私もご一緒させてもら…だから二人してその視線を止めて!?」

 

変なところで兄妹でのコンビネーションを見せないで!

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