コンラくんのFGO   作:彼に幸あれ

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親子

 

 

 

キャスニキ視点

 

 

 

 

 

「ーーーごめんなさい。」

 

「・・・・・。」

 

 

 

小さな体を震わせながら、泣きそうな顔で自分に謝る息子(コンラ)の姿に。

俺は少しの間、言葉を失った。

 

息子は俺の事を忘れてしまったと謝ってくる。

生前の記憶がないのは息子のせいではないのに。

俺と過ごした大切な時間を忘れてしまったと、自分自身を責めている。

 

 

ーーーともに過ごした時間など。

息子の考えているような穏やかなモノではなかったというのに。

 

 

お互いを殺す為に、槍を、剣を、拳を交えた。

殺伐とした戦いの記憶。

 

むしろ、息子がその忌まわしい記憶を失ってくれた事を喜んでいる自分がいるというのに。

どこまでも純粋な目の前の存在は、そんな俺の為に自ら心を傷つけている。

 

 

 

ーーーーあぁ、そうか。

コイツは戦士として生きるには、優しすぎたのか。

 

 

今ならわかる。

確かに生前のコンラは俺と戦っている時、何度か俺を殺せるチャンスがあったのをワザと見逃していた。

 

父親を殺したくないと、手加減していたのだ。

 

当時の俺はそれに気づかなかった。

気づいて、やれなかった。

 

 

ーーーくそっ!

謝るべきなのは、俺の方じゃねえか!!

 

 

 

胸に渦巻くあの時の自分への怒りに、視界が赤く染まったような気がした。

そんな俺の怒気に敏感に反応した息子は、怯えたように身を竦ませる。

 

 

 

「ーーーキャスター、怒った?」

 

 

 

どうやら俺が怒っているのは息子に対してだと勘違いさせてしまったようだ。

内心で自分自身に舌打ちしながら、俺はコンラへ違うのだと告げる。

 

 

 

「安心しろ。オマエに怒ってるわけじゃねぇ。」

 

「?、本当に?」

 

「あぁ。本当だ。」

 

「ーーーよかった。」

 

 

ホッとした安堵の表情で、息子は胸をなでおろす。

その自分の言動で一喜一憂する姿に。

愛おしさが込み上げた。

 

 

「コンラ。記憶がないのは誰のせいでもねぇ。オマエが気に病む必要はねぇんだ。」

 

「で、でも・・・」

 

「俺はな。死んだ後に、こうしてまたオマエと出会えただけで充分なんだ。」

 

 

 

俺は手を伸ばし、コンラの柔らかな頬に触れる。

身を竦ませた時に瞳から溢れた一筋の雫を、そっと指で拭ってやった。

 

 

 

「俺は失ったものより、今のこの時間を大事にしたい。ーーーわかるな?」

 

 

 

聖杯を護るセイバーを倒せば、恐らく俺もコイツも元の場所に還る事になる。

また会えるという保証はどこにもない。

いや、会えたとしてもマスターやクラスによっては再び殺し合いになる可能性もあるのだ。

 

 

こうして今、息子に何の障害もなく触れることが出来る現状が。

かつてないほどの幸運なのだ。

 

だからこそ、今を。

ともに過ごせるこの奇跡のような時間の全てを大切にしたかった。

記憶にしっかりと刻み込み。

けして摩耗しないよう座へと持ち帰りたかった。

 

 

 

 

 

………………………………………………………………………………

 

 

 

 

「えっと・・」

 

 

俺は必死にキャスターの言わんとする事を考える。

ーーーつまり、生前の記憶がない事は気にしなくていい。

今から新たに親子としての思い出を作ってこうって事・・・かな?

 

頬に触れるキャスターの無骨な指の感触に。

零れた涙を拭う仕草に、俺は深い愛情を感じた。

同時に、自分の全てを委ねてしまいたいと思う程の途方もない安心感を抱く。

 

 

ーーー何だろ、胸がポカポカする。

心が満たされるというか。

落ち着くっていうか。

この人が傍いるだけで満足、みたいな?

 

 

はじめて感じる類の感情に、疑問を抱く。

これが血の繋がった父親から一心に愛情を受ける子供の気持ちなのだろうか?

両親の記憶がない俺にはわからないし。

比べようもないのだけれど。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーなんか幸せ、だな。

 

 

目の前のキャスターに。

今世の父親に愛情を注がれることを喜び。

幸福に感じている自分がいた。

抱いていた罪悪感や自己嫌悪は、いつの間にか溶けたように消えていた。

その心の変化を我ながら現金だなっと思いつつ。

俺はキャスターにーーー

 

 

 

「そう、だね。ありがとう。

ーーー父さん。」

 

 

「ーーーッ!」

 

 

 

自分の《父親》に笑いかけた。

 

前世で知ることの出来なかった親からの愛情というものを、俺に与えてくれたこの優しい父親の隣に。

ずっと、これからも共にいたいと願いなから。

俺は自分の思いを告げる。

 

 

 

「わかったよ。生前の分もーーーううん。

生前以上に!これからいっぱい二人で思い出を作ってこうね!!」

 

 

 

 

 

…………………………………………………………………………

 

 

 

キャスニキ視点

 

 

 

 

 

「そう、だね。ありがとう。

ーーー父さん。」

 

 

 

コンラから笑顔と共にかけられた言葉に。

どうしようもないほどの衝撃を受ける。

 

ーーーコンラが、父と。

子を手にかけた、親である資格もない俺の事を。

父と、呼んでくれた。

自分の父親であると認めてくれた。

 

 

震えるほどの歓喜と愛情と慈しみが。

全身を駆け巡っていく。

 

 

目の前の存在が愛おしかった。

何モノにも代えがたい程に。

これまで己が大切だと思っていたモノ全てが、息子の前ではちっぽけな物の様に思えた。

 

 

 

ーーーずっと。すぐ側で。

この愛おしい存在と共に時を過ごせたのなら。

それはどんなに幸せなことだろうか。

 

だか、それは叶わない願いである事を俺は知っていた。

 

 

 

「わかったよ。生前の分もーーーううん。

生前以上に!これからいっぱい二人で思い出を作ってこうね!!」

 

 

 

何も知らず。

訪れることのない未来の話をする息子の姿に痛みを覚える。

ただ共にいたいという。

その無欲な願いすら自分は叶えてやれないのだ。

 

 

久しく感じたことのなかった無力感に。

俺はキツく己の手を握りしめながら。

 

 

 

 

 

「ーーーあぁ。」

 

 

 

肯定も否定も出来ず。

曖昧に言葉を濁すしかなかった。

 

 

 

 

 

……………………………………………………………………………

 

 

キャスニキの愛が重い。

そして鬱展開。

どうしたものか(頭抱え)

 

 

 

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