こんにちは、諸君。
俺だよ。銀崎飛竜だよ。
久々津や楯無会長に毎回名前を間違われてる、可哀想な俺だよ。
昨日なんて、「おい、サンバラバッチ」とか呼ばれたよ。
誰だよ!? とうとう日本名ですらなくなったよ!
……いや、まあそれはいい。良くないけどいい。
とにかく俺が、何を言いたいかと言えば。
困ってるんだよ!
それも極めて! 極めて困ってるんだよ!
「久々津! 俺は困ってるぞ!」
「そうか、良かったなインフルエンザ」
「銀崎だよ! 病名にするなよ!」
何て奴だ、ルームメイトが悩んでるってのに我関せずとばかりにコーラなんぞ飲みくさりやがって!!
こうなったら、学園中の炭酸飲料買い占めたろか!?
……いや、やっぱやめよう。前に炭酸切らしたこいつを1度だけ見た事があるけど、そりゃあもう恐ろしかった。
一夏の奴なんて、近寄っただけでブッ飛ばされてたし。
「それはともかく、何で不愉快なのか聞け!」
「何がともかくなんだか知らんが……断る」
「お願いです聞いてください!」
日本の心、土下座で頼み込む。
聞いてくれるまで止めないぜ!
「……何で不愉快なんだ」
「そうかそんなに聞きたいか! だったらまあ仕方ない、教えてやろう!!」
ぶん殴られた。
「……と、言う訳なのさ……いてえ」
「大した石頭だなお前……」
ふふん、僕の頭は親方の拳骨より硬いんだ。
……誰だよ親方って。
「で? 更識楯無をデートに誘いたい……だったか?」
「ばっ! おま、はっきり言うなよ! ハズイじゃねえかよ!」
「面倒くさい男だな……」
溜め息吐かれた。
けどけど、仕方ないじゃん。
俺ってば前世から合わせておよそ40年近く、女の子と付き合った事なんて無いトゥーシャイシャイボーイなんだから。
精神的には立派な魔法使いだな、うん。
……何の自慢にもなんねえ。
「誘えなくて困ってんだよ! フォローしてくれ!」
「なんで俺が」
「楯無会長と仲いいだろ!? 頼むよ、ルームメイトのよしみで!」
「自分でどうにかしろ、俺を巻き込むな」
ええい、つれない奴め!
だが、諦めんぞ俺は!
「夏はヤングがはしゃぐ季節なんだよ! この機を逃したら楯無会長を落とすなんて無理なんだ! お願い!」
臨海学校じゃ結局ナターシャさんにもフラグ成立出来なかったし、この際ハーレムはもう諦めるから! 所詮夢は夢でしたってことで!
だから、だからせめて! 楯無会長だけでも、一夏の野郎の魔手から救い出したいんだ!
簪ちゃんには、未だに会えてないし!
「お願いです神様仏様久々津様!」
「神や仏と一緒くたにするな。俺は神仏を信じていない」
「じゃあじゃあ、炭酸飲料1ダースあげるから!」
「……半日も持たんな。10ダースだ」
1日にどんだけ飲むんだよこの男は!?
ちくしょう、人の足元見やがって!!
「今月苦しいんだ、5ダースにして!」
「8ダース」
「6ダースで!」
「7ダース」
「6ダース半!!」
「のった」
イエス!! 流石炭酸プリンス、コーラの山で見事に買収成功だ!
これで……これで!
念願の楯無会長とのデートぐぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
「楯無会長! 折り入ってお話……が……って、アレ? 居ない?」
「そう言えば昨日、実家に帰るとか言っていたな」
俺の一世一代の決断は、相手が居ないことによる不戦敗に終わった。
……どちくしょう。