IS ただ、それだけを知りたい   作:カーテンコール

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嵐の前兆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 臨海学校2日目。

 

 この日は、午前中から夜間に至るまでの丸1日、ISの各種装備試験運用とデータ取りが行われる。

 特に専用機持ちは、大量の装備が待っているのだからさぞ重労働だろう。

 

 

「ぎゃあっ!? なんじゃこの分厚いリスト!? いくらなんでも多過ぎだろこれ! どーなってんだ責任者呼んで!!」

「黙れ銀崎。『牙神』は初の4脚型ISだ、その分パッケージや追加装備のデータ取りが多く必要になる。きりきり働けよ」

 

 

 砂浜に響く悲痛な声。けれどそれも専用機持ちの義務であるのだから、是非も無し。

 とは言え……

 

 

「…………」

 

 

 専用機どころか、ISそのものに触れる事さえ許されていない久々津には、まるで関係のない事なのだが。

 彼は周りと少し離れ、波打ち際から地平線を眺めていた。

 

 

「ちーちゃ〜〜〜〜〜〜〜〜んっ!!!」

 

 

 しばらくそうしていると、その後ろを砂煙を立てんばかりの勢いで、金属製のウサ耳を付けた女性が通り過ぎた。

 が、それさえもまるで意に介さず、久々津は海の向こうを眺め……否。

 その彼方にある、見えない『何か』を睨んでいた。

 

 

「ど、どうしよう……やっぱり声かけた方がいいのかな?」

「けど……」

 

 

 彼を遠巻きにしつつも、数名の女子達がひそひそと話しあっている。

 今回の試験で、久々津と同じグループに分けられた生徒だ。

 担任の千冬いわく、ISへの搭乗許可は出ていないにしろ一応見学だけでもしておけとのこと。

 

 やがて意を決したのか、女子生徒の1人が久々津へと歩み寄った。

 

 

「あ、あの久々津君……」

「…………」

「えっと……う、『打鉄』の稼働試験始めるから……こっちに……」

 

 

 反応を見せない久々津に、どんどん言葉が尻すぼみになる女子生徒。

 そんな中。

 

 

「……おかしい」

「ふえぇっ!? ご、ごめんなさい!」

「…………?」

 

 

 ぼそりと漏らした彼の呟きに怯えたのか、女子生徒が頻りに頭を下げる。

 対する久々津は、今になって初めて彼女の存在に気付いたのか、怪訝そうに首を傾げていた。

 

 

「何をしてる」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい――え?」

「意味も無く謝るな。低く見られるぞ」

 

 

 呆れ顔の久々津に、女子達は目を丸くした。

 彼の表情が変わるところなど、今まで見た事が無かったのだ。

 長い髪を僅かに振りつつ、久々津は再び海へと視線を戻す。

 

 

「……おい」

「うやっ!? は、はい!」

「変な声を出すな。……ちょっとここに来い」

「は、ははははい!」

 

 

 自分の隣を指差す久々津。

 呼ばれた女子生徒は、ガチガチに固まりつつも言われた通りにした。

 

 

「…………」

「(……わ……あんまり見かけないし、怖くてちゃんと見た事無かったけど……ホント、びっくりするぐらいキレイな顔だ……)」

「……耳を、澄ませてみろ」

「あ、はい」

 

 

 ちらちらと久々津の方に視線を遣りながらも、耳を澄ます。

 久々津自身も、髪をかき上げ隠れていた耳を露出させた。

 

 

「(久々津君の耳、ちょっと尖ってて可愛い……)」

「「「……なんか羨ましい」」」

「黙れ。聞き取れない」

「「「ひゃい!」」」

 

 

 ひそひそと後ろで話していた生徒達が、彼の一喝で静まり返る。

 だが恐怖政治と言うより、何処かカリスマ性を感じさせる声音だった。

 横に立った女子生徒は思う。

 

 もしかして……久々津君って思ってたほど怖い人じゃないのかな、と。

 

 

「…………何が聞こえる」

「えっと……波と風の音に、あとなんか向こうで赤いISがミサイルを撃墜してる音」

 

 

 何か変なものが混じっていたが、それを気にする余裕が無い。

 久々津の横顔が、真剣そのものだったのだ。

 

 

「……風の音がおかしい。波も、少しだけ波長が乱れている」

「え? え?」

「凶事の前兆だ。精々気を張っておけ」

「え、あ、久々津君!?」

 

 

 急に踵を返したかと思うと、久々津は旅館の方へ戻ってしまった。

 追おうにも何故か追えず、その場に立ち尽くす女子生徒達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「現時刻よりIS学園教員は特殊行動任務へと移る! 今日のテスト稼働は中止、各班ISを片付けて旅館に戻れ! 連絡があるまで各自室内待機する事、以後許可なく室外に出た者は我々で身柄を拘束する!」

 

 

 千冬が生徒達全員に向かってそう怒鳴りつけたのは、それからすぐの事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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