IS ただ、それだけを知りたい   作:カーテンコール

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赤髪執事

 

 

 

 

 

 

 

 

 学園祭当日。

 唯一男子が存在するクラス、それも催し物が『御奉仕喫茶』と言うこともあり、準備期間中から鳴り物入りだった1年1組。

 

 学園祭開始30分前。喫茶店風に模様替えされた教室内は、生徒達の驚愕の囁きで包み込まれていた。

 

 

「ウソ……え、コレって現実?」

「一体どんな魔法を使ったの……」

 

 

 驚く余り、自分達が夢でも見ているのではないかと思う者まで出始める1組の面々。

 その喧騒の中心に居たのは。

 

 

「…………」

 

 

 不機嫌を通り越し、殺気まで薄らと纏いながらも。

 洒落た『燕尾服』に袖を通し、執事の風体をした久々津であった。

 

 サボり確定とまで噂された彼の、接客参加。

 一体誰がそんなミラクルを実現させたのかと言えば。

 

 

「ふはははは! 皆の衆、俺をゴッドと呼んでくれ!」

 

 

 同じく燕尾服を着て高笑いする、飛竜の功績である。

 因みに決め手は『壁土下座』。さながら重力を無視しているかの如く握力と脚の踏ん張りで壁に張り付き、土下座する上級技。

 

 

『次は天井土下座だ』

 

 

 このひと言で、あまりな気味の悪さに久々津が折れた。

 そして1度約束を交わした以上、それを決して破ることの無い彼がこうして執事に扮したのだった。

 

 

「……最悪、だな」

「ぷくく……久々津、オメー似合い過ぎだって! 黒執事にお前みたいなの居たよな、チェーンソー武器にしてた奴! メガネかけて眉尻下げてみろよ、瓜二つだぜ!」

「死ね」

 

 

 調子に乗り過ぎた結果、空中コンボ16連射を喰らった飛竜。

 ともあれ、学園祭の開幕である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うそ!? 1組で織斑君達の接客が受けられるの!? しかも執事って!!」

「ゲームもあるらしいわ、勝ったらツーショットで写真撮って貰えるんだって!」

「コレは絶対行かなきゃ! てな訳でお先に!」

 

 

 1年1組の『御奉仕喫茶』は当に盛況で、朝から大忙しだった。

 とは言っても、基本的に男子3人が引っ張りだこ状態で、メイドに扮する女子生徒達は普通に楽しんでいたが。

 

 

「ちょっとそこの執事、テーブルに案内しなさいよ」

「あれ、鈴? お前……なんて格好してるんだ?」

 

 

 チャイナドレス姿の鈴を相手に接客する一夏。

 ついでに、2組の出し物は中華喫茶であるのだが、1組と題目が被っているのでこちらに殆ど客を取られてしまっている。

 

 

「どーもー。『四季の調べケーキセット』お待たせしましたお嬢様方ー」

「待ってました! ね、ね、銀崎君もこっち座って、ちょっとお話しようよ!」

「喜んでー!」

 

 

 飛竜はその持ち前の愛想の良さで、ややフランクな接客を行っている。

 そもそも彼も十二分なイケメンである為、中々な人気を博していた。

 

 ――そして。

 1番問題視されていた久々津だが。

 

 例えば。

 

 

「あ、あの……」

「……なんでしょうか、オジョーサマ」

「ふ……踏んだり、しないんですか? こう、躾のなっていないお嬢様に、みたいな」

「…………(何を言ってるんだこいつは。一応話すだけなら8ヶ国語こなせる俺が、理解できん)」

 

 

 例えば。

 

 

「罵って下さい」

「な、に?」

「思いっきり罵って下さい! 当分心に傷が残るぐらい!」

 

 

 例えば例えば。

 

 

「アナタみたいな凶暴なヒトを飼い慣らしてみたいの……私のモノにならない?」

「殺されたいのか、あ゛?」

「……気が変わったわ。私をペットにして」

「寄るな触るな近付くな。何なんだお前等、揃いも揃ってここにはまともな奴は居ないのか」

 

 

 ――等々。

 寧ろ客の方に問題児が多く、接客云々以前の問題ではあったが、集客数自体はかなりの物だったので特に問題は無かった。

 2時間少々も経つ頃には、そんな特殊性癖な客層にも慣れ。

 

 

「鈴。お前、なんか可愛いな」

「へ!? ちょ、何よいきなり!」

「いや、ポッキー食ってる姿がリスみたいでさ」

「……~~このバカッ!!」

 

 

 丁度久々津への客が一時捌けたと同時に、一夏の方に問題が発生する。

 どうやらいつもの朴念仁振りを発揮し、接客していた鈴を怒らせたらしく。

 口論になり掛けた時、2人の間に割って入ったのは。

 

 

「騒ぎ立てないの。他のお客さんがびっくりするでしょ?」

 

 

 『羅刹』と書かれた扇子を広げた、楯無であった。

 何時の間に拝借したのか、クラスの女子生徒が着用している物と同じデザインのメイド服に身を包んでいる。

 

 

「せ、先輩!? 何なんですかその格好は――」

「楯無でいいって前にも言ったでしょ? お茶に来たの」

「手伝いに来た訳じゃないんですね……てか、だったら何でそんな格好を」

「おう、楯無会長のメイド姿がここに!! カメラカメラ……ギャァァァ、フィルムがねぇぇぇっ!!」

 

 

 楯無の登場により、教室内の騒がしさが一気に上昇する。

 それに対し、眉間に皺を寄せて静かな場所に行きたいと内心思いつつも、休憩までは逃げずに接客を行うと言う約束を交わしてしまった為に適わず。

 無心となって接客を続ける久々津。そんな彼の傍に、楯無が寄ってきた。

 

 

「何だアホ女。俺は今機嫌が悪い」

「……ねえ久々津君。私思ったんだけど、貴方って私の名前呼んだこと1回も無かったりしない?」

「知らん。用が無いならさっさと散れ」

 

 

 ここ最近は大分軟化したとは言え、まだまだ辛辣な態度に変わりは無く。

 胡乱気な目で睨まれた楯無は、一瞬退きそうになるも何とか持ち直す。

 そして、久々津の手を取った。

 

 

「新聞部の取材が来てるのよ。久々津君の写真も欲しいんだって」

「……それも、学園祭への協力的姿勢って奴に入るのか?」

「? まあそうじゃないの? でもどうして?」

「何でもない」

 

 

 ならば仕方無しと、渋々席を立つ久々津。

 そして楯無に手を引かれ、カメラを構えて一夏達の写真を撮っている一際騒がしい女性との下へと連れられた。

 

 

「やっほー薫子ちゃん。久々津君連れてきたわよ」

「わお! ありがとうたっちゃん、やっぱりこんな機会だし、男子3人全員の写真欲しかったのよ!」

「…………」

 

 

 ノリノリで会話する2人を見遣りつつ、久々津は思った。

 この手の輩は構図が気に入らなければ何度でも撮り直そうとする。そんな面倒な真似、御免だった。

 

 

「やっぱり女の子とのツーショットがいいわねー。誰がいいかなー」

「……オイ」

「うん? なぁに、久々津く――」

 

 

 言い終わらない内に。

 久々津は楯無の腰の辺りに手を回すと、グッと彼女を引き寄せた。

 そしてやや身長差のある彼女に寄りかかるような姿勢を取り、空いた手で頬に触れる。

 

 

「ひゃわっ!?」

「コイツでいい。さっさと済ませてくれ、俺はそろそろ休憩時間なんだ」

「おー! まさかの展開、けど非常にグッドだよー!」

 

 

 喜んでシャッターを押しまくる薫子。

 楯無は赤くなりながらも、こんなチャンスは滅多に無いと思い。

 億劫そうにする久々津の身体に、きゅっと抱き付いた。

 

 その後、久々津と楯無の組み合わせをいたく気に入ったらしい薫子に、散々写真を撮られ。

 解放されたのは、実に10分後であった。

 

 

「接客といい、写真といい……とんだ厄日だ……」

「…………(うぅ……まだドキドキしてる)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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