IS ただ、それだけを知りたい   作:カーテンコール

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男3人姦しく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、銀崎。遅刻した理由は何だ?」

 

 

 地獄の教師(ヘルズ・ティーチャー)、千冬降臨。

 その前に立つISスーツを身に纏った飛竜が、ガタガタと震えていた。

 

「い、いえですね? 昼飯の時に久々津に徹底的にフルボッコされまして、気絶してたと言いますか――」

「その割には無傷だな」

「あー、途中で治りました」

「そんなバカな話があるか!」

 

 

 ズビシ!

 

 

「あいだぁっ!?」

 

 

 神速で振り下ろされた出席簿をまともに受け、飛竜は地面に減り込んだ。

 頭を抜こうともがく彼を尻目に、千冬は視線を横にずらす。

 

 そこには飛竜同様に遅刻した、一夏の姿があった。

 友人の受けたあまりな扱いに、顔を青くしている。

 

 

「さて、織斑。お前も久々津の所為にする腹か?」

「い、いえいえいえ! 俺はちょっと、見知らぬ女生徒に話し掛けられてまして!」

 

 

 ヒュン、ヒュンと出席簿を素振りする千冬に対し、一夏はぶんぶんと首を振りつつそう答えた。

 横では相変わらず飛竜が地面に埋まっており、その更に横に居た久々津が、ククと冷たく笑っている。

 

 ……鬼だ。むしろ悪魔か魔王だ。

 

 

「……ほう。見知らぬ女生徒が、な」

「はい! そうですハイ間違いなく!」

 

 

 敬礼でもしそうな勢いの一夏。

 そして千冬はと言えば……慈悲の欠片も無い目をしていた。

 

 

「遅刻の言い訳は以上か?」

「いや、あの、ですから……見知らぬ女生徒がですね――」

 

 

 出席簿が頬を掠めた。

 暑くもないのに、一夏の身体から汗が噴き出す。

 

 

「ではその女子の名前を言ってみろ」

「だ、だから! 初対面ですってば!」

「ほう。お前は初対面の女子との会話を優先して、授業に遅れたのか」

「ち、違ッ――そうだ!」

 

 

 このままではまずい。例えばシャルのラピッド・スイッチ実演の的にされたりする。

 そんな、ある種未来予知の様な勘が告げる中、必死に記憶をさらっていた一夏は、ある事を思い出す。

 ロッカールームで出会った見知らぬ女生徒。

 だがあの青い髪と手にした扇子には、見覚えがあった。

 

「た、確か、銀崎や久々津と良く一緒に居る人でした! 青い髪で、扇子持ってた人!」

「――ぶはぁっ! あー、死ぬかと思った」

「銀崎頼む! 俺の無実証明を!!」

「へ? なんのこっちゃ?」

 

 

 頭まるごと埋まっていた為話を聞いていなかった飛竜に、事情を説明する一夏。

 

 

「ふむふむ……成程、もうそんな時期だったか」

「は?」

「ああいや、こっちの話。……ま、その人の事だったら、確かによぉく知ってるぜ」

 

 

 得意げに腕組みし、ふふんと笑う飛竜。

 ぴっと指を立て、一夏を指差した。

 

 

「彼女の名は、更識楯無! 我等がIS学園最強の生徒会長様にして、現役ロシア代表! 三千世界に轟きし美貌を持った、凄い人なのだ!!」

「……んな、大層な人間かね」

「久々津は黙ってなさい」

 

 

 ババン!と効果音でもありそうなオーバーアクションの飛竜。

 そしてその語りに反応を見せたのは、意外な人物だった。

 

 

「更識、楯無? ふむ、何処かで聞いたような……?」

「あら、ラウラさん。お知り合いですの?」

「あ! そうだラウラ、あの人だよ! バイトの時の」

 

 

 思い出したとばかりに手を叩き、そう言ったのはシャルロット。

 それに驚いたのは、他でもない飛竜だった。

 

 当然だろう。何せ楯無は、まだ原作では誰とも出会っていない筈。

 バイトの時と言うのは、恐らく@クルーズでの強盗事件の事。

 けれどその時、楯無の存在があったと言う話は聞いていない。

 

 そしてその疑問は、ラウラの次のひと言で氷解した。

 

 

「あぁ、そうだったな。そこのサボり魔と一緒に居た女が、そんな名だった」

「…………ナンデスト?」

 

 

 疑問は無くなったが、身体が硬直した。

 今までの話を纏めると、つまり。

 

 

「……久々津? もしやお前、楯無会長と夏休みにデートなんかしたんじゃ」

「プールと食事と買い物には行ったな」

「……お、おおぉぉぉ……」

 

 

 ガラガラと、石になった飛竜が音を立てて崩れる。

 自分は結局夏休みに1回も楯無を誘えなかったのだ。無理もない。

 

 ついでに言えば、久々津が誘う訳が無いのだから、デートは楯無提案と言う事だ。

 粉になるまで砕けた後、飛竜の残骸は風に乗って飛んで行った。

 

 

「ぎ、銀崎!?」

「お前は人の心配をしている場合ではないと思うが」

 

 

 慌てる一夏に、冷静な声で久々津が言う。

 そして実際、その通りである。

 

 

「事情は分かった織斑。更識のやった事なら仕方ない」

「あ、織斑せんせ――」

「……などと、私が言うと思ったか?」

 

 

 一夏は、一瞬でも許してもらえるなどと砂糖菓子より甘い考えを持った自分を呪う。

 

 

「デュノア、ラピッド・スイッチの実演をしろ。的はそこの馬鹿で構わん」

 

 

 自分が構う。

 そう思った一夏であったが、生憎味方は居ない。

 頼みの綱のシャルロットも、笑顔だったが目が全く笑っていなかった。

 

 

「それじゃあ織斑先生。実演を始めます」

「おう」

「ははははは……ホントにいつもいつも、何を考えてるのかな織斑君は。僕分かんないなぁ」

 

 

 許してくれ。

 そう言いたかったけれど、言葉にする事適わず。

 

 

「はじめるよ、リヴァイヴ。狂気の殺戮ショーをね」

 

 

 バラララララッ!!!

 

 

 無数の銃声に、彼の悲鳴さえもかき消されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼女!? 彼女ってどう言う事だ久々津!!」

「いちいち喚くな。あの女の勘違いだ」

「ホントだろうな! ホントだろうな! デートなんかしやがってこんチクショウ!! ギザウラヤマシスだぞゴルァ!!」

「……うるさい」

 

 

 この数秒後、飛竜も久々津にボッコボコにされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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