6月終盤。
ここIS学園では中止という形にしろ、つい先日大きなイベントであった学年別トーナメントも終わり、更に1年生は臨海学校が目と鼻の先となった時節。
しかして今日この日は、何事も無く過ぎ去るごく普通の日。
その筈だった。
「転校生? また?」
1年1組の教室。
そこで俺は、何故か待ち構えていた鈴に捕まり、『転校生』の話題を聞かされていた。
「そうよ。うちのクラスがその話題で持ち切りで、うるさいから逃げてきちゃった」
「フン、白々しい……」
そして何故か不機嫌な箒。一体どうした、カルシウム不足か?
煮干し食え。
「……一夏。何か今失礼なことを考えなかったか?」
「いやそんなまさか」
危ねぇ。心を読まれた。
「けど、やっぱり1組なのかな?」
首をかしげながらそう言ったのは、つい先日『シャルル』から『シャルロット』として再転入した友人。
鈴の話からすると、そうらしい。また部屋割りの調整とかで山田先生の睡眠時間が削られそうだ。
「しかし、転校生か。もしかして男だったりしてな」
「それこそ有り得んだろう。男のIS操縦者は、お前と……」
ちらと、教室の一角を一瞥する箒。
そこには、ラウラとセシリアを相手に話しかけているもう1人の『男子生徒』が居た。
「あのバカだけだ」
「バカって……そりゃ言い過ぎだぞ箒。そもそもあいつ、入試次席だったし」
「あのような輩、バカで十分だ」
プイッと顔を背ける箒。余程あいつが嫌い……と言うより、何か気に食わないらしい。
それに、箒だけじゃない。鈴は頷いて肯定してるし、シャルロットも苦笑はすれど面と向かって否定はしない。
……ついでに言えば、あいつに話しかけられてるラウラやセシリアも、思いっきり不機嫌を露わにしてる。
それでも必死になって話しかけてるあいつが、何だか可哀想になってきた。
よし。ここはクラスメイトにして唯一の同性である俺が、さりげないフォローを――
「お前達! ホームルームだ、さっさと席に着け!」
しようと思ったところで、千冬姉が出席簿片手に教室に入ってきた。すまん、無理だった。
刹那、『
すげえ。
鈴も以前の恐怖からか、いつの間にか消えてた。
「ふん、やればできるじゃないか。では山田先生、頼んだ」
「……あ、はい……分かりましたぁ……」
いつものようにバトンタッチされた山田先生から、いつもと違って魂が抜けていた。やっぱり睡眠時間削られてたらしい。
「えぇっと……知ってる人はもう知ってると思いますけど……ホームルームの前に、転校生を紹介したいと思います……もうほんと勘弁してください、私の睡眠時間が、あぁぁぁ……」
今にも処理落ちしそうだ。惨い。
「転校生だと!?」
バン、と立ち上がる音。
振り返ったら、後ろの席であいつ……銀崎が驚いた風に山田先生を見てた。
……てか、あいつ知らなかったんだ。
ラウラとシャルロット、それに鈴の時は凄い詳しく知ってたから、そういった情報に関しては通だと思ってたけど。
「席に着け、銀崎」
「っと……すいません、織斑先生」
千冬姉に睨まれて、座り直す銀崎。
けどその顔には、未だ疑問の表情がありありと出ていた。
「(しかし本当に1組だったな。もう今更だけど、本当に分散させないでいいのか?)」
至極まっとうな事を考えていたら、教室の扉が開かれた。
あれ、何かこのパターン前にもあった気がする。
「…………」
無言の入場。あ、これも前にあったパターンだ。
ラウラの時を思い出すなぁ。
「…………」
そんな風にどうでもいいことを考えていたら、ふと教室のざわめきが消えている事に気付いた。
何だ? はっ! も、もしかして、シャルロットの時みたいにソニックブーム発生の前触れか!?
「…………へ?」
思わず警戒しつつ、件の転校生の姿を見遣って。
思わず声が出た。
ざわめきが収まる訳だ。何故なら。
その転校生が――俺が半ば冗談で言った通り、『男』だったのだから。