「却下だ! もう全部却下!」
『ええええー!!』
半ばヒステリックに叫ぶ一夏に、クラス全体からブーイングが飛ぶ。
「アホか!? 誰が嬉しいんだ、こんなもん!!」
彼が指差すのは、電子パネルに映る文字列。
つまりは学園祭におけるクラスの出し物、その候補なのだが。
『男子生徒のホストクラブ』
『逆ハーレムツイスターゲーム』
『ドキドキ!? 男子とポッキー遊び』
『何でもあり(ここ重要)の王様ゲーム』
『織斑一夏と夢のひと時』
『銀崎飛竜のナイトパーティ』
『久々津様、私を奴隷にして!』
その候補に、何ひとつとしてまともな物が存在しない。
悪ノリだけは1人前なクラスだった。
「私は嬉しいね! 胸を張って言える!」
「本当か? 本当にコレがいいって胸張って言えるのか? 親に顔向けできるのか? そもそも後半ワケ分かんないのに!!」
「いいのよ! 貴重な男子生徒は共有財産なの、女子を喜ばせる義務を全うするべきよ!」
「他のクラスとか部の先輩からせっつかれてるのよ! 1組だけずるいって!」
「助けると思って」
「英雄気取りで、ね?」
一夏は頭痛を訴えてくる頭を必死に押さえる。
助けを求めようにも、千冬はおらず。
同じ境遇の男子達はと言えば――
「ナイトパーティってどこまで行っていいの? とてもドキドキします」
「ZZz……」
飛竜は当然だが超乗り気。
久々津に至っては、熟睡していた。
こうなったらと、山田先生の方へ視線を向けると。
「ど、奴隷って、何されちゃうんでしょうか……?」
役に立ちそうにもなかった。
このままでは、このロクでもない企画の中から選ばなくてはならなくなってしまう。
そうなってしまえば、彼ら男子3人は大変な目に遭うのは明白だった。
一夏などは言うに及ばず、飛竜とて実はモテる。
顔は十二分にイケメンだし、成績も良く運動神経だって抜群。しかも一夏と違って鈍感ではないし、トークも中々に面白い。
そして久々津。毒舌どころか猛毒をそのまま吐き出しているキャラは当初こそ周りを遠ざけたが、その怜悧で切れ味鋭い容姿は一部のマゾッ気のある方々や、上級生から密かに人気を博しているのだ。
いよいよ身の危険を本能的に感じてきた一夏は、最後の手段だと久々津に視線を移す。
彼ならきっと、いや絶対このような企画には賛同しない筈。
久々津があの氷のような冷たい声で反対したなら、この暴走特急なクラスメイト達だって従うだろう。
そんな考えの下、一夏は座ったままの姿勢で寝息を立てる久々津に歩み寄り。
「久々津、お前からも皆に言ってやって――」
彼の肩に、触れてしまった。
「あ、バカ一夏! 止めろ!!」
「――へ?」
ズガンッ!!!
「あおろばっ!!?」
一瞬だった。
彼の肩に一夏が触れるのとほぼ同時に、鳩尾へと掌底を叩き込まれ。
壁に衝突し、目を回したのは。
「「「一夏ッ!?」」」
「一夏さん!?」
箒、セシリア、シャルロット、ラウラの4人が同時に声を上げる。
そんな彼女等を尻目に、飛竜が頭を掻きながら一夏へ近付く。
「ったく。久々津のヤローは寝てる時に触られると反射的に攻撃するって、前にも教えといたのに。話半分に聞いてやがったなコイツ」
ぺちぺちと一夏の頬を軽くはたき、気付けをする。
「う、うぅぅ……ハッ!? お、俺はどこ!? ここは誰!?」
「ハイハイお約束はいいから。それより、久々津を起こしたいんなら諦めろ。触ったらまたぶっ飛ばされるぞ」
「いや、寝相悪過ぎだろ!?」
「寝相じゃなくて反射神経な。寝てるこいつを問題なく起こせるのは、楯無会長くらいなんだよ……あの人相手なら、触っても攻撃しないから。あと、人畜無害な山田先生。でも先生だと今度は逆に何やっても起きねえんだこれが」
「はい、起きてくれません……」
しょげる山田先生。
以前臨海学校で彼を起こしに行った時も、15分粘って結局起きなかった。
「いいか一夏。こいつを人間と思うな、猛獣か何かだと思え。それがコイツと付き合うコツな」
「……銀崎……知らない間に逞しくなってたんだな、お前」
「言わないでくれ、泣けてくるから」
ちなみに、一夏の無謀な行いが却って功を奏したのか、女子達が普段のテンションを取り戻したことで、一応の落ち着きを見せた。
そこでラウラが『コスプレ喫茶』と言う先程までと比べれば万倍マシな意見を出し、特に反対意見も出ず全体的に乗り気であった為、決定して事なきを得るのであった。