IS ただ、それだけを知りたい   作:カーテンコール

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血塗れの魔女

 

 

 

 

 

 

 

 

 久々津・オテサーネクは、造られた人間である。

 

 もう20年以上も前の事。かつてある科学者が、『最強の人間』を追い求めて心血を注いだ計画があった。

 そのプロジェクトの名は、『キメラ計画』。1000にも及ぶ人間の遺伝子を配合、強化し、生まれた赤子の身体を改造、素手で猛獣をも下す兵士を完成させるのが目的だった。

 

 けれど、人間の脆弱な身体では拷問の様な改造に耐えきれず、計画は失敗に終わるかと思われた。

 

 だがしかし。唯一その過程に耐え切り、見事『キメラ』として完成した素体。

 今からおよそ16年前に生まれた、それが久々津だった。

 

 久々津・オテサーネクは、そうして生まれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ」

 

 

 旅館から少し離れた山中。

 堂々と正面から接近し、拳を打ち込んできた『魔女』のそれを、久々津は側転で危なげなく回避する。

 そしてその反動を利用して、数発魔女を蹴り上げた。

 

 

 ガガッ! ガガガッ!!

 

 

「……ん、堅いな」

 

 

 若干空中に浮かせたものの、やはりエネルギーシールドを抜けない。

 当り前だろう。いくら化け物染みていても、ただの蹴りでミサイルさえも防ぎきるようなシールドを貫くのは無理だ。

 

 

「だが所詮は人の作ったもの。完全なんてあり得ないんだよこれが」

 

 

 キュルキュルキュルキュルッ!

 

 

 一瞬浮かせた隙に、辺りに張り巡らせたワイヤーを締め上げ、久々津は魔女を拘束する。

 そして――

 

 

「エネルギーシールドは、一定以上の電圧なら貫通(とお)るんだよコレが」

 

 

 ワイヤーの先端から、用意したヘビースタンガンで高圧電流を流した。

 バチバチバチッ!と紫電が奔り、魔女の関節部から煙が上がる。

 

 効いている。が、魔女は装甲を軋ませながらもワイヤーを断ち切り、今度は間違いなく久々津にその拳を叩き込んだ。

 

 

「……チッ」

 

 

 咄嗟に左腕でガードしつつ後ろに飛ぶ。

 だが、そこはISの膂力。バキバキと彼の腕から粉砕音が鳴り響き、チタン合金より硬い強化フレームの骨をいとも簡単に砕く。

 

 

「……痛くは無いんだ、残念ながら」

 

 

 けれど痛覚の存在しない久々津は、忌々しげに魔女を睨むのみ。

 

 

「この程度、ナノマシンを集中させれば1時間足らずで治る……が、久々に身体を壊されて気分が悪い。来いよガラクタ、徹底的に破壊してやる」

『……Ri♪』

 

 

 その言葉に呼応したのか、魔女は低音のマシンボイスを鳴らし。

 久々津へと再び、殴りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして。

 

 

「……ふん」

 

 

 身体の各所を損傷しながらも、久々津はちょうどいい大きさの岩に腰掛け、殆ど機能を停止させた魔女を見据えていた。

 

 

「哀れだな。恐らくお前は、今回の為だけに造られたんだろう? 武装が無いどころか、基本的なスペックまでもが低過ぎる。改造されてるとは言え、生身の人間に負けたのがこの上ない証拠だ」

 

 

 既に魔女は、最早ステルスさえも起動できない。

 久々津の瞳も、金から黒へと戻っていた。

 

 

『……R?』

「悪足掻きは止めろ。徹底的にぶち壊してやったんだ、1度待機状態に戻らなければもうまともには動けない」

 

 

 魔女の四肢は砕け、胴体も原形を留めていない。

 

 

『……Ri……Ri』

 

 

 けれどそれでも、魔女はその機能を停止させず。

 まるで嘆いているかの様に、マシンボイスを響かせていた。

 

 

「……?」

 

 

 怪訝な顔をする久々津。

 やがて何かを思い至ったのか、魔女に向けて言葉を投げかけた。

 

 

「……まさか、悔しいのか? 俺に負けて、お前を作った親は助けてもくれない。まるで無意味な自分自身が悔しいのか?」

『……Ri』

 

 

 頷くかのように、コアが明滅した。

 それの何が面白かったのか、久々津はククと笑う。

 

 

「成程、そうか。こいつはいい」

 

 

 人どころか生き物でも無いくせに、なんとも人間らしいじゃないか。

 ……気に入った。歪で禍々しいフォルムも、俺に相応しい。

 それに、ステルス機能とハッキング能力。

 

 考えてみれば、素晴らしく素敵じゃないか。

 

 

「ククク……なあ、魔女」

 

 

 久々津は立ち上がり、魔女の前で屈み込む。

 そしてそのボロボロの機体に――手を差し伸べた。

 

 

「悔しいなら、悲しいなら。そして見返したいのなら。お前にその機会をやろう」

 

 

 俺達は同じだ。

 互いに無意味に生まれて、そしてこのまま無意味に朽ちて行くなら。

 

 一緒に足掻いて、共に朽ちよう。

 それもまた、悪くないとは思わないか?

 

 

 

 

 

「俺と来いよ。『ブラッディ・ウィッチ』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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