コンラくんのFGO   作:彼に幸あれ

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離別

 

 

 

「ーーーもう、時間か。」

 

 

父さんは光の粒子に変換され、薄れていく自分の手を見ながらそう呟いた。

セイバーを倒せば父さんとバーサーカーは座に強制送還される。

ここに来る前に話してもらってたから知ってはいた。

でも・・・

 

 

「ーーー。」

 

 

実際に目の前でその姿が消えていく光景を見ると、動揺せずにはいられなかった。

とっさに手を伸ばして引き止めるように外套の裾を掴む。

この後、カルデアでまた会えるってわかってはいるけど。

少しの間でも父さんと離れることに酷い寂しさと不安を感じた。

 

 

「・・・コンラ。これをマスターに渡しといてくれ。」

 

「ーーえ?いいの?」

 

 

渡されたのは、父さんがずっとこの特異点で使っていた杖だった。

 

 

「ああ。これを召喚の時の触媒にすれば、間違いなく俺はカルデアに行ける。

安心しろ・・・すぐに会いに行く。」

 

 

その言葉には、気落ちする俺を案じる父さんの想いが込められていて。

俺はその気持ちが嬉しくて。

じんわりと、沈んでいた自分の心が温かくなるのがわかった。

 

 

「・・うん。待ってるね。」

 

 

杖を受け取り、しっかりとそれを握りしめる。

父さんはそんな俺を見て、何かを決意したような顔で頭を撫でてくれた。

 

ーーー俺、父さんに頭を撫でられるの好きだな。

 

思わず浮かんだ笑みに、父さんも微笑い返してくれた。

その慈しみに満ちた眼差しに、俺は大きな安心感を得て思う。

父さんと一緒なら、俺はこれから始まる人理修復という旅を無事にやり遂げられる・・と。

 

 

 

 

…………………………………………………………………………………………………………

 

 

 

キャスニキ視点

 

 

縋るように自分の外套を掴むコンラ。

その俺と同じ色の瞳は不安げに揺れている。

 

真実を知らず。

己を苦境へと追いやった(張本人)を信頼する姿に罪悪感と痛みを覚える。

だが、同時に父親として慕われている事実に心が震えた。

少しでも安心させてやれればと、触媒に使うよう渡した杖を。

小さな両手が大事そうに握りしめる。

その健気な姿に、護らなければと胸中で再度強い想いを抱いた。

 

 

ーーー必ず護る。

例え何を犠牲にしようとも。

 

二度も殺め、その魂さえも消滅させかけた俺が息子(コンラ)の為に出来ることは。

もうそれしか残されていないのだから。

 

 

「安心しろ・・・すぐに会いに行く。」

 

「・・うん。待ってるね。」

 

 

その純粋な色を宿す瞳に。

あの日(生前)のコンラの姿が思い起こされる。

 

 

あぁ、そうだったな。

お前はあの時、俺に会いに影の国からやって来たんだったな。

なら・・今度は俺がお前に会いに行く番だ。

 

 

撫でてやると、この特異点で初めて出会った時のように嬉しそうに笑うコンラ。

愛おしいその笑顔に、自然と自分の頬が緩む。

 

この一時の別れの後。

旅の終わりまでその傍にいてやれる事が、何よりも幸福だった。

 

 

ーーーそして、俺は座へと戻される。

 

これから始まる息子を救う為(人理修復)の旅が、この時点で早くも狂い始めるなど。

つゆほども想像せずに。

 

 

 

 

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『コンラ。』

 

 

父さんの杖を立香ちゃんに渡していた俺に。

バーサーカーとお別れを済ませたイリヤちゃんが歩み寄る。

俺と同じ様に、大切な人と離れ離れになったイリヤちゃんの表情は昏い。

 

・・・違う。同じじゃない。

俺はカルデアでまた父さんと会えることがわかってるけど。

イリヤちゃんはもう二度と、バーサーカーと会えないのだ。

なんと声をかけていいかわからず。

でも何もせずにいられなかった俺は、とっさにイリヤちゃんの華奢な手を両手で包む。

魔力で現界している状態では伝わりにくいかもしれないけれど。

少しでもイリヤちゃんの傷ついた心が慰められたらと思ったのだ。

 

 

『ーーー大丈夫。ちゃんとバーサーカーとはお別れできたから。それに・・・私も、もう行かないと。』

 

 

俺の手を柔らかく握り返し、イリヤちゃんは自分も輪廻の輪へと還ることを告げる。

 

ーーー輪廻の輪。

かつては俺もそこに加わり、今ではもう還ることの出来なくなった場所。

哀しみはないけれど、感慨深いものを感じた。

 

 

「そっか・・イリヤちゃんもいなくなっちゃうんだ。」

 

 

せっかく出来た友達の一人が去ってしまう事に。

仕方のない事だとわかっていても、俺は寂しさを抱く。

 

『うん。ごめんね。』

 

「ううん。」

 

『私、コンラに出会えて良かった。

私の為に泣いてくれたのはコンラが初めてだったから・・・嬉しかったの。出来れば生きている時に会いたかったな。』

 

「俺もイリヤちゃんともっと早く友達になりたかった。そしたら、イリヤちゃんを死なせずに済んだかもしれないのに。」

 

『その言葉だけで十分よ。ーーーありがとう。』

 

 

イリヤちゃんは穏やかに微笑むと、溶けるように消えてしまった。

俺の魔眼でも捉える事が出来なくなったので、もう現世から去ってしまったのだろう。

 

彼女が生前、どんな人生を歩んできたのか詳しくはわからない。

けれど、聖杯戦争なんていう殺し合いに参加していたのだから。おそらく幸福だとは言い難いものだったのだろう。

 

ーーー今度こそ、イリヤちゃんが幸せになれますように。

 

俺は心の中で、生まれ変わる彼女の幸せを願った。

 

 

 

 

………………………………………………………………………………………………

 

 

※キリのいいところまでにしたら予想以上に短くなってしまいました。

視点も今更ですが、コロコロ変わってしまって申し訳ありません。

この時点でキャスニキの中で人理修復<コンラの図式が出来上がっています。

この作品のキャスニキはマスターではなくコンラくんを導く者であろうとしているので仕方ないのです。

 

そして次回ようやくレフ教授の登場。

また鬱展開か・・。所長・・。

 

 

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