さて。俺は今、ひっじょーに困惑している。
え? 俺は誰かって?
そんな! この俺、銀崎飛竜を知らない!? 寄る年波の所為でボケた神様に間違って殺され、その侘びとしてここ『インフィニット・ストラトス』の世界に転生させて貰って、ヒロイン達で構成したハーレムを築く為に日々奮闘しているこの俺を!
……どうにもフラグ立てが難航してて、未だ1人も落とせてないけど。
箒や鈴はまあ仕方ないにしても、他の3人はいけると思ったのに。
原作ではどうなるにしろ、少なくとも最初の条件は一夏の野郎とイーブンだったんだから。
けど実際は、クラス代表決定戦では一夏と違って俺は専用機到着が間に合わず、結果セシリアと戦う事無く棄権。一夏にまんまとフラグを盗られた。
シャルロットとラウラの時だって、何故かいいタイミングで必ず何らかの邪魔が入って撃沈。これが原作の修正力ってやつか!?
だが俺は諦めない! 元はライトノベルだろうとここは現実、アピールを続ければきっといつかは報われる筈だ!
……もっとも彼女達からすれば、同性ゆえに一夏が気安く接してくる俺は、云わば邪魔な存在らしくて邪険に扱われる事もしばしばだけど。
ああいや、それとも気を引こうと色々やったのが問題だったんだろうか……悩む。
おまけで神様から頭脳や運動神経、それに一夏級のイケメンフェイスを貰ったから、見てくれとかが原因とは思えないが。
……まあいいさ! 学生生活は始まったばかり、まだまだチャンスはてんこ盛りだ!
それに例え、今の5人が駄目だったとしても。まだ生徒会長の更識楯無に妹の簪、臨海学校で出会うナターシャさんとか、美人は山ほど居るし! 希望を捨てるな、俺!
ちなみに更識姉妹とはまだ接触してない。楯無先輩は迂闊にこちらから接触したら怪しまれかねないし、簪の方は純粋に見当たらない。
4組も整備室も結構虱潰しに探してんのに、なんで? いつも行った時必ず居ないんだよな。
仕方ないから、気長に向こうからアクション起こすのを待ってる。
……俺の現状はこれぐらいでいいか。それより今は緊急事態だ。
「では……自己紹介を、お願いしますぅ……」
静まり返った教室、電子パネルの前に立つ男。
そう、『男』なのだ。
ラウラよりも長い、腰どころか膝まで伸びた赤髪。
若干吊り上った双眸に収められた、無機質染みた黒い瞳。
ほっそりとした整った顔立ちに、右眼の下から頬にかけて、ムカデのようなタトゥーが刻まれてる。
普通だったらあいたたたーなその装飾が、とんでもなく様になってた。
全体的に細身だが、軟弱さや貧弱さがまるで感じられない身体つき。なんつうの、細マッチョって奴?
そして極めつけは、着ているその学生服。
IS学園の男子制服は、一夏や俺が着ている襟元だけ黒く、全体が白の配色がベースだ。
けど赤い髪の男はそれが逆転してて、襟元だけ白く全体が黒の制服姿。
なんかこう、ダークヒーローっぽくてカッコいい。是非真似してえ。
けど簪が好きそうじゃないなあれ、止めた。
「…………」
とにかく、バカみたいな美形。
あんな見てくれ自然発生するわけねえ。どう見ても俺と同じ『転生者』だ。
「そうだ、そうに決まってる……」
「私語は慎め銀崎」
バゴス!
「ぐべらっ!?」
織斑先生に出席簿で殴られた! 滅茶痛え!
……と、とにかくだ。あいつが転生者ならば、これから先俺のハーレムを築く障害になりかねない。
ただでさえ難航してるってのに、これ以上敵が増えるなんて御免だ!
……ここは一発睨みを利かせておくか。
喰らえドラゴンアイ!! 飛竜だけに!!(ただのガン飛ばし)
「…………」
気付かれさえしなかった。泣きてえ。
つうかこの野郎、何で目にハイライトが無いんだよ! その所為で何見てんのかさっぱり分かんねえよ!
ああ遣り辛い! てかいい加減なんか喋れよ! 「またですか〜?」って、山田先生泣きそうになってんじゃん! 泣いてても可愛いな畜生!
それにラウラが「何か転校初日の私を思い出す、鬱だ……」とか落ち込んでるじゃねえか! 俺の未来のハーレム要員に何しやがる!!(現在好感度最低)
これからこのクラスの一員としてやっていく気あんのか? 無いなら無いで俺は助かるが。
「……ふぅ」
……お? ようやく口を開けたぞ。
さあどうなんだ。フレンドリーにするのかしないのか!
「…………」
口を開けて、少々の間を置いて。
紡がれた言葉を聞いて、俺は心底安堵した。
「…………雌臭い……最悪、だな」
ああ。こいつクラスに馴染む気、全く無いや。