第三者視点
「・・・・スゥ・・」
「・・・・。」
アインツベルン城の一室。
ソファに横たわり、己に促されるまま素直に眠りについた息子の姿をキャスターは静かに見つめていた。
寝息を立てる穏やかな寝顔に眼を細めると。
瞬きの間にその瞳は父親から智者の色へと変わる。
キャスターは己の中でシコリとなっている、
不可解な幾つかのピースを脳内に上げていく。
息子のイレギュラー召喚
記憶の喪失
本来持ち得ない宝具・魔眼
魔力切れによる意識の昏倒
そしてーーー
通常の
「まさか・・疑似サーヴァントか?
ーーーとなると、コイツを召喚したのは。」
その可能性に至ったキャスターが、ポツリと誰にともなくこぼした時。
ソレは起こった。
〘さすがだな。〙
カタリッと、壁に立て掛けてあった息子の剣がひとりでに動いた。
「ーーーッ!」
とっさに息子を庇うように前に出て、警戒するキャスター。
その間もカタリッカタリッと剣は生きているかの様に動き。
しばらくすると、その剣身から白い霧のようなモノが溢れ出てきた。
その霧はゆっくりと人の形に変化し、キャスターにとって見覚えのある姿に成った。
「あぁ・・・やっぱりアンタか。」
〘久しぶりだな。我が息子、セタンタよ。〙
そこにいたのは神。
その名は太陽神ルー。
「あの女といい、アンタといい。まったく・・・その名前は呼ぶなって言ってんだろクソ親父。」
キャスターにとっては己の父であり。
コンラにとっては祖父にあたる存在だった。
〘再会して早々、随分な言い草だな。〙
ルーは苦笑し、温かな眼差しでキャスターを見る。
奇しくもその表情は、先程までキャスターが浮かべていたものと同じ。
愛する息子へと父親が向ける慈愛に満ちた顔だった。
しかし、その肢体は透けており。
先ほどコンラが手助けした白い少女と同じ、一時的に視覚化できるよう現界したものであった。
神秘の薄いこの特異点では、完全な形で降り立つ事は高位神であるルーには出来なかったのだ。
だからこそ、己の意識の一部を送り込む為に孫の剣を利用した。
ルーは視線を己の触媒とした剣に移す。
それはコンラが生前に父親と戦った際、クー・フーリンの髪の一部を斬り落とした剣だった。
故に元は無名の剣であったソレは微かだが神秘を帯びていた。
そこにキャスターがコンラに魔力を供給する為、自ら手を斬り剣に血を与えた。
その結果、半神の血を受けた剣の神性は更に高まり。
キャスターと血の繋がりのあるルーが触媒として利用するのに最適なモノへと変化したのだった。
「ーーーそれで?これはどういうことだ?」
ルーはかけられた声に、視線をキャスターへと戻す。
「コイツを疑似サーヴァントにしてまで此処に送り込んだ理由は何だ?そんな姿になってまで降りて来たってことは、相当の理由があるんだろ?」
〘あぁ、その通りだ。だが、理由を話す前に確認しておかなければならない事がある。〙
「?、何だよ?」
〘セタンタ。お前はこの先、何があろうともコンラの傍にいる覚悟はあるか?〙
「ーーーどういう事だ?」
〘これから話すことは、お前にとってとても堪え難い事だろう。その子の傍にいる事を躊躇う程に。
それでも私はお前にーーーいや、父親であるお前にこそ。
その子の傍でその子を護り、鍛え、共にこれから始まる人理修復という旅を歩んで欲しいと思っている。〙
ルーの脳内に甦るのは己の千里眼で見た光景。
定礎が崩れた今、確実な未来と断言は出来ないが。
人類を救う為、最後のマスターと各特異点に召喚された多くの
その未来は確かに、ルーの眼に焼きついていた。
ーーーその戦いに、己の孫を参加させる。
何故ならそれが、二度も悲劇を繰り返し。
その結果、幻霊と化してしまった
ルーの言葉からキャスターは
己が息子の傍にいることを躊躇う程の理由とはいったい何なのか。
微かに心が揺らぎかけたが、背後にいるコンラの存在がキャスターに覚悟を決めさせた。
息子の傍にいられるのなら。
息子の為に己が何か出来るのなら。
先程まで不可能だと諦めていた、共にいたいというコンラの願いを叶える事が出来るのならば。
ルーの口から語られるものが何であっても、己は堪えられるとキャスターは思った。
「ーーーあぁ。コイツの為に何かできるなら、俺は喜んでコンラの傍にいるつもりだ。・・・何があってもな。」
〘そうか。・・・わかった。
ならば、全てを話そう。〙
神は語った。
己が傍観していた事柄、全てを。
救いたくとも神秘の薄れた時代故に介入することも出来ず。
孫が再び息子の手によって殺されるおぞましい光景をただ観ている事しか出来なかった、己の罪を。
…………………………………………………………………………………
※
そしてまた始まる鬱展開(遠い目)