Q.片方の作品ですけど、妙なタイミングでの投稿でしたね?
何かありました?
P.N.『いつも心は後ろ向き』さんより
A.予約投稿のタイミングをミスってました。
はい、それだけなんです。
気付いた時には後の祭り、コメントが幾つも来てて…。
Q.この作品でのアリーシャ姉御ですが『隻眼隻腕』になりますか?
P.N. 『万年厄年』さんより
A. う~ん、どうしようかな。
五体満足にしてあげたいしな…。
それよか『姉御』て…
Q.千冬さんの中の人って
『SAO』ロザリア
『D.Grayman』ミランダ・ロットー
とかのキャラもしてるらしいですが…
P.N.『ヤッフー』さんより
A.へー、そうなんスか。
寧ろ何故そこだけ抜粋?
マトモじゃない系のお姉さんじゃないスか…。
ビキニアーマー剣士や、猫耳格闘娘しか知らなかったので、なんだか新鮮。
Q.メルクちゃんはこの作品でも『ぺったん娘』ですか!?
P.N.『スケヴェ大魔王』さんより
A.またアンタか!?
弩ストレートに訊いてくる度胸は勇者だな!?
さて、回答ですが…はい、ぺったん娘です。
ってか現状11歳の子にそんな視線を向けるだなんて、貴方もしやロリコ…ウワナニスルヤメアッ‐!?
目が醒めたその日からしばらくは、簡単な言葉や、単語なんかを覚えさせる事にした。
初めて聞くであろう言葉、初めて見る世界に、惑い、怯えはしていたものの、少しずつ飲み込んでいくウェイルに少しだけ感心する。
プラスチックのスプーンを持ち上げるのに苦労しながらも、薄味のスープを口に運ぶ。
筋力は殆ど幼児並に落ちているらしいけど、弱音の一つも吐こうとしない。
骨に皮が貼り付いただけの線のような体を、必死に動かしながらも人並みになろうとするその姿勢に、どうしても『やめろ』の一言が言えなかった。
30分毎に休憩を挟み、様子を見るけれど、ウェイルは『辛い』とも言わない。
本音を聞きたくて、シャイニィをウェイルの膝の上に座らせたまま、席を外す。
そんな芝居をして、窓の外から様子を盗み見た。
「なんだ、私達の前じゃ弱音を吐けなかっただけか…」
ウェイルは、シャイニィを相手に小声で話していた。
「なぁ、シャイニィ…」
「にゃぁ?」
「俺、これからどうするべきなんだろうなぁ?
…右も左も判らない場所に放り込まれてるし…、正直、不安だ…」
その呟きが、私の胸に突き刺さった。
ああ、そうだ、それが当たり前サね。
ウェイルはまだ齢11の子供サ。
弱音を吐かない方が、よっぽど異常だ。
一人と一匹なんて状態にならないと本音を吐き出せない、そんな子供。
今になって織斑 一夏という子供がどれだけ非情な空間に居たのか実感する。
あの子を、私の弟分をそんなところに放り込んでたまるか!
リハビリにしても早く終われば良い。
そんな風に思ったのは、その三日後までだった。
「お兄さんそんな何やってるんですか!?」
「アンタそんな所で何やってんのサ!?」
朝からウェイルの様子を見に来たメルクと私は似たような絶叫をしていた。
他の病室にも迷惑だったろうけど構ってられない。
病院の中庭、その芝生の端に横たわる目立つ白髪。
まごうことなくウェイル本人だ。
うつ伏せの状態でも見間違いなんてするわけも無かった。
「お兄さん!起きてください!
こんな所で寝ちゃダメです!
死んじゃダメですぅ!」
「寧ろ、なんでこんな所に居るのサ…?」
メルクが大慌てで起き上がらせるが、シャリシャリと音が。
…霜が病院着に張り付いてるらしい。
…まさか、ね…。
数分後
「はい、ジャケット!」
「助かるよ」
「暖かい紅茶です!」
「体の内から温もる…」
「それに毛布!」
「落ち着く…」
「暖房の電源を入れて、と」
「癒される…」
部屋にウェイルを放り込んでからメルクが甲斐甲斐しく世話をしてるのをシャイニィと一緒に眺める事にした。
メルクって、世話好きなんだねぇ。
これに関しては新発見だった。
さて、ウェイルも落ち着いているみたいだし…
「ウェイル、アンタなんで病室じゃなくて中庭で寝てたんサね?
まあ、だいたい予想は出来るけど…」
「えっと…それは…」
ウェイルの体は幼児レベルにまで筋力も体力も落ちている。
まだ単独での室外出入りは禁じられている筈。
けど、そこから先の話を聞いて呆れた。
「早く歩けるようにしたくて、一人で練習してたんですけど…スリッパの足の裏に霜が張り付いて動けなくなって…。
そのまま倒れたら、今度は服に霜が…」
頭が痛い…。
許可なんて出る筈も無いから、夜になってから窓から出た、と言った所か。
そのまま声も出せず、巡回にも気付いてもらえなかったのは後に想像に易い。
窓から出るのにも苦労はしただろうけどサ、よく出られたサね。
「アンタねぇ…」
深夜に部屋を抜け出し、窓枠から
全力を以て叱り飛ばす事にした。
短期でのリハビリは体にも精神上にも毒と判断。
その上で時間をかけてウェイルにはリハビリを受けさせよう。
そう決めた。
風邪にもなってないようなので、その面に関しては安心した。
やはり、この子は異常だ。
常に比較される環境に居たのが原因なのか、無意識に結果を求め過ぎている。
努力するのは評価するが、結果が…いや、この思考もダメだ。
これは過去の別人の周囲がやらかし続けていた批評でしかない。
「アンタのリハビリには周囲が付き添うから無茶はしないように、判ったサねウェイル」
『次はこの程度じゃ済まさない』と脅すように言い聞かす。
その為にも語尾に『?』なんて付けずに言い切った。
「…はい」
言質はとったサ。
それと自覚するように。
『注意をしてもらえている間が華』だってね。
何も言ってもらえなくなったら終わりサ。
その日からもイタリア語講座にリハビリが施される。
歩行リハビリは最低一週間は許可が出ないらしいので、『ものを持ち上げる』ところから。
プラスチックのスプーンから、金属製スプーンへ。
次はペンへと持ち変え、コップにグラスにマグカップへと。
なお、着替えをするだけでもウェイルの体力が持たないらしく、30分毎の休憩は外せなかった。
平日にはメルクは夕方から、土日は朝から甲斐甲斐しく世話を診ている。
私とて毎日は無理だから、不在時は看護師に面倒を任せている。
知らない環境で、知らない人に囲まれ、その都度ウェイルは不安を感じている筈。
叶うのなら、その不安に押し潰されないでほしい。
そう祈らずにはいられなかった。
年末年始を病室で迎える頃には、薄味のスープからも解放されたらしく、普通の病人食。
家族に囲まれ、たどたどしいイタリア語に日本語を混ぜながらウェイルは喋っている。
その都度、メルクが間に立って、ウェイルと両親の為に通訳をしている。
シャイニィもメルクとウェイルの肩から跳び跳ねたりと愛らしい。
「家族で楽しそうサね、ウェイル、メルク」
だから私も時折に混ざる。
楽しい事には混ざりたくなるものサ。
だけど…ウェイルの心からの笑顔はまだ見れてない。
何とかしてあげたいね、この点は。
「ウェイル、アンタ、何を持ってるんサね?」
見ればウェイルは左手で雑誌らしいそれを持っている。
えっと…タイトルは『月間釣り人』?
「廊下の書棚に置かれていたのを貰ってきたんです。
何となく気になって…」
「ふーん…」
何かに興味を持つのは悪い事じゃない。
だから室外への勝手な出入りは今回に限っては見逃す事にした。
試しにパラパラとページをめくってみる。
…ウェイルにはまだ読める代物じゃないみたいサね。
センターカラーのページには…
テレビに出てたような気がする。
「凄いですよね、
身丈以上の魚を釣り上げてるみたいですよ」
「…みたいサね…」
この釣り人、『カジキ』を釣り上げてるサね。
「俺はまだ詳しい内容が読めないですけど、凄さは伝わってくる気がするんです」
「お兄さんってば、『いつかその人を超える釣り人になる』って言ってるんですよ」
「まあ、言うだけなら好き勝手に言えるサね…」
ああ、やらかす。
ウェイルなら、その内に大物を釣り上げるだろうサ。
だけどその前に、それが出来るように体力も筋力も取り戻させないとね。
それからも度々に病院に来ては、リハビリの様子を確認する。
半月経ち、ようやく敷地内の屋外への出入りの許可が出て、車椅子で廊下や中庭を散策させる。
夕方にはメルクも来て、付き添っている。
二ヶ月が経った。
体内、内臓の調子も良好になってきたらしく、細かった体が少しだけふっくらとしてくる。
骨に皮が貼り付いただけの線のような体だったけど、多少はマシになるものサ。
だけど、此処からが正念場だった。
杖を使いながらの
正直、見ているのが苦痛。
「お兄さん、今日は此処までにしませんか?」
「冗談…!
まだだ…まだ…やれる…!」
体中汗だくになりながら、時には壁に爪痕を刻みながら無理矢理に体を起こそうとする。
「ウェイル、そろそろ…」
「触るな!」
杖を立てるのも必死に、体を杖に寄りかからせるようにして立ち上がるだけでも痛々しい。
「俺は…まだやれる…!」
誰にだって当たり前に出来る事が、今のウェイルにも難題で、困難で、見ているこっちも苦痛。
でも「やめろ」の一言が言えない。
『苦難』
その言葉が最適な状況だった。
メルクも顔がグシャグャになるまで泣いている。
両親もオロオロとし、慌てふためいている。
かくいう私も…手出しが出来なかった。
生傷の絶えない日々。
時には、あちこち絆創膏やら包帯を巻いた状態で夜を過ごす時も。
壁にも爪痕を刻み、その爪が剥がれ、血を流す。
衰弱しきった体でウェイルは歩こうとしている。
だけどアンタは…何処に向かって歩いてるんだ…?
此処で察した。
ウェイルを突き動かすのは、『まだやれる』からじゃない。
『出来なければいけない』『出来なければ、認めてもらえない』という
名前も記憶も失い、やっと別人となって生きていけるようになったのに、比較され続けた過去がウェイルを蝕んでいた。
なまじ上の二人が出来過ぎるから
何を以てしても比較され
比較されるから努力して
努力しても結果が出せなくて
結果が出せなかったから比較され
その終わりの無い悪循環
私は…それが赦せなかった。
ウェイルが普通に歩けるようになったのは、まだ先の事だった。
「…何を考えてるサね…?」
病院の屋上、まだ風が冷たい時期。
にも拘わらず、ウェイルはこんな所に来ている。
「歩けるようになるまで随分掛かったなぁ、って…そう思ったんです」
「あれだけ頑張ったんだ、来週には退院だろう?
良かったじゃないサね」
そう、退院。
ウェイルがメルクの手で助けられ、一年二ヶ月。
意識を取り戻し、今に至るまで四ヵ月。
合計、一年と半年、長かったサねぇ…。
いや、短いか。
「でも、これだけ待っても…、記憶は戻らなかった。
なんだか、薄情な気がして…」
知らなければ良かった
そんな真実は何処にでも在る。
ウェイルの場合がそれに当てはまる。
だから知られないように振る舞ってきたつもりだ。
ハース家の全員が知ってるけど、そこだけはウェイルは除け者だ。
「記憶より、『思い出』を大切にしな。
これからは幾らでも作れるサ」
「作れますかね、俺でも…?」
「作れるサ。
誰だって作れる。
ウェイルには家族も居る、メルクや私だって居る。
今後通う事にもなる学校とかでもサ」
誰にだって思い出は作れる。
そんな『当たり前』ですらウェイルは恵まれなかった。
だから思い出を心に刻んでほしい。
…こういうのは『親心』ってものかもしれない。
そんな年頃でもないのにサ。
翌週、ウェイルの退院だった。
朝早くからメルクが病院に来ておおはしゃぎ。
片手に杖を手にして歩くウェイルも苦笑い。
両親はニコニコとしているんだから、アンタももう少し愛想を良くしな。
「さてウェイル、今日で退院だけど、何かしたい事とかは在るサね?」
「そうですね…釣りをしてみたいです」
「お兄さん、なんだか渋いです」
これには少し頭を抱えた。
この年頃だったら、退院したら『美味しいものを食べたい』とか言い出すと思ってたんだけど…。
よりにもよって『釣り』か。
…よくよく見れば、ウェイルの手に、あの日にも持っていた雑誌が…。
まぁ、良いか。
両親がウェイルとメルクを車に乗せ、私も…強引に推しきられ、相乗りする結果に。
姉貴分なんだからさして問題は無いだろう。
自分の車は後で取りに来よう。
ハース家は、ヴェネツィアの一角にある普通の家。
ウェイルが家族として迎え入れられたのを見て帰ろう、なんて思ってたけど、そのまま奥方に家に引き摺り込まれた。
なんか今日は調子を狂わされ続きサ…。
「此処が俺の部屋になるらしいです」
「いい部屋じゃないサ」
早速カーテンに窓を開くと、海の薫りに、潮騒の音。
シャイニィも窓枠に飛び降り、周囲を見渡す。
部屋の中も、今日から早速生活が出来るようになっていて、至れり尽くせり。
遠慮も無しにクローゼットを開けば、新品の衣類も整っている。
「何処を見てるんですか…」
「今更遠慮なんてする仲じゃないだろうサ」
「酷ぇ…」
これが逆だったら…ウェイルをとっちめているだろうサね。
改めてウェイルに視線を向けてみる。
人並みには辛うじて追い付く体力、なにか気軽に鍛えられる方法、考えてみた方が良さそうサね。
「今日のお昼はパエリアだそうです。
先生もどうですか?」
無理矢理連れ込まれたようなものだけど、ご馳走になろうか。
ウェイルが退院してから数日経過した。
時折にウェイルの様子を見るつもりでいたけど、大概メルクがベッタリしている。
講習は受けているから問題は無い。
今日は何やら散歩ついでに近所に
挨拶してるようらしい。
「兄妹で仲が良さそうサね」
「ええ、家族のお陰で充実してます」
「えへへ…」
メルク、ベタベタし過ぎサね。
シャイニィも二人が気に入っているらしく、その毛並みを擦り付ける。
『何処にでもある風景』がウェイルにとっては新鮮。
街の何処に何が在るのか案内しながら巡っている。
「ウェイル、メルク、ちょっとこっちに来な」
ウェイルはまだ線が細い。
杖も手離すのはいつになるかは判らないけど、少しは鍛えた方が良いかもしれない。
そう思い、公共のプール施設に連れていく。
街の住人の要望に合わせ、ダイビングスクールにもなっている此処なら都合も良いだろう。
「ウェイル、アンタは泳ぐのは得意サね?」
「泳いだ事が無いから判らないです」
あ、そうだったサね。
こうやってメルクと一緒にウェイルと接して四ヶ月、ウェイルが記憶喪失だって事を忘れることがある。
私達の方が記憶喪失になってたら世話無いね。
「じゃあ体力だけでなく筋力をつけるのに水泳をしてみるのいいですね」
「水泳か…俺に出来たら良いんだけどな…」
「ここは運河にも接している街だからね、泳ぎが得意だとしても損は無いサ。
それにメルクを見てみな。
最近は散歩だけでなく、走り込みもしてるからね、腰周りだけでなく胸も引き締まってるだろう!」
「酷いですぅっ!」
悪いサね、ちょっとだけダシにしてもらったサ。
ウェイルはといえば、顏をひきつらせていた。
ちょっと鈍感なのかね、ウェイルは?
こうしてウェイルの趣味として『水泳』が追加された訳サ。
泳ぐ速さは人並みだけどね。
退院してからウェイルは家族からの影響を強く受けているのが察してきた。
お袋さんは、メルクとウェイルに料理を教えるのを楽しみにしている。
お陰様でウェイルもメルクも料理上手に。
親父さんは、機械を語り始めると止まらない。
お陰様でウェイルが機械に興味を持ち始めている。
メルクは散歩道を歩きながらの街の案内。
特に買い物をする商店街は念入りに。
私の授業の補完もしてくれている。
私はというと、再び訓練に明け暮れる。
あの女に負けた過去を払拭する為、だけじゃない。
お前と私とは
数日、ウェイルとメルクの様子見をすっぽかしたのは反省してる。
その間に、ウェイルが色々な事に手を出し、結果を急ぎすぎている事を知り、説教みたいな事をしでかしたのは…まあ、お節介だったかもしれない。
それでも、ウェイルは何か吹っ切れていたのは良く覚えてる。
月末、またウェイルとメルクの様子を見に、街に出向いてみる。
「呆れた、本当に釣りにハマってるサね」
並べたバケツには大量の魚。
もう大漁サね。
この数からすると朝から今に至るまで…夕方になるまで釣り三昧かもしれない。
ちょっと引いた。
「…この手応え…!」
急に立ち上がるウェイル。
釣竿の先が、かなりしなっている。
それほどまでに大きな獲物らしい。
「おい、ウェイルの肩を支えてやれ!」
声のする側に視線を向ける。
オイ、そこの
「主に体重を持ってかれてるぞ!」
オイ、そこの
「タモ持って来い!」
オイ、そこの
メルクが不機嫌な理由が理解出来た。
構ってもらえないから、拗ねてるサね。
知らずに釣りを楽しんでいるウェイルは暢気サね。
「大物釣ってやるから待ってろよ、フッフッフッ」
「うわぁ…もう、重症…」
思わず溜め息と一緒に返した。
ウェイル、アンタのその台詞、雑誌に載っていた誰かのキャッチコピーじゃなかったかい?
そう思いながらもメルクと一緒になって、ウェイルの肩を支える。
うん、あの頃よりも逞しくなってるみたいサ。
腕も肩も以前に比べればゴツくなってて安心出来る。
それからどれだけ時間が経ったか、獲物は動かなくなっていた。
「キース、クライド、頼む!」
「あいよ!」
「任せろ!」
友人らしい二人が先に飛び込み、獲物を持ち上げる。
本当に大きい魚だ。
「ほらウェイル、アンタも行ってきな」
「はい!」
「え!?ちょ、待っ~」
おっと、ウェイルってばメルクを巻き込んで飛び込んだ。
頭から爪先まで、残さず余さずびしょ濡れ状態。
お気に入りだったらしいワンピースを着ていたメルクも、服が透けて非常によろしくない姿に。
「凄いぞ坊主!」
「その齢で主を釣った奴は居ないぞ!」
「カメラはまだ来ないのか!?」
ああもう、周囲のオッサン共が喧しいサね。
だけどウェイルも嬉しそうにしてるから、まあいいか。
「ウェイル、今はどんな気分サ?」
「嬉しいというか、くすぐったいですね」
安心した。
ようやく…少しだけ笑みを見れた気がした。
この笑顔を…守っていこう。
もっと、素の笑顔をつくれるように…
「やべ、俺夢釣っちまった」
とは言え、雑誌の影響を受けているのは考えものサね。
大物を運河から引き揚げ、バケツにも入れる事が出来なくて悩んでいた頃、ようやくカメラが来た。
撮影するにしてもメルクは格好が格好。
ウェイルの影に隠れる。
当のウェイルは大物を友人達と掲げ、オッサン達もその周囲に。
私も推しきられ、ウェイルの後ろに。
写された写真はウェイルの部屋だけでなく、私の部屋にも飾った。
ウェイルの笑顔、それを初めて見られた記念にして。
地元紙でも隅に載ったのは…まあ、いいか。
『少年達、巨大魚を釣り上げる!』
「良い笑顔になれてるみたいサ」
でも、どこかまだ…ぎこちない微笑みだった。
これから先、どれだけの笑顔が見られるのか、どんな未来が待ってるかは私にも判らない。
だけど、ウェイルの微笑みを守りたい。
例えそれが…誰かの笑顔を奪う形であったとしても
その償いが在るとすれば…『忘れない』ことだけ