IS 速星の祈り   作:レインスカイ

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KADOKAWAが大変な現状になってから凡そ一か月が経過しましたね。
事態は好転どころか悪化へ一路のようです。
最初は中国・韓国がランサムウェアを使っての騒ぎを起こしているのではないか、との話も出回っていましたが、その実はロシアのハッカー組織『ブラックスーツ』の仕業だったそうです。

現状、KADOKAWAやドワンゴの個人情報が流出という大変な事に至っているようです。
解決策はあるのだろうか…?
株価も大きく下がっており、流通にも莫大な影響も生じているし、どうなるのやら…。


第95話 粗風 もう一度

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

強すぎる。

それが正直な想いだった。

アメリカ製第三世代型無人機白銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

非常に高い機動性を持ち、なおかつ高い威力の射撃型兵装を内蔵させている機体。

それが今回暴走し、対処するのが私達に課せられた仕事になってしまっていた。

 

あの女(織斑 千冬)は撃墜を前提とし、あのクソバカ(織斑 全輝)とウェイルを組ませての無謀な吶喊を作戦と称して、強行させた。

結果としては最悪で、白銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)は暴走状態のまま健在しており、なおかつ第二形態移行(セカンドシフト)に至っている。

作戦への参加を強要させられたウェイルは、全輝に攻撃され現在に至ってもMIA(作戦中行方不明)扱い。

ウェイルの捜索の捜索に出向いたところで、こんな強敵と落ち合うハメになるとか…!

 

「メルク、まだ動ける?」

 

「勿論です…!」

 

視界がブレる。

テンペスタ特有の速度での高速移動、ことによったら瞬時加速(イグニッションブースト)でも併用してるのかもしれない。

脚部クローで私をつかんだままの状態だっていうのに、よく対応できるわね。

改めてテンペスタと称される機体には感心させられる!

 

「こんの!」

 

左腕はメルクに預けている、それでも、片手だけでも攻撃程度なら!

双天牙月を連結させた状態で投擲、追尾させての攻撃もあの速度では完全に無意味に終わってしまっているのが悔しい。

それどころか、回避と同時に射撃攻撃を向けてくる。

 

「なんて厄介な…!」

 

「同感だわ、こんな機体が暴走って…」

 

何より厄介なのは、機体内部から(・・・・・・)生命反応が探知されたということ。

搭乗者が存在しており、未だ存命だということ。

だけど、機体があんな動きを繰り返していれば、その搭乗者が耐えられない危険性がある…!

 

「狙うは短時間決戦だっていうのに、あんな動きをされていたら…!」

 

「情報が執拗なまでに隠蔽されていましたね。

アメリカ軍か、はたまたIS学園に作戦対応を命じてきた日本政府かは知りませんが…」

 

「最悪、その両方という可能性も否定できんぞ」

 

ラウラも今はシャルロットに牽引されている状態。

自慢の砲撃も対処され、慣性停止結界は射程距離も早々と見切られ、楯として使う他に無くなっている。

 

「メルク、フィオナローズは使えないの!?」

 

「その手も考えましたが、そのためには、あの弾幕をかいくぐらないと…!」

 

「だったら、僕が!」

 

シャルロットも長い戦闘の間に物理シールドを使っていたけれど、繰り返される砲撃にボロボロになってしまっている。

 

「援軍は…期待出来そうにないわね…」

 

ティナも慣れない機体で奔走してくれていたけれど、今は息が切れそうになっている。

アサルトライフルを持ち上げようにも、腕が震えてきている。

簪もミサイルを撃ち尽くし、荷電粒子砲は、あの機動性の前では殆ど無意味、それを理解してか、砲撃は牽制に、薙刀で対処しようにも近付かせてくれないから完封されている。

マトモに動けるメンバーも殆ど居ない、対処可能なメンバーもおらず、半ば全員が完封されてしまっている状態なのかもしれない。

 

「だからって、諦めるわけにはいかないのよ…!」

 

だって、やっとアイツを見つけた。

手の届く場所に居たという確証を掴めたんだから…!

 

「まだ動けると言ったわよね、メルク?」

 

「…はい」

 

「私の腕が砕けても良い、連装瞬時加速(リボルバーイグニッション)で一気に肉薄して」

 

「何を、考えているんですか…?」

 

直接、アイツにつかみかかり、最大威力の衝撃砲を撃ち込む。

メルクの速度があればそれも可能かもしれない、最悪足りない速度は自分自身に衝撃砲を叩き込むくらいは考えてある。

 

「こういうのは好きじゃないんだけど…一か八かってやつよ」

 

「…認めません、そんな方法は!」

 

「なら他に何があるっていうのよ!

このままじゃジリ貧で全員のエネルギーが尽きる!

有効打も与えられないってのに!このままじゃ時間稼ぎをするだけで、あの機体の搭乗者だって耐えられないのよ!?」

 

今出来ている事はその場限りの時間稼ぎ程度、有効打が無いままだと…。

 

「それに、一夏(ウェイル)だって…!アンタも心配なんでしょ!?」

 

「当たり前です!本当なら今すぐにでも一人で探しに行きたいくらいですよ…!それでも…」

 

私達の誰かが一人でも抜けたら、この戦線は維持出来ずに崩壊し、もう二度と接触は出来なくなる。

この場に留めるのが限界で、かといって倒しきる事も出来ず、膠着状態を維持するのが限界。

 

「それで…どうするのよ…!

ミネルヴァ(拘束用兵装)は今回搭載してきていないのよ?

拘束する事も出来ないし…」

 

ティナの息がかなり荒い。

このままだと真っ先に脱落する危険性が高い。

そうなったとしたら…

 

その瞬間だった。

視界の端に赤い閃光が一瞬見えたのは

 

ドオォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!

 

その刹那、深紅の流星が駆け抜け、天使を撃ち抜いた。

 

 

 

 

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

 

レーダーで検知し、射程距離がギリギリに範囲に入った瞬間に槍を構える。

連結させた鈍色の槍を逆手で握ると、石突から豪風と紅蓮の業火が噴き出す。

以前から何度も使っている使い慣れた槍の筈だが微かな違和感。

今まで以上に出力が上昇している…?

だが、コレなら…!

 

「駆け抜けろぉっ!」

 

パワーアシスト全開で槍を投げ放った。

 

「La!?」

 

直撃、だが僅かに体勢を反らした。

今のは不意打ちだが、もう通じないだろう。

あの機体そのものの特性か、はたまた搭乗者本人のスキルかは知らないが、高い学習能力を有している以上は、試す必要性はないだろう。

 

「行くぞ、ロムルス、レムス」

 

直撃直後に俺の手元に瞬時に槍が再展開される。

両手に握りなおすのは、本来のスタイルの際に使用する可変形式銃槍、ウラガーノ。

機体がシフトチェンジしたことで、これの名称も変化している。

初代ローマ皇帝と、その弟の名を借り受けているらしい。

 

ドガガガガガガガガガガガガガガ!

ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!

 

銃形態に切り替え、射撃攻撃を繰り出す。

そして、弾切れすら起きない。

トーナメントで組み込んだ高速装填(ラピッドリロード)システムが変貌している。

特定の動作を挟むことで弾倉を銃身内部に自動装填されていたそれが、今では『銃弾が放たれた』段階で弾丸が弾倉内部に充填されている。

これなら、事実上は弾切れも、リロードも考えなくていい。

 

「……クソッ!」

 

微かに視界が霞む。

この出血量じゃ長くは耐えられそうにない。

 

「Laaaaaa!!!!」

 

射撃攻撃も見慣れてしまったのか、俺が戦った際に見た時の倍以上の砲撃を繰り出してくる。

こればかりは瞬時加速(イグニッションブースト)を使い海面スレスレにまで急速降下して回避する。

両手の兵装を槍形態に切り替えて構えなおす。

仕切り直し、といったところか…。

 

「お兄さん!大丈夫ですか!」

 

「一夏!なんて状態なのよアンタ!」

 

…しまらないなぁ、この状態。

突如として開くモニターからはメルクと鈴が叫び声を聞かせてくる。

それだけじゃなかった

 

「ウェイルなの!?」

 

「おい、その傷で無茶をするな!」

 

「大丈夫なの!?ねぇ!?」

 

「は、早く手当てをしたほうが…」

 

シャルロット、ラウラ、ティナ、簪の順番でモニターを開いてくる。

皆のこの慌てよう…相当に心配させてしまっていたようだ。

あれからどれだけ時間が流れていたのかは正直理解できていないが、すっかり夜になっている事を考えれば…ああ、うん、後で謝ったほうが良さそうだ。

それくらいしないと、今度は皆の手で海に沈められる羽目になるのは見えている。

釣りの釣果で解決できないかなぁ…多分無理。

 

「見ての通り生きてるよ、長くは耐えられそうにないのは皆も同じだろう?

話すべき事も色々と在るんだ、早く終わらせて、早く帰ろう!」

 

モニターの向こう側に居る皆は柔らかく微笑む。

それを察してモニターを閉じる。

スラスターを稼働させ、海面スレスレから白銀の福音と同じ視線の高さにまで飛翔する。

 

「さあ、仕切り直しと行こうぜ。

生憎と1対1というわけにはいかないけどな」

 

「……La」

 

天使の歌声というには機械的な声。

だが、今だけはその声が人間のものでないことだけは感謝しておこう。

 

「ただ、手短にな。

それはお互いにそうしたいだろうから…な!」

 

急速接近からの刺突、これは回避される。

だがその隙に右手の槍の籠鍔から銃身が起き上がる。

 

ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!

 

胴体に向けて銃弾を連続で叩き込む。

 

「Laaaaaaaa!」

 

距離を離す、だが狙い通りのポイントだ。

 

ドッガガガガガガガガガァン!

 

「狙い通り!」

 

簪の放つ荷電粒子砲が両肩に直撃する。

続くミサイルが放たれるが、それらは回避され、半分近くが撃ち落されていく。

 

メルクが鈴をつれ、俺のすぐ横を駆け抜けていく。

その瞬間に、俺はそれを使う。

 

単一仕様能力(ワンオフアビリティ)『皇帝特権』、発動!」

 

 

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

 

お兄さんが戻ってきた。

それが嬉しくて、今すぐにでも飛びつきたい。

でも、今は戦闘中。

きっとこの戦いを終えたらお兄さんはすぐにでも医務室に連れ込まれることになる。

嬉しい筈なのに、あの傷を見るとたまらなく悔しく思う。

なぜあの時に無理をしてでも一緒に出撃しなかったのだろう、と。

 

「行きますよ、鈴さん!」

 

「判ってる!」

 

連装瞬時加速(リボルバーイグニッション)で一気に接近。

こちらの急速接近を感知したのか、距離を離される。

それでも、この速度なら…!

 

「「せぇのっ!」」

 

その速度のまま脚部クローで掴んでいた鈴さんを振るうようにして投げ飛ばす!

 

「堕ちろぉ!」

 

体を縦に回転させながらの踵落としが直撃!

白銀色の天使が海面に叩きつけられた。

 

 

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

 

「行くぞ!」

 

私は両手にプラズマブレードを構える。

 

「勿論!」

 

「この機は逃さないよ!」

 

私の声にハミルトンとシャルロットが応える。

シャルロットに牽引してもらう姿は少しばかり情けないとは思うが、シュヴァルツェア・レーゲンの鈍重さを考えれば仕方ないとは思う。

だが、どうにも妙に思える。

先ほどまではボロボロになり動きも鈍くなっていたはずのシャルロットの機体の動きが良くなっている。

だが、それについて考えるのは後回しでもいい、むしろ気にしてなどいられない!

 

「いけ!」

 

ワイヤーブレードを一斉に射出させる。

これで仕留められずとも、動きを封じてしまえば…!

 

「Laa!」

 

放たれる高密度の弾幕に6本の内4本が弾かれる。

だが、残り2本が装甲へと喰いこんだ!

それを確認できた瞬間だった。

 

「シャルロット!降下だ!このまま奴の動きを止める!」

 

「了解!」

 

海面を見れば岩礁が顔を見せている。

先ほどの砲撃でえぐれてしまっているようだが今回ばかりは好都合だ!

着地と同時に脚部装甲のアイゼンを岩礁に突き立てる!弾かれてしまっていたワイヤーブレードを再度射出し、銀色の装甲へと絡みつかせる!

 

「もうこれで自慢の動きは出せまい!

貴様は…ここで堕とす!」

 

「ラウラ!ナイス!」

 

ハミルトンとシャルロットが両手に銃を握り鉛弾の雨を食らわせていく。

アイツ等、相手の搭乗者の事を気にかけてはいるのだろうか?

だが少なくとも相手は軍用機、エネルギーを削るためには已むを得まい。

 

「La…Laaaaaaaッ!」

 

そう都合よくはいかないか…!

動きを抑制したとしても、それは付け焼刃。

奴の動きをとどめるために、私は自ら動けなくなったも同然。

であれば、私に狙いを定めるのは当然だろうか。

 

「なら…!」

 

ドッガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!

 

慣性停止結界を展開し、迫りくる光弾を防ぐ。

だが、砲撃が止まらない…!

ワイヤーブレードと結界の同時展開はさほど長くはもたないぞ!

 

「Laッ!?」

 

だが、弾幕は直後に途絶えた。

 

「助かったぞ、簪」

 

荷電粒子砲が直撃したらしい。

やはり、先程以上に動きがよくなっている。

私だけでなく(・・・・・・)この場に居る全員(・・・・・・・・)が、だ。

何故だ?先程までと違うものがあるとするのなら…。

 

「ウェイル、お前だな…!」

 

暗い紫の装甲からは仄かに光が放たれているようにも見える。

その輝きには覚えがある、織斑が使用していたそれのものと。

 

 

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

 

「起きろアルボーレ、ドラコー!」

 

俺の声と同時に右肩付近に新たな腕部型兵装が展開される。

アルボーレが展開されるはずだが、これもどうやら昇華しているようだ。

その証拠に、展開された腕部型兵装は1つではなく8つ(・・)もある。

それぞれの腕にはすでに兵装が握られている。

 

銀色の装甲の手には十字剣『クルセイド』

緑色の装甲の手には見慣れた銃槍『ウラガーノ』

茜色の装甲の手には真紅の片刃の長剣『クラウディウス』

 

その3つすべてに見覚えがある。

クルセイドは、メルクが練習で使っていた十字剣。

ウラガーノは俺が普段から使っていたものではあるが、ヘキサさんも愛用していた。

クラウディウスは…、姉さんが使っている剣だ。

 

「頼むぜ、皆…!『皇帝特権』発動!」

 

残る鋼色の腕型ユニット5基が、ここに居る皆を指さす。

鈴を指差し、その手にグラディウスを。

シャルロットを指差し、ウラガーノをガンブレードフォームで。

ラウラを指差し、その手にグラディウスを。

簪を指差し、その手にウラガーノをランスモードで。

ティナを指差し、トゥルビネを握る。

その刃、銃身は、皆が得意とする武器を再現しようとしている。

どうやら、その先にいる皆の動きを再現するつもりなのだと理解が出来た。

 

槍を握る両手に再度力を入れる。

指示も出していないのに背面のスラスターが最大出力をたたき出す。

槍を振るう、その瞬間にスラスターが体の動きに合わせて最適方向へと動いてくれる。

 

右腕の槍を振るう。

生じた隙に外装腕が槍と剣を振るう。

その動きには見覚えがある。

それぞれメルク、ヘキサさん、姉さんの動きをトレースしている。

だが、それだけでなく俺の動きに合わせて最適解と言わんばかりの動きを見せてくれている。

 

「…そういう事かよ…!」

 

ようやく理解できた。

俺が考案し、ビーバット博士が実装させ、FIATが俺とメルクの機体に搭載させた『リンクシステム』の存在を。

ヘキサ先生と姉さんも、それぞれの機体に搭載させていたんだ!

それを俺達に教えていなかったのだとしたら…ちょっと人が悪いだろう…!

いや、いい人達なんだけどな!

 

そして、単一仕様能力『皇帝特権』

これは自分に作用させるものではなく、周囲に存在している味方を対象にして発動させているようだ。

周囲の友軍機の活性化、その代わりにドラコーの稼働用演算処理領域を周辺の味方機から徴収する。

ギブアンドテイクかもしれないが、まさに『皇帝特権』というか横暴にも近いだろう。

セカンドシフトをした結果としては、味方がいれば、それだけ自分の力量も上昇できるということになる。

 

「…痛…ッ!」

 

目が霞む。

機体性能が飛躍的に向上していても、肝心の搭乗者の俺がこのザマじゃな…

 

「LAaaaaaaaaaaaッ!」

 

今まで以上の弾幕が襲ってくる。

 

「こなくそ…!」

 

連装瞬時加速で弾幕へと一気に突っ込む!

錐揉みさせながらギリギリで被弾せずにすり抜け…!

今まで以上の無茶な操縦に体がついてこれず、傷口から血が流れるのが感じられる。

 

援護射撃をしていたメルクが蒼褪めているのが見て取れる。

ティナが俺の名を叫ぶのが聞こえる。

 

「無茶も程々にしなさいっての!」

 

弾幕が急激に薄れる。

連結された双剣が白銀の福音に直撃し、姿勢制御が崩れている。

視界の端に映るのは、見覚えのある姿だった。

 

「合わせてくれ」

 

「今更!遅れんじゃないわよ!」

 

大旋嵐(テンペスタ)が遅れを?在るわけないだろう!」

 

右手で握る槍を横薙ぎに振るう。

刹那、鈴が大上段から権を振り下ろす、その瞬間には俺の左手の銃から弾丸が放たれる。

 

鈴とはタッグを組んだ事は無かった。

先のトーナメントではティナと組んだことに関しては多少は文句を言われたが、その程度だったことを思い出す。

それ以降も鈴の戦い方を何度も見ては学んだからだろう、次に何を求めてくるのかが指示を出されずとも理解が出来る。

クルセイドによる刺突、クラウディウスによる逆袈裟斬り、ウラガーノによる射撃、衝撃砲による砲撃。

更に続けてロムルス、レムスによる連続刺突、甲龍のハイパワーを活かした殴打。

 

止まらない

 

背中を合わせて…いや、背中を預けあうのは初めてだったはずなのに…ああ、これは確かに、心地いいな…!

 

「LA…La…Laaaaaaaaaaaaaaaaaッッッ!」

 

それは確かに一瞬の隙になった。

ほぼゼロ距離からの砲撃、回避は間に合わない。

砲口から光弾が射出される。

 

ドゴォォン!

 

砲口に深紅の長剣が突き立つ。

 

『ボーッとしてるんじゃないサ!』

 

そんな叱咤激励が聞こえた気がした。

 

直後、暴発による爆発が起きる。

それが最大の好機だった。

 

「合わせてくれ皆!」

 

返答は誰からも返ってこない。

だけど、視界の中で俺の声に合わせて動き出すのが理解できた。

それに応え、装甲腕も連携して動く。

ラウラのプラズマブレードと共に剣が振り下ろされる。

ティナとシャルロットと共に銃撃が撃ちだされる。

簪の薙刀と共に槍が突き出される。

鈴の青龍刀と共に刃が叩きつけられる。

 

瞬間、ドラコーに握られる兵装が自動で換装される。

その全てがウラガーノへと。

そして、槍の穂先から影色の光が瞬く。

 

Giudizio del Dio della calamità(凶つ神の裁き)!」

 

溢れ出す影色の閃光が駆け抜けながら、白銀の天使を呑み込んだ。

それは海面を割り、一瞬だけだが海底をも星空のもとに晒してみせた。

だが、それも一瞬だった。

光が途絶えると、寄せて返す波に飲み込まれ一瞬にして消えていった。

 

「La…La………」

 

それと同時に…白銀の天使もまた動きを止め…燐光を残し、消えていき…女性の首から下げられたペンダントへと消えていく。

落下していく女性をメルクが抱き留めるのを確認でき…

 

「流石に…俺も、限界か…」

 

見下ろしてみれば、ISスーツは真っ赤に染まっている。

傷口には、燃え上がるような痛みが未だに残っている。

なのに、身が凍える程に寒い。

 

流した血の量が流石に限度を超えたのか…俺の視界は真っ暗になった…。

 

 




シンクロシステム
セカンドシフトしたことによってリンクシステムが昇華した新たなシステム。
リンクシステムとしての機能を搭載しているだけでなく、イメージインターフェイスの一部を担っている。
また、単一仕様能力『皇帝特権』のサポートをも行っている。

なお、大量出血をしているウェイルの肉体の動きもサポートしており、必要と思われる動きを脳波から推測し、リアルタイムで実行していた。
そのため、『搭乗者保護機構』を無視した動きも学習・再現していた事により、無茶を押し通した動きを繰り出していた。

多くの搭乗者との合同訓練による記憶、ティナとのタッグ結成時に於ける演算システムの譲与、普段からの搭乗者保護機構の一部解除など、今までの経験を凝縮しながらもウェイルを徹底サポートしてくれるものとなった。

画像作製アプリで作ってみたウェイルのイメージ画


【挿絵表示】

メルクとアリーシャ姐さんの画像も作成中
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